障害者就労の“受け皿”として地域に貢献する企業
- 事業所名
- 山口綜合警備保障株式会社
- 所在地
- 山口県山口市
- 事業内容
- 施設警備業務、消防用設備保守点検業務、防犯・防災機器販売工事業務、人材派遣業務
- 従業員数
- 463名
- うち障害者数
- 9名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 9 内部障害 知的障害 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用と支援への取り組み
(1)事業所の概要
山口綜合警備保障株式会社は、ALSOK(アルソック)グループの一員として昭和50年に設立された。その後、「誠実」「正確」「強力」「迅速」の社訓のもとに、山口県内の警備業界を牽引する企業として発展してきた。平成24年現在で、県内に本社(山口市)、支社(周南市、宇部市、下関市)、営業所(山口市)、出張所(岩国市、柳井市、山陽小野田市)を有している。
(2)障害者雇用と支援への取り組み
① 「人が商品です」
代表取締役社長の伊藤二郎氏は、「本社では、人が商品です」と語る。当社での各種業務には最新のエレクトロニクスとそれを支えるセキュリティーシステムが導入されているが、それらを扱うのは当社の従業員である。人の力が技術を生かし、安全と安心を人々に届ける。
当社で障害者雇用を担当している総務部長の中原文雄氏と、総務課長代理の原田雅則氏に話を伺った。
「警備業務等を展開している当社には、障害がおありの方が今9名おられます。全員が身体障害者手帳をお持ちです。山口市内には、本社に1名、山口営業所に2名の、計3名が働いておられます。」

総務課長代理の原田雅則氏
② 障害者雇用への取り組み
「当社は数年前、障害者法定雇用率の達成をめざし、障害のある方を対象とした合同就職面接会に参加しました。その会場で出会った方が、現在、当社の従業員として元気に働いておられます。」と中原部長は微笑む。
当社で障害者雇用が迅速かつ円滑に展開した要因のひとつは、この合同就職面接会への参加である。
その後、当社の障害者雇用率は、2.76%に上昇した(平成24年6月現在)。
2. 当社で働く従業員への支援の様子
障害のある従業員9名のうち、3名について紹介する。
(1)Aさん(右上下肢障害・身体障害者手帳「3級」判定)
Aさんは4歳の頃、頭部外傷によって右上下肢に障害を負った。現在、経理課のオフィスで勤務し、パソコンによるデータ出入力、文書の手書き、文書の紐綴じ等の事務作業は全て左手を使用して行っている。歩行については特に支障なく、杖等は使用していない。オフィスの床は機器類の配線等や段差が皆無であり、Aさんの移動はスムーズである。
「Aさんに対しては、長時間の立ち作業や身体的な力を必要とするような作業は避けさせ、できるだけデスクワークに従事できるよう配慮しています。」と原田氏は語る。
また、Aさんが勤務する2階のトイレを和式トイレから洋式トイレに改造したことにより、Aさんの就労生活は円滑になった。
こうした配慮のもとでAさんはその実力を発揮している。
さて、Aさんは広島県の高等学校を卒業後、岡山県にある国立吉備高原職業リハビリテーションセンター印刷製本系でパソコン技能を習得した後に、印刷関連の事業所でデザイン関連の仕事についた。しかし、パソコンのマウス操作で左手を酷使したことにより腱鞘炎にかかり悪化させてしまった。やむなくAさんは、事務職をめざすことを決心し、広島障害者職業能力開発校ビジネス科で事務系の技能を習得した。その後、山口市内で開催された障害者合同就職面接会を縁に、当社に入社の運びとなった。
「事務職も厳しい世界であることは覚悟しておりました。私の場合、頭部外傷に加え、30歳を超えてから初めての事務職でしたので、記憶力の減退ゆえ、なかなか仕事を覚えることができませんでした。わからないことも多かったのですが、勉強しながら少しずつ少しずつ前に歩んできました。入社して5年になりますが、本当にあっという間だったような気がします。」とAさんは振り返る。
なお、Aさんは近隣の市から当社に自家用車通勤を続けている。左手でのハンドル操作が可能となるよう、ハンドルにはノブが取り付けられ、その部分を左手で掴んでハンドルを回転させている。また、左足でのアクセル操作等が可能となるよう、アクセル等には補助具が取り付けられ、左足でそれを踏むと、その力がアクセル等に伝わる仕組みとなっており、Aさんの通勤を支えている。これらの改造は福祉制度を活用した。


(2)Bさん(右下肢障害・身体障害者手帳「6級」判定)
Bさんは山口市内の自宅からバイク通勤を続けている。
Bさんは、幼少期に右下肢(つま先)を火傷した。傷はいったん治癒したものの、壮年期の運送会社での仕事(重量物の運搬)が右下肢に負担を与えたために症状が悪化し、痛みひどくなった。やむなく、定年を目前に退社し、公共職業安定所を介して当社に入社した。
「山口綜合警備保障株式会社の将来性に注目し、入社を希望しました。」とBさんは語る。
現在、Bさんは歩行については支障なく、杖等は使用していない。月・火・金曜日の週三日勤務の時間給社員として、復電業務に従事している。復電業務とは、電気メーター内の配線を操作して家屋に電気を復旧させる一連の業務をいう。17時20分~翌朝8時50分がBさんの勤務時間である。中でも20時から22時の時間帯が仕事のピークとなる。
「夜、地図を見ながら、該当する家に到着するまで大変です。」とBさんは語る。夜間、家の付近まで車で近づき、下車した後に懐中電灯で一軒一軒の表札を照らしながら家を探す。猛暑の夏の夜も、凍てつく冬の夜も、この家探しは毎晩繰り返されてきた。
家を探し出した後、その家の電気メーターの蓋を開け、内部の配線をつなぐ作業に入る。ヘルメットに取り付けられたライトで、電気メーターの内部と手元のドライバーを照らしつつ、Bさんは慎重に復電作業を進めていく。
電気メーターが、たまに家屋の高い部位に設置されているような場合には、Bさんは脚立に立ち、配線を両手で操作する。右下肢の障害ゆえ、この脚立に立つ際にはBさんは細心の注意を払う。
「Bさんが脚立を使用されることについて、当社としても心配しています。でも、これまで事故は生じておりません。現時点では、当社としてはBさんに対する特段の支援は必要ないであろうと判断しています。」と原田氏は語る。
Bさん自身も、「足の痛みが仕事の支障になったことは、入社以来ありません。」と語る。
Bさんは、入社後、二泊三日の研修を受け、復電技術を習得した。今も年に一回の研修を受け、その知識・技能を磨いている。

(当社の「施工訓練用模擬装置」を用いて)
(3)Cさん(左下肢障害・身体障害者手帳「4級」判定)
Cさんは宇部市内の自宅から自家用車通勤を続けている。
Cさんは、小学生の時に左足を骨折し、その治療中に骨髄炎を併発した。その後、長期のギブス装着を余儀なくされたことが原因で、左足の膝が硬直した。今も左膝の関節機能に障害が残り(全廃)、膝を曲げることができない。
現在、時間給社員として、警備員との電話対応の業務に従事している。これは、夜間に勤務地に出向く警備員との電話を通した確認業務である。例えば、警備員からの出発連絡(「今から家を出ます」)、到着連絡(「今、勤務地に到着しました」)、勤務終了連絡(「今から帰ります」)等を電話で受け、その時刻をパソコンに入力するという業務である。警備員の数は多いため、Cさんは一晩に約200本もの電話連絡に対応している。また、突発的な事故等が生じた時にも、その連絡はCさんのもとに入る。
こうした場合、当社としての迅速かつ適切な対応が必要であるため、Cさんは即刻その内容を上司に伝え、判断を仰いでいる。Cさんの勤務時間は、平日が18時00分~翌朝9時00分、土・日・祝祭日が9時00分~翌朝9時00分である。3名体制であり、休日を定期的にとっている。
また、22時過ぎと早朝6時過ぎの2回、当社屋の内部(オフィス等)を見回る業務もCさんの役割である。
Cさんは左膝を曲げることができないため、当社への就労に際しては、トイレを改造する必要が生じた。そこで、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構から支給される助成金をもとに、当社はCさんが勤務するビル1階のトイレを和式トイレから洋式トイレに改造し、Cさんの就労生活は円滑になった。
「Cさんに対しては、1階のトイレを改造しました。その他の面については、現時点では特段の支援はCさんに必要ないであろうと判断しています。」と原田氏は語る。
Cさんは、これまで警備員として勤務した経験もあり、警備という業務を熟知している。
「私はこれまで数多くの警備員と接してきました。工事中の道路で車を誘導する警備員や、ビルの警備員です。その中には高齢の方や、障害のある方もいました。山口綜合警備保障株式会社は、こうした方々の“受け皿”(就労先)になっていると私は感じています。当社は地域に貢献している会社です。」とCさんは語る。


3. 自分の人生を自分でつくるということ
障害のある従業員は、当社からの支援のもとで、社内のそれぞれの部署で今日も勤務している。その働く後ろ姿からは、就労を通して社会参加していることの誇りとともに、これからも働き続けていこうとする覚悟も伝わってくる。自分の人生を自分でつくっていこうとする姿がそこにある。
厳しい雇用情勢が続く時代である。しかし、事業所が従業員を物心両面から支え、ここに働く本人の努力が伴うことで障害者の就労は実現し、その安定就労も可能となる。この事実を山口綜合警備保障株式会社は示している。
障害の有無にかかわらず、人は皆、その持てる力をこの社会で発揮し、社会参加したいと願っている。山口綜合警備保障株式会社は、就労を通した社会参加という理念の実現に向け、企業としての社会的責任も果たしていく経営を今日も続けている。
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