障害者の長期雇用を目指して
- 事業所名
- 介護老人保健施設 健祥会ハート
- 所在地
- 徳島県板野郡
- 事業内容
- 老人保健施設
- 従業員数
- 75名
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 1 清掃業務 内部障害 知的障害 1 洗濯・清掃業務など 精神障害 1 清掃業務 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
社会福祉法人健祥会介護老人保健施設 健祥会ハートは「新しい健康」をモットーに平成7年に開設。介護保険法等に従い、入所者が、その有する能力に応じ可能な限り自立した日常生活を営むことができるように支援すると共に、居宅における生活への復帰を念頭に、一人ひとりの状況・ニーズに対応した介護・リハビリテーションを提供し、要介護度の改善を目指し、施設サービス計画を基に、豊かで高品質の施設サービスを提供しています。また、おむつゼロ、骨折ゼロ、胃瘻ゼロ、拘束ゼロ、褥瘡ゼロの「5つのゼロ」への挑戦と認知症ケア、リハビリテーション、口腔ケア、ターミナルケアの「4つの自立支援」を掲げ、医師、介護職員、看護職員、管理栄養士、理学・作業療養士等がそれぞれの専門的立場から意見を出し合い、実現に向けた取り組みを行っています。
【サービス概要】
① 施設サービス
○老人保健施設(入所)
40歳以上で介護保険の申請をされ、要介護認定を受けられた人
- 入所定員100名(ショート含む)
- 医師、看護職員、介護職員、理学・作業療法士、管理栄養士、相談員が勤務し、夜間や休日でも医師の指示のもとに対応が行える。
- リハビリ専門スタッフによるリハビリで、身体機能向上、認知症改善に努める。
- 食事、入浴、排泄など、各人の状況に応じたケアを多職種協働で実施。
- 軽度な医学的管理が必要な方でも入所することができる。
- 生花、手芸、書道、音楽などのクラブ活動を通して自立支援を行う。
- 季節の様々な行事で、施設での生活を楽しむ。
- 食事摂取訓練により、美味しく楽しく食べて頂くための取り組みを実施する。
② 併設サービス
○短期入所療養介護(ショート入所)
40歳以上で介護保険の申請をされ、要支援・要介護の認定を受けられた人
○通所リハビリテーション ぞうハウス
40歳以上で介護保険の申請をされ、要支援・要介護の認定を受けられた人
(2)障害者雇用の経緯
障害者の就労意欲の高まりと共に、障害者雇用の促進を進める法人本部の意向もあり、ハローワークや障害者就業・生活支援センター等との連携を図りつつ、障害者雇用を開始した。
最初に雇用したのは、精神・知的障害者の男性で、これまで介護スタッフが行っていた施設内の清掃に従事してもらうこととなり、ジョブコーチ事業を活用し、スキルアップを図りながら、徐々に職場適応を目指した。しかし生活面でのリズムの確立が困難となり、半年後に自己都合により退職となった。
ただ、このケースにより、事業所としては「長期雇用は実現できなかったが、障害者の仕事への取り組み姿勢や、清掃業務専任としての職場配置に、プラスの効果が実感できたし、障害者を雇用するという不安も払拭され、継続的な障害者雇用への取り組みを図っていくきっかけとなった。」とのことであった。
次に雇用したのは、精神障害者の女性Aさんと、知的障害者の女性Bさんである。
Aさんは、サポートステーションや、障害者就業・生活支援センターと相談しながら、就職や日中での活動の場を探していた。当事業所の求人に興味を持ったAさんと面接し、健祥会の法人本部と雇用について検討のうえ、障害者就業・生活支援センターによる実習を設定することとなった。実習期間中の丁寧な仕事への取り組み姿勢や就職への熱意を感じ、雇用へと繋がった。雇用後にはジョブコーチ事業を利用し、支援体制の整備に努めた。
Bさんについては前職を自己都合にて退職後、支援機関の協力のもと就職活動を続けていた。面接では少し緊張した様子で、小さな声での受け答えであったが、支援機関によるバックアップもあり、2週間の職場実習後に雇用へと繋がった。
2. 取り組みの内容
(1)業務と職場配置
① | Aさんの作業内容は、主として施設内各フロアの廊下や階段の掃き掃除とモップ掛けの清掃作業を専任で実施している。 |
② | Bさんの作業内容は、入所者のパジャマや衣類・尿や便失禁により汚れた衣類・入浴時の衣類やタオル・マット類の洗濯業務を実施することと、入所者の個人の衣類等を各居室へ運ぶ業務も担当している。 また、居室や居室内洗面台の清掃、窓ふきなどの関連作業も担当している。 |
(2)実習制度の活用
両名とも雇用を検討するにあたり、まず、障害者就業・生活支援センターによる職場体験実習を活用した。実習期間中に、Aさん・Bさんに適した職務内容の検討と作業指示の出し方等について、障害者と十分なコミュニケーションをとることにより、就労するに当たっての効果的な実習を行うことができた。
(3)業務遂行の工夫
① | Aさんは、自分で優先順位をつけて仕事を進めていくことが苦手なため、ジョブコーチによる専門的な支援により業務を構造化し、仕事の内容と取り組む目安の時間を一覧表にして本人に提示した。作業の各工程が視覚的に一つ一つ示されていることで、本人の理解が進み、また精神的不安の軽減にも繋がった。 |

② | Bさんは、洗濯業務において個人の衣類の分類や、居室へ運ぶ業務を行うが、氏名の漢字が読めない場面があり、入所者の氏名一覧表には読み仮名をふり、本人が理解しやすいよう配慮した。 居室や洗面台の掃除では、言葉で指示を出すだけでなく、実際にスタッフが仕事に取り組む様子を本人に示し、視覚的支援を実施した。 入所者との接し方やコミュニケ-ションに戸惑う場面では、スタッフや支援機関がアドバイスをするとともに、職場の雰囲気にも慣れるよう、スタッフ等とのコミュニケーションに重点を置き配慮した。 |
(4)障害特性への対応
Aさんは業務への取り組みにおいて、上手くワークバランスをとることが出来ないため、掃き掃除やモップ掛けでは、手にマメができるほど力を入れて取り組むことがあり、ジョブコーチからモップ使用のコツなどをアドバイスしてもらった。また仕事のスケジュールでは、急な変更は難しいと感じる場面も多くあり、仕事のペースや目標を設定することにより、精神面での安定に繋がるよう支援した。ただ、精神的・身体的不調により欠勤することもあるため、勤務日数を週4日から週5日に変更し、体調の良い日には出勤できるようその機会を増やした。
Bさんは、コミュニケーションや対人関係が苦手なため、スムーズに言葉が出なかったり、相手の質問の意味を理解できなかったこともあり、それらのことから、自身の意思表示が苦手と感じているようであった。そこで、Bさんとのコミュニケーションの際には、簡単な言葉に置き換えたり、センテンスを短くし、抽象的質問でなく「はい」や「いいえ」で答えられるような質問に言い換えるなど工夫することとした。また、休憩時には、本人とコミュニケーションを積極的に図り、お互いの理解を深めると共に職場の雰囲気に慣れてもらうよう配慮した。
(5)支援機関との連携
ジョブコーチによる専門的な支援により、業務の構造化を図るとともに、現場の職員とジョブコーチや障害者就業・生活支援センターが、その都度、相談や情報交換しながら一緒に仕事の役割を決定し、改善が必要なところはそれに応じて改善していき、より働きやすい職場環境作りに努めた。
3. 取り組みの効果、今後の展開と課題
(1)取り組みの効果
Aさんにとっては、業務遂行において作業工程を一覧表にしたことにより、スケジュールや目標が明確となった。このことにより業務の理解や把握が容易となり、スキルアップが図れ、また、視覚的目安があることから、業務に対する精神的負担も軽減された。
Bさんにとっては、居室の掃除や洗濯等への職場配置により、本人は「掃除などは家でもしていて、慣れた仕事で良かった」と話している。
また、居室内の清掃時には入所者から言葉を掛けてもらう機会もあり、そのため本人が必要とされることを実感し、コミュニケーション能力も上がっているよう感じられ、Bさん自身も「入所者の人との会話も楽しい」と話している。
今までスタッフが入所者の支援の合間を縫って、掃除等の業務を行ってきたが、両名のスキルアップが図れたことにより、清掃業務の専任として配置することが可能となり、清掃業務を安心して任せられるようになったため、スタッフの作業の軽減が図れ、事業所としても作業効率がアップした。




(2)今後の展開と課題
障害者の雇用については、本人の能力を最大限活かせる配置と環境を整備することが大切なポイントになってくる。その上で本人のスキルアップを図りながら、長期での雇用を目標として取り組んでいきたいと思う。
Aさんについては、上手くワークバランスを取ることができず、疲労が残ったり、精神面での不調から体調を崩しやすく、欠勤するなど、まわりの支援を必要とする場面もある。今後も継続して支援機関との連携を図りながら長期での雇用を目指すこととしている。
最後に、この事例が広く周知され、障害者雇用が促進されることを望んでいる。
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