次世代を切り開く知性と経験 Try.Sustainable.Company(持続可能な会社を目指して)
- 事業所名
- 株式会社シグマ
- 所在地
- 長崎県北松浦郡
- 事業内容
- 通信機器組立
- 従業員数
- 105名
- うち障害者数
- 8名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 2 システム技術部・電気通信機器組立、配線 内部障害 4 システム技術部・電気通信機器組立、配線 知的障害 2 省エネ部・大型商船防熱加工、製造 精神障害 - 目次


1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
昭和55年4月に法人設立。
「次世代を切りひらく知性と経験、確かな技術と品質で顧客満足」を企業理念としている当社には、システム技術部・省エネ部・プラント部の三部門があり、システム技術部では電気通信機器組立配線・艦船エレクトロ二クス関連機器工事(光ファイバー含)・電気通信機器篋体設計(3DCAD設計)・電気通信電子回路設計・電気通信機試験一式・市町村防災無線工事・制御盤組立配線工事などを行っている。
また、省エネ部では船舶熱絶縁工事・米軍艦船ラギング工事(アスベスト除去)・ビル建築防音保温工事(アスベスト除去)・大型商船防熱艤装工事などを行い、プラント部では主に発電所内各機器メンテナンス工事・プレジャーボート保守工事・防災無線装置一式工事・FRP防水工事などを行っており、トータルエンジニアリングで海に陸に幅広い分野で顧客からの信頼を得ている。
そして、更なる顧客満足の為、平成20年には国際品質保証規格であるISO-9001の認証を取得。高い品質と技術力が当社の強みである。
(2)障害者雇用の経緯
当社が障害者雇用に取り組み始めた経緯には社長の実の弟が障害者であることが大きく関係する。
昔は障害者であるというだけで世間から非難され、家族でさえも存在を隠そうとしていた風潮が少なからずあったという。それを見て育ってきた社長は「社会一般がなぜそうするのか?」という非常に切ない気持ちを持ち続けていた。障害者である本人が社会に出たい・働きたいという気持ちがあるのに企業側が採用してくれないという現実に非常に悲しい思いをした。
「大人になったら施設に入るしかないのか?その人がやりがいと希望を持ち、社会に貢献できる仕事が必ずあるはずだ。」という社長の長年の強い思いから現在の障害者雇用に至っている。
現在雇用している障害者は8名。障害の内容としては肢体不自由2名、内部障害4名、知的障害2名である。障害者雇用に関しては特別な方針はあえて持たず、社会貢献・地域貢献など地元企業として当然のことと考え取り組んでいる。
雇用している障害者に関しては採用前の実習など無く、ハローワーク及び一部、長崎県・県北地域障害者就業生活支援センターからの紹介があると、通常行われている面接をして本人の働く意欲・態度などを見て判断し、採用している。
選考方法はあくまでも一般の従業員と同じであり、特別扱いせずに本人の人間性を見ている。採用後は指導しながら障害のない社員と同様に責任を持たせて仕事をしてもらっており、知的障害者に関しては役職者の管理のもと仕事に従事してもらっている。
2. 取り組みの内容・職場配置
取り組みの内容としては、本人の性格や体力面・精神面など十分に配慮し、助け合う職場作りを心掛けており、仕事に対する責任感・使命感・自主性を引き出すことにも力を入れている。
障害者の家族とも連絡を密に取り、例えば知的障害を持つ社員が残業をする場合、必ず前もって「何日は○時間残業します。」とあらかじめ連絡し、きちんと了承を得てから残業してもらっている。障害者を雇用するうえで家族との連携は不可欠である。会社と家族それぞれが本人についての情報をなるべく多く共有することで、事故の回避や、問題・悩みの早期発見をすることができ、安全衛生やメンタルヘルスといった観点からしても、そういったものを予防することができるからである。それが本人の安定・長期就労に繋がり、成長の糧となる。
通勤に関しては、車で通勤する肢体不自由の社員には、車から乗り降りしやすいよう事務所に近い雨よけの付いた専用駐車スペースを確保している。内部障害者に関しては、体に負担のかからない業務を任せ、通院などに配慮した勤務としている。また、タイムカードを障害者でも押しやすい位置に設置するなど事業所の中でも細かい配慮がなされている。
以前、肢体不自由の社員の為にトイレをバリアフリーにしようとした所、本人から「必要ありません。」という申し出があった。あくまでも「他の社員と同じ扱いをしてほしい。」という気持ちがあったのだろう。当社は本人の意思を尊重し、決して本人の意に沿わない援助は行わないようにしている。
トイレの段差をなくすことは、お金を出せば容易なことであるが、社員自らの協力体制によって障害における人間関係の段差をなくす大きな役割に繋がる社員が多数いることに感謝するとともに、これは会社にとって大きな財産であると考えている。
職場配置に関しては、当社の仕事は多岐にわたる為、様々な作業内容・工程・部署がある。その為、「これからの時代は多能工でなければならない。」という考えを職場全員が持ち、当社の従業員は他部署の仕事も積極的に手伝える人材ばかりである。
そのような職場で、まず本人にどのような障害があるのかを理解し、役職者と話し合い障害の特性に合わせた職場配置・作業内容を決定している。もちろん、職場配置を検討する際には作業への適正だけを見るのではなく、安全への配慮・適性も見極めなければならない。それを配慮したうえで、決められた工程をまかせることにより、作業が持続しやすいよう工夫している。また、職場環境が整理整頓されており、何がどこにあるのか分かりやすいため作業効率が良い。
当社は労働安全衛生にも力を入れており、第一種衛生管理者の指導のもと、常に変化する労働環境の中で安全と健康を先取りする感受性を鋭く保つとともに、職場の危険や問題を全員参加で解決する職場環境づくりを目指している。
また、心の健康問題と生活習慣に於ける食生活(予防医学・食事管理指導)を重点課題とし、職場の円滑なコミュニケーションの活性化など広い意味での心と身体の健康づくりに取り組み、健康・安全衛生管理対策を推進しており、従業員の心の問題(職場の悩み・人間関係・体調)などメンタルヘルス面でも相談に乗れる体制を整えている。
(障害者の就労状況)
肢体不自由の障害をもつ入社12年目のAさんは電気通信機器組立・市町村防災無線の保守業務・ドライブレコーダーの保守業務を担当している。作業自体は机上で行う工程が多いので、車いすでも特に問題はなく、工場の通路や事業所の廊下も車いすを巧みに操り移動している。そんなAさんが朝、出社し車を定位置に止め降りようとしていると、近くにいる社員が明るく挨拶しながら、ごく自然にそれを手伝う。当社では当たり前の光景だ。
もともと手先が器用で明るい性格なので生き生きと仕事に取り組んでおり、今では若手の中堅社員としてなくてはならない存在となっている。
知的障害を持つ入社4年目のBさんは大型船舶の防熱加工・製造の補助作業を担当している。入社当初は、作業内容・手順を覚えること自体が本人にとってはとても難しいことで、一週間同じ作業を繰り返してもらい、やっと作業をスムーズにこなせる様になっても週明けにはまた覚え始めの状態に戻ってしまうという状態であった。
それでも担当の責任者は諦めず、その障害がどういうものなのか、参考資料やビデオを見て特性などを必死に学び、障害者本人と障害のない社員お互いが無理なく仕事ができる方法を考え、様々なことを試してみた。
こういった役職者の取り組みが会社の体制づくりの大きな役割になっている。
現在では以下のことを基本的に行っている。
- 前もって次の仕事の段取りを伝え、明日の予定・今後の予定もきちんと話す。
- そして作業手順を間違えた場合は適度に注意する。
- 何度でも同じことを解りやすく説明する。
- 抽象的な指示は出さず、的確な理解しやすい言葉を選ぶ。
- 役職者が危険と判断した道具は使わせない。
など、これはほんの一部であるがそういったことを根気強く職場の社員が続け、現在では数種類の作業工程をこなせるようになった。本人はとても真面目な性格で自分なりに色々な仕事を覚えたいと努力しており、毎日一生懸命仕事に取り組んでいる。





3. 取り組みの効果、今後の展望と課題
(1)取り組みの効果
このように本人や現場の責任者、その部署の従業員と話し合い適材適所を見つけ、本人の働く意欲・喜びを引き出して一生懸命仕事に取り組んでもらうことが、会社全体に良い影響を与え、他の従業員たちのやる気にも繋がっている。障害者雇用の実践から生まれる経験は非常に大切なものである。
例えば、職場全体の効果として次のようなことが挙げられる。
- 思いやりの気持ちが深まった。
- 団結力が増した。
- 目標を持った働き方に変化した。
- 適度な緊張感を持ち仕事に取り組んでいる。
雇用の効果としては、作業内容などを考慮すれば遅刻や欠勤など皆無であるため、仕事量の計算ができ安定した労働力となっている。
会社側は、障害部分に関して特別な配慮をし、仕事に関しては本人が障害のない社員と変わらない心構えで取り組む。これが理想の形である。当社の場合、それが上手く確立されている。
実際、当社で働く障害者のCさんは人一倍責任感とやる気があり目標を持って日々の業務に励んでおり、仕事と私生活両方が非常に充実していた。そんなCさんだからこそ、2年前に障害の壁を乗り越え結婚し、現在では以前にも増して日々の仕事に真剣に取り組んでいる。それは会社としても、とても喜ばしいことである。
社長は常日頃から障害者に対する理解が特に強く、分け隔てなく公平に接する姿勢など朝礼を通して何度も従業員に説明し、浸透させている。その結果、世間でよく聞くパワハラなど当社の職場には全く無縁であり日常のコミュニケーションの中からお互いを理解し合い、自然と障害者が働きやすい環境が出来上がっていった。
それは、当社の従業員の「心の豊かさ」「障害に対する理解」「何事も障害者と障害のない者が区別なく取り組む姿勢」がそうさせたのであろう。
困っている人がいたら助け合う。それは特別に手助けするということではなく、当たり前のこととして当社の従業員には浸透している。
(2)今後の展望と課題
障害者雇用はもちろん社会貢献のためでもあるが、それよりもまず第一に障害者自身が社会の一人として労働する場を得るため、そして会社側は必要な人材を得るための雇用であり、それは障害がある・ないに関係なく双方にとって有益でなければならないと当社は考えている。
そして、障害者が安定した生活基盤を自ら作り、自立の道を進むことを社長は心から願っている。
当社では「子供達のために美しい未来を」というスローガンを揚げている。それは障害者や障害がない者、高齢者や女性、誰もが暮らしやすい世の中を作ることこそが次世代の子供達の為にするべき企業の役割である。
現在、障害者雇用をしている中で大きな課題となるものはないが、障害者でも企業に属する以上、様々な要因による変化に対応しなければならない。例えば指導者の定年退職や異動、職場の配置転換である。その変化に対応できるよう、指導していかなければならないと考えている。
この昨今の厳しい社会情勢の中、全従業員が安心して希望を持って働くことができる雇用の確保と労働環境・安全衛生の向上に努め、持続可能な会社:トライ・サステナブル・カンパニー(Try.Sustainable.Company)を目指して地域社会の発展に貢献したいと考えている。
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