障害者職業センターとの連携・協力によりリワークが成功した事例
- 事業所名
- 有限会社佐野正開発
- 所在地
- 沖縄県那覇市
- 事業内容
- 老人介護・障害者介護
- 従業員数
- 43名
- うち障害者数
- 8名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 3 送迎運転手、厨房担当、介護補助 肢体不自由 1 介護補助 内部障害 知的障害 3 掃除、洗濯、介護補助 精神障害 1 送迎運転手、掃除、洗濯、介護補助 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
呉服問屋の親会社の出資により平成元年に会社設立し、将来的な観点から脱呉服の先鋒として内装工事業を始め、その後も各種の事業を模索してきたが、平成12年より老人介護事業に異業種新規参入し、シルビアンの事業所名で訪問介護事業・通所介護事業を展開している。
平成15年から障害者(児)介護事業に進出し、現在では居宅介護・重度訪問介護・行動援護・同行援護・移動支援・生活介護・障害児通所支援・相談支援・就労移行支援など、また関連事業として住宅型有料老人ホーム、通称で介護タクシーと呼ばれる特定旅客自動車運送事業・自家用自動車有償運送事業など、小規模ながら多岐にわたる事業を展開し、営利法人の介護サービス業として社会福祉法人やNPO法人にも劣らない、内容あるオンリーワン企業を目指している。
(2)障害者雇用の経緯
障害者介護事業に進出した後に障害者を雇用することで障害の特性を身近で知る事ができるようにと、平成16年11月に3名(重度判定知的1名、重度以外知的1名、精神2級1名)の障害者をハローワーク主催の障害者合同面接会で採用したのがきっかけである。その後現在に至るまでに14名(重度身体障害者5名、重度判定知的障害者4名、重度以外知的障害者1名、精神障害者4名)を障害の種類もバランス良く雇用してきた。
しかし、退職してしまった障害者もおり、その退職理由としては余病併発が多く、また私的な債務の問題や障害者職員同士のトラブルなどもあった。企業の努力だけでは解決出来ない部分での退職理由がほとんどで、障害者職業生活相談員の力量だけでは解決が難しく、家族の支援や協力の大切さを痛感させられた。
多数の障害者を雇用することも大切であるが、企業規模に応じた障害者の雇用と、継続して長期にわたり就労してもらうことの大切さを痛感している。
また、シルビアン介護事業所として、利用者(お客様)として接する障害者ではなく、従業員(同僚)として接する障害者は、同じ障害であっても全く異なり、同僚(仲間)になるまでに当初は相当の年月を要した。
一番困難で苦しかったのは、障害のない職員からの苦情であった。すなわち利用者のお世話や支援は当然だが、障害者職員の世話までは目が届かないし、手が差し伸べられない等との訴えやストレスの増大であった。その時に利用した障害者職業センターのジョブコーチによる支援は、就労した障害者に対してだけではなく、企業の経営者や従業員などへの啓発や指導などがあり、障害のない職員の意識の改革と障害者の職員の頑張りもあって解決出来た。

2. 障害者職業センターとの連携について
(1)リワーク支援までの経緯
精神障害者2級(うつ病)のAYさん(37歳女性)は、平成20年度ハローワーク主催の障害者合同面接会にて採用となった。
沖縄障害者職業センターのジョブコーチの派遣を受け、①疲労・ストレスのマネジメント、②対人関係の構築・安定維持、③円滑な作業遂行などを3カ月にわたり指導してもらい、トライアル雇用終了後の平成21年1月1日から常用雇用となった。
障害者職業生活相談員の看護師を指導員として配置して、2級ヘルパーの資格を保有しているので、業務は有料老人ホームにおける食事介助、室内清掃、洗濯関係及び送迎などを担当となった。
入社から2年間は本人の希望により、午前7時から午後2時までの勤務時間(週30時間勤務)で週休2日の条件のもとで問題なく勤務していた。
元気で頑張っていたが、その後、平成23年に入ると表情が硬く、体力も気力も減退したように見えたので、障害者職業生活相談員が問い尋ねたところ、父親の病状悪化や知り合いに貸した金が返済されないのに追加で借金をせがまれたりと、うつ病の彼女には重いストレスとなっていた。
そこで主治医と相談したところ、3月から2カ月間の休養加療を医師より診断されるに至った。
(2)リワーク支援を受けて
AYさんは医師の診断に基づき休職することになったが、休職中のケアについて、どのようにして進めていこうかと悩んでいた時に、障害者職業センターからリワーク支援の実施の提案を受け支援を受けることになった。
障害者職業センターからは書面で「リワーク支援計画」の説明があったが、それは2か月間の休職期間中に職業センターへの通所や作業カリキュラム・講座に参加することで、①生活リズムや体力の維持、②ストレス場面での気分・体調の自己管理及び対人技能の習得等を目指す支援であった。
会社にとっては初めての休職者への対応であったが、リワーク支援での本人の状況を把握しながら会社としても復職の調整をすることができた。
リワーク支援終了前には、復職時の職務内容や勤務時間等について、本人・会社・障害者職業センターで話し合いを持った。本人の緊張感も高いことや今後も継続的な主治医との連携が不可欠なことを考え、復職時に再度ジョブコーチを利用することになった。
障害者職業センターの作成した「ジョブコーチ支援計画」に基づき、ジョブコーチと会社の担当者が連携して本人を支えてきた。
職場適応上の課題が生じるたびに、本人・会社・障害者職業センター・主治医等の意見交換を行い、本人の状況や変化に対応して支援内容を変更・修正していった。
支援期間中の担当カウンセラーをはじめ、ジョブコーチが親身になって病院への付き添いや主治医との話し合い、会社での打ち合わせ、会社に対する要望の提案等の活躍は枚挙にいとまがない内容であった。


3. 取り組みの効果、今後の展望と課題
(1)取り組みの効果
対象者、事業主、主治医、障害者職業センターのカウンセラー等が職場復帰のための連携をすることで、病気の一層の悪化という悪循環に陥ることなく、休職から職場復帰、そして病気の好転という好循環になったことは特筆すべき好事例であると思われる。
ジョブコーチ支援の集中支援期(最初の1カ月)には本人の緊張感が強く、目立った変化はほとんど感じられなかったが、移行支援期(2カ月目)には表情や態度に変化が表れ始めた。
会社としては本人の状況を把握し、気になることをジョブコーチに報告して意見交換を行いながら、本人の支援にあたった。そして、関係機関や周りの人間が意思統一を図り、対象者が誰に何を尋ねても同じ内容の応えが返ってくることで、徐々にではあるものの安心と自信を取り戻すきっかけができたのではないかと推察している。
このようにしてジョブコーチ支援期間が終了した後も、ジョブコーチが職場まで訪問して本人の状況を確認するなど、当初に想像していたフォローを遥かに超えた支援がなされており、障害者職業生活相談員はじめ障害のない職員が安心して障害者職業センターの支援方針の延長線で対象者に対応できるようになった。
(2)今後の展望と課題
障害はその人の特性であると言われるが、指導・訓練をしていかなければ、障害は特性ではなくハンデとなってしまうであろう。
障害者雇用を考える時、取りたてて障害者と見なければならない部分と、障害を注視しないで一般職員として見なければならない部分とを、雇用する側がうまく使い分ける努力をしなければ障害者雇用は成功し難いのではないだろうか。
障害者雇用促進法があるからとか、障害者個人が可哀そうだから仕方なく雇用するのだとか、上から目線で障害者を評価・判断・雇用するのではなく、どうしても必要な人間だから・どうしても必要な人間にしてみせるという意気込みが重要なのは障害のない者の場合と同様と考えている。そして早急に結果を追い求めるのではなく、障害者だけでなく他の従業員や経営者も全てが、障害者を雇用し継続雇用ができる事業所であることに誇りを持てるよう努力を重ねていきたいと思っている。
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