『介護から快護へ』
〜ともに最高の価値を目指します〜
- 事業所名
- 株式会社特殊衣料
- 所在地
- 北海道札幌市
- 事業内容
- クリーニング業
- 従業員数
- 140名(正社員97名、パート43名)
- うち障害者数
- 23名(うち重度知的障害者7名)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 縫製作業 肢体不自由 1 クリーニング作業 内部障害 知的障害 21 クリーニング作業 精神障害 - 目次

左から、事務所およびクリーニング工場、クリーニング工場、縫製工場ほか
(注)平成25年10月に全ての工場を改築する予定
1. 事業所の概要、障がい者雇用の経緯
(1)事業所の概要
株式会社特殊衣料は、1979(昭和54)年に創業し、1981(昭和56)年に法人を設立した。事業の内容は、創業時は病院・福祉施設向けのリネンサプライ事業(クリーニング業)を中心としてスタートしたが、その後、病院・施設の清掃事業、福祉用具の仕入・製造・販売など徐々に事業領域を拡大して、経営規模を広げている。
“介護から快護へ”という経営理念の下で、お客様としっかり向き合い、常に自らを高め、技術を磨いて、お客様から愛され信頼される企業として、従業員一同がともに協力して精進しているところである。
2013(平成25)年1月現在の従業員総数は140名であるが、内訳は正社員97名、パートタイマー43名の構成になっている。また、正社員の中に、知的障がい者21名、聴覚障がい者1名、身体障がい者1名の合計23名を正社員パートナーとして雇用しており、正社員全体に占める障がい者の雇用率は四分の一に達している。
一方、2005(平成17)年に高齢になってリタイアすることとなる障がい者の受け皿として、当社の隣接地に「社会福祉法人ともに福祉会」(知的障害者通所授産施設)を設立した。この「ともに福祉会」が目指すところは、障がい者が自立するための就労訓練の場(入口)とリタイアした障がい者の受け皿(出口)を作ることによって、保護者が安心して我が子を託せる環境を整えることにあった。
その後2007(平成19)年「ともに福祉会」では、障がい者が働く意欲とマナーを身につけ、社会の一員としての生活を送ることができるように、知的障害者通所授産施設を障害者自立支援法の「就労移行支援事業」および「就労継続支援事業B型」の2コースに移行して、当社と一体となった取組みを行っており、現在利用者が41名に達している。

(2)障がい者雇用の経緯
① 障がい者雇用に至った動機・きっかけについて
会社創業当初は、障がい者雇用に全く関心がなく、仕事の能効率への影響や事件・事故等の懸念、他の従業員との不調和などいろいろな懸念から、むしろ否定的であったが、それが全く誤解であったことを知ることになる。
それは、1990(平成2)年に特別支援学校の進路指導教員から熱心な職場実習の受け入れ依頼があり、求めに応じて知的障がい者がクリーニング作業を学んでいる授業を見学したことがきっかけである。その授業で、知的障がい者が一生懸命に働いている様子や仕事の仕上がり具合を見て、障害のない人と変わらない仕事ぶりを実感したのが障がい者を雇用する最大のきっかけになっている。
その後、職場実習生を1名受入れたところ、仕事ぶりはもとより、人柄の良さから職場の仲間と協働する姿を見て、他の従業員から「一生懸命に頑張っているので受け入れましょう」との強い願望もあり、採用に至ったのが最初の経緯である。
② 障がい者の求人方法(募集・採用)について
1990(平成2)年の採用をきっかけにして、以降、徐々に採用人員を増やしてきている。募集・採用については、特別支援学校と連携して行っているが、トライアル雇用制度(3ヶ月間)を利用して、本人の習熟度合いや仕事への対応力を見極めたうえで採用に結び付けている。その結果、2006(平成18)年には25名に達したが、一部に退職者が生じたこともあって、増減を繰り返してきたが、2013(平成25)年1月時点では23名の雇用になっている。
2. 障がい者雇用に当たっての取組み内容
(1)障がい者雇用の環境づくりについて
障がい者の入社時教育や働く環境の整備に最大限の努力を行ってきている。障がい者は、それぞれ異なる課題を有しており、きめ細かな支援が必要なことから、一人一人の能力を的確に把握するため、評価シートによる評価の手法とツールを整備してそれぞれの課題を客観的に記録している。その評価に基づいて、障がい者個々の適性を見極めた上で配置する職場を決めたり、スキルアップの目標を設定したりしている。
このような環境づくりに欠かせないのは、2号ジョブコーチ(第2号職場適応援助者)の資格を取得した社員である。
2号ジョブコーチは、障がい者の就労支援を担う上で必要な知識とノウハウを習得した者で、当社においては、いち早く希望する社員を資格取得のために必要な研修に参加させ、現在2名の資格取得者を配置している。
このほか、障がい者の雇用環境を整えるために、障害のない従業員の中に職業生活相談員資格認定講習受講修了者13名を配して、一緒に働く従業員によるナチュラルサポート体制を採るとともに、この13名のうち5名を就労支援担当者に任命し配置している。
また、障がい者本人向け及び支援者向けマニュアルをそれぞれ整備している。これによって“ともにはたらく”ためのルールやマナーを本人及び周りの従業員にも理解してもらうように努めている。
(2)障がい者が従事している業務内容と職場の改善について
障がい者が従事する業務は、クリーニング作業(22名)と縫製作業(1名)である。働き易い職場環境作りについては、次のような活動を実施したが、その結果、配置している職場において雰囲気が活性化するとともに、それまで気付かなかった事柄が改善されるなど大きな効果を生み出している。
先ず、職場環境作りのため5S活動(整理、整頓、清潔、清掃、躾)を展開した。これによって、職場で大きな声で挨拶する習慣が生まれるとともに、仕事の指示や注意などを復唱したり、互いに声をかけあうようになった。また、社員が自ら不要な物を片付ける配慮が定着した。
その他、①工場内の通路ラインの設置、②機械操作の手順がわかる作業指示タグの貼りつけ、③荷物の種類や顧客名を区分表示する札の作成、④清掃用具の色別仕分けなど、それぞれの仕事に数字や色を採り入れて、誰でも分かりやすい職場環境の整備に努めている。また、障がい者の出勤・退勤が円滑にできるように、通勤用送迎バスの運行なども実施している。
このような障がい者雇用の取組みにあたっては、業務遂行援助者の配置助成金、通勤バス運転従事者委嘱助成金、職業コンサルタントの配置・委嘱助成金のほか障がい者雇用に係る報奨金を受給している。
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(3)保護者会(特殊衣料やよい会)について
会社が雇用する障がい者をバックアップする組織として、1996(平成8)年に保護者と会社の指導担当職員で構成する「やよい会」を立ち上げた。この会は、指導・支援を必要とする障がい者の職場定着を目的として会社と家庭が一体となって支援する組織である。例年8月に定期総会を開催するほか、必要に応じて会員が集まって、①グループホームの見学、②会社行事への参加、③他の機関の研修会参加等で障がい者を支援している。
(4)障がい者雇用を継続するための課題について
① 仕事をすることの相互理解
障がい者と障がいのない従業員とのコミュニケーションを円滑にするために最も大切なことは相互の“声かけ”である。例えば、障がいのない従業員が『ちょっとお願い!』と声をかけて、障がい者と一緒に作業を終わると、障がい者から『助かった?』と聞いてくる。『助かったよ、ありがとう』と応えると、本人は自信満々の笑顔で嬉しそうにしてくる。このような声かけは、自分自身が役に立っているのだという存在価値を認識して、社会的な繋がりを理解できるスタートになる。
② 生活支援機関との連携
一例として、時間や数の概念が理解できずに毎日遅刻が続いていた障がい者について、生活支援機関に相談したところ、目覚まし時計の音で出発時間を知らせる工夫をすることを提案されて、実施したところ遅刻が改善された事例があった。このように会社単独での支援では限界があるものの、生活支援を担当する支援者と連携することによって就業継続が可能になり、また作業スキルが向上して会社にとって貴重な戦力になっている。
③ 産業医との関わりの重要性
障がい者に対する安全衛生管理についても会社単独での取組みに限界があることから、産業医を委嘱して専門家の立場からいろいろな指導を受けている。月1回の産業医の要所見者に対する問診や安全衛生委員会による職場巡視、年1回の定期健康診断、感染症対策など障がい者雇用に関連する職場環境の改善に関する助言を受けて積極的に改善に取り組んでいる。
④ ナチュラルサポート(NS)体制の構築
障がい者雇用にあたっては、職場内において、従業員が自発的に、かつ自然にサポートを提供する体制づくりが不可欠なファクターであることから、いろいろな取組みを重ねている。とくに、同僚となる他の従業員への橋渡し(障がい特性の伝達等双方への助言)、職場環境の改善(システム構築を含む環境整備)、社会人としての躾(職業人としての意識・自覚の植えつけ)等々、障がい者が充実し安心して仕事に取り組めるサポート体制を構築している。
3. 障がい者雇用の効果、今後の展望と課題
(1)障がい者雇用の効果
① 障がいのない従業員との連携・調和について
1990(平成2)年に障がい者1名を採用してから23年が経過した。この間において一部の障がい者が退職した事例(1年間に1名程度)もあるが、勤続23年を最長にして、大半が勤続10年以上(17名)に達して、職場の中核的な戦力となっている。
職場のなかでは、障がい者と障がいのない従業員がワークシェアリングすることにより、お互い協働して日々の仕事に精励している。
また、仕事を離れた場では、全員が参加する新年会やボーリング大会などを開催して親睦を図っているが、和気あいあいとした雰囲気の下で開催されている。障がい者からは“ともに働く仲間がいるから頑張れる”という率直な声が聞かれる。
一方で、障がいのない従業員からは、“障がい者が仕事に取組む集中力、忍耐力が強く驚いている、信頼を持って一緒に仕事ができる”という率直な反応があり、円滑な業務遂行が行われている。
② 障がい者の処遇について
障がいの有無に関わらず、各自の仕事能力に応じた給与体系を採用している。また、勤務の形態により、月額固定給者と時間給者に区分しているが、それぞれの勤務体制と能力に見合った給与を支給している。
なお、給与査定においては、評価システム(勤務評価制度)を採用して、仕事の役割と処遇のバランスをとって公平な取扱いに努めているほか、賞与についてもそれぞれの勤務評定を行って支給している。
また、障がい者の雇用に際して支給される「報奨金」「特定求職者雇用開発助成金」および「トライアル雇用奨励金」などを受給することにより障がい者給与の一部に充当して、より充実した処遇に努めている。
(2)今後の展望と課題
株式会社特殊衣料は、障がい者とともに周りの従業員と一体となって成長してきている。とくに、障がい者は、会社の中心的な戦力として大きな役割を果たしているといっても過言ではない。これまで、障がい者雇用をキーワードに、企業、福祉施設、教育機関、さらには行政が連携して雇用の促進に努めてきたが、これからもその繋がりをより強固にすることによって、真の自立支援が実現できると考えている。
また、障がい者雇用に当たっては、1996(平成8)年に発足した保護者会(やよい会)を中核として、産業医・顧問弁護士の外部スタッフによるバックアップ体制によって支えられている。今後ますます少子高齢化が進行し労働力人口が減少すると予測される環境において、障がいのある人の労働力を活かすことが労働力不足の解消に繋がることになると思われる。
障がい者を雇用する場合は、障がい者一人ひとりに寄り添い、その能力を最大限活かせる部署や仕事を見つけて、適切なマッチングを行えば企業にとっても障がい者にとっても最良の結果に結び付くと確信するところである。
≪障がい者雇用に関する主な受賞歴≫
平成10年 障害者雇用促進のための職場改善コンテスト 奨励賞
平成12年 札幌市長より障害者雇用に対して表彰
平成13年 社団法人北海道障害者雇用促進協会より障害者雇用に対して表彰
平成16年 北海道知事より障害者雇用に対して表彰
平成21年 厚生労働省より障害者雇用優良企業認証マーク付与
平成21年 厚生労働大臣より障害者雇用に対して表彰
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