「長所に光を当てよう」「できる自分を探そう」をモットーに障害者雇用の促進
- 事業所名
- ドラゴンキューブ株式会社
- 所在地
- 青森県青森市
- 事業内容
- 中古総合アミューズメント、中古品販売
- 従業員数
- 237名
- うち障害者数
- 13名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 3 商品加工、陳列、POP作成、清掃 内部障害 知的障害 5 同上 精神障害 5 同上 - 目次


1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯と雇用状況
(1)事業所の概要
① 沿革
平成14(2002)年 | 3月 | 青森市矢田前に青森東店オープン |
6月 | 青森市浜館に浜館店オープン | |
平成15(2003)年 | 10月 | ドラゴンキューブ株式会社設立 |
平成16(2004)年 | 7月 | 弘前市大清水に弘前店オープン |
青森市大野に古着倉庫オープン | ||
平成17(2005)年 | 12月 | 盛岡市厨川に盛岡店オープン |
平成20(2008)年 | 10月 | 八戸市城下に城下店オープン |
平成21(2009)年 | 8月 | 北斗市(北海道)に七重浜店オープン |
10月 | 盛岡店 厨川から本宮へ増床移転 | |
平成23(2011)年 | 4月 | リユース倉庫(古着倉庫)を大野の近隣地に移転、名称変更 |
② 組織、事業内容
青森市に本社を構え、青森市2カ所、八戸市、弘前市、盛岡市、北斗市(北海道)にそれぞれ1ケ所の計6店舗の「萬屋(よろずや)」と青森市に「リユース倉庫」1店舗を展開。「お客様、働く仲間に感動を創る」を企業理念とし、ゲーム、おもちゃ、マンガ、CD、DVD、釣具、楽器、古着等の販売を通じて「遊び」を提案するとともに、平成23(2011)年3月青森市浜館にオープンしたグループ企業のドラゴンカフェでは朝のコーヒー一杯から、ランチ、ディナー、バータイムまでくつろぎ空間を提供する等、グループ全体でいろいろな角度から「楽しさ」を追求した事業を進めている。
(2)障害者雇用の経緯と雇用状況
事業展開が進み、社員総数が200名を超えてきたことをきっかけに、会社の目的である「社会貢献をする」というポリシーを具現化させるため、平成22(2010)年度に入ってから、障害者雇用に踏み切った。
まず、初年度は小規模の浜館店・青森東店でそれぞれ1名の雇用から始めた。小規模の方が働いている人数も少なく、障害者への対応もきめ細かくできて、関わりも複雑でなくて良いと思った。その後、年度後半になり、八戸の城下店で青森障害者職業センターとの連携により、高次脳機能障害、発達障害のそれぞれ1名に対して職務試行法による職場実習を受け入れたところ、適応状況が良好であり、店舗スタッフからも賛同の声が上がり、雇用することとした。
平成23(2011)年度には、大型店舗の盛岡店で、店長が既雇用の3店舗から得られた教訓、体験等を基に知的障害者3名を同時に採用し、平成24(2012)年度には精神障害者2名を採用している。
また、現在(平成25(2013)年1月)リユース倉庫で精神障害者1名、青森東店でさらに発達障害者1名、弘前店で知的障害者の1名を雇用と同時にジョブコーチ支援を受けながら就労している。
また、平成24(2012)年度から、青森県の所轄である青森高等技術専門校からの依頼を受け、アミューズメント販売科の実践能力習得訓練コースを受託し、身体障害者2名の実習を青森市内の2店舗において受け入れる等、障害者の職業能力開発事業にも積極的に協力している。
このような取り組みとその成果が評価され、平成24年9月には、平成24年度障害者雇用優良事業所として独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞を受賞している。
2. 障害者の受入れと定着への取り組み
(1)受入れと定着に向けて
障害者雇用店舗の決定にあたっては、障害の特性、障害者個々の性格を理解し、それに対応できる人材がいるかどうか、育ってきている店舗かどうかを判断の基準にしている。また、各店舗では店長始めスタッフ全員が、障害者と一緒に仕事することについてミーティングをして、意思疎通を諮ったうえで受け入れを決めている。
受入れが決まり、障害者が配属された店舗においては、障害者を人材として育成するために、どうサポートしたら良いかを考え、次のことを実践している。
① アルバイトを含めた全スタッフに対して個々の障害の特性、留意する点を伝え、全体で障害者を受け入れる。
② 業務内容は本人の特性を考慮して決め、ベテランスタッフとペアを組む等、サポート体制を構築する。
③ 本人との関係性を作り、維持するために、周囲で積極的にコミュニケーションをとる。(職場定着が図られれば、「コミュニケーションを取りにわざわざ行かなくてもいいのかな」と思うこともあるようである。)
さらに、店長同士がお互いに、経過報告や体験をシェアしながらミーティングをして研鑽に努めている。また、本人と共に、半年を区切りに、次に何ができるのかを考えることとし、目標を確認しながら進めている。面談では本人に対し、できていることは褒め、やると言っていて、やっていないことは注意している。
そのスタンスは各店舗で同じように持っており、「何のためにやるのか」「目標は何なのか」「自分のやっていることに価値がある」と解れば、それは“作業”ではなく“仕事”になる(作業と仕事は違う)。“自分がやるべき仕事”になると、居場所ができたような感じになり、働き続けることができるのではないかと考えている。
このような考え方で環境作りを進めており、現在では展開している7店舗のうち6店舗まで雇用店舗が広がってきている。
(2)仕事の内容
① ゲームソフトのクリーニングと袋詰め、値段付け、品出し。
② カード、本の袋詰め、値段付け。③ ポップ(広告ツール)の作成。
④ 袋くじ、くじの景品作り。
![]() POP作り | ![]() POPを付けた商品 |
![]() 本の袋詰め | ![]() ゲームソフトの袋詰め |
![]() カードの品出しの準備 | ![]() 袋くじの準備 |


3. 各店舗における取り組みの成果、まとめ
(1)各店舗における取り組みの成果
① 青森東店(Aさん、身体6級〔脳病変移動機能障害〕療育B〔知的障害〕、短時間)
Aさんはいくつか転職をしていたが、やる気が無いわけではなく、仕事をしたいし、仕事をやらなきゃと思いながら、なかなかこれまでの就職先では継続できないでいた。プライベートではキーボードも演奏するし、カラオケも上手く、障害のある人ではなく、少しだけ苦手なことがある普通の人だとスタッフは思っており、他の人と扱いは何ら変わりない。
Aさんを変に甘やかすのではなく、責任感を持って仕事ができるようになって欲しい、そのためには何をしたらいいのか、前向きに今後どうしていきたいのかを一緒に考えている。
また、朝礼に必ず参加する。経営理念を一緒に唱和するところで、以前「ありがとう」の言葉は照れくさくて言い辛かったのが、今はすんなり言えるようになっている。
② 浜館店(Sさん、身体5級〔両上下肢〕、短時間)
Sさんは、入社した当初、言われたことをこなすのも不慣れで、ままならないこともあったが、今では、自発的に掃除をし、仕事を効率よくするために自分で道具を準備している。また、小さなノートを持っていて、この一年の仕事の指示・やり方をきめ細かく書いてまとめており、忘れないように、もう一回聞かなくても良いように努力している。
仕事は加工や掃除、ポップ作り等をしており、パソコンを使っての仕事をしたい等と意欲的に取り組んでいる。
ここのスタッフは誰に対しても言葉掛けが良く、Sさんには、昼の休憩中も声をかける等、家庭的で居心地の良い雰囲気を作っている。このことが好影響を及ぼし、Sさんは自信を持って話すことができるようになり、言葉づかいも敬語をきちんと使って丁寧に話せるようになった。また、Sさんの勤勉さと一生懸命さは明るい影響を他のスタッフにも与えており、本人自身も楽しく仕事をしている。
③ 城下店(Iさん、Tさん(2名とも精神2級〔短時間〕、発達障害、高次脳機能障害)
2名とも、質問に来る頻度が高いなど様々な面で手を取られることはあるが、業務の手順やスケジュールを明確にすることで解決できている。彼らは勤勉であり、決して手を抜かず、サボるということはしない。集中力持続の課題はあるが、成し遂げる、完遂する、持続力、規律(時間・ルール)を守る等々、彼らから学ぶことは多い。特に、今の若手スタッフやアルバイトに、忘れかけている何か、疎かにしがちな何かを気付かせる存在となっている。
また、Tさんの指導担当者は、「初めは10回言えば記憶に残ると思ったけれど、一つ一つが消去されてしまう。だったら30回でも40回でも言おうじゃないか、と思うと楽になった。忘れてしまうのは仕方がない、分かれば間違いなく放り出さずにちゃんとやるので何回でも教える。」と話している。
④ 盛岡店(Hさん、療育B〔知的障害〕)、Nさん(精神3級、短時間)
盛岡店では、大きな店舗で雇用する仕組み作りを目指した。それは、会社として障害者雇用を継続していくために、障害のある人を人材として、どうサポートして育成したら良いかを考えることであった。
盛岡店は70名ほどのスタッフを抱えているため、その中に埋没してしまうかもしれないと考え、仲間を作って入れたいということから平成23(2011)年に3名の知的障害者を採用し、平成24(2012)年には、2名の精神障害者を採用した。
3名の知的障害者のうちHさんはトライアル雇用期間中から本人の希望もあり、ジョブコーチ支援を受けた。仕事の内容は商品の加工が中心で、当初は商品の加工作業も不慣れのため、作業途中何度も確認が必要であったが、ジョブコーチの支援と、周りのアルバイトとの協力により格段にスキルアップをしている。
また、挨拶も当初は小さい声だったが、現在は明るく元気なものとなり、周りのスタッフにも良い影響を与えており、部門内でも欠かせない存在となっている。
2名の精神障害者のうちNさんは、当初は人の多い場所での作業が難しいとのことで、人員が少ない別室でのパソコン作業が中心となっていた。
また、ごくまれに発作で倒れる時があり、最初こそ皆驚いたが、次からは周りのスタッフが、発作が起きたときにどうすればよいかを分かっていたので、慌てる事無く対処できた。そこから徐々に周りのスタッフとのコミュニケーションを広げることもできた。現在は人数の多い加工室へと移り、以前からのパソコン業務を応用して担当部門で能力を発揮している。
(2)まとめ
障害者雇用についての責任者である平井専務は次のようにコメントしてくれた。
障害者雇用は経営理念である「社会貢献」を具現化するための一つの事柄である。これまでも、「地域の人が自分の会社で活躍をする」という考え方で「社会貢献」を捉えていたので、その「地域の人」中に、「障害のある人」を含めて考えることにした。
そのために「まず、自分がどんな人とも共有して生きていく」という考えを持った。社長は、「自分たちが普通だという考えを捨てよ。どう生きるかだ」と話している。まずはリーダーがそういう考えを捨てる、壁を作ってはいけない。「だれもがその持ち得る能力を発揮する働き方」を実現するために、障害のある人でも無い人でも、どんな人でも、通り一遍のやり方ではなく、その人なりの仕事のやり方を模索していこうと思っている。
店長をはじめとするスタッフには、「障害のある人のための特別な部屋を作らず、同じ環境で共に過ごし、本人ができることを最大限にできる環境を作ることを最大のテーマとする」ことを伝え、当社の企業理念である「人を育てる」という視点で全てを捉え、「長所に光を当てよう」をモットーに「できない自分を見つけるよりも、できる自分を探そう。一人一人の長所に光を当てて伸ばしていこう」をスローガンにして職場環境を作り上げるよう話している。
また、障害のある人には、「どんな人でもたった一つでいいからできる人になろう。できないことを頑張るのではなく、できることをナンバーワンにしていこう。」と伝えてきた。自分のできることを実践し、努力してきたことにより、他のスタッフの模範となる人もいる。普通のアルバイトでさえも一年仕事をすることは難しい中、みんな辞めずに勤務を続けることができている。
このように、各店舗の店長をはじめとし、障害のある人を含めた全スタッフが、経営者の思いと考えを受入れ、努力を重ねてきたことにより、障害を受け入れる店舗を増やすことができた。「一人一人が活躍できる場を考えるのが店長の仕事、みんなが活躍できる社風を作るのが経営者の仕事」だと思っている。
今回の取材を通して、「長所に光を当てよう」「できる自分を探そう」のモットーが、全社員に浸透し、会社の事業目的の実現のために、自らの夢の実現のために、熱い想いを原動力として仕事に取り組んでいる社員の姿を見る事ができた。
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