誇りと生きがいのある施設を目指して
- 事業所名
- 社会福祉法人 敬仁会
- 所在地
- 秋田県潟上市
- 事業内容
- 社会福祉事業
- 従業員数
- 190名
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 3 清掃・洗濯・その他 精神障害 - 目次


1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
県都秋田市のベットタウン、潟上市(旧天王町)の天王グリーンランド(くらかけ沼公園)に近接。特別養護老人ホームを主体に、デイサービスセンター、ケアプランセンター、老人介護支援センター、老人保健施設を設置。県内でも有数の福祉エリアとなっている。
また、当法人では大潟村からの特別養護老人ホーム、ケアハウス、デイサービスなどを指定管理受託している。
“すべての利用者の方々それぞれの尊厳・個性を尊重し、充実した生活を送られることを目指す施設運営”を理念とする。
現在、障害者を雇用している施設は下記の3施設である。
【介護老人保健施設くらかけの里】
協力医療機関との緊密な連携により、医療ケアによる健康管理、リハビリテーションによる機能訓練、栄養管理された食事を提供して、入所される方の健康や生活機能の改善・維持に努めている。また、通所サービスを実施。利用される方が居宅での生活を1日でも長く継続できるよう心身機能の維持と回復のために支援をしている。
【特別養護老人ホーム・短期ケアセンター 松恵苑】
「明るく生きがいのもてる施設に」を基本方針に、生活の場としての施設の向上を図り、利用者の自立意欲を高め、生きがいのある日常生活の実現に努めている。特別養護老人ホームでは、個々人のニーズや状態に即した介護サービスの目標及び計画を策定し、身体的・精神的機能の維持・増進を支援している。短期ケアセンターでは、ご家族の事情によりご自宅での介護が困難な方に短期間入所いただき、日常生活のケアを行っている。
【大潟村複合老人福祉施設】
大潟村は潟上市から30㎞ほど北にある。当施設は、村の中央部、ポルター潟の湯(温泉)、サンルーラル大潟(宿泊施設)に隣接し、温泉を利用したお風呂や、自然豊かな緑の中、菜の花からはじまる四季折々の花を楽しむことができる。お年寄りにやさしい全館床暖房を取り入れたオール電化の特別養護老人ホーム「ひだまり苑」。お部屋に洗面・トイレ・簡易調理設備が完備されたケアハウス「ゆうゆう」。そして、温泉や食事、レクリエーションや機能訓練などのサービスを提供する「通所介護/介護予防通所介護デイサービス」では送迎も行う。
(2)障害者雇用の経緯
現在法人全体で3名の障害者を雇用している。いずれも重度知的障害者である。
①Aさん
最初の障害者雇用は“くらかけの里”のAさんであった。平成3(1991)年5月に開設し、平成7(1995)年に増床した翌年、平成8(1996)年10月、地元大学教育学部付属の養護学校(現 特別支援学校)から、当施設のある地域から高等部に通う学生の職場体験実習の依頼があり、地域の職場として何らかの役に立つのであればと、受け入れることにした。
どのような対応をしていけば良いのかわからないままの受け入れであったが、担当教官からは特別な扱いではなく普段の対応でということだったので、担当者を付けて普段の業務の一部を体験してもらった。同市内とはいっても、通勤は片道6kmもあり交通の便もよくなかった。それでも交通機関を利用し、1日も遅刻せず、元気に実習に向き合う姿勢には職員も感心させられた。周りの職員の気遣いもあり、実習は無事終了した。
その後、担当教官から「Aさんが卒業後も働かせてもらいたいと願っている。地元での就労という本人の希望を是非叶えてやりたい。」という要望を聞いた。しかし、雇用ということは全く念頭にない体験実習であり、障害者雇用となると、経験もなく、担当可能な業務も限られる為、かなりの躊躇があった。それでも、再三にわたり担当教官から「本人がどうしても働きたいと言っている。受け入れを検討してほしい。」とのお話があり、その熱意におされ、各職種リーダーとの話し合いが行われ、更には職員会議においても障害者雇用についての議題が取り上げられた。
障害者に対して、特別扱いをせず、職員全員が同じ目線・意識をもっていなければ、雇用されても本人も報われないし、職場全体が混乱してしまうことが目に見えていた。様々な意見が出され、検討を重ねた。そうして全体の意見の方向性をまとめた結果、色々問題はあるかもしれないが、Aさんと一緒に働いていこうという結論に至った。
採用するに当たり、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の業務遂行援助者の配置助成金を利用することになった。援助者には、職場の業務に十分な知識と技能をもち、障害者の援助に熱意を有する者を選んだ。援助者が中心になって介護の補助業務を指導し、Aさんが少しずつステップアップしていけるよう、全員が見守っていくことを確認し、当法人の障害者雇用がスタートした。
②Bさん
その後平成13(2001)年に、“特別養護老人ホーム松恵苑”で2人目のBさんの採用に踏み切った。最初のAさんの仕事ぶりが順調だった事もあり、職場全体の障害者雇用への抵抗感が少なくなっていた。この時も業務遂行援助者の配置助成金を申請した。援助者には、Bさんが仕事を覚え規律を守ることを指導するばかりでなく、職場に溶け込み、働く意欲や自信を持たせることを心がけて対応してもらった。
③Cさん
そして平成19(2007)年には“大潟村複合老人福祉施設”で、3人目のCさんを雇用するに至った。Cさんは大潟村役場と大潟村社会福祉協議会から雇用を依頼されてお引き受けしたかたちであった。Cさんは障害者雇用初の男性である。一か月ほど試用期間を設け、続けていけそうなことを確認し、正式に採用した。
2. 障害者の従事業務
(1)Aさん
現在の“くらかけの里”のAさんの従事業務は下記の通りである。
勤務時間・・・ | 8:00〜15:00 (木・日・祝日は休み) | ||
作業内容・・・ | ① | 8:00〜 9:00 | 朝食後の食堂・ホール清掃 |
② | 9:00〜11:30 | トイレ(2か所)・洗濯室清掃 | |
11:30〜12:30 | 休憩 | ||
③ | 12:30〜13:30 | 昼食後の食堂・ホール清掃 | |
④ | 13:30〜15:00 | トイレ(2か所)・洗濯室清掃 |
①③については、他の職員と一緒に、食事後の下膳及び利用者様が使用した食事用エプロンやおしぼりの回収、また、テーブル拭きや床の清掃を行っている。
②④については、4か所の利用者様用トイレと洗濯室の清掃を、場所毎に時間を決めて1人で行っている。
(2)Bさん
松恵苑のBさんには、初めは洗濯業務を担当してもらった。Bさんは作業手順を正しく覚えることで、徐々に効率よく仕事がこなせるようになり、現在では洗濯業務ばかりでなく清掃も任せられるようになった。
(3)Cさん
Cさんは沢山の仕事を担当している。午前中は主に清掃業務で、モップがけ、洗面台の掃除、冷蔵庫の上やキャビネットの上などの埃がたまりやすい場所の拭き掃除をしてもらっている。午後は曜日によって仕事が違う。資源ごみを出す曜日は、ゴミのダンボールの収集。リネンのクリーニング業者が来る曜日はリネン・シーツの回収と業者への受け渡し。それ以外の日は車いすの清掃や、車いすのタイヤの空気入れもこなす。

食事用エプロンのたたみ作業

3. 問題点と解決への取組内容と効果、まとめ
(1)問題点と解決への取組内容と効果
① Aさん
Aさんが働き始めて数年経った頃、私語が多く集中力が欠けたり、遅刻が目立ったことがあった。そこで業務に取り組む姿勢、業務進行状況等を「チェック表」を用いて確認し、その記録をもとに本人と面接して指導するという対応を取った。半年間ほどその取組を続けたところ、勤務態度が改善され、現在は「チェック表」を使わなくても、欠勤や遅刻することなく就労できている。近頃は、Aさんとの会話を楽しみししている利用者様もおり、施設にとって大切な働き手となっている。
② Bさん
Bさんは依頼した仕事に懸命に取り組む真面目な性格である。業務遂行援助者は挨拶や礼儀に関しても指導し、本来の能力を引き出せるよう通り組んできた。採用から11年が経ち、自信もついて、利用者様に明るく声掛けし接することができるようになっている。今までは土日を休日にしてきたが、今後は週末に行われる施設行事にも積極的に参加するよう促していきたいと考えている。
③ Cさん
実は一番指導が大変だったのはCさんだ。気分にムラがあり、集中力がなくなってしまう事が度々ある。やりたい仕事とやりたくない仕事があり、やる気がなくなると、何もせずにウロウロする。それを注意されるとヘソを曲げて何時間もトイレにこもってストライキを起こしてしまう…。
この状態を改善するために取った対策が、1日のスケジュールを細切れにして、時間を細かく区切り、集中力が切れないようにすることだった。それぞれの仕事を時間内に終わらせなければならないので何もしないでウロウロする暇がなくなり、嫌いな仕事も短時間だけの我慢と割り切れる。
バラエティに富んだ仕事を色々与えることで、慣れて仕事が雑になる問題も解決した。更に、職員全員にCさんの特性を周知して、“出来た事をみんなで褒めよう”と決めた。こうして、最近はストライキを起こすこともなくなり、張り切って頑張っている。今後は、力があり丈夫なCさんに、除雪作業や窓拭きなどもお願いしたいと考えている。
(2)まとめ
3人の重度知的障害者が長い年月に渡り働き続けてくれているのは、障害者雇用に当たり、職員皆の意見を聞き、対応に関してルールを決めて、職員全員の意識をひとつにして取り組んできたからこそだと思う。問題があった時も、“辞めないで続けてもらう”ことを前提に皆で対策を練ってきた。こうして、障害者雇用をきっかけに話し合いを重ねたことで、職員の結束もますます固くなったように思う。
個性にマッチした仕事であれば障害があっても十分戦力になってもらえることも分かった。大潟村の施設では洗濯や洗濯物のたたみをボランティアに頼っている現状で、このような業務を集中して行える障害者がいれば採用したいという思いもある。
これからも、利用者様は勿論のこと、働く職員にとっても“誇りと生きがいのある毎日を送れる施設”となるよう、努力していきたい。
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