精神障がい者と発達障がい者の雇用拡大事例
- 事業所名
- 株式会社ぐるなびサポートアソシエ
- 所在地
- 千葉県千葉市
- 事業内容
- 事務関連業務請負事業及び福利厚生サービスの提供
情報サービス業(パソコンを用いた事務) - 従業員数
- 13名
- うち障害者数
- 12名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 4 PDF化、WEB監視、入力等 内部障害 知的障害 1 PDF化、入力、ファイリング等 精神障害 7 PDF化、WEB監視、入力等 - 目次

1. 会社概要、業務内容
(1)会社概要
当社の創業は2011(平成23)年1月5日である。その後、同年3月7日に障がい者数10名で、株式会社ぐるなびの特例子会社(株式会社ぐるなびの100%子会社)として認定された。業務は全て親会社からの受注によっている。
JR千葉駅西口改札を出て、すぐの所にオフィスを構えている。オフィスの位置は当社設立の計画時に、株式会社ぐるなび本社のある東京を含め近隣の県も検討したが、「本社との交通の便」、「家賃」、「採用のしやすさ」、「支援機関のサポート」等を考慮し、現在オフィスを構える千葉に決めた。
ぐるなびグループの障がい者雇用は2007(平成19)年に始まり、身体障がい者を中心に雇用してきたが、従業員数の増加もあり法定雇用率の未達成が続く中で、2010(平成22)年の夏に、特例子会社を作り、障がい者が働きやすい環境や仕事を提供する計画が決定した。
(2)沿革
2010(平成22)年 | 11月 | 設立 |
2011(平成23)年 | 1月 | 創業 |
障がい者5名(身体障がい者2名、精神障がい者3名)により創業 | ||
3月 | 特例子会社認定 | |
障がい者10名(身体障がい者2名、知的障がい者1名、精神障がい者7名)となる。 | ||
※発達障がい重複1名 | ||
10月 | 障がい者12名(身体障がい者4名、知的障がい者1名、精神障がい者7名)となる。 | |
※発達障がい重複1名 |
2010(平成22)年11月に会社の登記を行い、1月に第一期生5名の障がい者を採用した。3月に追加で5名の障がい者を採用し、10名体勢になった。
当初の想定以上に精神障がい者の体調が安定していたこと、また業務での貢献により増員を行った。その結果、1年4ヶ月で12名の障がい者を雇用できるところまで至った。
(3)業務内容
1人1台パソコンが支給され、主な業務はパソコンを使用した次のような事務作業となっている。
① PDF化業務(12名全員従事)
契約書などの紙資料を電子化する業務である。スキャナで読み取りPDFデータにし、専用ソフトに決められた付帯情報を入力する。社内で確認する際にこの電子化した情報を閲覧する。
② 登録代行業務(12名全員従事)
お客様である飲食店側で行っているクーポン登録作業を代行する業務である。店舗毎に決まっている登録距離や発行周期を基に登録を行う。
月に6,000件程の登録を行っている。
③ WEB監視業務(9名従事)
「ぐるなび」に掲載されている店舗ページの文章や写真に、不適切な表現がないか確認する業務である。前後の文章や全体のニュアンスから判断し、「ぐるなび」のサイトポリシーに沿っているか判断する。
④ ファイリング業務(7名従事)
PDF化業務で使用する契約書を並び替える業務である。複数店舗を一括申込しているものや契約書の種類によっては、別途並び替えルールがある。
月に約1万枚を2週間程で並び替える。
1人が1つの業務のみを行うのではなく、複数の業務を担当している。入社時は比較的簡単な業務から始めて徐々にできる業務を増やしていく。業務の割り振りは個人の特性を見て判断している。
まだ新しい会社であり新しい業務の依頼も多い。新しい業務を依頼されたときは、管理者中心に業務の組み立てを行い、作業マニュアルが完成し、ある程度業務手順が決まった段階で障がいを持ったメンバーに作業の割り振りを行っている。また、指示を待つのではなく、疑問があれば自分から質問をして、自分のためではなくお客さまのために必要な行動を心がけるようにしてもらっている。




2. 社内での取り組み、外部との連携
(1)社内での取り組み
社会人として基本ではあるが、言われてやるのではなく、自分で考えて行動する主体性を重視して、次のような取り組みをしている。
① 毎日の日報
業務が終わって直ぐに帰るのではなく一日を振り返る時間を設けている。仕事でモヤモヤした気持ちを家に持ち帰らずに、すっきりしてから会社を出るように意識しており、業務時間内に20分間時間を設けてじっくり振り返りを行っている。
② 週次面談の実施
心のモヤモヤを解消するために、週に1回、1人15分程度の面談を行っている。自分から話せない心の悩みを打ち明ける場を強制的に設けており、仕事の事だけでなくプライベートな悩みを相談する人もいる。
③ 正面から向き合う
病名や一般的な事例にとらわれる事なく、社員一人ひとりを見ている。言っている事を鵜呑みにせず、背景にある心の声を聴くように心がけている。
④ できる事を増やす
将来に向けて、どうなりたいかの目標を一緒に考えている。障がいの特性上すぐにはできない事も多いが、諦めない事が大事だと思う。腫れ物に触るような扱いや甘えを許すのではなく、いつかできるようになるために、原因と対策を一緒に考えている。
会社のスタンスとしては、「障がいの特性だから、しょうがない」と挑戦を諦めない。本人の能力や希望を重視し、できるようになるためにどうすれば良いのかを、障がい者と管理スタッフが一緒になって考えている。その際、次のような考え方で臨むようにしている。
精神障がい者の中には「ストレスは悪だ」と思い込んでいる人もいるが、ストレスが完全に無い社会なんて面白くないと思う。もちろん自分の許容量を超えた過度のストレスは良くないが、許容量内のストレスであれば新しい事に挑戦し成長するためには必要になってくる。
発達障がい者で、障害の特性上難しいと言われている事だったとしても、自分がやりたい事であれば主治医や支援機関のアドバイスを求めながら挑戦し続ける事で、慣れや対処方法を理解する事で出来る様になる事も多くあると思う。
障がい者と障がいのない人を分けて考えない。できる事、やりたい事は積極的に任せていく。成長するためにチャレンジできる環境がある。
(2)外部との連携
① 家族のサポート
自宅での過ごし方が悪く、生活リズムを崩す人が多い。また、家族のサポート無しに安定した就労は難しいため、家族との連携を意識している。会社を理解してもらう目的で、会社見学会やクリスマス会といった家族イベントも行っている。
② 支援機関の積極的な利用
自分でどうしようもできない事が障がいである。障がい者の支援を行ってくれる支援機関に障がい者自身が自分から相談し、定期的に業務面や生活面の支援を行ってもらうように働きかけている。
③ 外部ネットワークの活用
管理者が自分の考えだけで判断する事は危険である。支援機関や他社(特例子会社等)に相談し、アドバイスをもらう。またその様なネットワークが充実している事が障がい者雇用を取り巻く環境の良いところだと感じている。
障がい者自身は、周りから何かしらの支援を求めることが必要であると思っているから手帳を取得しているはずである。自分でできるようにする事も大事であるが、できない事を認め、人を頼る事も必要である。できない事については主治医や支援機関、会社の上司・同僚へ “自ら(受身の姿勢ではなく) ”意識してサポートを求めるようにしてもらっている。
そういったサポート体制が構築できている人は、精神障がい者であっても体調がとても安定しており、体調不良で休む事はほとんどなくなっている。
先にも述べたが、やりたい事にチャレンジし自分ができる事を増やしている人は、少しずつではあるが自信が付いてきている。また、自信がつく事で前向きになり、仕事に遣り甲斐を感じイキイキしてくると信じている。
3. 採用について、今後について
(1)採用について
候補者と企業との ”マッチング” に重きを置いている。
できる限りの情報を候補者に提供し、企業の特色(仕事・環境・社風)を理解してもらいたいと思っている。
応募する前に 「働く意思(覚悟)」 を持ってもらうために、職場見学会や職場実習の実施、支援機関との密な連携を行っている。最終面接では顔合わせの目的も兼ね、家族同席で面接を実施している。
これまでに採用した人を含めて200名くらいの障がい者と会ってきたが、人によって仕事(就職)のとらえ方が大きく異なっている事を強く感じる。また、まだまだ障がい者が働ける機会が少ない事もあり、冷静に且つ深く自分がやりたい事を考えて選考に望めていない人が多いとも感じている。
福祉寄りの会社で働きたいのか、一般企業の様な厳しい環境に身を置きたいのか、その人の希望と株式会社ぐるなびサポートアソシエがマッチングしているのかをしっかりと見極める為に、職場見学や職場実習を取り入れている。
ちなみに、株式会社ぐるなびサポートアソシエは、後者寄りになる。
職場見学や職場実習はお互いに手間も時間もかかるが、とても必要であると感じている。

(2)今後について
今後当社は、以下の5つを意識して取り組んでいく。
① 強みが活かせる業務の獲得(利益率の向上)
② 職域の拡大(スキルの向上)
③ 主体性の向上(受け身からの脱却)
④ 管理体制の強化(管理者の採用)
⑤ 企業価値の向上 (ブランディング等)
現在、当社で最年少の社員は23歳である。その社員が定年を迎えるまでの40年近くは少なくとも株式会社ぐるなびサポートアソシエが存続できるようにする事をひとつの目標としている。
親会社の株式会社ぐるなびにおんぶにだっこでは40年後も存続し続ける事は難しい。管理スタッフだけでなく、障がい者スタッフ一人一人が考えて行動する事が必要になってくる。社員みんなが主体的に行動し、新しい事にチャレンジしていけば、自ずと必要とされる会社になり、何かで日本で一番の特例子会社になれると信じている。その「何か」については、これからみんなで考えていこうと思っている。

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