トッパンのプリプレスの一翼を担い続けるために
- 事業所名
- 東京都プリプレス・トッパン株式会社
- 所在地
- 東京都板橋区
- 事業内容
- DTP制作、電子化業務、ソフト開発
文書アーカイブ化、シュレッダー業務(新事業) - 従業員数
- 88名
- うち障害者数
- 71名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 全業務 聴覚障害 8 全業務 肢体不自由 52 全業務 内部障害 3 全業務 知的障害 3 電子化業務の一部 精神障害 4 全業務 - 目次

1.事業所の概要、設立の経緯
(1)事業所の概要
・事業所名 | 東京都プリプレス・トッパン株式会社 (凸版印刷株式会社の特例子会社) |
・所 在 地 | 東京都板橋区 |
・会社設立 | 1993年(平成5年)6月11日 |
・資 本 金 | 100百万円 (凸版印刷株式会社51%、東京都39%、板橋区10%出資) |
・事業内容 | ①DTP編集、ソフト開発業務 ②文書アーカイブ化、シュレッダー業務(平成25年度新規事業) |
(2)設立の経緯
当社は、地域社会の中で重度障害者に適切な雇用の場を創出するとともに、重度障害者雇用モデル企業として広く障害者の雇用促進啓発活動への参加を通じて、一般雇用における重度障害者の雇用の場の拡大に資することを目的として、東京都、凸版印刷株式会社及び板橋区との共同出資により1993(平成5)年6月に設立された凸版印刷株式会社の特例子会社である。
特例子会社の設立に当たっては、厚生労働省が1983(昭和58)年に策定した地方公共団体と民間企業との共同出資による「第3セクター方式による重度障害者雇用企業育成事業実施指針」により指定を受け、1993(平成5)年6月に設立し、同年12月から従業員20名(うち障害者数16名)で創業した。
2.取り組みの内容
(1)トッパンのプリプレスの一翼を担う
当社の社名の「プリプレス」とは、印刷に用いる刷版(印刷機にかける原稿)を作成するまでの「前工程」をさす。当社の親企業である凸版印刷株式会社では特例子会社を設立するに当たり、その事業内容としてプリプレスを選び、トッパングループの出版印刷部門の一翼を担わせていくこととした。
さらに、当社、設立当時の印刷業界においては、写植組版が主流であったが、その後DTP(desktop publishingの略)の技術が進んだため、これを積極的に取り入れて主役交替させるなど、時代の変化にも対応してきている。
トッパングループの出版印刷部門の一翼を担うとはいえ、障害者雇用事業所という特性により安全管理・健康管理の観点からグル-プ各社のような24時間体制を採用し、即応性や生産性を追求することが困難であるため、当社は「品質」の維持向上を確保することに主眼を置いた。このため、要々にトッパングループから優秀な人材を時には技術指導員の派遣を受け、またある時には障害者である社員を研修のために親会社に出向させるなど、技術の向上に努めてきた。その結果、技術力については相当の評価を受けられるようになった。
(2)具体的な業務内容
① DTP編集業務
書籍や雑誌などの出版物作成の前工程として、パソコンを使っての原稿作成、画像分解・加工、切り抜き、デザイン、文章や写真を組み合わせたレイアウト編集などを行っている。
② ソフト開発業務
主に辞・事典や情報誌などを製作するための自動組版システムの設計から開発までを行っている。また、Webサイトや辞書アプリケーションなど、多様なメディアへの展開に対応するためのプログラム開発も行っている。
(3)働きやすい職場環境づくり
障害というハンディを持つ社員に能力を充分発揮してもらうため、当社ではハード・ソフトの両面から「誰でも働きやすい職場環境づくり」に努めてきた。
① ハード面
- 執務室や廊下の面積を充分に確保したゆとりあるスペースの確保
- 車いすでも容易に利用できる引き戸、複写機、トイレ、洗面台(可動式ミラー)、自販機、銀行の端末機などの設置
- 公共交通機関を利用し難い社員のための駐車場など
② ソフト面
- 障害に関する定期通院制度
社員が障害者手帳に記載の障害で定期的に通院する場合には、本人の申請により原則として月に1回の通院を認めている。ただし無給休務となる。なお、月に2回以上の定期通院については、医師の診断書を提出したときは病欠扱いとしている。 - 健康相談・メンタル相談の実施
健康相談は、毎月1回産業医が来社し実施している。メンタル相談は、親会社の産業カウンセラーが毎月2回来社し実施している。 - 必要に応じて外部のジョブコーチの依頼などを行っている。



(4)トピックス
当社には、防災対策として車いす利用者だけで編成した自衛消防隊がある。
毎年秋に震災を想定した避難訓練を実施しているが、2011(平成23)年の訓練で車いす利用者だけで編成した自衛消防隊が初めて登場した。
過去の演習を見ていた社員から「自分たちにもできるのではないか」との声が上がり、その自主性を尊重して車いす利用者だけで編成したものである。
2か月にわたる猛訓練に耐え、同年10月5日の訓練で屋内消火栓操法を披露した。通常は3人編成のところ、特別に4人で役割分担するという工夫が実り、見学に来ていた地域包括支援センターや所轄の消防署の方々からもお褒めの言葉をいただいた。

3.取り組みの効果、今後の課題と展望
(1)取り組みの効果
これまでの取り組みにより従業員ひとり一人が、「プリプレスの一翼を担う」という職業人としての誇りを持つようになった。
また、当社設立後における凸版印刷株式会社は、特例子会社での雇用にのみ依存することなく、本社自らが熱心に障害者雇用に取り組むことにより、トッパングループ全体で障害者雇用を進めていることを評価され、2005年「平成17年度障害者雇用優良事業所」として厚生労働大臣表彰を受けている。
(2)今後の課題と展望
① 今後の課題
今後の課題は、「紙媒体印刷の市場規模縮小」と「障害者の法定雇用率引き上げ」に対応した革新である。
「印刷」の世界では常に技術革新が進んでおり、トッパングループとしては、「印刷」で培ってきたノウハウを活かして、出版印刷のほか、証券・カード、商業印刷、パッケージ、高機能部材、建装材、ディスプレイ関連、半導体関連の8部門で多彩な事業を展開し、新しい需要を自ら開拓する「需要創造型」活動を推進している。
また、情報化の進展に伴い、出版市場の規模が2009(平成21)年に2兆円を割り込むなど、紙媒体への印刷は縮小傾向にあるが、出版印刷部門においても各種コンテンツの生成、アプリ開発、販売活動支援などのソリューションを提供し、出版業界をサポートしてきた。
しかし、特例子会社である当社の事業は、一部を除いて紙媒体印刷への依存度が高いため、出版市場規模縮小の影響を直接受けており、厳しい経営状況が続いている。こうした状況の中で、障害者の法定雇用率が2013(平成25)年4月から2.0%に引き上げられることになったため、トッパングループにおける法定雇用率適用会社全体で相当数の新規採用が必要となっている。当社としても情勢の変化に対応した早急な革新が求められている状況にある。
② 当面の対応
当面の対応は「グループ企業における障害者雇用拡大」と「特例子会社の事業範囲の拡大(新事業)」である。
トッパンでは、障害者の法定雇用率引き上げを特例子会社のみに委ねると、グループ企業や各事業本部における障害者雇用への意識が低下するのではないかと懸念し、今回の引き上げに対してはグループ全体で障害者の雇用を増加させることとした。
その結果、各グループ企業・事業本部では、それぞれ独自の取り組みにより多様な障害者の受け入れ体制を整備することとした。当社としても新たに5名採用する予定ではあるが、従来の紙媒体印刷だけでは、社員を増やす余地が無いので、今後も継続すると思われる紙媒体印刷の市場規模縮小に対応していくとともに、グループ全体の法定雇用率を安定的に維持していくため新規事業を開拓することとした。
2013(平成25)1月現在、新規事業(文書アーカイブ化・シュレッダー業務(予定))を計画しており、当該業務に従事する障害者として就労支援センターを通じ知的障害者を採用することを前提に相談している。
③ 今後の展望
今後の展望は「トッパンのプリプレスの一翼を担い続けること」である。
当社は特例子会社設立以来、凸版印刷株式会社(及びグループ)のプリプレスの一翼を担っていることを誇りに思っており、それに応えられるだけの印刷テクノロジーを身につけているという自負もある。
しかし、紙媒体への印刷分野が次第に縮小しつつある現状において、このことは当社の未来が安泰であることを必ずしも約束してはくれない。たとえば、歴史のあるフィルムカメラがデジタルカメラに主役の座を明け渡したように、紙媒体印刷の上に胡坐をかいているわけにはいかない。
親会社凸版印刷株式会社では、電子チラシ《Shufoo》や電子書籍「BookLive Lideo」など印刷テクノロジーを駆使して新事業を開拓しているので、特例子会社である当社が独自に新事業を立ち上げることは当面難しいものの、親会社の事業展開に対応しながら、自らも改革に取り組む覚悟が必要であると考えている。凸版印刷株式会社グループの一員として「プリプレス」を担い続けること、それが当社の目標である。
障害者雇用アドバイザー 畠山 千蔭
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。