事業所名

岐阜車体工業株式会社

所在地

岐阜県各務原市

事業内容

トヨタハイエース及び自動車部品の製造

従業員数

1,806名

うち障害者数

30名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害	5	人事事務、自動車組立、部品製造・部品梱包
肢体不自由	10	人事・経理・調達事務、自動車塗装、部品製造・検査
内部障害	3	調達事務、品質管理事務、完成車検査
知的障害	11	自動車組立、部品供給、清掃作業、部品梱包
精神障害	1	品質管理事務

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 業務内容、採用、配属
3. 今後の課題と展望

事業所外観

1．事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

当社は1940（昭和15）年に岐阜市で設立された。トラックやランドクルーザーといった大型車輌の生産を行い、1970（昭和45）年に本社を現在地（各務原市）に移転した。

現在は、ハイエースやハイメディック（高規格救急車）完成車、自動車部品の生産を手掛けている。特にハイエースは、世界約100ヶ国へ輸出しており、2009（平成21）年5月には当社生産累計200万台を突破した。

基本理念の"お客様第一""人間尊重""社会への貢献"を常に心がけ、安心安全な車を世界各国へ届けるため、従業員一同、力を合わせている。

（2）障害者雇用の経緯

10年前の2002（平成14）年における当社の障害者雇用率は、1.1％で法定雇用率を満たしておらず、企業として社会的責任を果たすべく雇入れ計画を作成し、法定雇用率達成に向け取り組んでいくこととした。

当初は身体障害者が大半であったが、知的障害者にも活躍の場があると考え、職場実習の受け入れや特別支援学校と連携し、新卒採用をはじめ、合同面接会での中途採用活動も積極的に行った。この時の採用スタンスは、「職場に合った人を探す」のではなく、「この人に合った職場を探す」という視点で考え、各部署に協力要請を行ってきた。

計画初期の5年間は、徐々に雇用率を上げながらも法定雇用率は達成できなかったが、2008（平成20）年にはプラスに転じ、2012（平成24）年時点では2.4％前後を維持している。

このことは、助成金などの公的支援を活用することで、障害者雇用について社内理解の促進が図れた結果による。今後は、労働関係法令の改正への対応など課題はあるが、障害者の戦力化、定着化を図り、障害者雇用の維持向上に努めていく所存である。

2．業務内容、採用、配属

（1）障害者の業務内容

当社で働く障害者が活躍できる場所は幅広い。事務補助や、完成車組立ラインの一部を任されている者、部品の供給、完成品検査業務、清掃作業など多種多様な職種にまたがっている。当社のラインは、2交替制で運営されており、ラインに従事している者は、必然的に交替勤務を行っているが、「辛い」、「厳しい」といった声はあまり聞こえず、勤務成績も概ね良好である。

能力面でも、当初想定していた職務の範囲を超え、少しずつ仕事の幅を広げていける人もおり、障害のない従業員に負けない働きをすることもできると、改めて感じている。

供給された足回り部品の
塗装剥がれを見つけ、修正する業務

（2）採用

採用する際の条件として、障害のない従業員と同じように交替勤務が可能かを確認している。特に交替勤務は、昼勤週は朝が早く、夜勤週は終了が夜明け前になるため、交代勤務が可能かどうかをしっかりと確認しなくてはならない。そのため、職場見学や職場実習等を通して、応募者が作業内容に従事できるか、勤務形態に問題ないかを家族や支援学校の関係者にも理解していただき、共に判断して貰うことを心がけている。

そして採用において最も重視するのが"安全第一"である。作業中、作業外問わず、基本的な作業ルールや安全に気を付けることができる人物を採用している。実習中やトライアル雇用期間中も「安全・ルールの徹底」を指導し、採用判断において重きを置くようにしている。それは、労働者の命を預かる企業としての最大の責務であると考えている。

また、周囲の支援学校との関係を築き、維持していくように心掛けている。

（3）配属

職場実習は、採用を視野に入れて行っている。職場の責任者に、「この人物なら大丈夫」、という太鼓判をもらうことで、採用後のトラブルも少なく、配属をスムーズに行うことができる。それと同時に、障害者も一度実習で経験した仕事であれば戸惑いも少なく、また入社後のコミュニケーションもスムーズにいくという点、さらに本人が作業に対して自信を持って入社できるというメリットがある。

最近は職場実習に対して職場内の理解が進んでおり、実習受け入れ職場（現場）をさらに拡げて行きたいと考えている。

（4）指導方法

コミュニケーションを重要視して指導に取り組んでいる。職場の上司（チームリーダー）が最初に指導役となり、障害者がチームに溶け込めるように配慮し、休憩時間も積極的に声掛けを行うようにしている。

人事室と職場で事前に個人毎の特性、考えについて理解を共有するようにし、コミュニケーションの取り方に注意するようにしている。

また当社には職業生活相談員が5名在籍しているので、配属後しばらくの間は、定期的に本人と面談を行う取り組みをしており、配属後の定着状況は良好である。

仕事面では、チームリーダーの指導期間には、もう1名メインの作業者を配置して、ラインの「STOP」を防止している。慣れてきたところで、メインの作業者から障害者に細かい指導を開始し、最終的に一工程を任せるようにしている。

また、ジョブコーチ制度やトライアル雇用制度を平成24（2012）年度に初めて利用した。「家庭」－「職場・本人」－「行政」との協力体制で指導、教育に当たれるため、働き手だけでなく、会社としても家族にしても状況把握に非常に役立つ制度であることを感じた。これからも積極的に利用していく必要性を感じている。

事務部門の聴覚障害者には、ITを利用し業務指示を行っているが、ITの利用は業務指示のみならず、指導方法に活かしている。また、会議には積極的に参加してもらうなどして、戦力化を図っている。

なお、障害者に対しても毎年人事考課を行っており、フィードバックや今後期待したいことを人事考課の面談時に本人に話すことで、モチベーションアップを図っている。

供給部品を指示書の通りに選定し
供給用箱にワンセットにする作業

3．今後の課題と展望

（1）法改正への対応

労働者派遣法及び労働契約法の改正など、労働環境を取り巻く法令の改正が相次いでいる。とりわけ、高年齢者雇用安定法の改正については、影響が大きいと考えている。そのため、高年齢の人達に優しい＝働きやすい職場づくりを目指して活動しているが、それは障害者の雇用にも繋がると考えている。

（2）採用基準の明確化

当社の採用基準は、本人の能力を推し量り配属部署を探すというスタイルを取ってきた。そのため、障害者の採用拡大につながったと言えるが、この方法は会社側面接者の人物眼スキルに依るところが大きい。また、採用数も増えてきたため、障害程度による採用・配属基準を明確にしておくことも、採用部署として取り組んでいかなければならない。

そのためには、障害内容を層別にして、社内のどの業務、・分野で活躍、力を発揮しているかコンピテンシーを分析したうえで、基準を明確にすることに取り組んでいる。そうすることで採用判定や、配属検討に役立ち、また、職場への理解促進につながり、将来への採用拡大に繋げていくことができるのではと考えている。

（3）雇用のチャンス拡大

障害者が活躍できる場を提供するために、工程ごとの編成組み換え努力を現場で行ってもらっているが、設備・業務性質上の問題により、部門によっては難しいところもある。そのため、今後の障害者の雇用拡大を図るには、これを会社全体の取り組みとして展開していく必要性を感じている。

前述のように、今後は障害者のみならず、従業員の高齢化、65歳雇用義務化に伴い、比較的負荷の少ない工程を開発、もしくは負荷を少なくするように工程改善していく必要がある。そして、今まさにその取り組みを始めている。

まだモデルケースではあるが、実際に働く人々から意見を積極的に出してもらい、そこから問題点を抽出し、改善してさらに働きやすい職場としていけるように取り組んでいる。出された意見を参考にして、当社の技術員をはじめとしたスタッフが機械の改善に取り組み、設備レイアウトの変更を行うことで、今まで環境面が合わず採用には至らなかった人も十分に活躍できるようになるのではないかと考える。そうして雇用のチャンスを拡大していきたいと考えている。