チャレンジド採用者の採用義務から戦力化をめざして
- 事業所名
- 株式会社ジーフット
- 所在地
- 本社:愛知県名古屋市
東京本部:東京都中央区 - 事業内容
- 紳士靴・婦人靴・運動靴・子供靴・スポーツシューズ・靴用品・修理用品及びインポート雑貨の販売
- 従業員数
- 1,161名 他フレックス社員4,958名(2012年1月現在)
- うち障害者数
- 66名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 7 主に店舗内での業務 内部障害 10 同上 知的障害 24 同上 精神障害 25 同上 - 目次
1.会社概要、障害者雇用の背景とその取り組み
(1)会社概要
当社は、「足元からのスタイル提案業」を基本理念に、株式会社ツルヤ靴店と株式会社ニューステップが合併し、平成21(2009)年2月21日に新会社としてスタートし、同年6月にイオン株式会社の連結子会社となった。
健康的で履きやすく、魅力的な靴をリーズナブルな価格で提供するという理念のもとに、フットウェア業界のリーディングカンパニーとなり、グローバル展開を目指すことも企業ビジョンに掲げて、現在業界3位の専門店チェーンとして、以下の三つのブランド、675店舗を持ってビジョン実現に向けてチャレンジしている。
<ASBee>
人気ブランドの最新モデルが際立つフットウェアのスペシャリティーショップ。
アスビーズやリーなどのオリジナルブランドも充実し、アスビーにしかない限定アイテムもバラエティ豊か。
<Greenbox>
デイリーユースを意識した低価格商品から高品質なシューズまでを豊富にラインナップ。地域のお客様の暮らしをバックアップ。(イオンの靴売り場を運営。)
<Feminine Cafe>
お気に入りのカフェをイメージした雑貨テイストのレディースシューズショップ。
スイート&キュート"をテーマにオリジナルシューズを提案。
(2)障害者雇用の背景とその取り組み
① 障害者雇用の背景
障害者雇用に関しては、合併前から取り組んではいたが、やりかたがわからず採用はなかなか進まなかった。そのため平成18(2006)年6月時点での実雇用率は0.62%であり、1度目の「障害者雇入れ計画」の3ヵ年計画を提出することとなった。
わからないながらも障害者雇用を進めるため、ハローワーク、各地域の障害者職業センター等各機関からアドバイスをいただきながら、集団面接会への参加、業務の見直し・切り出しから現場スタッフへの啓蒙活動といった施策を推進していった。
その結果、成果は徐々に出始めていたが、雇用率の基となる常用雇用労働者の数が合併により急速に拡大したこともあり、1回目の「3ヵ年計画」の期間内では法定雇用率を達成することができず、適正実施勧告を受け、2回目の「3ヵ年計画」を提出するに至った。
この頃には採用活動をスムーズに進めることができるようになり、平成24(2012)年12月時点での雇用率は1.75%となり、法定雇用率には達しなかったものの、「3ヵ年計画」を終わらせることができた。
② 取り組み内容
- 障害者雇用体制の確立
障害を持つ社員の呼称を「チャレンジド」とし、「チャレンジド採用プロジェクトチーム」を平成24(2012)年6月から発足させて、採用体制を整えると共にチャレンジド採用に対する社内での理解を得るための施策を推進した。 - 関係機関との連携
管轄ハローワーク・各都道府県障害者職業センターならびに障害者職業センター経由で各地域の障害者支援機関へチャレンジドの推薦を依頼すると共に、採用後のジョブコーチ、支援員の派遣等の協力を得て、チャレンジド採用者のスムーズな職場定着を推進した。 - 店舗業務の棚卸
店舗での業務内容をエリアマネジャー・店長からヒアリングし、大まかに業務を分類した「作業分類MAP」を作成した。その中で「販売スタッフ」の業務領域に着目し、チャレンジド採用者にまかせてもよい業務領域を視覚化した。それにより店長から理解を得ることができ、チャレンジド採用者の業務を確立することができた。 - エリアマネジャー・店長への啓蒙活動
チャレンジド採用者の配属先として店舗は必須であり、その理解を得るために店長会議等各種機会を活用して啓蒙活動を実施した。内容的には、「障害者の雇用の促進等に関する法律」等の法律面と、コンプライアンス面の両面からチャレンジド採用を推進しなければならない理由を説明した。また、店舗業務の棚卸で作成した「作業分類MAP」でチャレンジド採用者が店舗で戦力になることの理解を得るよう努めた。
2.障害者の従事業務、職場配置
(1)チャレンジド採用者の配属先と従事業務
当社は店舗数が多いこともあり、チャレンジド採用者の多くは店舗で勤務している。店舗で勤務している者のうち、4分の3が「作業が主な業務であるスタッフ」、残り4分の1が「販売スタッフ」という比率となった。販売は臨機応変さが必要になるが、作業は店舗で大幅に変わることはないため、作業に従事するスタッフが多いといえる。作業内容は下記のとおりである。
<作業スタッフの業務領域>
- 入社当初の業務
入荷商品の荷開け、箱つぶし - 入社後に覚えてほしい業務
入荷商品の荷開け、箱つぶし、ごみ捨て、店舗清掃、POP作成、商品の転送手続き、在庫管理、在庫補充
店舗運営は十分な人数で行っているわけではないため、業務を「作業」と「販売」に分けてチャレンジド採用を実施した結果、人手不足で今まで手が行き届かなかった「作業」を実行してくれる点で、店舗の戦力化につながった。
なお、障害特性により、実施可能な業務と実施不可能な業務がチャレンジド採用者により異なるため、入社後に覚えてほしい業務は店長の判断に委ねている。
(2)チャレンジド採用者の職場配置
店舗でのチャレンジド採用の流れは以下のとおりとなっている。
① 採用店舗の決定
→ | チャレンジド採用担当スタッフが、まず採用する店舗を決める。 |
② エリアマネジャー・店長への説明
→ | チャレンジド採用担当スタッフが、店長にチャレンジド採用者にしてもらう具体的な業務内容を説明し、理解してもらう。 |
③ 実習者の職場案内
→ | チャレンジド採用担当スタッフが、指定した業務の遂行が可能かどうかの確認、および面談の実施。 |
④ 職場実習
→ | 店長が指定した業務の遂行状況、週20時間以上の勤務に耐えられるか、既存スタッフとの相性等の確認をする。 |
⑤ 採否決定
→ | 店舗側で採否決定。採用の場合、チャレンジド採用担当スタッフ・店長で面接を行い、入社日時を決める。 |
3.チャレンジド採用を推進して
(1)現場の不安とその結末
チャレンジド実習・採用前の店舗側の心配事として、以下のような漠然とした不安の声が各店長から聞こえていた。
- チャレンジドとのコミュニケ—ションがとれるか
- 他のスタッフとうまくやっていけるか
- 何か問題を起こすのではないか
- つきっきりで毎回指示する必要があるのではないか
- どの様に指導すればよいか分からない
しかし、実習・採用後の感想は
- 思ったよりも上手にコミュニケーションがとれていた。
- 既存スタッフが販売に専念できるようになった。
- 業務に集中し覚えも早かった。
- 素直に業務を遂行してくれる。
- 分かり易く伝えるための話し方の工夫をしたり、実際に仕事をやってみせた。
- ジョブコーチに相談したり、指導を受けることで解決することが出来た。
一方、当初想定していなかったような問題も発生した。
- 作業予定をしっかり組まないと仕事がなくなることがあった。
- 当人の想定を超える業務量になる等不測の事態に陥ると、独り言といった形での文句を言い始めることがあった。
- 精神障害を持つチャレンジドの場合、業務中に体調を崩すと早退をすることが多かった。
- 業務に慣れてくると、上下関係の礼儀が薄れたり、気を抜いたり、他人の言動に過敏になることがあった。
以上のように、結果的には"案ずるより産むが易し"ではあるが、そのためには十分な事前準備をすることが、成功への道であることは言うまでもない。
(2)まとめ
今回の取り組みは、管轄のハローワークからの「障害者雇入れ計画作成命令」がスタートではあったが、結果としてこの課題をクリアするのみならず、チャレンジド採用を通して、全社的なコンプライアンスの意識向上、障害を持つ人達への理解向上といったことから店舗業務の整理など多くの副次的効果があり、それらの積み重ねの上でチャレンジド採用者の戦力化を実現することができた。
この取り組みは今後も継続してゆき、当社で今後見込まれる雇用労働者の増加という内的要因と、平成25(2013)年4月からは障害者の法定雇用率が2.0%になるという外的要因に対応できるよう、さらに積極的に取り組む姿勢が不可欠であることを肝に銘じて推進する所存である。
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