周りのあたたかい環境で、パワー全開
- 事業所名
- 株式会社おはなはん
- 所在地
- 和歌山県和歌山市
- 事業内容
- 生カップお好み焼き製造販売、お好み焼き関連商品卸販売事業を展開
- 従業員数
- 43名
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 3 製造ライン(商品の製造及び具材詰め)、材料裁断準備、後始末 精神障害 - 目次

1.事業所の概要、障害者雇用の経緯・背景
(1)事業所の概要
① 事業所経歴
- 昭和42(1967)年8月 白浜ハイプレーランド(現・ホテルシーモア)にて、お好み焼店「おはなはん」開業
- 昭和57(1982)年2月 生カップお好み焼き製造販売事業を開始
- 昭和58(1983)年11月 株式会社おはなはん設立
- 平成元(1989)年7月 大阪支店を大阪市淀川区に開設
- 平成17(2005)年3月 東京支店を東京都府中市に開設
② 経営理念と主な事業内容
経営理念として、次の4つの項目を掲げている。
- おいしくて品質の良い商品の安定供給
- お客様の立場にたった商品づくり
- お客様の喜びこそ真の報酬
- 社員全員での経営参加
以上の「経営理念」に基づき、生カップお好み焼き製造販売、お好み焼き関連商品の製造卸販売を展開している。今後の目指す夢の舞台は「キッチンのお手伝い」であり、お好み焼きと同様に「家族に手作り愛情キッチン」を提供することである。
(2)障害者雇用の経緯、背景
① 障害者雇用までの経緯
昭和58(1983)年8月に、株式会社おはなはんを設立後、大阪支店を開設し、東京支店の開設準備など、多忙な日々を送る社長である松本章子氏が、今から十数年前に久しぶりに和歌山に帰ってきた折にあった和歌山障害者職業センターからの声かけが、障害者雇用について考えてみるきっかけになった。
社長は、かねてから企業ができる「社会貢献」について、何ができるのだろうとの想いを気持ちの奥深くに持っていた。そのとき、たまたま知り合いであった和歌山障害者職業センターの職員から、熱心な障害者雇用についての話を聞き、「社会貢献」として障害者雇用を具体的に実践してみようと考えた。
採用した障害者は知的障害者で、それぞれ3か月間のトライアル雇用を経て、障害者の特性等を加味した職場配置を決定し、平成14(2002)年1月に1名、平成15(2003)年9月に1名、平成23(2011)年6月に1名の合計3名が採用された。
それぞれすぐに職場環境に馴染み、毎日元気に働いている。
同じ職場の周りの同僚も働く仲間として接し、採用された3名は家族的なあたたかい雰囲気のなかで、その職務に就いて精励している。
② 事業所としての姿勢
当社では「社会貢献」の一環としての障害者雇用について、その意義を再確認すると共に、障害者それぞれの能力を活かして、個々の特性に合った働き方を適切に選び、そのなかで持てるパワーを最大限発揮することができるようにとの配慮を行っている。
また、障害者雇用を新たに始めることとなった平成14(2002)年の初春には、従業員を集めて、障害者雇用の「意義」を説明した。従業員は、障害者のお母さんと同世代であることが殆どであったので、今回採用される障害者を「自分達の子ども」と思って暖かく接してもらいたいと、社長自ら障害者雇用に対する考えを切実に訴えた。従業員はその説明を理解し、暖かい職場環境を作っていくこととなった。それが、現在(平成25(2013)年1月)2名の勤務年数が10年に至ることができた理由にもなっている。
そして、今ではそれぞれが自分の受け持ちの「仕事」に対して、「誇り」と「責任感」を持ち、それぞれの仕事の流れをより効率的にする方法を自ら考え出し、仕事内容・やり方等独自で工夫し各自が改善等に努めるまでに至っている。今では、同僚も頼もしく思える程の「存在」となっている。
2.取り組みの内容
(1)業務内容及び障害者の業務
当社の製品は、おはなはんのお好み焼きに一番合う製法で加工されたメリケン粉、キャベツ、紅生姜、ソース、卵、青海苔、あげ玉、豚肉等が厳選され、厳重に小袋詰めされた具材をカップ状のパックに詰めて蓋をしっかり閉めて商品となる。商品には具材をトレーに入れピロ梱包されたものもある。
また、それらの具材のうちメリケン粉の調合とキャベツの裁断、それらの小袋詰め、ソースのパック詰めは当社の工場で行っている。ほかの具材は厳選仕入れにより小袋に袋詰めされた形で調達される。
知的障害者は、製造ライン(商品の製造・具材詰め)と材料裁断準備、後始末の作業に従事している。3名のそれぞれの役割分担は下記の通りである。
① Aさん:平成14(2002)年4月入社 製造ライン(商品の製造・具材詰め)
Aさんは製造ラインの仕事を任されている。勤続年数は10年が経過し、超ベテランとして働いており、バックへの具材入れは早く確実にこなしている。また製造ラインの仕事だけではなく、Bさんと同様、終業時間(基本的にPM4:00)まで他の仕事も積極的に労を惜しまず一生懸命に取り組んでいる。
② Bさん:平成15(2003)年9月入社 製造ライン(商品の製造・パック蓋閉め)
BさんはAさんと同様に製造ラインの仕事を任されている。勤続年数は9年が経ち、製造ラインの仕事だけではなく、入荷される「食材」のダンボール箱に入荷日の「日付」を書き込む作業や仕事場の清掃作業(階段の掃除等)等を自分が責任を持って実施しており、安心して任せられる。また、とにかく元気で、職場のムードメーカーでもあり、周りの同僚を常に明るくしてくれている。
③ Cさん:平成23(2011)年6月入社 材料裁断準備、後始末
Cさんは材料裁断準備、後始末の作業に従事している。お好み焼きには欠かせない、裁断用キャベツの準備及び作業場までの運搬作業の仕事を任されている。裁断後の不要なキャベツの後始末も行う。裁断されたキャベツの後処理が容易になり、狭いスペースを有効活用できるよう片づけた段ボール箱の整理整頓方法も自分で考えて後始末の仕事に取り組んでいる。また、お好み焼きに付いている「ソース」袋を能率的にパックしていく作業にも従事しており、その作業を正確に、個数を間違えないやり方を自ら工夫して、今ではCさんに任されている重要な仕事になっている。
当製造ラインでは毎日、就業前にラインの従業員全員参加によるミーティングが行われる。ミーティングでは昨日の問題、本日の注意事項を周知し、就業に当たって互いに支援できる体制となっている。Aさん、Bさん、Cさんもそのミーティングに参加し、真剣にその連絡・打合せ内容に耳を傾けて一日の作業工程・作業内容の確認を行っている。常に全員一丸となって取り組む、チーム活動を重視している。
Aさん、Bさん、Cさんのそれぞれに個性があり、それぞれの役割分担を持っている。自分が任されている仕事については、強くその「責任」感を各自が持っており、周りのあたたかい「見守り」の中、のびのびと3人各様の仕事ぶりを発揮している。
そのうちの1名は重度である。障害者雇用を過去10年間経験するなか、障害者の働く職場をより効率的に生産的に設計するノウハウが蓄積されてきており、重度の知的障害者も職場の暖かい雰囲気のなかで、いきいきと働いている。
日頃から、社長が心掛けている「コンセプト」は、『企業を組織している者は、どの立場の者であっても、お互いに人間として、それぞれの「人格」をリスペクト(尊敬)しあう「基本」をまず根底に持つことである』と語っている。障害者雇用に限らず、そのことはあらゆる「面」で大切であり、それがひいては事業発展の「源」であるとの強い「信念」に裏打ちされて、経営理念の「社員全員での経営参加」を謳っている。

(幾種もの具材を早く確実に)

(不完全な蓋閉めのないよう確実に)

(作業の邪魔にならないよう素早く)
(2)就業以外のフォロー
特に気を使っているのは、「健康面」における配慮で、知的障害者は身体の不調を自ら訴えることが思うようにできない人もいる。体調の「変化」には、こちらから気を使い、その「変化」については、すぐに家族と連絡を取り「体調」の不調に、即対応できるように日頃から心掛けている。そのことは「家族とのコミュニケーションを大事にすること」と知的障害者の雇用に当たって決めたことが根底になっている。
また、年1回の懇親会を開催して、お互いにコミュニケーションを図っている。職場単位では近くのところで、「食事会」を行い、日頃の慰労をはかり、楽しいひと時を過ごしている。日頃から、まとまりのいい職場にて、チームワークは抜群であるが、さらに、懇親会にて、お互いの「信頼」を確かめ合っているところである。
なお、仕事をするうえで、社会人のマナーとして、挨拶の徹底については、特に気を使っている。知的障害者は、挨拶が一見「不得手」の人もいると思うが、挨拶は、コミュニケーションの「基本」であり、その挨拶の徹底には、特段の励行を意識している。
3.障害者の処遇、今後の課題と展望
(1)障害者の処遇
知的障害者3名の勤務形態は、下記の通りである。
Aさん:AM9:00〜PM4:00 休憩時間1時間
Bさん:AM9:00〜PM4:00 休憩時間1時間
Cさん:AM9:00〜PM4:00 休憩時間1時間
仕事が忙しい時は臨時的に、終業時刻をPM5:30まで延長することもある。
休日は、基本的に週2回(日曜日・水曜日)である。就業時間は6時間で、毎日無理なく、仕事を続けられる就業体制になっている。毎日の規則正しい生活(勤務)により、各自が社会参加しているとの意識が日々充実感となり、そのことが長く勤務を続けている「基盤」になっている。
(2)今後の課題と展望
今後の当社の「課題」としては、現在の製造ラインの設備の更新、さらに自動化を図ることを予定している。自動化は、今まで手詰めしていた製造ラインがなくなることを示している。そのためにも、職場が一体となって職域の拡大、職場創出を図るべく検討中である。
障害者雇用については長年のノウハウが蓄積されており、今後とも、現在の雇用を維持していきたいと思っている。しかし、現在の仕事量の観点からは、現在の3名体制の維持がベストで、現段階では増員の計画はないが、できる限り企業としてできる「社会貢献」に配慮していきたいと思っている。
社長は、障害者雇用を推し進める上で一番大事なことは、その会社のトップの「考え方」であると考えており、障害者が何ができるのではなく、障害者ができる「仕事」は工夫次第で無限にあるのではないかと指摘される。
また、障害者ができる仕事を固定概念で捕らえることなく、大きな角度(視野)を持って考えていくことの必要を説いている。それは、与えられた仕事=製造ラインの仕事だけでなく、3名の知的障害者が、終業時間までの空いた時間で自ら仕事を見つけ出し、こちらが思ってもいなかった「仕事」も積極的に行っていくのを目の当たりにしたとの実体験からの感想である。
障害者雇用について、できない理由を考えるのではなく、できる事項(業務)を創意工夫のなかで考え出していくことが、これからの各企業トップの「考え方」に求められることなのではないかと思う。
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