障害者が活躍する「場」の提供に工夫をこらす
- 事業所名
- 株式会社ホタニ
- 所在地
- 和歌山県海草郡
- 事業内容
- 工業用ブラシロール及びブラッシングに関する機械装置のエンジニアリングと製作
- 従業員数
- 117名
- うち障害者数
- 4名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 製品(各種ブラシ)の手直し 肢体不自由 1 製品(各種ブラシ)の手直し 内部障害 1 機械等の加工製作 知的障害 1 製品の梱包 精神障害 - 目次

1.事業所の概要、障害者雇用の経緯、背景
(1)事業所の概要
事業所経歴
- 昭和48(1973)年 株式会社ホタニを設立
- 昭和56(1981)年 ホタニ商事株式会社を設立(大阪に置く)
- 昭和58(1983)年 ホタニ機工有限会社を設立
- 平成18(2006)年 株式会社ホタニ、ホタニ商事株式会社、ホタニ機工有限会社、3社を合併し、新たに株式会社ホタニとして発足
- 平成20(2008)年 中国現地法人上海に設立
- 平成22(2010)年 桃山工場竣工(桃山ブラシ工場、事務所)
主な事業内容
当社は、工業ブラシ専門メーカーとして、工業用ブラシロール等の製造、ブラッシング装置などブラッシングに関する全ての機械装置の製作と研磨技術を開発している工業用ブラシに関する総合メーカーである。
「絶え間ない探究と奉仕の実行」を企業理念とし、製鉄及び非金属用等の工業用ブラシロールの製造、機械装置の製作及びエンジニアリングまでホタニオリジナル技術は、各ユーザー様から高い評価を受け、今後更に世界に通用する製品づくりを目指している。
また、製品やサービスを提供することで、『お客さんに満足してもらうこと【顧客満足】』を目指す仕組み(システム)であるISO9001を、ブラシ事業で平成21(2009)年に取得、平成22(2010)年に機械事業で取得するなど顧客が求めるブラシロールの開発と生産効率の改善により品質と価格の両立を図るべくホタニの持つ高い品質の確保と新たな開発の可能性を求めている。
(2)障害者雇用の経緯・背景
① 障害者雇用までの経緯
平成17(2005)年ごろハローワークからの要請もあり、障害者雇用について検討を始める。まず、当社の事業内容・職務内容をハローワークに説明し、当社の障害者雇用において業務遂行上、何らかの支障がないかどうかについて意見を聞いて、特に支障はないことを確認した。その上で、障害者の方でも十分に活躍していただけることであれば、障害者の就労を具体的に考えてみることになった。
最初は聴覚障害者の雇用を検討することとなったが、上手くコミュニケーションがとれるのかどうかが、まず第一に懸念された。たまたま、採用予定者の兄が、当社で短時間(週3日程度)勤務しており、また、その人はボランティアで障害者雇用推進の仕事もされていた。そこで、今回の障害者雇用で初めて受け入れるに際し、弟である障害者(聴覚障害)と同じ職場・同じ業務内容を兄弟ペアとして、勤務していただくプランをたて、採用に至った。
障害者にとって、職場の周りの環境と上手く意思疎通が図れるかが、大きな「課題」であるが、兄弟ペアでの勤務なので安心感もあり、その点、職場の雰囲気に自然体でスムーズに溶け込んでいくことができた。今では、その方も勤続8年のベテランであり、職場の同僚との作業も少しの支障も無く、業務遂行を効率よく行っている。
その後、身体障害者(内部障害)を採用した。当社の加工機製作を担当し、その高い技術力を発揮している。また、その10か月後には、知的障害者を採用し、主に製品の梱包作業を担当している。
また、直近においては、平成24(2012)年4月に身体障害者(上肢障害)を採用した。製品の手直し作業を担当している。この方も、非常に明るく周りの職場の方とも打ち溶け合って、製品の手直し作業をしているが、まだ1年未満の経験ではあるが、器用にかつ正確に、その作業(ブラシの機械植毛の不備な箇所について、手作業にてその不良箇所であるブラシの植毛を行う)を行っている。
② 事業所としての姿勢
当社の障害者雇用については、当社において持てる「能力」を発揮することができるかどうかを採用の基準に置いている。その仕事をやる「意欲」とその仕事を成し遂げる「遂行能力」があるかが採用を決定する大きな判定基準であり、「障害者」であるとか、「高齢者」であるとかは大きな問題とは考えていない。
作業工程の中で、「障害者」や「高齢者」が働きやすい職場環境に工夫したり、作業台を改善したりすることは、当然のことであると考えている。そのことが、平成17(2005)年ごろに障害者雇用を開始してから、現在(平成25(2013)年1月)まで、4名の障害者が定着よく、長く働き続けていることが証左として挙げられる。
また、最近よく言われる職場におけるコミュニケーションの問題であるが、このことは、職場全体の問題として考える必要があって、そのことを考える習慣を持つことは当然のことと考えている。障害者雇用を検討した際に、その習慣が良い効果をもたらしている。
2.取り組みの内容
(1)業務内容及び障害者の業務
Aさん:身体障害者(内部障害) | 43歳 | 勤続年数 | 6年4か月 加工機製作 |
Bさん:身体障害者(上肢障害) | 51歳 | 勤続年数 | 9か月 製品の手直し |
Cさん:身体障害者(聴覚障害) | 68歳 | 勤続年数 | 8年 製品の手直し |
Dさん:知的障害者 | 41歳 | 勤続年数 | 5年6か月 製品の梱包 |
① Aさん
加工機製作を担当されている。ちょうど勤続年数は6年4か月を経過し、主にマシニングセンターを任されている。マシニングセンターを扱える方を採用したいとのことで人材募集を行ったところ応募してきた人である。内部障害(人工透析が必要なじん臓機能障害)があるが、透析に行かれる時間は就業時間の調整・工夫により、十分にその対応が可能と考え採用に至った。今では、機械加工作業の「要」として活躍されている。

(入力は慎重に)
② Bさん
製品の手直しを担当されている。当社では、機械製作されるディスクタイプのブラシのうち、若干の不具合がでたブラシを抽出して、手作業を加えることで、完成度の高いブラシ生産を指向している。Bさんは、その製品のブラシの植毛手直し作業に日々精励されているが、上肢障害のハンディを克服するため、作業改善の一つとして彼独自の作業台を考案し、その作業台及び補助具等を使って、効率的にしかも正確に製品の植毛作業・修復作業をこなしている。

(考案した固定補助具を使用して手直し)
③ Cさん
製品の手直しを担当されている。当社では、初の障害者雇用の該当者で、現在、68歳の高齢者でもあるが、兄とペアを組み、日常の任された職務に勤めている。勤続年数も8年の長きにわたり、懸念されたコミュニケーションも今ではスムーズに特に支障なく行われている。
④ Dさん
当社では、唯一の知的障害者である。主に製品の梱包作業を担当するが、他にブラシ固定用部品のバリ除去も担当している。勤務年数は、5年6か月になり、それぞれの仕事にも慣れ、グループリーダーの指導のもと、決められた作業工程を作業ミスなく、毎日の勤めに励んでいる。

(バリ取り作業はこの後で)
(2)就業以外のフォロー
当社は、製造業であるため、労災事故の防止のためにも、従業員の体調管理面においては、特に日々の健康管理状態を見ながら気をつけている。また、月に1回開催される安全衛生委員会では、「事故防止」を中心に協議され、日々、従業員の「健康面」を注視している。これに加え障害者が配置される職場では、その職場のグループリーダーの労務管理体制のもと、障害者の健康面に対して特段の配慮を行っているところである。このように職場をまとめるグループリーダーは、日々障害者の健康面を含めた状況を把握する立場にある。グループリーダーは常に障害者の健康状態・就労状況に気を配り、障害者の小さな「異変」等に速やかにかつ適切な対応を行うよう心掛けている。
Dさんの場合、知的障害者のため、作業時間の合間に少しばかり気がゆるむことがあるが、製造業のため危険な箇所・場所もあるため、現在は、危険度の全くない製品の「梱包」作業を中心としているが、グループリーダーとして、Dさんの仕事ぶりをやさしく見守り、「危険」のないよう、一日の就労状況に配慮している。
会社独自の年内行事(イベント)としては、常に製造装置が稼動しているため、会社全体で行う行事(イベント)には限りがあるが、新年を迎えた「新年会」は例年の行事として執り行われ、重要な行事となっている。障害者も当社の一員として、その「新年会」に参加して、新たな年を迎え1年間の安全・無事故について決意を新たにする。
また、「新年会」以外でも、グループリーダーごとに(大きな単位であれば22名ぐらい、平均的には10名前後)それぞれ、同じ職場での仲間である従業員のお互いの親睦を図るため、いろいろな場を設けて、日々のコミュニケーションの雰囲気を大切にしている。
3.障害者の処遇、今後の課題と展望
(1)障害者の処遇
障害者4名の勤務時間は、下記のとおりである。
Aさん:AM8:00~PM5:00までの間で、休憩時間1時間 8時間勤務
Bさん:AM8:00~PM3:00までの間で、休憩時間1時間 6時間勤務
Cさん:AM8:00~PM3:00までの間で、休憩時間1時間 6時間勤務
Dさん:AM8:00~PM5:00までの間で、休憩時間1時間 8時間勤務
内部障害のAさんと知的障害のDさんが担当する加工機製作作業と梱包作業は8時間勤務であるが、その他は6時間勤務を目安としている。基本的に就労勤務は6時間であるため、日々の健康管理面でも無理することなく、長く勤務を続けられる状況となっている。現に、最初の障害者が採用されてから、長い方で8年目の長きわたり仕事を続けられ、現在68歳であるが、いまも元気にいきいきと活躍している。
障害者にとっては、各職場において働き続けることが、「働きがい」であり、また、社会に参加している実感=喜びでもあると思う。
(2)今後の課題と展望
当社は製造ラインの自動化に伴い、製品の手直し作業の必要性から、その人手を採用することになったが、その際、その仕事を障害者にもその門戸を開放したことが、障害者雇用を取り組んだ最初のきっかけとなった。
最初は、どうようにコミュニケーションをとればよいのか、戸惑うことも少しばかりあったが、その杞憂も兄弟ペア(兄と障害者である弟がペアを組んで仕事に取り組む)での就労体制を実施して、障害者雇用の実績を積み重ねることができた。
現在は、4名の障害のある人が元気に働いており、そのいきいきとした活躍がその各職場において、さわやかな「風」を呼び込んでいる。そのことが、同じ仲間にも浸透して、彼らの元気な働きぶりに刺激され、職場全体がいきいきした「職場風土」を形作っている。
当社は、工業ブラシ専門メーカーとしてブラシ事業には特殊なノウハウを持っている。このため、全国各地から関係会社の方々が遠路はるばる訪れている。そうした事業所において、積極的な障害者雇用を推進していることは、大変意義のあることで、高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長から平成24(2012)年度障害者雇用優良事業所努力賞を授賞されたところである。
今後の展望としては、障害者雇用を通じて育んだ良好な「職場風土」を大事にしていき、地域社会に貢献できる企業として、さらに前進していきたい。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。