障害者の就労支援制度を活用して新規雇用と継続雇用へ繋げている事例
- 事業所名
- 株式会社セツ
- 所在地
- 鳥取県鳥取市
- 事業内容
- 遊技場業(パチンコ店)
- 従業員数
- 314名(法定雇用障害者の算定の基礎となる労働者数304名)
- うち障害者数
- 8名(法定雇用障害者の算定の基礎となる障害者数9名)
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 店内・駐車場清掃 聴覚障害 3 店内・駐車場清掃 肢体不自由 1 店内・駐車場清掃 内部障害 知的障害 3 店内・駐車場清掃 精神障害 - 目次
1.事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
弊社はサンヨーグループの傘下企業として、平成9(1997)年6月に株式会社セツとして開業し、パチンコ店のホールスタッフ、清掃スタッフが所属する会社として、パチンコ店舗の運営業務を行っている。
サンヨーグループは昭和20(1945)年リサイクル事業にて創業され、昭和50(1975)年に鳥取市にパチンコ店を出店し、アミューズメント業界に進出する。以後、パチンコ店「UFО」として営業エリアを拡大し、鳥取県内にとどまらず、島根県、兵庫県にもまたがり、全17店舗を展開している。
当グループはパチンコ店経営の他に様々な事業を展開している。具体的には、ボウリング場経営、外食事業(うどん専門店、スパゲティー専門店、仕出料理弁当・パチンコ店内の飲食提供販売)、環境リサイクル事業、不動産ディベロッパー(大型ショッピングモールなど)、ホテル事業などを展開する。近年では、鳥取県内では初となる場外舟券販売事業を手がけ、また直面するエネルギー問題に対応するため電力の自給化を目指しグループ所有の店舗施設屋上にソーラーパネルを設置しての太陽光発電事業にも取組んでいる。「遊」(あそぶ)・「食」(たべる)・「環」(環境)の3本を基軸とし、これからも新サービスや新事業を展開して行く予定である。
(2)障害者雇用の経緯
パチンコ店では、全ての業務や作業がお客様との直接対面での接客業務を基本としている。そのため、以前は接客業として障害者を接客させることはお客様の理解を得ることは難しいとの判断から、障害者雇用について、どちらかといえば消極的な姿勢をとっていた。しかし、近年は障害者雇用に対する社会全体としての理解の高まりや、障害者雇用に関する各機関からの働きかけもあり、地域に根ざした経営と地域社会への貢献を企業活動の目的として掲げる弊社では、障害者の社会参加への一助となればと考え、現在では障害者雇用に積極的に取組む姿勢へと転換した。
2.取り組みの内容と効果
(1)募集・採用
現在雇用している障害者は、全員がハローワークからの紹介により採用した人たちである。このようなこととなった理由は、ハローワークの障害者専門支援担当者が様々な機会を通じ、弊社との情報連携に努め、業務内容や作業内容を十分に理解いただいていた結果であると考えている。
障害者が実際に業務を行えるのかどうかは障害の程度からある程度判断はできるが、職場環境に適応できるかどうかは、実際に勤めてみなければわからない部分が大きい。特に障害者の雇用に関しては、受け入れる側の環境や体制の問題が大きく影響すると感じている。そのため、まずトライアル雇用制度を活用し、就業を希望する障害者が実際の職場で、業務を理解し職場環境に適応できるかどうか、会社側と障害者の双方で確認することが必要である。トライアル雇用期間中に就労に関する問題や条件を双方で確認整理し、就労環境を改善することで、トライアル雇用後の本採用を目指し、指導、教育に努めている。
(2)職場配置
職場配置については、トライアル雇用で行っていた職場であることや、弊社の行う業務の中で比較的お客様と対面での接客機会が少なく、また比較的お客様から理解を得られやすい業務等を考慮して、ホール内外の清掃業務を行って貰うことを主体に職場配置をしている。
(3)取組み内容と効果
障害者のトライアル雇用の後、実際に職場で勤務して貰う場合、障害者就業・生活支援センターからジョブコーチの派遣を依頼し、ジョブコーチと現場管理職が相談しならが障害者の指導にあたり、障害者の就労サポートと弊社の就労環境の改善を合わせた取り組みが、障害者雇用や継続的雇用に繋がっているものと考える。
実例を紹介すると、ハローワークから障害者Nさんの紹介を受けた。紹介されたNさんは、長く縫製の仕事に従事しておりパチンコ店での勤務は初めてであった。聴覚に障害があり、パチンコホール内はBGMとパチンコ台の発する音で日常生活と比較すると音量的に非常に高いものがある。そのような環境内で勤務することで、聴覚の障害が今以上に進行する可能性がないのか不安があった。
また、自宅から該当店舗までの通勤に要する距離が長いため車での通勤となり、通勤途上での事故や冬場の降雪や凍結に対する不安もあった。採用に関しては、ハローワークの障害者支援専門員を交えて十分な協議を行った結果、トライアル雇用制度を活用し実際の業務に従事する中で、弊社とNさんとの間で問題点について確認しながら、勤務して貰うこととした。
トライアル雇用期間中、現場での実務研修を実施する際には、障害者就業・生活支援センター「しらはま」よりジョブコーチの派遣をお願いし、ジョブコーチの指導の下、業務並びに就労に関する教育や指導を実施した。その結果、現場管理職とNさんとの間で指示命令や就労環境に関する問題はその都度解消され、周囲スタッフとのコミュニケーションも良好に行き、トライアル雇用後に正規雇用することとなった。
その後、問題なくしばらくの間勤務していたが、スタッフ間での人間関係の不調について悩んでいることがわかった。現場管理職が勤務中の表情から何か問題を抱えていることを察し、聞き取りを行ったがNさんは本当の気持を伝えることはなかった。しかし、本人がハローワークの障害者支援専門員に相談してNさんの悩みが弊社に報告された。そこで障害者支援専門員にも職場に出向いて貰って、関係者で協議を行った結果、関係者間の相互理解が深まり、大きな問題となる前に現場で対処することができた。
本来ならば社内で十分な相談体制をとるべきではあるが、障害者とのコミュニケーションは実際に難しい部分が存在している。第三者である障害者支援専門員が雇用後もNさんへのサポートをしてくれて、問題があれば会社へ相談していただけることから、弊社も問題を客観的に捉え、迅速な対応を実施することができ、弊社にとっても、雇用される障害者本人にとてもプラスに働いている。
現在、弊社では障害者は8名雇用しており、平均勤続年数は8.25年、最長では勤続19年になる従業員もいる。このように、弊社における障害者雇用に関しては各支援機関からの協力があり、障害者の雇用と共に、継続的雇用も比較的良好であると考える。
弊社の従業員の平均年齢は36.4歳と比較的に若い。若いスタッフにとっては、障害者と同じ職場で勤務することによって、接客業の基本となる人を思いやる心が養われ、人間育成についても良い効果が生まれている。
3.今後の展望と課題
弊社は、パチンコ店の他に多角的に様々な事業を今後も展開する予定である。地域で事業活動を行っていくうえで、地域に貢献することは企業としての使命であり、コンプライアンスに対する取り組みの一環としても、引き続き障害者雇用には積極的に取り組む必要があるものと考える。
多角的事業を展開することは、障害者個々が持つ得意分野を大いに生かせる職場を選択したり、配置転換できる機会が多いと考えられることより、障害者の能力開発や雇用継続、さらには雇用拡大に結び付けていきたい。
また、障害者雇用は一般従業員へも大きく影響を及ぼしており、地域貢献に対する会社としての使命や社会に貢献する意義など、企業人としてのモチベーションや人間育成に役立っている。障害者と一緒に業務に従事することにより、人の性格や長所を理解し、できることやできないことを見極め、できないことはできる人がカバーし、スタッフが連携し一体感を持ち、お互いに感謝しながら業務に向かう姿勢や取り組みが生まれ、職場の就労環境や就労意欲の向上にも効果も出ている。
今後一層、お客様の理解を得ながら、障害者が活躍できる業務を弊社のみならずグループ全社に拡大し、障害者雇用を通じ社会に貢献できればと考えている。
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