「障害者雇用のためのサポートチーム」から
『頼られ感謝されなくてはならないサポートチーム』の確立を目指して
- 事業所名
- 株式会社ジャパンディスプレイ鳥取工場
- 所在地
- 鳥取県鳥取市
- 事業内容
- 液晶パネル設計・製造、液晶モジュール設計
- 従業員数
- 584名(鳥取工場)
- うち障害者数
- 14名(鳥取工場)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 社内サポート業務 肢体不自由 2 一般職種 内部障害 5 社内サポート業務、一般職種 知的障害 6 社内サポート業務 精神障害 - 目次


1.会社概要、障害者採用の経緯
(1)会社概要
① 今後の課題
当社は、中小型ディスプレイ事業を営むソニーモバイルディスプレイ株式会社、東芝モバイルディスプレイ株式会社、株式会社日立ディスプレイズの三社を2012(平成24)年4月1日に統合し、新たに当社「株式会社ジャパンディスプレイ」を合併後の会社名として、従業員約6,000名で事業を開始したものである。各社の持つ優れた技術力を集結し、弛まぬ研鑽によってこれを進化させていくとともに、国内9拠点に7つの工場と4つのオフィスを構え、また海外5ヶ国に営業・製造拠点をもち、グローバルレベルの生産能力を発揮することで、ディスプレイ業界の進化をリードしている。
また、『美しい地球を次世代へ』を合言葉に地球環境の保全が人類共通の最重要課題の一つであることを認識し、中小型ディスプレイ製品及びサービスの提供を通じて人と環境を大切にし、社会とともに発展する企業をめざし、『想像力と創造力を大切に、人に心躍るLive Interfaceを届け、世界に新たな価値を生み出し続ける』べく事業運営を行っている。
② 鳥取工場の紹介
鳥取工場は1967(昭和42)年に前身である鳥取三洋電機株式会社の液晶ディスプレイ(LCD)事業からスタートし、激動の液晶業界を勝ち抜くべく、事業統合・合弁等の変遷を経て、現在は株式会社ジャパンディスプレイ鳥取工場として事業を行っている。
鳥取工場の変遷は以下の通りである。
1967(昭和42)年 | 鳥取三洋電機株式会社(現在、三洋テクノソリューション鳥取株式会社)の液晶部門の工場として開設 |
2004(平成16)年 | 三洋エプソンイメージングデバイス株式会社鳥取事業所となる。 |
2006(平成18)年 | エプソンイメージングデバイス株式会社鳥取事業所となる。 |
2010(平成22)年 | ソニーモバイルディスプレイ株式会社鳥取事業所となる。 |
2012(平成24)年 | 株式会社ジャパンディスプレイウェスト鳥取工場となる。 |
2013(平成25)年 | 株式会社ジャパンディスプレイ鳥取工場となる。 |
現在は従業員数約580名で、これまでの変遷で培った技術を根底に車載分野を中心としたアモルファスシリコンTFT液晶パネルの設計、生産及び液晶モジュールの設計を手掛けている。
また、鳥取工場は鳥取市の中心部に位置し約45年に渡り地域に根付く工場として、社会貢献活動や地域環境活動も積極的に行っている。
(2)障害者雇用の経緯
鳥取工場の障害者採用は2011(平成23)年よりソニーモバイルディスプレイ株式会社(以下「SMD社」)としてスタートした。
鳥取三洋電機株式会社からエプソンイメージングデバイス株式会社鳥取事業所時代の「鳥取工場」では、身体障害者5名を雇用していたが、両社とも「特例子会社」を設立していたため、新規の障害者採用は行っていなかった(2011(平成23)年4月鳥取工場単独の雇用率は 0.7%)。
その後、「鳥取工場」はSMD社の鳥取工場となるのであるが、鳥取工場との統合前の同社は、法定雇用率を満たしていた(2010年6月1.88%)が、鳥取工場との統合により法定雇用率を下回ってしまった(2011年6月 1.18%)。
これを受け2011(平成23)年4月、SMD社各工場で雇用率2.0%以上を満たすという方針がだされた(鳥取工場は、新たに8カウントの採用が必要であった。)。
鳥取工場で障害者採用をスタートするにあたり、まずは人事総務部門内で業務内容等を検討し、また社内のダイバーシティ(多様性の受容)推進委員会から職場の意見を集約し工場全体で業務の検討を行った。加えて、これまで障害者雇用の実績があった他工場のノウハウや意見を参考にし、最終的に2011(平成23)年9月鳥取工場内のサポート業務(従業員サービス・環境活動・社会貢献活動等)を担当するチーム(以下「サポートチーム」という。)を立ち上げることを決定した。
サポートチームの業務内容は、定型的かつ作業マニュアルに沿って行うことを基本としたため、知的障害者をターゲットとし採用活動を行った。また同時にサポートチームの管理監督者、及び立上げメンバーも必要となるため、身体障害者の採用も行なった。
サポートチームの立ち上げ時点での採用想定人数は
管理監督者(身体障害) | 2名 | |
立上げメンバー(身体障害) | 2名 | |
作業メンバー(知的障害) | 4名 | であった。 |
我々にとっては初めての障害者採用となるため、2011(平成23)年11月ハローワーク主催の「障害者就職面接会」に参加し35名の入社希望者との面接を行い、その後当社採用試験を経て最終的に7名(8カウント)を採用した。
管理監督者(内部障害) | 1名(1カウント) | 2011年12月入社 |
立上げメンバー(内部障害) | 2名(2カウント) | 2011年12月入社 |
作業メンバー(聴覚障害) | 1名(2カウント) | 2011年12月入社 |
作業メンバー(知的障害) | 3名(3カウント) | 2012年2月・4月入社 |
この結果、2012(平成24)年4月時点の鳥取工場単体の雇用率は2.04%となり会社方針に達した。しかしながら会社全体では達しておらず、また2013(平成25)年4月に法定雇用率が1.8%から2.0%へ引き上げられることなどから、2012年度も継続して採用活動を行い、新たに知的障害者3名を採用し、現在(2013(平成25)年1月)知的障害者は6名になった。
【障害者雇用率の経緯】
年月 | 障害者雇用率(%) | ||
法定雇用率 | 鳥取工場 | 会社全体 | |
2010年6月 | 1.8 | 0.72 | 1.88 |
2011年6月 | 1.8 | 0.73 | 1.18 |
2012年6月 | 1.8 | 2.04 | 1.57 |
2013年6月 (見込み) | 2.0 | 2.54 | 2.11 |
2.障害者雇用の取組みと効果
サポートチームは総務担当部門に配置し、主に従業員サービス・環境活動・社会貢献活動等に関る業務を中心に2011(平成23)年12月に発足した。サポートチームの立上げから、現在(2013(平成25)年1月)に至るまでの取組みを紹介する。
(1)サポートチーム立上げ決定から現在までの取組み
サポートチーム立上げ決定から現在までの取組みは下表の通りである。
業務項目・目的 | 作業方法 | スケジュールの見える化 | |
第1ステップ 2011年9月 〜 2011年12月 |
候補業務のピックアップ
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作業方法の検討
|
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第2ステップ 2011年12月 〜 2012年2月 |
業務試行、問題点の抽出
|
作業方法の決定
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タイムテーブルの作成
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第3ステップ 2012年2月 〜 2012年4月 |
業務試行、更なる問題点の抽出
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作業マニュアルの改善
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タイムテーブルの見直し
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第4ステップ 2012年4月 〜 現在 |
チーム総合力のUP
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チームMTGの実施
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スケジュールボードを設置
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(2)サポートチームの業務内容
現在のサポートチームの業務内容・効果・1回に要する時間・頻度は、下表の通りである。主に従業員サービス・環境活動・社会貢献活動等を目的とした業務が中心となる。
【サポートチーム業務内容】
業務名 | 効果 | 時間/回 | 頻度 | |
1 | 社内郵便集配 | 従業員サービス・効率化 | 45分 | 3回/日 |
2 | 共用スペースパトロール | 省エネ、従業員サービス | 45分 | 2回/日 |
3 | エコキャップ回収 | 社会貢献、ECO | 30分 | 3回/週 |
4 | 機密文書シュレッダー | 環境、機密情報の漏洩防止 | 60分 | 2回/日 |
5 | 社有車管理 | 安全、従業員サービス、遵法 | 30分 | 1回/日 |
6 | 来客用会議室備品管理 | カスタマーサービス、省エネ | 60分 | 1回/日 |
7 | 構内駐車場管理 | 従業員サービス、規律・規範 | 60分 | 1回/月 |
8 | 防災設備点検業務 | 安全、遵法 | 60分 | 4回/年 |
9 | 構内緑地管理 | 環境、経費削減 | 60分 | 6回/年 |
10 | 更衣室・下足箱管理 | 従業員サービス、規律・規範 | 30分 | 都度 |
11 | 各種イベント対応 | 社会貢献、従業員サービス 等 | 60分 | 都度 |
サポートチームのメインとなる業務を3つ紹介する。
① 社内便集配
<業務内容>
メールセンター(郵便物集荷場)から各職場宛へ封筒を届け、各職場から発送する封筒を回収しメールセンターへ持ち帰る。回収した封筒は、職場毎に仕分けし次回の集配時に届ける。作業は二人一組で2班に分かれ1日3回行う。
<目的>
構内には6つの建屋があり各建屋に職場が点在している。従業員が各々送付先へ持ち運ぶと非常に非効率である。社内便集配を行うことで、従業員が持ち運びしなくても決まった時間に封筒を届けることができる。
<効果>
従業員サービス、従業員の業務効率アップである。

② 共用スペースパトロール
<業務内容>
休憩室、更衣室等の共用施設の什器備品(椅子・テーブル・ロッカー・ウォータークーラー等)の維持管理を行う。電気・エアコンの切り忘れ、設定温度の確認も同時に行う。点検表に沿って確認・記録し、結果を月単位で公開する。作業は二人一組で2班に分かれ1日2回行う。
<目的>
従業員が日々使用するスペースを快適に過ごせるよう維持管理する。不要な電気の消灯・エアコンの設定温度を守る等、省エネ活動を行うことで経費削減へ繋げる。月単位で結果を公開し従業員の省エネ活動への意識啓発を目指す。
<効果>
従業員サービス、省エネ、従業員の意識啓発である。

③ エコキャップ回収
<業務内容>
各建屋に設置されている「エコキャップ回収BOX」からキャップを回収し、エコキャップ推進協会へ届ける。キャップは、汚れ・不要物を取り除いた状態にする必要があり、シール剥がし・洗浄・乾燥の作業を行い綺麗にする。
作業過程は、月曜日に回収とシール剥がし、火曜日に洗浄と乾燥、水曜日に計量と集計を行う。エコキャップ推進協会へ月1回まとめて届ける。
<目的>
キャップを綺麗にしてエコキャップ推進協会へ届けることで、世界の子供たちにワクチンを届けることができる。また、自分の業務が世界の子供たちの命を救うことに役立っているということに喜び・やりがいを感じてもらう。
<効果>
社会貢献、ECOである。

(3)作業メンバーの日常管理
サポートチームは、知的障害・聴覚障害・内部障害を持ったメンバーが協働している。全員が他人の障害を理解し、助け合い、より良い会社生活となるように以下の取組みを行っている。
① AS管理マップによる心身のケア(Associate Safety "協調・調和・安全")
社内他工場で使用されている「AS管理マップ」を活用し、体調・気分、自分で設定した「今月の守ること・目標」が守れたかを日々記入させている。これを行うことで、管理監督者が作業メンバーの日々の体調面・精神面の把握ができ、スケジュール・業務内容の考慮、心身のケアを行っている。
② パソコンを使用した業務日報の作成
作業メンバー全員に「日報」の作成を業務化した。記載項目は、【やったこと、気づいたこと、分からなかった(迷った)こと、共有したいこと、その他】である。また、PC操作を習得するため、手書きではなく最初半年間はWord、その後Excelでの作成としている。
その結果、入社当時は文字入力ができなかったメンバーも、今ではPC操作を行うことが可能となった。作成した日報は夕会で報告している。
③ 朝会・昼会・夕会の実施
業務の予定を理解しやすくするため、朝会・昼会・夕会を行っている。
朝会は始業後15分間で行い、午前中の業務予定・ペアをスケジュールボードで確認する。昼会は昼休憩後15分間で行い、午後の業務予定・ペアをスケジュールボードで確認する。また、手話勉強会も昼会の中で行う。夕会は人事総務担当者も加わり1日のまとめとして、終業時間前30分間で行う。主に、作成した業務日報を発表(自分の書いたことを相手に伝える訓練)しメンバー全員で共有すること、問題・課題点をその日に解決すること、及び上司・人事総務担当者からの情報共有を中心に行っている。
④ 手話5分間勉強会
聴覚障害者とのコミュニケーションは、主に筆談で行っていたが、更なる意思疎通を図るため、聴覚障害者が先生となり昼会の中の5分間を用いて手話勉強会を行っている。
今では手話を交えてのコミュニケーションがとれており、手話を通じて他人の障害を理解し、相手の立場に立ち考え行動することで、コミュニケーションの大切さをより一層感じ、お互いがより良い会社生活を送る礎になっている。
⑤ 自己啓発の推奨
会社の中では、担当する業務を早く覚えミスなく行うことも大事ではあるが、仕事以外の自己スキル向上も期待している。自分の得意分野にチャレンジすること・短期的に目標をもつことが、モチベーション・自己スキル向上に繋がると考え自己啓発を推奨している。
2012(平成24)年度は、6月に開催された「鳥取県障害者技能競技大会」へ2名出場し内1名が金賞を受賞した。また、県からの推薦を受け10月に開催された「全国障害者技能競技大会」へ1名出場し努力賞を受賞することができた。
練習の成果が結果に結びついて喜ぶメンバー、また悔しい結果を受け止め次への挑戦を決意したメンバー等、様々であった。この経験により、あきらめずに努力・練習することの大切さ、再チャレンジへと気持ちを切替えた勇気等、これらを実践で学び少しずつ成長している様子が見受けられた。


⑥ 外部機関・養護学校等との交流
障害者雇用を進めていく過程で外部機関との連携が密となり、サポートチームへの見学・実習の申入れがあり積極的に受入れを行った。見学は外部機関・養護学校の先生、実習は1週間程度で養護学校高等部の生徒(知的障害・精神障害)を受入れた。
また、福祉施設で製作された商品の社内販売を行い、サポートチームメンバーも販売支援を行った。このような受入れを行うことで、我々が気づかなかったことや他社での参考事例等のアドバイスを受けることができた。作業メンバーにとっては、先輩として初めて業務の指導、日常のフォローを行うことで気づきの場となった。
今後もサポートチームへの見学・実習の申入れがあれば受入れ、サポートチームの気づきの場としていきたい。


3.まとめ
これまで従業員へダイバーシティ教育を行ってきた。
ダイバーシティ教育の理念は、個々の「違い」を受入れ、相手を認めて活かしていくこと・自分と異なる人の立場、価値観を理解し尊重し受入れ、相互支援・相互成長することである。サポートチーム発足により従業員が障害者と接する機会が生まれ、机上ではなく「生のダイバーシティ教育」となり、真のダイバーシティの理解が深まっている。
一方サポートチームに関しては、現在も少しずつ成長している。まだまだ、職場を支援する業務は工場内に存在しているが、これから更なる業務創出を行い、「障害者雇用のためのサポートチーム」ではなく『頼られ感謝され、なくてはならないサポートチーム』の確立を目指していく。
作業メンバーにおいては自己スキルアップに励み、サポートチームから他職場へ活躍の場が広がるよう期待したい。また、「夢」をもち、その「夢」が実現できるよう会社としてバックアップをしていきたい。
最後に、「障害者就業・生活支援センター(しらはま)」及び関係機関との連携が障害者雇用を行う上で、非常に重要であると感じた。現在も各専門機関と連携を取りながら障害者のケアを行っている。助言・指導をいただき本当に感謝している。
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