~社員同志お客様の心で~
「明るく・楽しく・元気よく」をモットーに
-価値観の共有による社員の意識改革-
- 事業所名
- 株式会社 さんびる
- 所在地
- 島根県松江市
- 事業内容
- ビルメンテナンス、スポーツ教室・各種教室運営
- 従業員数
- 800名
- うち障害者数
- 24名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 1 施設内清掃業務 肢体不自由 4 施設内清掃業務、事務 内部障害 8 施設内清掃業務、警備 知的障害 6 施設内清掃業務 精神障害 5 施設内清掃業務 - 目次

1.事業所の概要
(1)沿革
当社は、昭和52(1977)年4月に株式会社山陰ビルサービスとして設立(創業:昭和38(1963)年)。現在の社名は平成17(2005)年10月に変更して現在に至っている。松江市に本社を置き、山陰地域(鳥取、米子、安来、松江、出雲、浜田)・山陽地域(岡山、倉敷、広島、山口)に多数の事業所を展開する。業務内容はビルメンテナンス(総合清掃、設備管理、保安警備、環境衛生、人材派遣、エアコン・ハウスクリーニング)、指定管理(福祉施設運営、スポーツ施設運営、イベント開催、貸し館等)、スポーツ教室運営・各種教室、経営サポート事業、SKプラザ(温泉・温泉プール、アスレチックジム、体操・文化教室等)である。平成14(2002)年9月にISO9001認証取得を初めとして、平成19(2007)年12月にISO14001を認証取得し、平成21年(2009)2月にISO27001を認証取得している。
(2)「明るく・楽しく・元気よく」をモットーとする価値観の共有による社員の意識改革の取組み
ここで、まず伝えたいことは、「現在に至るまでの当社の道程は、決して順風満帆に進んできたわけではない」ということである。正直、業務上うまくいっていないといえる企業の実態が当社にあった。例えば、清掃をする会社の社員であることを人に話す社員があまりいなかったことなどが分かりやすい事例といえる(「清掃業務はカッコ悪い」と人に隠していることが本音だったのかもしれない。)。また、社内では、社員同士での諍(いさか)い・葛藤等が多くあるなど多方面において問題点が見え隠れしており、「早急に改革に取り組まないと、このままでは当社があやまった方向に進んでしまう」と気づいていた一人が田中現社長(以下、「社長」と呼ぶ。)であったとのことである。
社長は昭和54(1979)年に入社し、以後、営業現場、各地区の責任者を務め、平成13(2001)年に代表取締役専務、平成18(2006)年に代表取締役社長に就任という経歴を持ち、その過程において当社全体の沿革・現場状況・問題点等の状況を的確に把握しており(現場で障害者と一緒に働いた経験もある。)、当社の現場をきちんと歩んできた社長であるからこそ当然に愛社心があり、その集大成として改革に取り組む必然性があったといえる。改革は平成13(2001)年から取り組まれた。その取り組みは次のとおりである。ここで重要なことは、社長自らが本気でやってみせて、社員にその見出す価値観等を気づいてもらい、社員に本気で自主的に実践させるということである。
"胸を張って「さんびるで働いています。」と言える会社にしない限り、未来がない…"
-「明るく・楽しく・元気よく」 夢のあるいい会社をつくろう!-
① 社訓・経営指針・経営理念を全社員に認識・浸透させること。
② さんびるグループ共通となる次の取り組みの創設
- スローガン「お届けします! きれい、安心、そして感動を!!」
- 経営と活動の原点として
○ 三やる運動
いまやる・・・優先順位をつけて今やることから実行する。
すぐやる・・・簡単なことはすぐにやる。後に回すな。
早くやる・・・一つのことを早くやることを考える。だらだらやらない。
○ お客様の為に
良いと思うことはすぐにやる。もっと良いと思う方法が見つかったらすぐに変更する。間違いだと思ったらすぐに止める。 - 環境整備の徹底
環境整備活動を経営の基盤として全ての職場で展開する。
環境整備点検と現場点検によって文化を作り上げる。 - C4戦略(シーフォー戦略)
わたしたちは | |
チャレンジ | 挑戦します |
Challenge |
やってみる!やりながら考えよう! やらないことの怖さを知ろう! |
チェンジ | 変革します |
Change |
変わることが成長の源です! 成長しませんか!一緒にもっと豊かな未来を! |
コミュニケーション | 調和します |
Communication |
人は言葉があって脳がある。それが邪魔になってしまうことがある。もっと素直に心を開こう! |
キャパシティ | 輝きます |
Capacity |
自信を持とう!世界でたった一人の自分に! そして輝こう!世界で一人の自分を輝かそう! |
この価値観等に関連することとして、興味深い当社独特の取り組みがある。
当社では、毎年3月のグループ経営方針発表会において社長自らが各年度の「考え方」や「価値観」(これを当社では「マグマ」と呼ぶ。企業は、その根底にマグマを持つ、それは目に見えない大いなるもの、それは「考え方」や「価値観」であるとする。)を発表する。つまり、新たな価値観を共有するために社長がメッセージを送るのである。例えば、平成21(2009)年のマグマは「社員同志はお客様」、平成22(2010)年のマグマは「感謝と報恩」、平成23(2011)年のマグマは「命の大切さ」、平成24(2012)年のマグマは「時を制するものは、未来を制する」となる。
平成21年の「社員同志はお客様」とは、お互いにその人を尊重しようということである。当社は社員が社長を田中正彦さんと呼ぶことになっており、徹底されている。このように、トップを氏名で呼ぶことで、お互いに尊重し合い、気兼ねすることをなくす目的を持ち、組織に一体感を呼び込む狙いがある。まさに、「夢のあるいい会社を作ろう」という決意が窺われる一面といえる。
また、このプロセスでは、①社長がメッセージを発信し、②マネージメントスタッフが社長をサポートし、社員・関係者全員にメッセージを浸透させる、という手法を用いている。ここで大切なことは、多忙な社長であるが、「経営方針発表会」、夏の「納涼会」、冬の「望年会」において社員と直接会って話し合う機会を設けており、親密感・一体感を保っていることである。また、毎年、全社員に日頃の感謝の気持ちとして誕生日プレゼントをしており、誕生日のその日に必ず誕生プレゼントが届くように配慮しており、社員の驚き・感動を呼んでいる。
障害者雇用においても、改革により常に考えながら行動する習慣を身に付けてきているので、どの社員も戸惑うことはない。特に、「社員同志はお客様」…お互いにその人を尊重しようという価値観を共有していることも重要な要因である。さらに、改革のリーダーである社長自身が現場で障害者と一緒に働いた経験があるという事実は、当社において障害者雇用を行う上で大きな「資産」であるといえる。当社の障害者雇用では「障害者だから何かをしてあげるというわけではない」、先輩社員がバックアップし育ててあげようという価値観が社員一体的に醸成していっており、その結果として、障害者に限らず、どの社員も安心感を保ち、社員全体に一体感を呼込む。たとえ、問題が起きたとしても、「理想の姿へ」という各自の価値観の醸成から、社員各自の判断基準等で対応することで、多くのことは解決することが可能である。その証として、当社の障害者雇用率は2.46%であり、ただ高いだけではなく、各自会社の戦力となって貢献している。このことも、社長が手掛けてきた改革が大きく作用している一面といえる。
2.障害者の現場業務での取組み
(1)Aさん(男 性) 入社15年
勤務場所:地方自治体の関連施設
職務内容:清掃業務
勤務時間:午前7:00〜午後2:30(休憩:午後12:00〜午後1:00)
Aさんの信条:"考えて仕事をすることが信条。次の手順は…、その次は…まさに継続は力なり"である。

Aさんの1日はモップ洗い(濯ぎ、乾燥)、仕事の用意、ロビー清掃(掃き拭き)、各館の廊下・渡り廊下の清掃、屋上・控室等の清掃、給湯室の茶殻等の生ゴミ処理、シンク洗いを順番に行い、昼食休憩となる。午後からは、一部本館の清掃、別館給湯室の茶殻等の生ゴミ処理、シンク洗い、控室の清掃等を状況に応じて的確に行う。
正直ここで驚いたのは、1日の始まりから終わりまでの仕事の順番・手順等をすべて頭の中に記憶しており、作業手順書を見ることなく話していただいたことである。業務を管理する上司は「言われたことに対し、忠実にきちんと行う」と評価する。Aさんは入社15年のベテランであり、仕事の順序・手順等において、常に流れをイメージし、考えながら進行させていくことを普段から特に意識してきたのである。もし、状況判断で難しい場面にあたったとしても、普段から状況を考え、次の場面を意識して基本忠実に仕事を進めているため、大きな間違えを起こすことはない。このことは、この業務を長年勤めた上で培ってきた本人の大切な「資産」といえる。
(2)Bさん(女 性) 入社2年
勤務場所:(Aさんと同じ)地方自治体の関連施設
職務内容:清掃業務
勤務時間:午前7:30〜午後4:30(休憩:午後12:00〜午後1:00)
Bさんの信条:"積極的に・前向きに行動、プラス思考で、常に漸進前進"である。

Bさんの1日はロビーの清掃(掃き拭き)、施設本館・別棟のトイレ清掃、給湯室の茶殻等の生ゴミ処理、シンク洗いを順番に行い、昼食休憩となる。午後からは午前以外の場所での他の社員の手伝いを行う。
とにかく任された場所の業務を順序よく時間どおりにテンポよく一生懸命に遂行する。また、午後からの、他の社員の業務手伝いにおいても、きちんとフォローすることを目標に、相手の立場に立って業務を行うことを心掛けている。業務を管理する上司は「積極的に、前向きに取り組み、何か新しいことをすることに喜びを見出す」と評価する。
実は学生時代に陸上部に在籍しており、短・中距離、走り幅跳びなど幅の広い種目を得意にしている。平成21(2009)年新潟県で開かれた第9回全国障害者スポーツ大会に出場し、走り幅跳びで4m56cmの大会新記録で優勝、また、平成23(2011)年山口県で開かれた第11回全国障害者スポーツ大会に出場し、走り幅跳びでは銀メダル、400m走では銅メダルと全国で大活躍を収めている。仕事に対するモチベーション・ポジティブ面・持久力保持・礼儀作法の原点が陸上にあることが特長であるといえる。
ここで、AさんとBさんに質問をした。
Q: | 最初は慣れないことが多く、わからないことが多くて困ったが、いろいろ経験する上でだんだんにうまく出来るようになって、今では得意になったことも多いと思いますが、それをできるようになるために、どのように頑張ってきたのか教えて下さい。 |
Aさん: | まず、時間が決まったら、どの手順で回るのか、どのようにして次の仕事に移るのかということを考えながら仕事をしています。 |
Bさん: | 前向きに、先輩方が言われたことを忠実に行っていき、頑張ってきたことです。 |
Q: | 例えば、働いてきた中で成功も失敗もあったと思いますが、どういうことが得意になった・自信が持てるようになったのか教えて下さい。 |
Aさん: | 自分は仕事を通して「こう改善する」「このようにして、こうする」ということを組立てながら仕事をしています。 |
Bさん: | 仕事を任されたりすると自分でも自信がついてくるし、(他の社員を)手伝っている時も「ありがとう」といわれると本当にうれしいですし、本当に自信がついてきて、自分が前へ前へ進んでいるのだと感じます。 |
Cさん(男 性) 入社8年
勤務場所:市内総合病院
職務内容:廃棄物分別業務
勤務時間:午前8:00〜午後5:00(休憩:午後12:00〜午後1:00)
Cさんの信条:"自分の努力で培ってきた技術、誰にも負けない揺るぎない自信、常に自然体"である。

Cさんの主たる業務は、ゴミの最終分別であり、「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」の回収運搬、再点検、廃棄物の分別等である。長年この業務に携わってきており、この業務の大切さを当初はジョブコーチ、上司、同僚等に徹底指導され努力し必死に学んできた。そして、今では、再点検・分別において間違えないという絶対の自信を身に付けおり、この業務においては誰にも負けないという姿勢で日々その日の業務に取り組む。
業務を管理する上司は「真面目で、集中して業務に取組んできた。分別等で間違いがないという、この上ない成長を遂げている。まさに、大きな戦力である」と評価する。とにかく、自信を持って、生き生きとした表情で、明るく、楽しそうに働く姿が印象的であった。
ここで、Cさんに、集中して質問をした。
Q: | この部署で働かれていろいろ苦心されたことはありますか。 |
Cさん: | 分別が大変でしたが、日々の努力等で克服することがでました。 |
Q: | 誰にも負けないことはありますか。 |
Cさん: | 分別は絶対に間違えない、100%の自信があります。 |
Q: | 誰にも負けないことはありますか。 |
Cさん: | 分別は絶対に間違えない、100%の自信があります。 |
Q: | 得意なもの、熱中できるものはありますか。 |
Cさん: | スポーツが得意で、今ソフトボールをスポーツクラブで行っています。体力・持久力が身についてきて、仕事においても長続きできています。 |
Q: | 同僚・家族に感謝することはありますか。 |
Cさん: | 仕事場の方々に良くしてもらっています。また、家族にも良くしてもらっています。 |
Q: | 今後の目標を教えて下さい。 |
Cさん: | 継続的にがんばっていきたい。 |
Q: | この会社に入って、この仕事をしてよかったことを教えて下さい。 |
Cさん: | いい会社に入れて、同僚にも恵まれ、生活・仕事も充実しており、うれしいです。 |
3.今後の課題と展望
当社は、社長自ら価値観の共有をもとに意識改革を行ってきた。その過程で、人と人との絆の重要さを社員が認識し、その糧として組織の成長を生み出してきた。今後とも社員全体で日々切磋琢磨していき、さらなる発展のために新たな礎を見い出し、あらゆる成長に繋がる課題に取り組んでいくという。
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