共に育ち、共に生きる
~共働から生まれる喜びそして感動~

1.事業内容等
(1)事業概要
当社は昭和59(1982)年10月に社会福祉法人ひまわりの会後援会の有志が中心となり、障害者の就労による社会自立のために設立された会社である。
倉敷化工株式会社の産業用防振ゴムの生産請負として、同社から設備の貸与と技術指導を受け、受託業務を行っている。
事業形態としては一般就労となり、正規雇用社員の就業時間は8時〜17時、17時〜深夜2時の休憩をはさみ8時間2交代制となっている。
就労を通じて障害者が社会人として経済的にも自立した生活が送れるようになること、また働く場の提供とその権利の保障、社会人として社会への貢献を目指している。そして障害者と障害のない人が手を繋ぎ、多くの仲間と協力して共に生きることを通じて就労の喜び、自立して生きることの喜びを分かち合うことを理念としている。

・当社各工程
![]() 金具処理
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![]() ゴム精練
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![]() 成形
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![]() 検査
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・産業用防振ゴム


(2)知的障害者を中心とした事業運営
① 人員構成
当社は全社員78名のうち54名(出向受入3名を含む)が知的障害、精神障害の社員で構成されており、障害者を中心とした事業運営を行っている。
製造ラインの主工程はすべて障害者が工程を担当し、基本的な作業内容については障害者同士で指導、補助を行う。障害のない人は業務管理を中心に全体の作業指導と障害者には危険な作業などを担当している。
② 就労内容
障害者の個々の能力、個性に合わせて配置を適正化している。障害が重度か軽度かではなく、障害者自身で何ができるか、何が得意で何が苦手なのかを考え、作業内容を工夫し、その工程を担当している。また、特性に合った作業内容の職場への配置により各人は能力を発揮し成果を出している。
その結果として、重度知的障害の方でも高度な作業を担当することができ、雇用している障害者54名のうち約半数の26名が重度知的障害者と高い比率での雇用を実現している。
株式会社キョウセイ人員構成
障害者 | 障害のない者 | パ-ト | 出向受入※ | 合計 | ||||||
男 | 女 | 男 | 女 | 男 | 女 | 男 | 女 | 男 | 女 | |
人員 | 41 | 10 | 15 | 4 | 1 | 3 | 3 | 1 | 60 | 18 |
合計 | 51 | 19 | 4 | 4 | 78 |
※障害者3名
重度 知的 |
軽度 知的 |
精神 | 合計 | |
人員 | 26 | 27 | 1 | 54 |
重度知的障害者でも作業内容を標準化し、習熟することや、加工や組立てに当たっては部品や工具の作業位置を指示、誘導するために用いる器具や設備の工夫によって複雑な成形プレスの作業を障害のない人と同じようにこなすことができている。
自閉傾向のある人などはルーチン化された作業に配置することにより作業実績において大きな成果を出している。これらのことは各人の自分の担当職務に対する自信とプライドを持つことに繋がり、結果に対して責任を持って就労することに結びついている。
2.取り組みの内容
(1)障害者雇用事業所と企業、支援団体の一体となった雇用の安定
障害者が社会人として就労し、社会生活を送るにあたり、まず生活の基盤が安定していないことには社会生活の安定は成り立たない。
我々株式会社キョウセイを就労の場として、発注事業主である倉敷化工株式会社、生活の場である家庭、グループホーム等を事業運営する社会福祉法人ひまわりの会を中心とした生活支援がお互いに緊密な連携を築き、安心して働くことのできる安定した就労環境を構築している。

- 社会福祉法人ひまわりの会を中心に倉敷障がい者就業・生活支援センターからの生活面での支援
- 倉敷化工株式会社からの安定した業務発注と技術支援
- 株式会社キョウセイの安定した就労環境
(2)障害者の就労に向けての取り組み
① 本人の就労に対する意欲・努力のサポート
社会人として就労するということは、勤労し収入を得て経済的な自立を確立することであるが、同時に社会人としての責任も果たさなくてはならない。
そのためにはまず本人の就労に対する意欲と努力が必要で、これが一番大きな要素となる。本人の作業能力の優劣よりもまずは社会人として規則正しい生活を守り、遅刻や欠勤をしない、勤務時間内は集中して作業を行うなど社会人として必要な責任を果たさなくてはならない。そのためにはまず本人の意欲と努力が必要になる。作業能力の優劣はその人の特性に応じた作業内容の部署への配置、また、作業道具等の工夫を行うことによりサポートを行っていく。
社員の5つの誓い
- 和の心を持って共に生きることを誓います。
- 礼節を重んじ秩序を守ります。
- 使命の達成に力闘します。
- 報恩感謝の心を大切にします。
- 産業人として社会に貢献します。
② 障害者の習熟と成長
障害者で基本的な作業能力が高くない場合でも、適性を見極め、適切な作業内容を担当した場合にはこちらも驚くような集中力と実績を出される人がいる。実績が出るようになると自分とその作業に自信を持ち、その作業を担当していることにプライドを持って取り組むようになる。自信を持つことが成長に繋がり、さらに次のステップへと結びつく重要な成功体験になる。
③ 障害者同士による指導、教育
習熟が深まり、作業内容の理解も十分に達した人はラインの中で指導的な立場へとステップアップを行っている。他の作業者への指示、指導を行い、新入社員や実習生への教育も障害者が行っている。
ラインサイドでの指示、判断は作業者の中でリリーフマンと呼ばれる人が行い、リリーフマンでは判断が難しいところは常時携帯しているインカムにて障害のない社員に問い合わせをして判断を仰いでいる。このように責任ある立場を任されることでさらなる成長のステップとなっている。
④ 作業環境の改善
障害者でも安心して、安全に働くことができるよう、技術支援元である倉敷化工株式会社の社員と共に作業内容の改善活動を行っている。
どの作業に無理があるのか、より効率的、効果的にするためにはどうすればよいのかを皆で知恵を出し合い、改善を進めている。改善した作業工程がシンプルになれば自ずと出来高も向上し、作業者も辛いばかりで成果が出ない状態から効果が出る状態に変化し、働きがいのある作業となる。


改善事例

(濃い青なら10gなど)


3.今後の展望と課題
(1)高齢化対応について
当社も創設より約30年となり、50歳を超える社員の割合が年々増加している。肉体的にも負荷の高い作業が困難になる、作業にミスが目立ち始めるなどの現実に対して雇用を確保しつつどのようにその人に合った作業内容を見つけることができるか、また、作業道具等の改善により今までは若い人でなければ難しかったような作業でも、高齢の人まで対応可能な作業へと変革していくことができるかなどの対応が必要となっている。
(2)地域への貢献、情報発信について
地元の支援学校を始め、障害のある子どもの保護者等に当社で様々な特性の人が様々な内容の作業でそれぞれ自信を持って働いている姿を見学して頂く機会を増やして行きたいと考えている。
支援学校などに通われている障害の子どもの保護者とお話をさせて頂くと、自分の子どもの将来に向けて不安を抱えている方が非常に多くおられることに気がつく。その不安の原因のひとつには、障害者が将来自立していくためにはどのような選択肢があるのか、なかなか見えづらいこともあるように感じる。
このような状況の中で当社としては規模の問題もあり簡単に雇用を拡大する訳には行かないが、積極的に当社を様々な人に観て頂き、どんな障害がある人がどういった作業を業務にして働いているか、実例として観て頂くことができれば、その人が当社に就労することは困難であったとしても、今後の選択肢の中で様々な可能性が具体的なイメージを持って前向きに検討する機会になることができると考えている。
(3)事業としての課題について
障害者を多数雇用している現状を踏まえ、経済的かつ社会的基盤としての当社の存在はとても大きく、我々に与えられた使命と責任は重大であると痛感している今、更なるステップアップのための作業改善と収益性の向上が今後の課題である。事業の安定経営としては報奨金や助成金などの収益を有効活用し、今後の業務改善や作業環境の整備へ推進・展開して参りたい。
最後に、創業者が理念として掲げた「三共の心」。
「共に」に込められた創業者の思いは、地域、社員、家族、支援機関等多くの人たちと共に手をたずさえて行こうというものである。
今後、時代は変わっても様々な方々の寄り添う気持ちに常に耳を傾け、元気に明るく真摯に生きることの意味を共に感じて歩んでいきたい。
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