職場実習による知的障害者の受入れで雇用を拡大
- 事業所名
- ヤマト運輸株式会社 秋田主管支店
- 所在地
- 秋田県秋田市
- 事業内容
- 運輸業
- 従業員数
- 1,225名
- うち障害者数
- 18名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 2 集配ドライバー、伝票処理 肢体不自由 10 集配ドライバー2、一般事務3、荷受、電話オペレーター2、伝票処理2 内部障害 1 ルート配送 知的障害 2 仕分け作業、伝票処理 精神障害 3 受付事務、仕分け作業2 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
ヤマト運輸株式会社秋田主管支店が設立されてからおよそ30年になるが、障害者雇用に取組み始めてから20年になる。ヤマトグループにおいては、障害者の自立と社会参加への支援を目的として、平成5(1993)年にヤマト福祉財団が設立された。秋田主管支店の障害者雇用の始まりもこの時期に重なる。
秋田主管支店は、県内に37事業所があり、障害者の働く場は主管支店を含め8事業所となっている。
(2)障害者雇用の経緯
平成5(1993)年にヤマト福祉財団が設立されたのを機に、ヤマト運輸全社が一体となって障害者雇用を積極的に進めようとの機運が起こった。秋田主管支店においても、同年に身体障害者を雇用したのが初めての障害者雇用であった。現在その人は、退職しているが、その後は定期的に障害者雇用を進め現在(平成25(2013)年7月)18名の障害者が業務に従事している。
最初はハローワークの支援を得ながらの雇用であり、身体障害者が中心であった。ハローワークで行っている障害者就職面接会にも積極的に参加し、今まで11名の身体障害者を雇用に結び付けている。平成19(2007)年には知的障害者を、平成22(2010)年には精神障害者をそれぞれ初めて雇用し、現在に至っている。
2. 障害者の従事業務と取組みの内容
現在18名の障害者が働いているが、そのうち2名は中途障害者である。
障害者の雇用に際しては、原則的に業務内容を明示して募集している。採用後は、適性を見極めながら配属することとしているが、今までほとんど、当初の配属先並びに業務の変更もなく働いている。
障害者の雇用から採用後の支援体制は、人事総務課長と人事総務課の藤原さんが中心となって、障害者が働いている各職場のべース長、センター長やコールセンター長及び事務管理センター長でチームを組んで問題解決に当たっている。
(1)聴覚障害者の雇用について
聴覚障害者は2名で、それぞれ集配ドライバーと伝票処理事務を担当している。集配ドライバーの方は最初は一般求人で採用されたが、中途で身体障害者手帳を取得した。軽度と認定を受けたということもあり、今まで行ってきた業務には何ら支障が生じておらず、慣れた業務を続けたいという本人の希望もあり、引き続き集配ドライバーとしてがんばっている。
伝票処理事務を担当している方は、重度の身体障害者手帳を所持している。当初は一般事務を担当していたが、グループの変更があり伝票処理事務担当となった。その人への伝達は、口話を主体とし、大事な要件については筆談を交えながら話すことで十分理解し内容は伝わっており、今までほとんど問題はない。また、緊急の場合はFaxで連絡を取ることとしているが、夫も同じ職場で働いていることから、フォロー役をお願いしており本当に緊急事態の場合の連絡対応も問題なく、日々安心して業務に励んでいる。
聴覚障害者に限らず、社員全員には緊急時の連絡カードを渡しており、緊急の際にはスムーズな連絡が取れるような対応をとっている。
(2)肢体不自由者の雇用について
肢体不自由者は10名で、次の職務に配置されており、そのうち4名が短時間勤務である。
宅急便の集配ドライバー | : 2名 |
一 般 事 務 | : 3名 |
荷 受 事 務 | : 1名 |
電 話 オ ペ レ ー タ ー | : 2名 |
伝 票 処 理 | : 2名 |
一般事務担当3名のうち1名は、当初ルートドライバー業務であったが中途で重度障害となったことにより、障害の負担が比較的少ない一般事務へ配置転換となった。その他の人は当初より同じ業務に従事している。
(3)内部障害者の雇用について
内部障害者の1名は、心臓機能障害の軽度ということで、本人の状況や適性等を確認しながらルート配送の業務に配属されており、問題はない。
(4)知的障害者の雇用について
知的障害者は2名おり、平成19(2007)年、知的障害者の初めての雇用ということで、多少の心配もあったが、2名とも障害者就業・生活支援センターを通じて雇用を進めた。採用前に職場実習を行い、職場の雰囲気や業務について肌で感じてもらっている。2名とも他社で働いた経験もあることから、比較的スムーズに雇用へと繋がった。
何も問題がなかったわけではないが、障害者就業・生活支援センターの担当者が会社と連絡を取って適切に対応したこともあり、現在まで雇用が継続されている。
連絡や支援については、原則保護者に連絡を取っているが、2名のうちの1名は家族がおらず、障害者就業・生活支援センターの担当者が定期連絡や訪問支援等を行っている。
2名とも短時間勤務で、それぞれの状態に応じて1日4時間×週5日と1日5時間×週5日の体制である。
- 知的障害者の雇用第1号となったAさん(男性/療育手帳B)
Aさんは養護学校(現在の特別支援学校)高等部卒業後、リサイクル業の事業所に就職した。3年間の有期雇用が終了し、次の就職先を検討していた頃(当時21歳)、卒業校の進路指導主事と障害者就業・生活支援センター担当者が連携し、障害者就職面接会に参加されていた当社にAさんの雇用について相談したのがきっかけである。
障害者就業・生活支援センター担当者は、まずは職場見学をお願いし、Aさんの職場見学に同行した。本人が作業内容に関心を持ったことから、雇用の検討も含めて5日間の職場実習をお願いした。本人が作業内容に関心を示したこともあるが、自宅から徒歩で通えるのが魅力だった。
職場実習の最初は台車から荷物をベルトコンベアのラインに載せる作業。ただ載せるだけではなく、その他にも伝票の種類判別や荷物の内容確認等の業務もあったが、どうにかクリア。その後、当時の人事総務課長や同課の藤原さんをはじめ、初めての知的障害者の雇用ということもあり社内全体で検討していただき採用に至った。雇用後の作業内容は、本人の特性(こだわり傾向など)を理解した上で「伝票の読み込み作業」に決定。伝票読み込み作業は、ライン作業とは違い周囲に従業員がいる。この利点を生かし本人が困った時にすぐに対応できる作業環境を作った。小さな問題もあったが、ナチュラルサポート体制が形成できていることから早期対応によって現在も同じ部署でバリバリと頑張っている。

- 知的障害者の雇用第2号となったBさん(男性/療育手帳B)
Bさんは、平成25(2013)年5月に障害者就業・生活支援センター担当者の同行面接により、秋田県単独事業の『職場実習促進事業』を利用し採用可否を検討していただいた。
45歳という年齢から数々の離転職を繰り返して来たBさん。ハローワークの職業適性検査により支援機関に繋がり、知的障害者の手帳を取得した。職歴も様々で自衛隊、介護、クリーニング他……と多種多様であった。
実習時の作業内容は、ベース部門の台車から荷物をラインに載せる作業。実習初日からキビキビとした動きや時間が空くと常に作業を探すといった積極的な作業態度が高評価となり採用。家族が全員他界しているため、障害者就業・生活支援センターが定期連絡や訪問支援を行なっている。内定後、直ぐにヤマト運輸創始者の小倉昌男氏のDVDを購入し勉強するなど就労意欲は高く、「年齢的に長く働きたい」と今日も作業に励んでいる。

(5)精神障害者の雇用について
精神障害者は3名で、荷物の受付事務1名、仕分作業2名の配属である。3名とも短時間勤務で受付事務の方は、1日7時間×週4日、仕分け作業の2名の方は1日4時間×週5日の勤務となっている。7時間勤務の方は8:00~21:00の間でシフトを組んでの勤務である。3名とも雇用前に職場見学を行い、業務の内容や職場の雰囲気などを実感していたことで、スムーズに雇用へと繋がった。
3. 今後の展望
秋田主管支店の平成25(2013)年7月15日時点の雇用率は2.13%。ヤマト運輸全社では、2.03%となっている。今後も法定雇用率は維持していきたいとの考えから、障害者の雇用については、積極的に取組んでいく方針である。
集配ドライバー、ルート配送ドライバーの方は全員正社員として働いている。勤務時間は7:30から21:00までの間の休憩を入れて9時間位の勤務で、1人でのドライバー業務となっている。短時間勤務の方は、8:00又は9:00から13:00頃までの4~5時間の業務。いずれも本人の状態等を確認したうえでの勤務体制となっている。
障害者雇用を始めた当初は、ハローワークからの紹介による雇用のみで、職場実習を介しての雇用は行なっていなかったが、平成19(2007)年の知的障害者雇用をきっかけに障害者就業・生活支援センターからの依頼による職場実習の受け入れを行なっている。雇用可否の判断材料とする雇用前実習だけでなく、就労経験のない障害者の職場体験実習もセンターからの依頼により受け入れている。
今後も法定雇用率の維持・向上を進めていくという意向から、平成25(2013)年からはこれまで接点のなかった特別支援学校高等部生徒の職場実習の受け入れを、人事総務課の藤原さんをはじめ社内全体で本格的に進めている。
また外部機関からの依頼を待つだけでなく、藤原さん自らが労働・教育等の関係機関の集まりに足を運び、関係形成に努めている。
法定雇用率クリアに甘んずることなく「地域社会から信頼される企業」「障害者の経済的自立支援」というヤマトグループの企業姿勢を全うする秋田主管支店の姿勢が、障害がある従業員の作業意欲の向上と維持による職業定着、長期就労に繋がっていると思われる。
主任就業支援員 牧野 真悟
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