"まず、やってみる!!"が成功したケ-ス
- 事業所名
- 木村電工有限会社
- 所在地
- 滋賀県甲賀市
- 事業内容
- エアコン部品組立加工・自動車部品組立加工
- 従業員数
- 53名
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 1 自動車部品組立加工 精神障害 2 自動車部品組立加工 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次

1. 会社の概要、障害者雇用の状況
(1)会社の概要
当社は、平成元(1989)年4月1日に「電子部品および電子機材の加工販売」、「自動車部品の加工検査販売」及び「上記に付帯する一切の事業」を目的として甲賀市で設立された。
現在は、エアコン部品組立加工・自動車部品組立加工を主業務とし、女性パ-ト社員を中心として地域に密着し地域・社会に貢献する企業を目指している。
事業場の壁に「変わろう、変えてみよう 明るい笑顔で元気ある風土」ときれいに大書された板が掲示されている。これをテーマに会社設立後の不況時にも決して従業員の解雇を行うことなく、社員が一丸となって乗り越えてきた。
(2)障害者雇用の状況
当社は滋賀県甲賀地区において、精神障害者の雇用に理解を示し、積極的に取組んでいる企業のひとつである。障害者雇用については、現在、精神障害者2名と知的障害者1名を雇用している。
- 知的障害者Aさんの雇用
平成17(2005)年5月、県下の養護学校(現在の特別支援学校)から「卒業生の受入れ」として知的障害者(女性:Aさん)の雇用要請があり不安はあったものの積極的に受入れを開始した。
雇用に当たっては、支援機関からジョブコ-チ等の協力を得つつ、社長自身が知的障害者の特性を理解し、障害者に"できる仕事"の創出を行った。具体的には自動車部品組立加工の一連の工程の中で、同じ作業を反復して繰返す簡易な仕事を特に障害者が担い、検査などはパ-ト社員が行うようにした。現在のAさんの作業内容は、自動車のシャ-シ-の床に使用する発泡スチロ-ル部材の簡易な加工である。 - 精神障害者Bさん、Cさんの雇用
平成19(2007)年10月、当社が県下の地域生活支援センタ-へ作業の提供として当社の仕事を持ち込んでいた時、同センタ-の職員より精神障害者(男性Bさん、Cさん)の雇用を持ちかけられた。今まで、精神障害者の雇用など全く経験がなかったが、これに対しても積極的に取組み、Bさん、Cさん2名の受入れを開始した。彼らの雇用に際しては、地域生活支援センタ-の助言もあり「精神障害者社会適応訓練(滋賀県精神保健職業リハビリテ-ション事業)※」の制度を3年間活用した。
当社の障害者雇用の基本姿勢として、地域に密着した企業として障害者を含む雇用拡大を通じて社会に貢献する企業を目指していること、仕事そのものより彼ら障害者が他の社員との"良好な人間関係"を築き、自立できる障害者として成長することを期待したことが採用に結びついたといえる。
Bさん、Cさんの業務も、Aさんと同様に反復性のある単純作業に限定して担当業務とし、パ-ト社員が検査を行うようにした。※ 精神障害者社会適応訓練(滋賀県精神保健職業リハビリテ-ション事業)は、回復途上にある精神障害者を一定期間事業所に通わせ、実際の就労の場において集中力や対人能力、環境適応訓練を行い、再発防止および社会的自立を促進し、社会復帰を図る制度。期間は基本的には6ケ月、必要に応じて3年まで延長が可能。 - 障害者雇用に対する社内の変化・声 (他の社員の反応・理解度)
障害者雇用に対して、他の社員からのマイナスの反応は特に無く、障害者の年齢が若かったこともあり、むしろ、うまく障害者をリ-ドしていった。その雰囲気は大変家族的なものであった。その結果、当社のテ-マとする"明るい笑顔で元気ある風土"づくりに一役買うこととなった。
2. 障害者の雇用管理のための取組
(1)働く環境の整備
障害者の雇用のために行った環境整備としては特に無く、他の従業員と同じ環境で勤務している。
ただし、雇用当初は不良品の早期発見・品質の維持のために、通常の作業場とは異なるテ-ブルで作業を行わせ品質管理に注意した。
"あせらず""いそがず""ゆっくりと"をモット-に個々の特性に配慮しながら楽しい職場作りに心がけた結果、数ヶ月後には他の従業員の作業場に混じって、同じ環境で作業を行うまでになった。
(2)労働条件および社内規則等
Aさんに関しては、入社9年目だが、雇用当初は遠方からの通勤であったため最寄り駅まで社有車で送迎を行っていた。しかし"自立する障害者""が本来の姿であると思い通勤指導をして、現在では一人での通勤(電車・自転車を使用)を行っている。雨の日でも休むことなく真面目に勤務している。
障害者の勤務時間は他のパ-ト社員と同様に、9:00~15:00の5時間勤務とし、特にBさんCさんについては疲労がたまらないように短時間就労に配慮している(一般社員は8:00~17:00の8時間勤務)。
賃金(時間給)に関しては経験年数・能力により差異を設けているが、単に障害者ということで他のパ-ト社員と差異を設けることはしていない。その他、休憩・休日なども他のパート社員と同一の条件である。
(3)障害者、特に精神障害者の職務遂行上の不安軽減策
特に、精神障害者の雇用に当たり、コミュニケーションの取り方に注意を図る必要があるが、当社としては制度としてのコミュニケ-ション体制はつくってはいない。社風が極めて家族的であり風通しも良く、そのため彼ら障害者が悩みを抱え込むことはないようである。
Bさんから次のようなお話を伺った。
「お昼ご飯の時は、パ-ト社員さんが持ってきてくれた漬物をもらって、ワイワイ話してます。そうすると、だんだん仕事も楽しくなる・・・。」
当社にもいずれは制度としてのコミュニケ-ション体制が求められるものと思われるが、今はお昼休みの会話が非公式ながら当社でのベストのコミュニケ-ション体制となっていると思われる。
(4)今後の課題及び展望
社長からは、県や行政機関・支援機関に対して特に要請することはないとのことである。
今後の障害者雇用に関しては、当社の業務に適応できる、あるいは適応していこうとする気持ちのある障害者は、今後も会社業績を見極めながら雇用を促進していくという。
また、"障害のない者も幸せを感じ、一緒に汗を流せる会社にしていきたい"と語ってくれた。
3. まとめ
この度、Aさん、Bさんの声を直接聞くことができた。
今回の訪問に関して、筆者から声を掛けられることを楽しみにしていたようであった。
Bさんからは仕事について次のようなお話を伺った。
「暑くて、立ち仕事で大変!! でも毎日楽しくやっている。」
最近、結婚されたようで、「お昼は、奥さんの作ったお弁当を食べるのネ」と、他のパ-ト社員さんから話されるなど、明るく談笑していた。このような小さな声かけの積み重ねが障害者の職場定着へと結びついているようである。
Aさんは筆者に自身の仕事内容を説明するとともに、作業ミス防止のポイントまで詳しくレクチャ-してくれた。
「ここのマ-クに気をつけると、間違わない。間違えれば製品を傷つけることになる。」
この様子では、後輩がやってきても十分"先輩の役割"も果たせそうだ。
最後に写真を撮ったが、ご覧のとおりの"笑顔"である。社長の彼らに対しての寛大な気持ち、日常的に、しかも直接彼らと接する社長の息子さんの細やかな配慮、そして同僚のパ-ト社員さんたちの暖かい支援が創りだした"笑顔"だ。
社長からは、最後まで苦労話を聞くことはなかったが、筆者の取材中も彼らに対して、きめ細かい対応・配慮をされている姿から、並々ならぬご苦労のあったことは十分推察される。
(作業工程の単純化等職務内容に配慮した工夫、彼らに"出来る仕事"の創出が奏功した。)
障害者雇用に対しての知識・情報が不足しているため反射的にアレルギ-になったり、避けたりすることなく、人の多様性を受入れ、人を育てるという気持ちで"まず、やってみる!!"。
当社は決して大きな企業ではないが、知的障害者を始め、精神障害者が実際の職場での訓練を通して作業能力、対人関係能力、職場適応能力を取り戻し、社会的自立を目指した社会復帰が実現したモデルケ-スといえる。

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