助成金の活用により重度障害者雇用を実現
- 事業所名
- 京都農業協同組合
- 所在地
- 京都府亀岡市
- 事業内容
- 農業協同組合
正・准合わせて5万人の組合員組織、営農指導、金融、共済、販売、購買事業のほか地域に必要な事業を行っている。 - 従業員数
- 814名
- うち障害者数
- 10名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 9 伝票処理事務、資料作成、支店窓口応対 内部障害 1 営農指導 知的障害 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次

注 本文中の「JA」は農業協同組合の略
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
平成12(2000)年8月、旧北桑田郡内の2つのJA、船井郡内の6つのJAと船井郡内のJA南丹酪農が合併し「JA京都南丹」が誕生。次いで、平成14(2002)年4月にJA福知山市と合併し「JA京都」となった。その後、JA亀岡市、JA岩滝町、JA篠、JA綾部酪農、JA京都丹後と合併し、京都市右京区(京北地域)、南丹市、京丹波町、亀岡市、福知山市(一部地域を除く)、与謝野町、京丹後市、宮津市及び伊根町を範囲とする現在の広域JAとなる。
事業としては、営農指導、金融、共済、購買、販売事業を中心に行っており、平成21(2009)年6月には亀岡市に、生産者と消費者の架け橋として、農畜産物直売所『たわわ朝霧』をオープンし、広くPRするため毎月イベントを開催し、近隣の消費者の方々に多くのご来店をいただいている。平成25(2013)年2月にはオープン以来の来客数(レジ通過者数)が100万人を突破。京都の豊かな風土に育まれた旬の伝統野菜やブランド野菜の京野菜は、生産者が丹精込めて育て、ビタミン、ミネラルなどの栄養成分もたっぷりの採れたてで新鮮な地場野菜、お祝い用やお供え用など、季節の需要に合わせて数多くの花々を取りそろえている花卉(かき)、牛乳・アイスクリーム・ジェラートなどの乳製品、管内で取れたこだわりのおコメを使ったもちもちの米粉パン、鶏舎にゲージを設けず外で自由に地面を歩き回らせる「平飼い」方式で育てられた鶏の玉子、亀岡牛などの精肉、食味ランキングで毎年上位に選ばれている丹後産コシヒカリなどのJA京都管内で栽培されたとびきりおいしいお米をその場で精米にして販売するなど、毎日新鮮で安心な地域の農畜産物の販売を行っている。
また、地域の一員として、農業の発展と健康で豊かな地域社会の実現に向けて、事業活動を展開し、JAの総合事業を通じて各種金融機能・サービスを提供するだけでなく、地域の協同組合として、農業や助け合いを通じた社会貢献に努めている。
(2)障害者雇用の経緯
当組合の障害者雇用については、組合設立当初より、採用職種に合致する範囲で雇入れをしていたが、平成19(2007)年10月現在、法定雇用障害者数より6名不足しており、未達成の事業所であったため、ハローワークから「適正実施勧告」を受け、平成20(2008)年度から平成22(2010)年度までの「障害者雇入れ計画」を提出した。計画や指導内容に沿って早期にこの状況を改善するため、ハローワークや高齢・障害者雇用支援センターからの紹介や指導を受けながら障害者雇用促進の取り組みを始めた。
2. 取り組み内容、障害者の業務・配置
(1)助成金の活用による雇用
障害者雇用促進を図る中で、ハローワークから障害者Aさん(両上肢機能障害1級及び移動機能障害2級)、Bさん(右下肢及び左下肢の機能の著しい障害3級)を紹介され、受入れに向け取り組みを始めた。
重度障害者であるAさんの配属先である本店には、これまでも障害者用トイレなどの設備はあったが、当人は電動車いすでの移動となるため、段差のある職員通用口では出入りできないため、バリアフリー化する必要があった。また、通用口のドアも重厚な鉄製の作りであり、車いすでの開閉が困難であるため、自動化にすることや、事務室、休憩室のドアについても軽量の引き戸にするなどの改良工事が必要であった。
そこで、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(現在の独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)の担当者と相談し、障害者作業施設設置等助成金を活用して、職員通用口の段差を解消するためバリアフリー工事を実施し、通用口の扉も自動ドアへ変更し、事務室や休憩室の扉も軽量の引き戸に変更した。
![]() (通用口)
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![]() (職員通用口スロープ)
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![]() (休憩室入口引き戸)
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出入口をバリアフリー化することで、車いすの出入りもできるようになり、車いすを利用するような重度障害者の雇用受入れも可能となった。また、助成金を活用できたため、費用も大きく削減することができた。
(2)障害者雇用の業務・配置
重度障害者Aさんは平成24(2012)年7月1日に常用雇用として採用、本店の企画管理部門にて、日次また月次の数字を管理する資料を作成するため、パソコンへの入力作業と作成した書類の点検を行う仕事を担当してもらっている。
本人からは「慣れない作業で最初は苦労しましたが、今は特には問題なく作業しております」、また、困っていることはないか?との問いには「困っていることは特にないですが、強いて言えば日によって仕事量が多い時には苦労しますが、今のところ楽しく仕事をしています」とのコメントをいただいている。
また、障害者Bさんは支店にて共済事業の事務を担当。現在は信用事業の後方事務も少しずつ教えてもらいながら行っている。本人からは「パソコン入力や書類作成、書類整理など自席周辺で終わる作業が主なので良いが、書類を保存するファイル等を片づけるために移動する場合があり、両手で杖を使っているので困る時がある。勤務先の支店はバリアフリーにはなっておらず、ドアも引き戸が多く、杖を使う者としては押しドアが有りがたい」との意見を受けており、今後、引き戸にするなどし、働きやすい職場環境づくりに努めたいと考えている。
またBさんは現在、家族による送迎により通勤しているが、運転免許を取得する方向で話を進めている。また、仕事では現在担当している共済部門ではない、他の部門の仕事にも就いてみたいという希望も持っており、頼もしく感じている。公私ともに向上心旺盛で、とても良い仕事ぶりであり、職場の仲間からも信頼を得ている。
![]() Aさん
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![]() Bさん
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3. 今後の課題
このような取り組みにより重度障害者の受入れが可能となったが、職場のバリアフリー化や障害者用トイレなどは一部の部署しかできておらず、障害者Bさんのコメントにもあったように、障害者雇用を促進するにあたり、各事業所の扉を引き戸に替えるなど、勤務し易い職場環境づくりに努力する必要があると感じている。
また、当組合業務については、信用・共済・購買・販売業務全てにおいて事務処理が主であり、今のところ、特に知的障害者に就いていただく職種がないのが現状である。以前には知的障害者を雇用していた経過があるが、事務を主とする業務に合わないため、就いていただく職種・業務がなく契約満了となった経過がある。
ハローワークや高齢・障害・求職者雇用支援機構などの関係機関から紹介や支援により障害者雇用を進めた結果、平成23(2011)年4月に法定雇用率を達成する人数を雇用していたが、平成25年4月1日より「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、障害者の法定雇用率が1.8%から2.0%に引き上げられたことなども要因となり、現在は法定雇用人数より2名不足している。今後もこれまでと同様に障害者の法定雇用率以上の雇用人数の達成に向け、ハローワークや高齢・障害・求職者雇用支援機構からの紹介や支援を受けながら、身体障害者を中心に障害者雇用促進に向け取り組んでいきたい。
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