「感動」と「雇用」の創出で日本を、世界を元気にしていきたいという目標に向けて
- 事業所名
- 株式会社I.S.コンサルティング
- 所在地
- 兵庫県神戸市
- 事業内容
- 運転免許取得支援としての全国の自動車教習所紹介事業
海外留学生支援としての世界各国の留学生エージェント紹介事業
就職・転職支援としての有料就職紹介・一般労働者派遣事業 他 - 従業員数
- 23名
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 1 WEBデザイン 精神障害 発達障害 1 事務補助 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
株式会社I.S.コンサルティング(以下、「本事業所」という。)は、平成18(2006)年に、雇用創出につながる資格取得支援として、運転免許取得希望者に対し全国の自動車教習所を紹介したり、通学や合宿での運転免許取得をサポートする事業を中心に設立した。その後、海外留学希望者に各国のエージェントを紹介するサービスを展開するなど、今井社長が掲げる「頑張っている人を応援し、共に成長し、共に喜びを分かち合いたい」という想いの実現に向けた事業を展開している。
現在では、発達障害のある人の運転免許の取得支援に向けた新たなサービスの開発にも取り組んでおり、運転免許の資格取得のサポート事業から地域のNPO法人との連携による就労支援に至るまで、本事業所の『感動創出集団を目指す』という企業理念の下、「感動」と「雇用」の創出で日本のみならず世界を元気にしていきたいと考え、特に社会的弱者といわれる方々に対しての就労サポート、そして共に働く環境の創出を目指している。
(2)障害者雇用の経緯
今井社長は、未曾有の災害となった東日本大震災を通じて本当に多くのことを感じ、考えたという。そのひとつが「小さいながらも社会における一企業として、今、そしてこれから当社がどうあるべきか・・・」ということだった。
これを機に、今井社長は、起業する際の思いをより強く見つめなおすことになり、改めて、先述の企業理念の下、心に響くサービスの追求による「感動創出」と「就労困難者の雇用創出」で地域社会を活性化し、日本を元気にし、そして少しでも社会に貢献する企業を目指すために社員一丸となって取り組もうと決意を新たにしたとのことであった。
そして、そのようなサービス提供を進めていくならば、まず自社で障害のある人と共に働くことにチャレンジしようと考え、地域のNPO法人で発達障害者の就労支援に取り組んでいる「就労移行支援事業所クロスジョブKOBE」(以下、「クロスジョブKOBE」という。)から障害者の職場実習を受け入れることにしたのである。
しかしながら、当初は発達障害についての知識もなく、職場実習の受け入れ態勢のあり方などに、不安も大きかったこともあり、自社で発達障害に関するレポートや職場実習の企画書を作成しつつ、職場実習の実施に向けた検討を重ねていった。
2. 取り組みの内容と効果
(1)取り組みの内容
- 就労移行支援事業所の見学
今井社長は、障害者を雇用するにあたり、障害者雇用に先駆的に取り組んでいる企業や障害者就業・生活支援センターへの見学、視察など、率先して行動された。社長が自ら行動するということは、社員に障害者雇用への本気度を示すという点においても、非常に効果があったのではないかと考えられる。そして、その結果神戸市内に設立することが決まっていたクロスジョブKOBEとの連携が始まった。
クロスジョブKOBEの設立後は、社長自らも職業準備訓練を見学するために何度も足を運び、障害者雇用を通じた「雇用創出」の想いを実現するために、発達障害のある人の就労支援について担当者と意見交換を重ねていった。
- 訓練生の企業見学と職場実習に向けて
職場実習を受け入れるにあたり、まずは本事業所の見学会を企画し、クロスジョブKOBEから数人の訓練生に参加してもらうことになった。この見学会により、仕事の内容を伝えることができただけでなく、仕事に対する興味やモチベーションを高めてもらうことができた。また、リラックスして質疑応答などを図る中で、発達障害のある人が本事業所で働く姿を少しずつイメージしていったのである。
次のステップとして、クロスジョブKOBEの職員による体験実習を実施した。体験実習は、本事業所での具体的な仕事の内容や業務遂行に必要とされる職業スキルを把握するために行われたものであり、この体験実習をもとに、クロスジョブKOBEは本事業所で担当可能な業務の選定、職場の雰囲気などを含め必要とされる職業適性に最もマッチしそうな訓練生の選考をした。
- いざ、職場実習
職場実習は「事務補助業務」と「WEBデザインのサポート業務」の2つの業務で受け入れる方向で調整を進めた。事務補助業務は広汎性発達障害のあるAさんが、WEBデザインのサポート業務は知的障害のあるBさんがそれぞれ職場実習を希望した。当初は、どちらか1人の職場実習の予定だったが、今井社長から「せっかく希望してくれているのだから、2人とも職場実習をしましょう。2人いる方が本人たちも安心できるでしょう」という提案があり、2人の訓練生が同時に職場実習をすることになったのである。
職場実習は、1ヶ月の期間を前半2週間と後半2週間に分けて実施することにした。また、時間も最初からフルタイムで実施するのではなく、1日5時間程度から徐々に時間を伸ばしていくことにした。最初は事業所、訓練生ともに不安と戸惑いがあったものの、前半の2週間が終了する頃には確かな手応えを感じていた。そして、1ヶ月の職場実習が終了する頃には、訓練生の2人とも「このままI.S.コンサルティングで働きたい」とはっきりと話してくれるようになった。
職場実習の受け入れを検討していた当初は、職場実習を通じて発達障害のある人への関わり方や障害特性を徐々に理解していければと考えていたそうだが、2人が一生懸命に仕事に向き合う姿勢に感激し、このまま採用ができるかどうかを見極めるために、職場実習を延長し、最後の見極めをすることになったのである。
(2)取り組みの効果
- ハローワークとの連携、そして、トライアル雇用へ
職場実習を実施するにあたっては、地域のハローワークとの情報交換を緊密に行い、見極めのための振り返りの際は、ハローワークの担当官も同席し、トライアル雇用など障害者雇用に関する制度の情報提供をタイムリーに行うことができた。
2人の訓練生は平成25(2013)年1月からトライアル雇用を開始し、同年4月からは正社員として採用されることとなった。
- 障害者の業務・職場配置
知的障害のあるBさんは、主に運転免許取得に係るパンフレットに掲載するキャラクターのデザインを担当している。イラストレーターの基礎的な知識だけで、実務経験は全くなかったBさんだが、担当上司が隣のデスクにいる環境の中、スモールステップで指導を受けることで飛躍的な成長をしており、今では表紙のデザインの一部を任されるようになっている。
発達障害のあるAさんは、主にパンフレットをお客様のもとに届ける出荷作業とFAXの送信及びアンケートの集計などの事務仕事を任されている。Aさんも担当上司がすぐそばにいる環境の中、分かりやすく作成された業務マニュアルを見ながら、着実に仕事をこなすようになっている。
![]() パンフレットのデザインを担当するBさん
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![]() 事務を担当するAさん
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- チームに必要な仲間として
『感動創出集団を目指す』という企業理念の下、「感動」と「雇用」の創出を掲げて始まった今井社長の障害者雇用へのチャレンジも、受け入れの前段階では発達障害について知識もなく、不安でいっぱいだったという。職場実習を受け入れることに決め、実際にAさん、Bさん2人の「仕事をしたい」という純粋な気持ちと、日に日に成長していく姿に感動したという。今では、それぞれが所属するチームのミーティングにも参加し、本事業所にとって欠かせない社員となり、本事業所で始めた障害者雇用は、まさに企業理念である「感動」と「雇用」の創出を生み出していると実感している。
3. 今後の課題と展望
本事業所では、Aさん、Bさんの採用後も、発達障害のある大学生のインターンシップの受け入れを始めるなど、今後はより一層、地域社会と連携し、障害のある人だけでなく、世間で社会的弱者といわれるような、引きこもりになっている人、シングルマザー、高齢者に対してのサポートを通じて、共に働き、共に成長し、共に喜び、感動するというビジネスモデルの確立にチャレンジしていきたいとのことであった。
最後に今井社長に今後の課題と展望を聞いたところ、「発達障害についてはまだわからないことだらけですが、本人、ご家族、支援機関、そして社員皆で試行錯誤を重ねながら、少しずつですが、皆が成長しているように感じます。まずは、Aさん、BさんがI.S.コンサルティングに定着し、成長していける職場環境を目指すことが一番大切ですが、今後の展望としては、発達障害といっても様々な人がいるので、少しでも多くの方に仕事を提供できるように、新規事業にチャレンジしていき、共に働く場を全国・世界に広げていきたいと考えています」と力強い言葉をいただくことができた。
本事業所での取り組みが、近年伸び悩んでいる日本の中小企業における障害者雇用のモデル事例となり、まさに今井社長が話されるように、中小企業においても障害者の「雇用創出」が進むことを望むものである。
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