障害者雇用のさらなる促進と社会参加を支援、そして、地域社会への貢献をめざして
- 事業所名
- 株式会社ハートフルコープなら
- 所在地
- 奈良県磯城郡
- 事業内容
- 農産物の検質・検量・袋詰
- 従業員数
- 7名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 5 農産物の検質・検量・袋詰 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次


1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
- 会社設立の経緯
・ 2011(平成23)年6月 親会社である「市民生活協同組合ならコープ」(略称「ならコープ」)の通常総代会において子会社特例認定を受けることを前提とした障害者雇用事業所の設立を決定する。 ・ 2011(平成23)年7月 会社登記、社名を「株式会社ハートフルコープなら」とし、知的障害者5名を採用して事業開始 ・ 2011(平成23)年12月 公共職業安定所より子会社の特例認定を受ける - 事業内容
親会社のならコープが組合員に供給する農産物の検質・検量・袋詰を行い指定された数量を納品する。取り扱う商品は、にんじん・きゅうり・たまねぎ・じゃがいも・なすなど、1日6時間の勤務の中で約3000点を日々納品している。
(2)障害者雇用の経緯
親会社のならコープでは、障害者の実雇用率が2011(平成23)年6月で2.58%であったが、更に障害者雇用を進め企業として社会的責任を果たしていくため特例子会社の設立を決定した。その結果2013(平成25)年6月には実雇用率2.98%となった。
子会社設立の目的は、以下の通りである。
- 現在奈良県にない特例子会社の認定を受け、障害者雇用率をさらに高める。
市民セクターの中核である生協として社会的責任を果たし、リーダーシップを発揮する。 - 一般的に障害者雇用が低いといわれる小売業の中で、障害者雇用に積極的に取組み、事業を拡大することで地域や社会に貢献する。
- ならコープとして障害者の雇用を広げ、就労を通じて自立と社会参加と働くことの喜び生きがいを得られるよう支援する。
- 特例子会社を通じて、ならコープで働く職員と組合員、取引先への理解を深め、障害者雇用の取組みが地域社会に広がることをめざす。
2. 取組みの内容(仕事の流れ)
(1)みんなのルール
- 元気にあいさつ
- 時間を守る
- 協力しあう
(2)仕事のまえに
- 毎日の体調、体温チェック
- 身だしなみ(作業服・帽子・マスク・手袋)のチェック
(3)仕事のながれ(農産物の加工)
- ラジオ体操(朝・昼)
同じような姿勢の仕事が多いために、腰痛予防に1日2回体操をする。

- 衛生
手洗い、アルコール消毒、作業服ローラーかけ、帽子、マスク、手袋着用などの基本を徹底する。

- 検品
傷みは事例写真で示し、厳しくチェックする。「不良ゼロ」をめざす。

- 量目あわせ・計量
決められた本数、グラム数に合わせる。

- 包装(袋詰め)
専用の包装機でパックする。

- 重量チェック
計量器で二重チェックする。

- 出荷ケース詰め
数量間違いのないよう注意する。

- 出荷記録
産地、重量、数量などを記録する。 - 後片付け、清掃
最後まできっちりする。
(4)加工点数の推移
2011(平成23)年度月間平均:52,411点
2012(平成24)年度月間平均:64,785点(2011(平成23)年度対比123%)
2013(平成25)年度月間平均:67,086点(2011(平成23)年度対比127%)
日々習熟度が増し現在では、効率が着実に上がっている。
(5)指導のポイント
- 配置
知的障害者5名、管理者1名、作業指導者1名の配置 - 指導のポイント・「障害者だからできない」、「注意してはいけない」など気をつかわない。関わり方は、障害のある者、ない者、皆同じである。
・短所克服より、長所を伸ばすことを常に考える。
・個人の特性を把握し、最大限の能力を発揮できるようにする。
・あせらず・いそがず・あきらめず
(6)社員の就労状況
ならコープが指定する検質規準及び規格に従って業務を行っている。
事業開始当初は、検質・検量・袋詰の作業は日々800点ぐらいを想定していたが、着実に習熟度が上がり当初想定していた計画を大幅に越えている。
性格は、皆非常に素直で、喜びを感じながら精一杯仕事をしている。
このことが回りに対しても広がってきている。
勤務態度が良く、無断欠勤や無断での遅刻もまったくない状態が続いている。
また交流の場として、社員と取締役の食事会や保護者会、社員旅行なども期待をしながら参加している。
(7)雇用支援機関との連携
- ハローワーク(労働局)・特例子会社の認定に関わる相談・認定
・社員募集の相談・採用
・トライアル雇用の相談
・職場定着について相談 - 奈良障害者職業センター・職業能力判定
・ジョブコーチ支援の実施
・障害者との関わり方や教育方針の相談
・第1種障害者作業施設設置等助成金について相談
・障害者雇用推進セミナー事例研修
・障害者職業生活相談員資格認定講習受講 (奈良高齢・障害者雇用支援センター)
・各種助成金の相談 (奈良高齢・障害者雇用支援センター) - 奈良県・奈良県特例子会社設立助成金申請相談
・コーディネイト会議参加・交流
・奈良県教育力サミット第三部会参加
・特例子会社設立に関わる相談
・職場定着について相談
・職場体験実習について相談 - 奈良県立高等養護学校・2年生を中心に実習の受け入れ
(8)公的助成金の活用
- 奈良県・奈良県特例子会社設立助成金
特例子会社設立等に要した事務経費申請 - ハローワーク・トライアル雇用
障害者5名に対し奨励金を申請
・特定求職者雇用開発助成金
採用者5名に対し助成金を申請
・職場支援従事者配置助成金
重度知的障害者の新規雇用、職場定着を図るため職場支援従事者を配置し、奨励金を申請 - 奈良高齢・障害者雇用支援センター・第1種障害者作業施設設置等助成金
農産品の袋詰めを機械化し、検質及び検量に集中でき安定就労が期待できる。
自動袋詰機、計量機などの導入費用を申請
3. 取組みの効果、さいごに
(1)取組みの効果
- 障害者との関わり方を一番心配をしていたが、大きな問題はなく現在に至っている。
皆きっちりと仕事をしたいと思っている。 - 同じ失敗を繰り返し、怒られ落ち込むことはあるが、翌日になれば元気に出勤している。
- 仕事なので難しい事や苦手意識はあるが、自分のわかることは率先して行い、また 同僚と一緒になって相談しながら行っている。
- 仕事がわかってくれば変に口出しせず、本人が考えて仕事をしている。
- 目標も保護者と一緒にバックアップしながら達成する。
- 1年2年が経つと皆の頑張りが伝わり、評価も上がってくる。
- 同じ仕事をする仲間として体力・気力を維持し定年まで働いて欲しい。
- 保護者からの声・いつも楽しそうに仕事に行っています。
・5時30分に1人で起きて「行ってきます」と出て行きます。
・スーパーで1人で買い物ができるようになったので、お給料で家の食料品や自分の好きなお菓子を買っています。
・一日6時間勤務が本人に合っていて、最近は家でも調子がいい。
・今の仕事が本当に好きなのか家では仕事の話ばっかりで、たまに聞いているのがしんどくなってくる。
(2)さいごに
≪社長のコメント≫
株式会社ハートフルコープならは、市民生活協同組合ならコープの100%出資の子会社として、2011(平成23)年7月6日に設立した。社名の「ハートフル」は「心のこもった」「優しさがあふれている」などと訳されているが、私たちの会社はこの言葉どおり、事業を通じてお互いを理解しあい、尊敬できる間柄を築き、心のこもった仕事、優しさがあふれる人間関係を形成したいと思っている。また、ならコープをはじめとするお取引先や生産者、この間ご指導をいただいている関連行政を通じて、県内企業へも障害者雇用への理解が深まり、より多くの人々が自立できることを願っている。
まだまだ生まれたばかりで、何ひとつ満足にできる会社ではないが、これから始める事業を通じて、社会に貢献し責任を果たす、そしてハートフルコープならを起点として、食と農、環境の問題を考え、実践し、奈良の地になくてはならない会社となるよう全社員一致団結して仕事に取組みを進める。
≪スタッフのコメント≫
会社設立にあたり46名の応募者の中から、ハローワークを通じて5名を新規採用した。残念ながら41名は採用できない結果となり、雇用環境の厳しさを肌で感じることとなった。採用したメンバーはそれぞれ得意なこと、少しの配慮で能力を発揮できることが沢山ある。社会人として自立して生活できるように育って欲しいとの願いから、私たちスタッフは、仕事を通じて全力で支援し、一生涯働き続けられる会社へと成長して行きたいと思っている。
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