高齢者・障害者雇用は、会社の社会的使命
- 事業所名
- 株式会社サンラヴィアン
- 所在地
- 岡山県浅口郡
- 事業内容
- 洋菓子製造
- 従業員数
- 366名
- うち障害者数
- 10名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 1 出荷梱包 内部障害 知的障害 8 製造補助 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 1 製造補助 - この事例の対象となる障害
- 知的障害
- 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
- 事業所の沿革等
昭和38(1963)年 故占部貞夫が興していた伸鉄業、株式会社天啓鉄工所を継いだ現業創業者故占部積は、昭和43(1968)年社長就任。健康飲料販売のヨーク岡山株式会社(後に株式会社デイリーに社名変更)も多角経営し、昭和55(1980)年本業の伸鉄業を廃業するとともに株式会社サンラヴィアンに社名も業態も変更した。岡山県里庄町の地で「おいしい、ボリュームのあるものを」ということを念頭にお菓子作りに励み、鉄からお菓子へ、相反するかのような大胆な変化を遂げた。
経済環境の変化に備えてきた、大事なものを見失わない核心と自分を信じる確信、先見の明、ひらめき、行動力、苦労を苦労とも思わない仲間との助け合い。出来上がった初めてのカステラは、甘い香りと共にたくさんの熱き思いが、そして、"太陽のごとく燃えたぎる人生を"の意味を持つ社名サンラヴィアンは、創業者占部積の渾身の思いが込められている。
現在、東京・名古屋・大阪・福岡の4都市に営業所を設置。デコレーションスポンジケーキ台、ベーカリーワッフル ベルギーの朝、六甲山麓シュークリーム、エクレア、タルト、カステラなど、スーパー、量販店を中心に約150アイテムが流通し、年商は41億円(平成24年9月期)になる。 - 企業理念
「企業理念」 先般、現代表取締役社長CEO占部守弘が再定義
"キチンとした商品を キチンと誂え キチンとお届けする"
「おいしい!」は無限大
「おいしい!」の実現が私たちの役割です。
「おいしい!」の発展が私たちの使命です。
「おいしい!」の伝播が私たちの貢献です。
「おいしい!」全てが私たちの喜びです。
を全従業員が、日々唱和し、業務に取り組んでいる。
サンラヴィアンには、「STUDIO 1」(第1工場)と「STUDIO 2」(第2工場)の二つの創造空間がある。HACCPを基礎とした厳しい管理基準等、食品製造業としての徹底した管理や配慮は、もはや具備すべき条件であり、大切なことは、商品をつくるのは「人」であること。自らの責任をキチンと明確化して作業を行なうという意識の向上が高い安全性・安心性の実現へ繋がっている。
東北地方太平洋沖地震ではいち早く緊急支援食料品を行政機関と連動し現地へ届け、現在も、被災地の社会福祉協議会を通じて洋菓子の提供、定期的訪問など、震災復興への取組を継続している。環境への取組としては、社内に省エネルギー委員会を設置し、LEDの導入を進めるほか、太陽光発電を平成25(2013)年5月に開始した。
また、地域貢献活動として、サンラヴィアン杯里庄少年サッカー大会の開催や、サッカーJ2「ファジアーノ岡山」のクラブスポンサー、バレーボール「岡山シーガルズ」の法人会員など、積極的に行っている。AED(体外式除細動器)を社内に2台導入。普通救命講習受講を奨励、社内資格保有者は190名に上る。
従業員がイキイキと活躍する職場環境整備は、社会的要請であり、会社の使命であることから、平成20(2008)年にはメンタルヘルスの教育や、カウンセリングを行なう目的で、臨床心理士と顧問契約を締結。またセクハラパワハラ防止委員会も設置した。
社内行事は、春に社内敷地に咲く桜と共に、新入社員も交えて行う「花見BBQ(バーベキュー)」に、「社員旅行」がある。今年は海外、国内一泊、国内日帰りなど各方面にて行い、従業員同士の交流を深める予定としている。また、新入社員・中堅社員研修として、7月に富士登山研修を開催している。安全を第一に日本一の山頂を目指す試みも、今年で7回目を迎える。
(2)障害者雇用の経緯
サンラヴィアン創業者占部積は、「高齢者・障害者など社会的弱者の雇用は、会社の社会的使命である」と考えていた。その強い思いは、自身が幼少のころ階段より落下して左手を骨折、その後遺症によりスポーツなどを楽しむことができないなど、不自由な思いをしたことによる(代表取締役副社長 占部 談)。創業当初より、高齢者、障害者を積極採用、活躍の歴史が今もなお継続している。
- 職場体験~採用~支援体制
現在は、新規学卒障害者の積極採用を進めている。まず、各特別支援学校からの職業体験の受け入れを行なっている。実際に安全な通勤が可能か、工場内での業務に体力的に無理なく従事できるか、実際の就労と同じく決まった時間に出社し、決まった時間まで作業ができ、それを日々繰り返し継続できるかを総合的に体験してみる。
採用に当たっては、「働くこと」について本人に意欲があるかが、障害のない人も障害のある人も例外なく求められる一番の資質だと考えている。そこにはバリアはなく、洋菓子製造を通じて社会に参加、貢献するという意欲がまず一番、次に保護者をはじめとするサポート体制が不可欠である。
そのため入社前には、本人、保護者、行政、関連支援機関、出身校担任教諭らと当社配属先管理者並びに人事担当らにて、移行支援会議を開催する。会議で話し合われる内容は、本人や保護者から将来の生活についての希望、担任から必要と思われる支援の情報交換(家庭生活、就労先での生活、余暇・地域生活、医療、健康状態)など多岐にわたり、「関係諸機関の今後の支援役割」について、或いはトラブル時の対応を互いに確認しあう。受け入れ企業にとって、このような事前の支援体制の確認は、安心して障害者を受け入れるための取組みである。 - 社内のサポート体制
入社式も障害のない大卒高卒らの新入社員と共に出席し、特性に応じ各作業へ配置して、製造現場でのOJTへと移行する。社内サポートは長年の風土により、誰がということなく行なわれ、周囲のサポートが社風というほかない。今年4月入社のA君(知的障害)は当初、最寄り駅から自転車利用であったが、雨の日、バスの乗り方を他の従業員に教えてもらい、無事にバスを利用して出社した。同じ時間帯に通勤する従業員がバスの乗り方について、そっと手を差し伸べてくれたという。周囲のサポート体制は、同じラインの従業員全体がサポートを行い、特に指名しているわけではない。障害者への理解が浸透しているのは、創業以来の社風というほかない。
過去、家庭での様子の変化など保護者からの気づきや、就業中に持場を離れるケース、感情の抑制が効かなくなるケースなど、発生都度関連諸機関と連携を取りながら迅速に協議し対応してきた。これも事前の支援体制確認の賜物である。
2. 仕事の内容
洋菓子製造には、原材料の計量、ミキシング、生地の充填、焼成、窯だし、冷却、検品、包装、箱取りなど各工程がある。そのなかで各個人の適性に応じた作業に配置が行なわれるが、最初は複数担当者の協業で進める作業、周囲の目が届きやすい作業、比較的平易な作業に配置される。熟練してくれば、オーブン出口での帳票類に記入を伴う難易度が高い場所にも配置される。○○さんは作業が早い、□□君は几帳面、など個々の特徴を理解し、強みを発揮できる人員配置が重要である。
(1)安全対策 日常気をつけていること
日常気をつけていることは、やはり怪我をしないこと。焼き菓子を焼くオーブン周辺などの火傷(作業服の腕まくりをしない、軍手の複数使用)や、スライサー周りでの不安全行動(掃除はスイッチを切ってから行なう)などには、細心の注意を払っている。
(2)障害者の声(原文まま)
- A君(入社1年目)
Q どんな仕事をしていますか? A クラムくずし、けいりょう Q その仕事で大変なところはどんなところですか? A とくになし Q 仕事は楽しいですか? A はい Q 仕事場で困ったことがあったらどうしますか? A おやにそうだんする。 Q これからどうしていきたいですか? A ガンバってお金をためる。 Q 休みの日には何をしていますか? A ねる。 Q サンラヴィアンに入社してどうですか? A つかれることもあるけど、サンラヴィアンで仕事をして楽しいです。 - B君(入社6年目)
Q どんな仕事をしていますか? A ケーキの鉄板出しと、鉄板に敷くオーブンシート。 Q その仕事で大変なところはどんなところですか? A 熱い鉄板が次から次へと出てくるので一人でするのは大変です。 Q 仕事は楽しいですか? A 楽しいです。 Q 仕事場で困ったことがあったらどうしますか? A 加藤ライン長に伝えます。 Q これからどうしていきたいですか?(仕事でもプライベートでも) A 元気で楽しく仕事をしていきたいです。 Q 休みの日は何をしていますか? A アタック25のゲームや、テレビを見ます。買い物やドライブに行きます。 Q サンラヴィアンに入社してどうですか? A 工場の中は暑いですがみなさんと楽しく仕事ができてよかったです。
毎年行く社員旅行が楽しみです。
![]() アップルサンドに蜜をかける作業
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![]() カステラ窯だし作業
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3. 将来への展望
保護者の高齢化が今後の課題である。対策としては一歩ずつ社会人として自立を継続して促したい。買い物、地域のゴミ捨てのきまり、地域活動など会社以外の社会とも積極的にかかわりを持ち、社会人として尚一層の自立が進めばその不安は解消されよう。
今後も、創業者の志である、障害者雇用を会社の社会的使命として雇用率にとらわれることなくさらに継続して参りたい。
管理本部 総務・人事課 課長 磯田 崇
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