自然なサポートによる障害者雇用の仕方
- 事業所名
- デリカウイング株式会社
- 所在地
- 広島県廿日市市
- 事業内容
- 食品製造
- 従業員数
- 社員173名 定時社員1,281名(平成25(2013)年7月現在)
- うち障害者数
- 34名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 ヘルスキーパー 聴覚・言語障害 3 調理・盛付 肢体不自由 4 運転手・盛付・清掃 内部障害 6 管理監督・盛付・調理・洗浄 知的障害 16 調理・盛付・洗浄・清掃 精神障害 4 調理・洗浄 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 本社・広島工場
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![]() 岩国工場
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1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
当社は中国地方のセブン-イレブン1,019店舗にお弁当・おむすび、惣菜・調理パン、スイーツを製造・納品・開発をしている会社である。
昭和46(1971)年、広島市南区翠町に「ヒロシマフーズ株式会社」を設立。昭和57(1982)年にセブン-イレブンに納品を開始。平成4(1992)年に「デリカウイング株式会社」に社名変更し、現在は広島工場、岩国工場、デザート工場の3工場体制で運営している。
変化の激しいコンビニエンスストアに対応し、毎日の生活に欠かせない食を通して幸せを追求する、安心・安全な商品をお客様に約束すること、それがデリカウイング株式会社の姿である。
(2)障害者雇用の経緯
昭和54(1979)年に、本社工場が広島市南区翠町から中区光南町に移転した。この工場の近くに広島南特別支援学校(旧広島ろう学校)があり、学校の依頼で聴覚・言語障害がある同支援学校の卒業者(女性)を採用した。初めての障害者雇用のため多少身構えたところがあり、社員に特別配慮するよう伝えていたが、彼女は耳が不自由な分、目で注意深く観察して仕事を覚え、交代要員となる次の作業員が仕事をしやすいよう工夫していた。その思いやりが周りの従業員のモチベーションを高め職場環境にプラス要因をもたらしたのである。
その後は、ハローワーク等の紹介により昭和60(1985)年、平成5(1993)年に知的障害者を准社員として採用し1名は現在も在職中である。平成16(2004)年から法定雇用率達成を目標に障害者雇用に取組み、トライアル雇用や実習を経て数名を採用した。障害があるために得手不得手な部分があるが、障害がない人にも同様に得手不得手がある。一人ひとりが支えあい補い合うことで誰もが働きやすい職場環境を作ることができると確信している。
当社のコーポレートスローガンは「Happy Together」である。その意味するところは従業員はもちろん、家族・お取引先・お客様・地域の方々皆で幸せになろうというものだ。一人ひとりを大切にする会社風土が障害者雇用推進につながっていると思う。
2. 取組みの内容と効果
(1)ナチュラルサポート
当社の障害者の仕事は、基本的に障害のない定時社員と同様の仕事をしてもらっている。入社時に現場責任者と障害特性を考慮し、配属先を決めている。
精神障害で対人関係が苦手な人には少数の人員で作業をする部署に、知的障害で社交的な人は大人数のいる盛付の作業へ、知的障害でこつこつとした仕事が得意な人は揚げ物や炒め物など一人で仕上げる作業へとそれぞれの個性が活かせる仕事についてもらっている。
作業自体は簡単であるが、一日に製造する商品の種類が多数あり、毎週新商品が発売される。特に盛付では毎回同じ具材ではなくローテーションで行っている。そのため全従業員に一つ一つ変更点を説明し覚えてもらうことは困難である。そこで、調理・盛付の一工程ごとに写真付の製造マニュアルを作成し、商品を製造する直前に必ず目を通し、誰が何時にどの作業をしても同じ品質の商品を製造できるよう工夫している。
作業以外でも衛生管理・品質管理の徹底のため、着替え、手洗いにも写真付マニュアルを作成し、大きく掲示している。元々は新入職者や外国人に分かりやすく説明する為であったが、結果的に障害者へも分かりやすくなっている。
その他にも帽子の色やハチマキの色で社員・定時社員・リーダー・新入職者を区別し、責任者には「現場監督」と表示したベストを着用し、分からないことがあれば誰に指示を求めればいいか一目で分かるよう工夫している。
こういった誰もが分かることに重点をおいた対策が障害者・障害のない人問わず分かりやすく仕事ができる環境を作りだしている。

(2)雇用事例
現在、調理部門でIH釜での調理を完全に任せているFさん(知的障害)は、具材の投入、炒め時間、味付け、温度チェックなどマニュアルにしたがってきちんと仕上げることができるので、今では欠かせない存在となっている。全ての工程を一人でこなすようになるまで多少時間がかかったが、今では新入職者に指導することもあるほどだ。
また、盛付部門において、おむすびの最終ラベルチェックなど担当するHさん(聴覚・言語障害、知的障害)は、ラベルが破れていたり、曲がっていたりしたら前工程の作業者に注意をしたりと責任を持って仕事をしている。簡単な仕事のみをまかせるのではなく、障害のない人と同じように扱うことで障害者本人の自信につながることが分かった。
特に最近印象的だったことがある。毎年会社の敷地内で夏祭りを開催しているが、上記のFさんは残念ながら仕事が終わらず参加できなかった。「残念だったね」と声をかけると「仕事だから仕方ないよ」と返ってきて、仕事に対する責任感を感じた。できる自信を持たせ、仕事を任せることは本人の成長にもつながることを実感した。
(3)柔軟な配置転換
必要があれば配置転換も可能としている。仕事が辛いなどのマイナス要素から本人が希望したのであれば、まず詳しく話を聞き、励ましながら継続を勧めたり、労働時間を短縮したりなどの対応を行う。話を聞くだけで納得してそのまま続けることができる場合もある。それでも継続が難しいようであれば最終的に配置転換で対応する。
これとは逆に、簡単な清掃から取り組んでいた者も、もっと長く働きたい、他の定時社員と同じように働きたいという意欲が出て来て、製造現場に配置転換を希望するケースもある。こちらも現場責任者と相談し配置転換を行っている。自分の意思を受け入れてもらえるということも安心して長く働ける要因である。
(4)ヘルスキーパーの導入
平成22(2010)年に新たな取組みとしてヘルスキーパーを導入した。当社の仕事は立ち仕事が主で、重いものを運ぶことが多々あり、腰や肩・腕・膝の痛みを抱える従業員が多数いる。そこで事務所の一室を区切り、マッサージ室を開設。弱視の女性を嘱託社員のヘルスキーパーとして採用した。マッサージ初心者も気軽に受診でき、それまで他店や整形外科に通っていた人も社内で低価格で受診することができるため好評を得ている。
当初はマッサージのみの施術であったが、従業員の要望もあり針を導入した。この導入により新たな受診(特に男性の受診)が増えた。また、ヘルスキーパー本人も資格取得に積極的で、個人的にリクレクソロジーの資格取得を目指していたが、それを聞きつけた上司が施術内容に加えることを勧め、講習の一部補助などを行った。今年の4月から新たに加わったリフレクソロジーは立ち仕事でむくんだ足に効果的と女性従業員に人気だ。
ヘルスキーパーに話を聞いてみた。「自分の挑戦を受け入れてくれる会社の雰囲気に満足している。今後も色んな技術を身につけ、従業員に気軽に施術を試してもらい、個人に合った治療法を見つけてもらえれば」と語る。
現在は広島工場のみの運用であるので今後は他工場にも展開していければと考えている。

(5)福利厚生など
当社は最寄り駅と近隣の団地2カ所からの送迎バスを完備しており、通勤の心配がないのも働きやすさの要因である。また、昼食は社内で製造したものをバイキング形式で提供しており、カフェテリアで従業員同士わきあいあいと休憩を取っている。
その他にも、当社は勤続7年毎に定時社員にハワイ旅行をプレゼントしている。平成25(2013)年は知的障害者2名が旅行を楽しんだ。サポートとしてご家族にも同行してもらったが、同じ班の定時社員と一緒に海水浴や買い物を楽しんとのことだ。とても楽しかったので次の7年を目指して頑張るとの声も聞いた。
2年前(平成23(2011)年)には透析を受けている者も自分でハワイの病院を手配して旅行に行った。ハワイに行くことがモチベーションを上げることになっており、勤続7年まで続けることが一つの目安となっている。
3. 今後の展望と課題
現在の雇用率は3.27%と法定雇用率を達成しているが、今後も事業の拡大に伴う人員増加が予想されるので、新規雇用を受け入れる為、さらなる現状把握と改善が必要だ。また、在籍者も長く勤めて頂いている分、「慣れ」が出てきたように感じる。今後はいかに緊張感を持続するかも一つの課題だ。
最近では本社からの働きかけではなく、工場単位で通常の定時社員を採用するように障害者を採用しており、中には雇用率に計上できない短時間勤務の人もいる。雇用率を守ることだけではなく障害者と共に働くことが当たり前となってきている。
これからも障害者・障害のない人共に当社で働きたいと思われる職場環境を維持していきたい。
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