障害者の自立と成長は会社発展の原動力である
- 事業所名
- 秋田指月株式会社
- 所在地
- 秋田県雄勝郡
- 事業内容
- 電子部品・デバイス・電子回路製造業
- 従業員数
- 344名
- うち障害者数
- 7名(内 重度1名)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 2 マシンオペレーター、営繕・保全 内部障害 知的障害 5 マシンオペレーター 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観
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1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
コンデンサの製造においては、国内メーカーとして草分け的な存在である兵庫県西宮市に本社がある株式会社指月電機製作所が、昭和43(1968)年4月に秋田県雄勝郡羽後町の誘致企業第1号として現在地に当社を設立し、コンデンサの生産拠点として稼動している。また研究・開発拠点としての機能もあり、平成18(2006)年には研究開発棟を新設し、研究開発機能を強化するとともに新分野の拡大・開発に着手している。
当社は、国の重要無形文化財として知られる「西馬音内の盆踊り」が行われる県南部の羽後町に位置し、そば処としても知られているように自然環境に恵まれた場所で、地域に密着し地域との共存共栄を目指している。
(2)障害者雇用の経緯
現在7人の障害のある方(内重度1人)が働いているが、障害者雇用については、企業の社会的責任として積極的な受入れを行ってきた。そうした経験や積み重ねから「障害者」は「障害のない者」と同じであるという基本的考えが確立されている。
障害がない者といっても一人ひとり違いがあり、その体力や能力は千差万別である。世間から障害者と称される方ご本人もそのままの姿が障害のない者と何等変わり無いと捉え、各々が自立し或いは自立を目指しているに違いないと捉えている。
就業は勿論のこと生活基盤をより安定させるためには、自立に向けて自分自身の能力の開発、ハンディキャップの克服等、いわば自立訓練を日々行っていくことは、障害者も障害のない者もまったく同じであり、差別をすることは一切行っていない。
社内規程の適用も差別は無い。準社員待遇で給料や賞与、有給休暇等総ての社内規程は障害のない者と同様の基準を適用している。現在まだ正社員はいないが、正社員登用基準も適用されており、正社員への道も開けている。
当社の障害者雇用については、従前よりハローワークの紹介による障害者雇用に取り組んでいたが、当地域は障害者、特に知的障害者にとって通勤手段がネックであるとの固定観念を抱いていた為、それ程積極的ではなかった。しかし、地元の特別支援学校や施設から通勤や働くことについて十分対応できることを実例をあげながら熱心に説明を受けたことにより、そうした懸念材料は払拭された。
その後、地元の特別支援学校や施設から実習や研修受入の要望があり、当然ながら積極的な受入れを行っていった。実習等の過程で、目に見えて成長が著しい生徒もおり、そうした方へ実習目標として『雇用』ということを提示し、更にやる気の引き出しを図り、能力や作業の実態を確認したところ、期待以上に成長が加速し雇用へとつながっていった。
雇用する知的障害者5人のうち3人は実習終了後に雇用し、2人は施設からの雇用である。いずれも、学校の先生の強い要望や施設指導員の熱い要請があったこともあるが、本人の向上心が雇用へとつながった一番の要因であると捉えている。
2. 障害者の従事業務と取組の内容、効果
(1)障害者の従事業務
雇用する障害者の従事業務は次のとおりである。
- マシンオペレーター
- 知的障害者 5人(A~Eさん)
- 肢体不自由 1人(Fさん)
- 構内共用施設営繕、保全
- 肢体不自由 1人(Gさん)
(2)取組の内容
- 全員に対する、支援・考え方・指導等
親会社(株式会社指月電機製作所)においては社会福祉法人への支援を通して、知的障害者の自立支援を積極的に行っており、指月グループの主力商品であるコンデンサの組立をはじめ、その他水耕栽培や造花、クッキーなどのものづくりの環境を整備して、宿泊による訓練生に加え、日帰りによる訓練生を合わせると100人前後を受入れている。年間の見学者は1,000人を超えている。
当社では、このような親会社の取組に刺激を受け、小規模で微力極まるが、平成17(2005)年頃から知的障害者の雇用に取り組んでいる。
また、当社では、現在総務部員4人と管理統括1人が障害者職業生活相談員になっている。いずれも障害者職業生活相談員資格認定講習受講後の選任であり、最終的には総務事務員全員が取得の計画で、残り1人となった。
障害者職業生活相談員は、障害を意識しないような環境作りとして、昼休み等の休憩時には、会話の輪の中に入りやすいような雰囲気作りや会社行事への参加勧誘等を積極的に促すようにしている。
作業については、受入れ先の部門長が責任者となり、専属の指導者の下、一人作業からライン作業と多岐に渡り、独り立ちできるまでに何度も繰り返して業務指導に当たっている。職場内では障害者という意識の解消に取り組んでいただき、障害者当人も全員業務習得意識が強く、仲間意識も芽生えて、一体となって業務に取り組める体制ができ上がっている。
こうしたことは、障害者職業生活相談員だけではなく所属部門の熱心な指導、協力なしには構築できるものではなく、一体となって行った結果であると捉えている。
- 個々の障害者に対する、支援、指導等
個々人に対する支援、指導等について、一例を紹介する。知的障害者のAさんの場合は、話の内容やスピードについていくことが困難であった。 担当した障害者職業生活相談員は何度も何度も噛み砕いて話しながら理解するまで粘り強く対話を繰り返していった。徐々にではあるが、理解できる幅が広がっていき、配属先製造部門の熱心な指導にも助けられ、今では業務上の専門用語を自由に使いこなすことができるようにまで成長した。
Aさんの作業風景知的障害者のBさんの場合は、特別支援学校を卒業し、開放感もあったと思うが、自分で所得を得ることができるようになり、何でも自分の好きなとおりにできるとの思い込みから私生活が乱れてしまった。障害者職業生活相談員は、自宅訪問や昼食を一緒にとるなど地道に話しかけを継続し、仲間意識を醸成することにより、見事立ち直ることができ、業務についても今まで以上に一生懸命取り組むようになった。
Bさんの作業風景知的障害者のAさんとCさんの2人は、バスケットボールの秋田県強化選手に指名され、就業後の練習や平日には大会への出場等がある。そうした場合は、障害者職業生活相談員や所属部門長が事前に把握の上、しっかりした支援体制を組んで送り出している。
知的障害者のAさん、Bさん、Cさんの3人は当社採用後に自動車運転免許証を取得した。最初にAさんから取得について相談されたときは大丈夫か不安になったのは事実であるが、本人の能力開発の一環と捉え、障害者職業生活相談員と所属部門が連携し、できる限りの支援体制を整え、無事運転免許証を取得することができた。当初は事故等を心配したが、一度覚えたことは正確に忠実に実行することがわかり、今まで接触事故等は一度も起こしていない。その後、Cさんも免許を取得し、Bさんも続いた。
知的障害者のDさんは重度の認定を受けている。当社より地元の福祉施設へ施設運営支援として外注作業を委託していた。Dさんはその外注作業を通じて当社の商品加工技術を身につけ、施設の強い要望もあり採用に至った。現在は、その技術を活かし、コンデンサの心臓部である素子の加工を任されている。
知的障害者のEさんは、不幸にも地元の漆器工場が閉鎖に至り、ハローワークより3ヶ月のトライアル雇用の受入の依頼があり、異業種での製造経験の為、当社の作業が可能か懸念したが、受入先製造部門の指導により、一つひとつ正確に実施できる様になり、トライアル終了と同時に採用に至った。現在は一人作業の部品加工を担当し、日々の計画数を着実にクリアしている。
3. 今後の展望
当社では、これまで家電機器用コンデンサを中心に生産してきたが、平成18(2006)年には研究開発棟が完成し、EV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド自動車)他再生可能エネルギーなどの研究開発にも取り組んでいる。更に竣工間近となっている新工場の建設により、市場ニーズにお応えできる生産環境を整備し、業界最先鋒として充実させ受注拡大を目指す。
新工場竣工に合わせた増員計画はほぼ完了しているが、法定雇用率達成も勿論配慮済みである。
今後も障害のない者と同様に障害者一人ひとりの能力開発についても、一体となった取組を行って行きたいと考えている。
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