支援機関との連携で特例子会社を設立した事例
- 事業所名
- SAPハピネス株式会社
- 所在地
- 埼玉県川口市
- 事業内容
- サービス業
- 従業員数
- 46名(平成25(2013)年8月現在)
- うち障害者数
- 17名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 1 清掃 内部障害 知的障害 10 清掃、クリーニング、機器の解体 精神障害 6 駐車場の巡回、POP製作 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 本社事業所外観
|
![]() 本社事業所入口
|
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
SAPハピネス株式会社は娯楽業を中心に運営するサンキョー株式会社のグループ会社では、その中核をなすヒューマン・アセッツ株式会社の特例子会社として、パチンコ業界では全国で3番目、埼玉県川口市では初めてで埼玉県19番目の特例子会社として平成24(2012)年3月に認定された。
サンキョーグループは遊技場(パチンコ店18店・ボウリング場2店・飲食店3店)・不動産事業等を中心に事業展開を行っており、関東中心に23店舗の事業を展開している。
(2)障害者雇用の経緯
サンキョーグループの障害者雇用は次の理念のもとに創められた。
- 企業は障害者の雇用義務がある。社会連帯、ノーマライゼーションの観点からも重要な責務である。
- 法定雇用率を達成しているかどうかは、社会的責任を果たしているかの1つの尺度となる。
- 働く意思と能力を有する障害者に対して、生き甲斐、働き甲斐のある職場生活のフィールド・チャンスを提供することは、企業の社会的責任(CSR)である。
また、特例子会社を設立するに当たっては、次の4点を社内の共通認識として具体的に進めることを確認した。
- 法定雇用率の算定
障害者雇用促進法に従って、障害者の法定雇用率の遵守を一番の目標とする。
- 定着率の向上
障害者雇用の最重要点は雇用の定着である。障害別の特性を専門家の意見を聞き入れながら取り組む。
- 運営のやりやすさ
障害者雇用促進法では、親会社の一事業所と同等に見なされているが、あくまでも別法人であり、親会社の規定に準じながらも、独自の採用方法や教育・処遇・労働条件等柔軟な設定をしたい。
- 企業のイメージアップ
【障害者のための会社を持っている】ということが企業のイメージアップにつながる。
2. 取組の内容
(1)第一段階
企業の障害者雇用に関しての全般的なサポートをする組織である埼玉県障害者雇用サポートセンターとサンキョー株式会社取締役総務部長で、障害者雇用を始めるに当たり綿密な打ち合わせを行った。
初めに、障害者の仕事として何を切り出すのかを、障害者雇用の拠点と決めた2つの場所で考えることとした。一つは川口市の末広事業所で、もう一つは草加市のアミューズメントプラザ(SAP草加事業所)で、そこで切り出された仕事を他店へ水平展開を試みることにした。
結果、2つの現場で、次のような仕事の切り出しができ上がる。
現場の責任者が現在行っている日常の仕事の棚卸をキメ細かく書き出し多様な切り出しが実現される。それと同時に仕事のボリュームに関しても検証を行った。
- 末広事業所の現場
- ①スロット台、設備機器の解体業務
リサイクル法に沿って分別処理をする。この時点では可能であったが現在はこの業務は行っていない。
スロット台、設備機器の解体業務 - ②空調設備のフィルター洗い
エアコンフィルターや集塵機フィルターの洗浄作業
空調設備のフィルター洗い - ③POP広告等の製作
POP広告等製作物
- ④パチンコ玉磨きの布ベルト(16m)クリーニング
パチンコ玉磨きの布ベルト(16m)クリーニング
布ベルトは、乾燥が終わると巻き取り作業を行う。
巻き取りの自助具を自社で作る巻き取り作業また、布ベルトの修理(ミシン掛け)もする。
布ベルト補修ミシン掛け
- ①スロット台、設備機器の解体業務
- 草加事業所の現場
SAP草加事業所
- ①清掃全般(開店前の清掃)
「遊技台前面拭き」「椅子拭き」「床拭き」「モップがけ」「ゴミ廃棄」
- ②清掃全般(営業中の清掃)
「床拭き」「モップがけ」「タバコ回収ボックス又は灰皿の交換」「ゴミの仕分け作業(缶・ペットボトル・不燃物・燃えるゴミ)」
- ③館内のトイレ清掃及び確認
- ④駐車場の巡回業務及び清掃
- ⑤駐輪場の自転車整理
- ⑥館廻りの雑草取り
駐車場巡回
- ①清掃全般(開店前の清掃)
(2)第二段階(人を集める)
仕事の種類の幅と量の検証より充分に特例子会社として運営できるとの見通しを基に、ハローワークへ特例子会社設立の意向を伝えると共に、設立に向けての要件等の指導を仰ぐことになる。
次に、会社設立に向けての障害者雇入れ計画を基に実際の雇用へと進める。
先の埼玉県障害者雇用サポートセンターのメンバーと、どのような方法で採用を行うことが会社にとって負荷がかからず、かつ、効果的、効率的なのかを話し合った結果、従来、埼玉県障害者雇用サポートセンターが障害者の雇用相談に際して使っている「採用までの流れ及び確認事項」のスキームでの雇用方法を取るとの結論に至る。
このスキームはハローワークに求人票を提出し、その求人情報を最寄りの市町村で設置している障害者就労支援センターに情報提供をする。その後、障害者就労支援センターに対して会社から事業概要の説明も含めて見学会を実施し、その情報を基に障害者就労支援センターの支援員が同センターの利用者へ求人情報を伝える。その後、当事者の会社見学、実習、採用面接、トライアル雇用、常用雇用に移行していく流れで雇用へ進むスキームである。会社は特段に障害種別にはこだわりは無く、通勤も含め仕事ができる人であれば問題ないとの懐の深いスタンスであったため、広い範囲でのエントリーが期待できた。
この様な背景の中、3拠点(末広、草加、蒲生)での実習を実施しながら、雇用へと結びつけていった。
その間にも本部の総務人事担当者を中心に各拠点の責任者も含めて、障害の特性や障害者への接し方等、勉強会の開催や専門家による教育も行った。
この会社の障害者に対する接し方の特徴として、「全員が同じ方向性を持ち」、「とにかく優しい」、「懐が深い」、「気配りが効いている」があげられる。
障害者に関わるメンバーの資質が素晴らしいとの印象である。
その証として、いままで1人の退職者しか出していないことを挙げることができる。
現場での取材を通じて、社員が伸び伸びと仕事をしていると感じとることができたし、各拠点の責任者が社員を理解し、また各人の仕事のスキルを伸ばそうという意欲も充分にみてとることができた。
筆者は当社の各種行事に参加させていただいているが、会社の全員が一丸となって楽しむ様子は、まさにチームワークの良さをあらわしている。
そんな折に社員の話を聞く機会をもつが、皆、楽しそうに仕事のことを話す様子がみてとれる。会社の風土のたまものだと思われる。
3. 今後の展望と課題
当社の障害者雇用を取り巻く環境は、会社側、従業員側とも非常に良い関係にあると思われる。
障害者雇用で最も重要な点は雇用の安定した継続であろうが、各責任者の障害者に対する手厚い配慮がみられ、その点は安心していられる。
今後の雇用に関する見通しとしては、前段の仕事の切り出しの中にあったパチンコの玉磨きのための布ベルトのクリーニングの仕事をしているが、その洗濯機、乾燥機を利用し、更に一部機器を増設してパチンコ店の制服のクリーニングやおしぼり等に仕事の幅を拡げたり、新たな切り出しとして、自社内のゴミを自社内でリサイクルするとの考え方から、パチンコ店やボウリング場から出たペットボトルや空き缶を回収し、リサイクルを目的にペットボトルを洗浄し、粉砕してチップにする、空き缶はアルミ缶とスチール缶に分別し圧縮するなどの予定があるようである。まだまだ発展が見込まれそうである。
特例子会社として設立から3年目を迎えた所であるが、今までの経緯を見るに当たり、これから、この会社がどの様に進化していくのか楽しみに見守りたいと思う。
企業支援アドバイザー 石川 眞太郎
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。