事業所名

株式会社ジェイ  エスキューブ

所在地

東京都港区

事業内容

ECM・ITソリューションのコンサルティング及び販売、BPOによる事務処理受託請負業務、総合人材サービス

従業員数

1,817名（常用雇用者数）

うち障害者数

25名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	2	一般事務
聴覚・言語障害	5	一般事務、受託関連業務
肢体不自由	4	一般事務、受託関連業務
内部障害	2	一般事務、受託関連業務
知的障害	1	一般事務
精神障害	1	受託関連業務
発達障害	9	一般事務、受託関連業務、機械保守業務
高次脳機能障害
難病等その他の障害	1	システム開発

この事例の対象となる障害

発達障害

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 取組の内容
3. 取組の効果、今後の展望と課題

本社エントランス

ショールーム

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

中央事務機株式会社は昭和37（1962）年に創立され、昭和46（1971）年に東洋オフィスメーション株式会社と社名を変更し、平成16（2004）年に三井物産株式会社の完全子会社となった。その後、平成19（2007）年に主要3子会社（東洋オフィスメーション株式会社、アシスト株式会社及び株式会社デップス）を含む5社の合併により株式会社ジェイ エスキューブが誕生した。さらに、平成25（2013）年にはトッパン・フォームズ株式会社の完全子会社となり、現在に至る。

事業内容はIT関連のコンサルティングや業務プロセスをアウトソーシングする企業からの受託・請負によるデータエントリーや事務処理のほか、総合人材サービス（人材派遣、人材紹介、業務請負）など多岐に渡る。

関西支店をはじめ全国に10を超す事業所があるが、社員の大半は本社勤務となっている。人材サービス事業の特性から業務請負や労働者派遣として多数の登録スタッフを抱えており、当社以外での勤務地となるケースも多く、在籍社員数は日々変動しているところが特徴と言える。

（2）障害者雇用の経緯

平成19（2007）年6月の障害者雇用率は1.00％であったが、同年7月に5社の合併があり、社員数が3倍近くに増加したため、障害者雇用率が1％を下回ることが明白となったこと、またハローワークからの指導を受けたことが契機となり、早急に障害者の雇用率達成に向けた取り組みを行うこととなった。

これまでも労働局・ハローワーク主催の合同面接会には必ず参加し身体障害者の採用を中心に検討してきたが、当社の計画に沿った人材を確保することが困難な状況にあったこともあり、採用の範囲を知的障害者、精神障害者、発達障害者にも広げ検討することとした。

とりわけ、これまで採用した経験のない発達障害者に関しては、採用担当者の中に発達障害に関して見識のある社員がいたこと、さらにこれまで障害者としての見極めが難しかった発達障害者が精神障害者保健福祉手帳を取得できるようになった時期であったこともあり、人事部門で発達障害についての勉強をしながら採用や配置などの検討を重ねた。

発達障害者は働く意欲も高い人が多く、それぞれの特性を理解し周囲が必要な配慮やサポートをすることにより、問題なく能力を発揮できる場合が多いことから、各人の特性に合った業務に就けるよう人事部門で検討した。また、職場で挫折した経験は新しい職場において活かせる場合も多いと考え、既卒の発達障害者に的をしぼり採用を行った。その結果、平成22（2010）年12月には障害者雇用率は1.98％となり、法定雇用率を達成した。

その後、障害者の退職や従業員の増加などにより、法定雇用率を下回る状況となってはいるが、今後も引き続き発達障害者の採用に取り組み、働く環境の整備や職務を広げていく計画を推進することとしている。

2. 取組の内容

（1）募集・採用

採用活動は本社人事部門が一括して行っており、現在は既卒採用に限定している。労働局・ハローワーク主催の合同面接会にも参加する一方、国立職業リハビリテーションセンターや東京障害者職業能力開発校、神奈川障害者職業能力開発校などで面接会を開催してきた。また、有料の合同面接会にも参加し、採用機会の拡大を図っている。

採用基準としては、働く意欲があることを重視しており、特に細かい条件などは設けていない。基本的には、業務内容を理解し興味を示す人であり、これまでの経験から就労経験を持つ人を対象と考えている。

採用当初は人事部門に仮配属し、配慮すべき問題点や適性などを確認する期間を設けている。トライアル雇用や職場適応訓練などの制度は活用していない。

また、発達障害者の採用を検討していく中で役員や現場の管理職の理解を促し、人事部門としても支援体制を作りながら進めていくなど、全社的な意思統一を図っている。

なお、これまではハローワークや支援機関からの紹介も多くあり、時期を選ばずに一般事務や事務処理に適性のある人の採用が可能であったが、発達障害に対する世間の認知が進み、採用を検討する企業が増加するなどの要因で、応募は少しずつ減少しているという。

（2）障害者の業務・職場配置

人材派遣の特性上、派遣スタッフも常用雇用者数に加算されるので、当社事務所内で障害者の配属率が高くなるのが現状である。また、少人数部署に障害者を複数名配属することは難しく、障害者の配属先は本社部門や営業支援部門などに限られるため、いくつかの特別な配慮をしている。

まず、採用当初の1か月から3か月間は人事部門に仮配属し、教育、研修、OJTなどを通し個々の適性の見極めを行っている。配属先が決まると、業務遂行上の問題点や人間関係の構築についての特別な傾向などを前もって配属先に説明し、対応のアドバイスなどを行っている。さらに、人事部門では配属後も定期的な巡回や個別面談を行うなどにより早期の問題解決を図っている。

配属先での業務内容は配属先に一任しているが、予め個々の特性などから向き・不向きがあることは説明しているため、取り立てて大きな問題が生じることはない。

（3）人事部門としての支援体制

発達障害者の採用は新しい取組でもあり、役員をはじめとして会社全体での理解の促進が必要となる。人事総務法務部では、部長を筆頭に人事室長が中心となり、担当者と共に支援体制を確立し、障害者雇用を推進している。

採用から配属先決定に至るまでの期間で個々の特性や注意すべき点、配慮すべき点等を見極め、配属先の責任者（世話役を含む）にアドバイスすることも人事部門の重要な役割である。また、各部署への理解の要請、さらには配属後のフォローアップも重要事項であることから、巡回や個別面談などを通じて継続的に支援を行っている。

（4）会社としての社会的責任

法定雇用率の達成は社会的責任を果たすためのコンプライアンス上重大な課題と認識し、社内に障害者雇用促進委員会（現在は発展的解消）を発足させ、現場に対する雇用率改善の周知と理解の醸成を図るほか、現場環境の意見の聴取なども積極的に行うなど、全社一丸となって障害者雇用を推進している。

3. 取組の効果、今後の展望と課題

（1）取組の効果

発達障害の特性を理解した採用計画に取り組んだことにより、これまでは継続就労が困難で、就職はしたものの退職せざるを得なかった人たちの応募も多く、就業意欲の高い人を採用することができている。

発達障害者の中には、学生生活ではその障害特性があまり認識されない場合もあり、就職してから、または社会に出てから自分自身の特性に気づく人もいる。そのようなことから、就職経験があり、その時の経験から自己の特性に気づいた人の方が、継続就労したいという気持ちも持ち合わせ、再スタートに意欲を示しているようである。

採用後一定期間は人事部門に配属し、各人の発達障害の特性を見極め、配属後、配属先へは配慮する点を個別に指導している。発達障害の特性としては、コミュニケーションが苦手であったり、業務の並行処理が苦手であったり、仕事の優先順位をつけるのが苦手であったりするが、こうした取組により配属先でのトラブルを回避し、安心して就業できる環境を作り出している。

障害者雇用に関しては、職場においても総論賛成・各論反対の意見が出るのは否めない。より効率を求められる職場では、各自の努力が求められ、少しでも負担が多く掛かることは敬遠されがちである。このような中で、特別な配慮が必要となる人材の配置は敬遠されることも多い。この点を考慮に入れ、障害者の配置は他部署の協力のもと人事部門が決定している。こうした仕組みが功を奏して、配属先での受入れがスムースになり、配属先ではプラスの人員の活用を前向きにとらえ、その人の持つ能力を活かせるような配慮をしながら担当する業務を決めている。

（2）今後の展望と課題

合併による急激な社員数増加に伴う障害者雇用率の落ち込みを回復するために、採用担当者がこれまで対象としてきた障害の枠を超えて、新たな取組として発達障害に対する理解を深めながら、雇用を進めてきている。