障がい者が主体のユニークな職場が実現した事例
- 事業所名
- アルビスクリーンサポート株式会社
- 所在地
- 富山県射水市
- 事業内容
- 店頭回収のペットボトル、アルミ・スチール缶、圧縮(減容)と販売、及び、バット、買い物かご、タオル等の洗浄
- 従業員数
- 20名
- うち障がい者数
- 14名 (全員 重度知的障がい者)
障がい 人数 従事業務 視覚障がい 聴覚・視覚障がい 肢体不自由 内部障がい 知的障がい 14 ペットボトルとアルミ・スチール缶の選別、圧縮、販売。及びバット、買い物かご、タオル等の洗浄 精神障がい 発達障がい 高次脳機能障がい 難病等その他の障がい - 目次
![]() 事業所外観
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1. 事業所の概要、障がい者雇用の経緯・背景
(1)事業所の概要
当社は、食品スーパーマーケットアルビスのグループ企業のひとつである。親会社のアルビス株式会社は、富山、石川、福井の3県に55店舗を展開する食品スーパーマーケットで常用労働者は約3,000名である。「食を通じて地域の皆様の健康で豊かな生活に貢献します」を企業理念とし、「より新鮮でより美味しく安全な商品をお値打ち価格で提供します」を経営理念として掲げている。「食」を通して地域の皆様と密接なつながりがあるだけに、企業としての社会的責任の遂行を大きな柱とし、障がい者雇用もその一環として従来より各店舗で取組を進めてきた。採用前に、就職を希望する障がい者本人、各店舗の店長、それに障害者就業・生活支援センターや障害者職業センターの担当者による3者面談を行うなどきめ細かい対応をしてきた。実際の就労にあたっては各店舗に雇用管理の注意点などを徹底し障がい者の能力を引き出す努力を続けている。
また、環境保全の観点から各店舗でのペットボトル・空き缶の回収に取り組み、資源の有効利用を目指している。
![]() 店舗の回収所
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(2)障がい者雇用の経緯・背景
親会社アルビス株式会社では、資源の有効活用や環境保全活動の一環として牛乳パックや食品トレーを継続して回収し、再資源化するリサイクル活動を推進してきた。ペットボトル、アルミ・スチール缶については販売先の確保ができたことから、一部店舗での回収となっていたものを全社全店舗の取組とするよう強化を決定した。
一方、障がい者雇用については、従前より各店舗の軽作業を中心に、募集・採用を続けてきたが、店舗ごとの雇用では限界があり法定雇用率を大幅に下回る状況だった。
そこで、構想されたのが当社「アルビスクリーンサポート株式会社」の設立である。この新会社は平成24(2012)年1月に国の認可を受けて設立された特例子会社で、アルビスグループとしての障がい者雇用率算定が可能になる。また、障害者雇用助成金(第1種作業施設設置等助成金)を有効活用し安全な作業環境をつくり、障がい者が主体となり働くことを可能としたユニークな就労形態となっている(具体的働き方は、「2.障がい者の従事業務、職場配置」で紹介する。)。
会社の経営方針として障がい者が安心して、生き生きと働ける職場環境、長期に安定した職場の提供を掲げている。特に、これまで就職が困難とされてきた重度知的障がい者の安定雇用を最重点課題とし、一人ひとりの適性や能力に応じた指導を行い、それぞれの能力を充分発揮できる職場づくりを目指している。
2. 障がい者の従事業務、職場配置
当社の工場施設は、アルビス本社敷地内の一角にある。以前大量の集配が行われていた大きな建屋を使用しているので作業場はゆったりしている。
![]() リサイクル工場
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![]() 回収された空き缶など
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この職場の特徴は、なんと言っても社員20名のうち障がいのない社員が6名で、14名の障がいのある社員(「フレンド社員」と呼称している。)によって作業が進められていることである。
作業を大きく分けると「ペットボトル選別減容ライン」「空き缶選別減容ライン」「買い物かご洗浄ライン」それに「惣菜バット洗浄ライン」がある。
それぞれのラインの担当は3名、3名、2名、2名でそれぞれ1名の障がいのないスタッフがつく以外は全員がフレンド社員である。
最近、スーパー店内で使われるタオルの洗浄も手掛けている。
(1)就労上の工夫
フレンド社員には、健康状態を保持しながら安全に就労できるように次のような取組を行っている。
- 一人ひとりの健康状態、作業への適応性などを考慮し出勤日数をきめる。
- 全員が、すべての作業能力をつけるよう指導する
- 作業は、手順を大きく表示し簡素化する。
- ルールの順守を徹底する。
- 機械の安全性を向上させる。
![]() きめ細やかな勤務表
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(2)ラインごとの紹介
- ペットボトルの選別減容(缶の選別 減容作業も同様)
- ①投入作業(フレンド社員 1名)
スーパーマーケットから回収されたペットボトル回収袋を開けてホッパーへ投入する。
回収袋は約3キロ。投入スピード1分間に1袋でそれほど急がなくても作業ができる。
また、ホッパーの内側に投入した量が適切である目安が線で示されている。
空きペットボトル投入 - ②選別作業(フレンド社員 2名)
選別コンベアーで混入した缶や瓶、キャップ付きなどを取り除き、リサイクル可能なものを目視で判定する。コンベアーのスピードは状況に応じて細かく調節され、色もグリーンにして目に優しい配慮がされている。
選別作業 - ③減容作業(障がいのない社員 1名)
選別されたペットボトルが上昇コンベアで減容機まで運ばれ自動でつぶされ梱包する。このポジションの障がいのない社員は、選別作業をしているフレンド社員の様子を常に見守ることができ、万一の時は非常停止ボタンで対応する。
圧縮されたペットボトル
- ①投入作業(フレンド社員 1名)
- 買い物かごの洗浄作業(惣菜バット洗浄作業もほぼ同じ工程)
- ①投入作業(フレンド社員 1名)
スーパーマーケットから回収されてきた使用済みの買い物かごを一つずつコンベアーに並べる。
並べる作業 - ②洗浄(従業員なし)
買い物かごがコンベアーに乗って洗浄機を通過し洗浄、すすぎ、乾燥まで全自動で処理される。洗浄部分に誤って手を触れたりしないよう入口から洗浄部分までの枠を通常より長くし安全に配慮している。
- ③取り出し作業(フレンド社員1名、障がいのない社員1名)
燥されて出てくる買い物かごを2名がペアで、洗い残しや不備がないか確認する。
洗浄 乾燥された買い物かご
- ①投入作業(フレンド社員 1名)
- タオル洗浄作業
洗浄・乾燥は大型の機械で行いフレンド社員の作業はタオルの種類別折りたたみである。
コンテストも開催
3. フレンド社員の紹介
フレンド社員への配慮としては、ローテーション勤務によるゆとりで、通院時間が確保されていること、最寄りのJR小杉駅から会社までは専用車による送迎を行っていることなどが挙げられる。フレンド社員を代表して3名のお話を紹介する。
(1)Aさん(男性 23歳)のお話
以前は建物清掃の仕事をしていました。この会社はみんな仲良く働き、特にお昼休みに一緒に弁当を食べるのが楽しみです。スポーツ観戦が大好きでサッカー「カターレ富山」の試合を観に行きます。働いた収入で洋服や靴など好きな物を買っています。
![]() Aさん
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(2)Bさん(男性 25歳)のお話
この会社に就職する前は、市の施設や会社の清掃など就労体験をして備えていました。
絵を画くのが趣味で、昨年(平成25(2013)年)に全県レベルの公募展に入賞することができました。働く喜びはお給料をもらうときに強く感じます。ゲームソフトや本を買ったりして楽しんでいます。就職して丸2年無欠勤で頑張っています。
![]() Bさん
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(3)Cさん(男性 20歳)のお話
以前は福祉施設で働いていましたが、今度の会社は仕事を通じてみんなと話ができるのでとても励みになります。生活での楽しみは家族と一緒にバスケットボールの観戦に行くことです。働いたお金で自分の好きなものを買っていますが貯金もしています。
![]() Cさん
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4. 障がい者主体の工夫と成果、今後の方針
(1)障がい者主体の工夫と成果
障がい者主体の工夫と成果について、アルビスクリーンサポート株式会社代表取締役社長の椎名 昭夫さんから次のようなお話しをいただいた。
![]() 代表取締役社長
椎名 昭夫さん |
- 20人中14人が障がいを持つ人であることの職場特性
現在クリーンサポートのセンター内で働く社員は6名とフレンド社員は14名です。そのフレンド社員14名は障がいを持つことで、働く主体は障がい者です。安全面への配慮はもちろん、毎日の挨拶や朝礼及びラジオ体操など、規則正しいリズムを大切にしています。
また、帽子や名札の着用など、毎日の服装状態についても厳しく注意しています。いわゆる当たり前基準について、何回も何回も繰り返し反復し、体に染み付くようにしています。このことは実は障がいのない社員にとっても必要なことなのですが、とくに当社ではそのことを徹底するようにしています。
- すべての作業をローテーションとするメリット
当社では、減容部門・洗浄部門・タオル部門がありますが、それぞれの部門によって、必要な能力の違いや作業集中時間帯の違いなどがあります。
現在14名のフレンド社員がいますが、交代で休日を取得しますので平均的な出勤人数は、8名~10名といったところです。ですから、全員がすべての部門の作業をできるようにしておくことで、出勤者の組み合わせが変わったとしても、作業をいつも通り行うことができます。誰かが休むと作業ができないことは、会社としては一番のリスクとなり、それは避けなければなりません。
また、その日の作業量も見ながら、午前中と午後のシフトを変更することで、効率的な作業を行えるようにもしています。
(2)今後の方針
当社の今後の方針として、アルビス株式会社総務人事部長の横山 純子さんから次のようにお話をいただいた。
「アルビス株式会社は北陸3県で食品スーパーマーケット55店舗を展開しており、アルビスクリーンサポート株式会社はアルビス株式会社の特例子会社として平成24(2012)年1月に設立しました。現在、14名の知的障がい者がアルビス株式会社の各店舗で回収したペットボトルやアルミ缶・スチール缶の減容業務、店舗内で使用するお買物カゴの洗浄業務等に就いております。設立当初に比べ、作業の質や量といった効率面、仕事への取組み姿勢といった意識・行動面の両面において向上が図られ、今後の成長にも大いに期待をしております。アルビス株式会社は特例子会社の設立までは、店舗での軽作業を中心とした業務において、障がい者の雇用を行っていましたが、今後はこの特例子会社での雇用を基本方針として、職務拡大と雇用の創出を図っていきたいと考えています。」
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