障害者の働く場のさらなる拡大に向けて
~業務の切り出しから各地域への展開~
- 事業所名
- 株式会社Fsolアクト
(株式会社富士通システムズ・イーストの特例子会社) - 所在地
- 本社 東京都文京区
札幌オフィス 北海道札幌市
青森オフィス 青森県青森市
仙台オフィス 宮城県仙台市
長野オフィス 長野県長野市 - 事業内容
- データ管理業務(データ入力、資料電子化、製本、点字名刺)
リサイクル業務(重要廃棄書類処理、リサイクル品回収)
オフィス環境業務(事務所内清掃、消耗品補充、メール集配)
ヘルスキーピング(社員向けマッサージ) - 従業員数
- 44名
- うち障害者数
- 33名
障害 人数 従事業務 視覚障害 8 ヘルスキーピング(マッサージ) 聴覚・言語障害 1 総務窓口業務 肢体不自由 内部障害 1 ジョブコーチ 知的障害 23 データ管理、リサイクル、オフィス環境 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次

集合写真(本社入居ビルの前にて)
1. 特例子会社設立の経緯、事業所の概要
(1)特例子会社設立の経緯
親会社の株式会社富士通システムズ・イーストは、富士通株式会社の100%子会社であり、コンピュータシステムを手掛けるテクノロジーソリューショングループに所属する従業員5,000人超の企業である。
システムエンジニア中心の企業であることから、障害者雇用は管理部門に限られており、法定雇用率の達成はなかなか困難であった。公共職業安定所からの指導により、ヘルスキーパーの導入を試みるものの法定雇用率達成には特例子会社設立が必須と考え、平成23(2011)年4月設立に踏み切った。設立に当たり、平成22(2010)年9月に親会社内に特例子会社準備室を設置(専任2名、兼務2名)し、平成23(2011)年1月に会社登記を行った。会社説明会、見学会、実習などにより6名の知的障害者を採用し、親会社より視覚障害者(ヘルスキーパー)6名を移籍し、計12名の障害者(ジョブスタッフ)とジョブコーチ3名、管理スタッフ5名(兼務3名)の20名で平成23(2011)年4月に業務を開始した。
(2)事業所の概要
- 文京本社(平成23(2011)年4月開業)
親会社本社のある文京区本駒込において平成23(2011)年4月に業務開始。親会社のオフィスサービスの他、富士通システムズ・イーストの子会社など2社からも個別に業務を受託している。基本的には、本社社屋内の業務であるが、関東地区の親会社の事業所(大宮、横浜、千葉)の会議室への出張清掃サービスも行っている(1か所あたり月1回知的障害者2名とジョブコーチ1名で出張)。
[従業員構成]
知的障害者 13名 視覚障害者 5名 ジョブコーチ 3名 管理スタッフ 5名 (内3名は親会社兼務) [主な業務]
- ①データ管理業務
- データ入力(アンケートなど)
- 資料電子化(人事関連保存書類)
- 資料コピー/製本(研修会テキスト、採用関係書類)
- 名刺印刷/点字刻印
- ②リサイクル業務
- 重要廃棄書類処理(書類、ノート、CD)
- リサイクル品回収(ペットボトルキャップ、切手、プリカ)
- 事務用品作成(メール封筒、メモ用紙)
- ③オフィス環境業務
- 事務所内清掃(応接室、会議室、フロア内打合せコーナー、ヘルスキーピングルーム)
- 消耗品補充(うがい薬、紙コップ、消毒液、清掃用具)
- メール集配(社内メール、宅配便、郵便)
- ④ヘルスキーピング業務
- 社員向けマッサージ
- ①データ管理業務
- 青森オフィス(平成24(2012)年9月開業)
工業団地内にあり広大な敷地の中で、リサイクル、オフィス環境業務以外に業務用車輛の洗車や敷地内のりんごの収穫や雪かきなど地域独特の業務を持つ。また、冬季の室内業務として紙漉きを取り入れ、コースターなどの製作を始めている。オフィスは、郊外の工業団地ということで、交通の便が非常に悪く、運転免許を持たない知的障害者3名はバス通勤のため、バスダイヤに就業時間を合わせている。
[従業員構成]
知的障害者 3名 ジョブコーチ 1名 [主な業務]
- ①リサイクル業務
- 重要廃棄書類処理
- リサイクル品回収(ペットボトルキャップ)
- 紙漉き(コースター作成)
- ②オフィス環境業務
- 事務所内清掃(応接、会議室、セミナールーム)
- 消耗品補充(コピー用紙)
- 給茶機サービス(清掃、給水、お茶葉補充)
- メール集配(社内メール、宅配便、郵便)
- ③その他
- 業務用車輛の洗車
- りんごの収穫(収穫、磨き、梱包、発送)
- 駐車場雪かき
- ①リサイクル業務
- 札幌オフィス(平成25(2013)年1月開業)
旧道庁の真向かいにあり、地下道のおかげで雪に悩まされることなく通勤が可能である。特に視覚障害者にとっては大きなメリットである。また、従来業者に委託していた給茶機サービスを担当し、従業員へのサービスに貢献している。
[従業員構成]
知的障害者 3名 視覚障害者 1名 (ヘルスキーピング) ジョブコーチ 1名 [主な業務]
- ①オフィス環境業務
- 事務所内清掃(会議室、フロア内打合コーナー)
- 消耗品補充(消毒液、清掃用洗剤、ペーパー)
- 給茶機サービス(清掃、給水、お茶葉補充)
- メール集配(社内メール、宅配便、郵便)
- ②リサイクル業務
- 重要廃棄書類処理
- リサイクル品回収(ペットボトルキャップ)
- 事務用品作成(メール封筒、メモ用紙)
- ③ヘルスキーピング業務
- 社員向けマッサージ
- ①オフィス環境業務
- 長野オフィス(平成25(2013)年6月開業)
長野駅から15分の交通の便も良い場所に位置し、富士通グループ各社が同じビルに同居していることから、グループ内他社の業務への拡大が見込まれる。平成26(2014)年4月には視覚障害者1名を採用し、ヘルスキーピングを開始。非常に人気のあるサービスとなっている。長野オフィスには、アビリンピック全国大会「フラワーアレンジメント部門」で銀賞を獲得したジョブスタッフがおり、社内の受付などに造花で作成したフラワーアレンジメントを飾っている。
[従業員構成]
知的障害者 2名 視覚障害者 1名 (ヘルスキーピング) 身体(内部)障害者 1名 (ジョブコーチ) [主な業務]
- ①データ管理業務
- 名刺点字刻印
- ②オフィス環境業務
- 事務所内清掃(受付、会議室、フロア内打合コーナー)
- 消耗品補充(封筒、消毒液、コピー用紙、テープ)
- メール集配(社内メール、宅配便、郵便)
- フラワーアレンジメント(受付用飾り花作成)
- ③リサイクル業務
- リサイクル品回収(ペットボトルキャップ)
- 事務用品作成(メール封筒、メモ用紙)
- ①データ管理業務
- 仙台オフィス(平成25(2013)年9月開業)
仙台駅より15分の仙台MTビルにありJR、バスなど交通の便は非常に良い。仙台オフィスには、聴覚障害者が1名おり、知的障害には難しい総務窓口業務(回数券配布、備品などの貸出)を担当している。
[従業員構成]
知的障害者 2名 視覚障害者 1名 (ヘルスキーピング) 聴覚障害者 1名 (総務窓口業務) [主な業務]
- ①リサイクル業務
- リサイクル品回収(ペットボトルキャップ)
- 事務用品作成(メール封筒、メモ用紙)
- ②オフィス環境業務
- 事務所内清掃(応接、会議室、セミナールーム)
- 消耗品補充(うがい薬、紙コップ、消毒液)
- ③ヘルスキーピング業務
- 社員向けマッサージ
- ④総務窓口業務
- 新幹線回数券配布
- リースカー、備品の貸し出し
- ①リサイクル業務
2. 取組の内容(業務紹介)
(1)重要廃棄書類処理
一般的にシュレッダーがけと言われている業務。現場のシュレッダーを撤去した後に廃棄ボックスを設置した。文京本社を例にとると、作業は毎朝の回収から始まり、2人ずつ3班でビル内の30か所の廃棄ボックスから重要廃棄書類を回収する。回収は郵便ポストの要領で、空の袋を持参し書類の入っている袋と交換する。機密性のある重要廃棄書類のため、ボックス施錠だけでなく、回収袋も施錠し、運搬途中での情報漏えいに対処している。回収された廃棄書類は、Fsolアクト内の仕分室にストックし、リサイクル可否、用紙サイズ別に仕分け作業が行われる。そして、仕分けされた廃棄用紙をシュレッダー室で集中的にシュレッダー作業を行う。文京本社では、日々150kg、月に3トンもの廃棄書類が発生し、トイレットペーパーにリサイクルされている。
(2)事務所内清掃
清掃場所は、親会社の応接室、会議室、各フロアにある打合せコーナー、ヘルスキーピングルームである。床面、ガラス面は清掃業者に委託しており、それ以外の会議机、イス、ホワイトボードなどが清掃対象となる。机上は飲み物の跡はもちろん、指紋が残らいよう稀薄した洗剤を使ってふき取る。イスは、普段清掃をしない背もたれ、脚などを洗剤、アルコールなどを使ってきれいにする。好評なのはホワイトボード清掃で、記入面はもちろん、ペンの粉末で汚れたペン置場、筐体全体を清掃する。合わせてペンのふた回りの掃除やインク補充も行う。お客様にきれいな部屋を提供することと、社員が気持ちよく仕事に取り組めることを目指している。
![]() 清掃作業の様子
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(3)消耗品補充
消耗品にはトイレ消耗品(うがい薬、紙コップ)とフロア消耗品(消毒用アルコール、清掃用洗剤、清掃用ペーパー)がある。トイレ消耗品は各フロアのトイレに、フロア消耗品は、各フロア数ヶ所に設置されており、補充する品物の準備をした上で、各フロアを巡回しながら予め決めた残量以下に減っている場合、コップなどは規定量まで加える、うがい薬などは準備していったボトルと置き換える。消耗品補充は社員自身によるオフィスクリーンのお手伝い、社員の健康管理に貢献している。
(4)事務用品作成
事務用品は、社内メール封筒、伝言メモの2種類であり、社内メール封筒は、社内で循環している痛んだ封筒を再生したり、新しいものを作ったりする。各部門から大量に注文が入ることもあり常にストックが必要である。メモ用紙は、廃棄された紙の中から機密性の全くない用紙(白紙、会社のロゴのみ印刷)を抽出し、A6サイズの伝言メモ用紙や罫線の無い白紙のメモ用紙を作成している。まずA4サイズの用紙を四つにカットし、縦横の二辺をそろえてクリップで留めて一辺をのり付けする。のりを二日にまたがり二度塗りし、十分乾かした後で不揃いの辺をサンドペーパーでこすり滑らかにする。伝言メモ、白紙メモとも人気商品で常に品薄状態である。
(5)文具リサイクル
親会社から廃棄された文具の中からクリーニングすれば再利用可能な品物(箱ファイル、紙ファイル、クリアファイル、クリップ、CDケース)を分別した後に、アルコールなどを使って汚れを落としストックし社内からの要求に応じて払い出す。親会社内には、書類整理時に空いたファイルや一時的に大量購入したが用済みとなったファイルなど、リサイクルできる品物はかなりある。一方文具が不足して購入している部門もあり、間に入って流通させることでコスト削減に貢献している。
(6)紙漉き
現在、青森オフィス限定で試行中である。材料は親会社社員から牛乳、ジュースの紙パックを回収して利用している。紙漉き方法については、近隣の支援機関、養護学校などからレクチャーを受けた。まずは、コースターから製作に着手しお客様に飲み物をお出しする際に使用する。今後はしおりやカレンダーなど商品を増やし、営業部門のノベルティ商品として提供できるレベルを目指す。
(7)ヘルスキーピング
現在7名のヘルスキーパーが、9部屋(文京4、大宮、千葉、仙台、札幌、長野)において社員向けにマッサージサービスを行っている。1回の施術時間は30分、就業時間中のため1ヶ月に2回までしか利用できないように予約システムで制限を設けている。利用料は無料であるが、東日本大震災の募金箱を設置して協力を求めている。企業内マッサージとしては規模も大きく、盲学校からの見学や実習生受入も積極的に行っている。
![]() ヘルスキーピング作業の様子
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3. 今後の展開、ボランティア活動への参加
設立当初は、経験者のいない中で業務の切り出し、ジョブスタッフへの指導方法など全てが手探り状態であったが、他の特例子会社、支援機関の支援を受けながら、1年ほどかけて軌道に乗せた。2年目に入り、ジョブスタッフの健康問題など新たな課題も出始めたが、障害者職業センターのジョブコーチなど専門家の指導や、支援機関の協力を受けて対応を進めている。地域展開は4オフィス(札幌、青森、仙台、長野)の開設を完了し、今後は、今までに得られたノウハウの共有化を図りながら、各オフィス独自業務の切り出しを進め、障害者の働く場の更なる拡大に向けて取り組んでいきたい。
また、知的障害者は就職するまでの間、大勢の方々、いろいろな機関や学校において支援される立場にあった。就職し、社会人となった今、その恩返しとしてボランティア活動への参加を積極的に進めている。その一つとして、東北復興支援ボランティア活動に、平成23(2011)年:2名、平成25(2013)年:4名の知的障害者がジョブコーチ引率のもとで参加した。今後も継続して他のスタッフにも参加を拡大していきたい。
![]() 東北復興ボランティアの様子
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