障害のある皆様の自立への希望を受け止めて
- 事業所名
- 社会福祉法人大地 障害福祉サービス事業所「花咲き苑」青梅
- 所在地
- 奈良県奈良市
- 事業内容
- クリーニング業(リネンサプライ)、就労継続支援A型、障害福祉サービス事業所
- 従業員数
- 91名
- うち障害者数
- 59名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 4 ロール班 肢体不自由 4 ロール班、タオル班 内部障害 知的障害 48 洗濯班、ロール班、タオル班、白衣班 精神障害 2 ロール班、タオル班 発達障害 高次脳機能障害 1 洗濯班 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観
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1. 事業所の概要と運営理念
社会福祉法人大地は施設長北山洋子氏が、平成3(1991)年に22年間の教職生活を辞して夫で理事長である北山道昭氏が経営する病院寝装具専門のリネンサプライを営む株式会社大和に入社したことに始まる。県内の小中学校に勤務する間、ずっと障害児と縁があり、入社後も経歴を知るハローワークからの紹介や卒業する教え子を受け入れ、常に障害のある人と共に働く状況を定着させてきた。
そのような中で「障害のある社員中心の職場があれば、より働きやすい環境を実現でき、もっと多くの就労希望者も受け入れられる」との思いが募り、シーツやタオル、白衣などのクリーニングを手がける障害福祉サービス事業所「花咲き苑」を構想、平成22(2010)年3月に「就労継続支援A型」事業所として奈良市北永井町に開業した。
「就労継続支援A型」事業所は一般企業と同様、雇用契約を結ぶ為、原則として最低賃金を保証しなければならない。その為、経営の苦労は例外ではないが、障害者がそれぞれの働く力に見合った賃金を受け取れる場として、また障害者が自立し社会の役に立てる喜びを感じる場としてお互いの想いが合致した施設として着実な歩みを続けている。
その運営理念は以下の通りである。
- 障害のある人々に対する自立支援をおこなうことにより、福祉の向上を図り社会に貢献する。
- 人との和、地域との和、環境との和。「和」を大切に誰もが個性を花咲かせる、豊かな社会・町づくりに貢献する。
平成21(2009)年8月 | 奈良市長より「社会福祉法人大地」の設立認可を受ける。 |
平成21(2009)年10月 | 障害福祉サービス事業所「花咲き苑」建築工事着工。 |
平成22(2010)年3月 | 奈良県より「就労継続支援A型」の事業所指定を受ける。 障害者福祉サービス事業所「花咲き苑」操業開始。 |
平成22(2010)年6月 | 医療関連サービスマーク(寝具類洗濯サービス)の認定を受ける。 |
平成24(2012)年1月 | 障害福祉サービス事業所花咲き苑大和郡山作業所建築工事着工。 |
平成24(2012)年9月 | 障害福祉サービス事業所花咲き苑大和郡山作業所操業開始。 |
2. 取組の内容
(1)募集・採用
募集は、地域のハローワークへの求人の他、各特別支援学校及び地域の障害者就業・生活支援センターを通じて行っている。
まず、応募の段階で実習を行い、本人の適性を見る。その期間はおよそ2~3週間である。その間に本人がどのような仕事ができるかどうかの見極めをする。その目安となるのは最低賃金を得られるかどうかである。「本来は最初から最低賃金を獲得できるような人が良いのだが、現実には難しいところがあるので、成長が見込めれば採用する。しかし、採用基準はそれだけではなく本人の働きたい、という強い気持ちと働いて楽しいと思えること、共に働く仲間と認めあえることが重要な要素である。また、採用時は必ず親御さんと面接を行い考えを聞かせてもらい、いい加減な場合は採用をしない。そういうこともあって採用後の出勤率は高く95%はある」と北山施設長は本人と親、両者の姿勢が非常に重要だと話す。
(2)障害者の業務・職場配置
作業は大きく次の4つに分かれている。
- 洗濯班
- シーツ類の仕分け
- 白衣のポケット内の遺物確認
- 洗濯補助
洗濯班の作業 - ロール班
- ロールアイロナーにシーツをかける
- 病衣、ピローケースのアイロン掛け前の分類
- 仕上りの点検
ロール班の作業 - 白衣班
- 白衣をハンガーに吊るし、トンネルフィニッシャーに入れる
- 仕上がったものをたたむ
- プレス仕上げをする
白衣班の作業 - タオル班
- おしぼり、清拭布等を手たたみして袋詰めをする
- フェイスタオル、バスタオルを機械を使ってたたみ袋詰めをする
タオル班の作業
それぞれができる仕事をこなすことが非常に重要で、みんな貴重な戦力となって処理能力を上げており、一人ひとりの作業能力や性格等を考慮して職場配置が行われている。
様々な機械を扱うので、危険防止の為、どの作業においても障害のある人とない人を組み合わせた就労配置になっている。
また、障害の程度や能力に対応した各部署の作業内容の単純化が図られている。例えば、知的障害者が理解しやすいように、作業量が数字でわかるよう表示して作業の確認が障害者自身でできるよう工夫もしている。
【自閉症で知的障害があるYさんのケース】
「お仕事頑張ります!」と言って毎朝元気に出勤する。
「本当に自閉症なの?」と思われるくらい人なつっこくて、おしゃべりが大好き。
大好きなSMAPや嵐を中心に話し出すと止まらない。
職場ではクリ-ニングされたタオルの仕上げ作業を月曜から土曜まで、祝日も大晦日も出勤する。ゴールデンウイークなど世間が休みの時でも、「タオルが使えなくなって困る人がいる」と頑張っている。
プライベートな楽しみは「たんぽぽの家」を拠点に活動する、知的障害のある俳優を主体にした劇団「くらっぷ」での活動である。今までに東京や鳥取でも公演をしている。
![]() 劇団「くらっぷ」岡山公演
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![]() 劇団「くらっぷ」鳥取公演
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【知的障害があるSさんのケース】
若い頃は靴下工場で働き結婚をした。
仕事を辞めて内職をしながら両親を見送り、今では夫と二人暮らし。
今は夫も高齢になり働けなくなったので、収入を得る為に「花咲き苑」のタオル班で清拭布をたたみ、袋詰めの作業に従事している。
「もう、年」と、いつもにこにこと穏やかで、仲間が休んだり、しんどそうな顔を見つけると手を取り、声をかけ励ましている。
タオル班のお母さん的存在で、余暇は夫と過ごす家での生活が充実して楽しみである。
【自閉症のNさんのケース】
特別支援学校を卒業後すぐに「花咲き苑」でプレス機を使う訓練をして、今や3台のプレス機を使い、次々に診察台カバー等を仕上げている。
その姿は職人そのもので、たたみ仕上げも丁寧である。
途中で止めることなく、仕事に責任を持っている。
余暇は音楽を聴くこと、パソコンで色々な情報を得ることである。
現在はグループホームで生活をしているが、好きな物が見つかると母親に電話をして「○○が○○日に発売です。予約をして下さい」と頼んだりする。
週に2度自宅に帰って過ごすのが楽しみである。
【高次脳機能障害のMさんのケース】
夢を持って独立し、妻と建てた新築の家で張り切って自営業を営んでいたある日、発病し障害を持った。
「5分前の記憶がない」という病気の特徴から、昔覚えていた道で遠距離を自転車で早朝から出勤する。「作業の都度、指導員から指示してもらうのは申し訳ない」と強く思いながら、仕事にも慣れ、常に笑顔で取組んでいる。
休日は妻や昔の仲間とキャンプに出かけるのが楽しみである。妻の優しさに支えられ頑張っている。
3. 取組の効果、今後の課題と展望
(1)取組の効果
「花咲き苑」の定員は65名で、初年度は32名からのスタートをした。早期の戦力化のため操業開始の1年前から株式会社大和の現場でトレーニングを行って操業開始時に対応してきた流れがある。
そのトレーニングの効果もあり、初めは何もできなかった障害者が半年後に変化した。花咲き苑で働きたいとの思いから、一生懸命仕事を覚えようとする。すると教える側の社員も障害のある人たちが力をつけていくことが喜びとなり、それらが相乗効果となり、事前に訓練した人たちはパート社員がいなくても、指導員がいればその日の生産量をあげることができるようになった。
しかし、全体としては、まだまだパート社員に頑張ってもらわなければ間に合わないのが現状であるので、更なる効果を期待して、5年後には障害のある人達と指導員だけで回せるようにしたいと考えている。
通常の仕事では、各自ができる範囲より少し高い目標を設定することで、能力の向上に努めている。課題の多い人には毎日、紙にその日の仕事量を書き出させて更なる意識向上に努めている。
(2)今後の課題と展望
障害福祉サービス事業所「花咲き苑」は、障害者就労継続支援A型事業として位置づけられている。その目的は、働く意欲や能力があるものの、一般企業への就労が困難な障害者の就労の場として、個々人の尊厳を保持しつつ、自立した生活を地域社会において営むことができるよう支援することとしている。
また、品質面の管理も徹底する。
医療・介護関連の仕事であることから、操業開始からそれほど経過していないにもかかわらず、良質なサービスの認定である「医療関連サービスマーク認定工場」(医療関連サービス振興会)の認定をすでに取得している。
建物も株式会社大和で認証を受けた経験が役に立ち、基準に合致するよう設計の段階から考慮に入れて建てている。
株式会社大和が、これまで医療・介護の分野だけに絞ってきたのは、衛生基準をきちんと満たした商品を提供するためである。
一般の物を扱うようになると、どうしても混同してしまう危険性がある。
それとともにシミや破れなどの不良品管理も徹底し、信用第一で行ってきている。
当然「花咲き苑」でも同様の衛生基準にし、品質面では厳しく、一定の生産量を確保しなければならない。
そのような条件下で順調な滑り出しを見せてきた「花咲き苑」だが、そこで働く人みんなが、「これが自分の施設だ」と自信を持って言えるようになってほしいと願っている。
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