理事長の「みんな仲良くやろう」の掛け声がスタッフの心をつなぐ
- 事業所名
- 医療法人アスピオス 老人保健施設みやこ苑
- 所在地
- 鳥取県鳥取市
- 事業内容
- 介護老人保健施設
- 従業員数
- 95名(老人保健施設みやこ苑)
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 1 入所者介護 肢体不自由 内部障害 知的障害 1 施設内清掃、営繕 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観
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1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
老人保健施設みやこ苑は、昭和38(1963)年に開業した「鳥取産院」(平成7(1995)年に「医療法人アスピオス」として法人化)が介護事業を最初に手掛けた施設である。
池として日本最大の面積を誇る「湖山池」の畔に白亜の殿堂が建っているが、近隣には国立医療センターがあって安心感もあり、風光明媚で静かな落ち着いた場所で在宅復帰に向けてリハビリに励んでいただこうと平成11(1999)年に開設したものである。
みやこ苑は少し高台にあるので、屋上から見る湖山池やその周辺の景色は心なごむものがあり、晴れた暖かい日などには入所の方をお連れして喜んでいただいている。


施設名「みやこ苑」の由来は先代理事長が母への思いを込めて実母の名前をつけたもので、親を想う気持ちと同じ気持ちで利用者の皆さんに接してほしいという願いが込められている。
入所部門には開設当初からの従来型と、平成21(2009)年に増改築したユニット型を併設した施設となっており、従来型92床、ユニット型18床、全体で110床の定員で運営している。また、ショートステイは空床利用型で運営している。
施設内には、定員30名の通所リハビリテーション、訪問介護ステーション、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所を併設し地域の皆様のあらゆるニーズに即した介護関連サービスの提供に取り組んでおり、生活面の安心と安全の確保に努めている。
当法人では、当事業所のほかに、平成14(2002)年に「老人保健施設 まさたみの郷」、平成17(2005)年に「グループホーム 風紋館」、平成21(2009)年には「小規模多機能型居宅介護支援事業所 わかさ」を開設した。さらに「鳥取産院」では産婦人科に加えて介護療養型病床を改築増床し、医療、介護ネットワークを構築するなかで、まさに「ゆりかごから介護まで」を実践している。
【みやこ苑の理念】
○人の心には太陽がある。
意識があるかないかを問わない。
子供は嬉々として育ち、お年寄りの心の深くには光がある。
心の火を燃やし続けるようお手伝いが出来ればと念じています。
○広大な恵まれた環境の中にあって自然の息吹を感じ、明るい生活は心に和やかな活力が湧きます。
【行動指針】
○私たちは、誇りと主体性を大切にし、自立性の向上を支援します。
○私たちは、グループワークなどを通じて仲良く楽しい日々を提供し、新しい喜びの力が生まれ、実際の生活に大きく寄与し生きがいにつながるよう努めます。
○私たちは、各々の方の生活実態を詳しく把握し、具体的な方向性を見出すことによって個性を大切にした援助を行います。
(2)障害者雇用の経緯
当法人全体では、全常用雇用労働者333名のうち12名の障害者を雇用しており、法定雇用率を大幅に上回っているが、これもやはり、理事長の「みんな仲良くやろう」の掛け声によって積極的に障害者雇用に取組んできた成果であろうと考えている。
ここでは老人保健施設みやこ苑のみの事例を紹介するが、みやこ苑では、上記12名のうち2名の障害者を雇用している。
雇用の経緯は、2名ともハローワークの障害者専門支援部門からの紹介で雇用したものである。
1名は平成16(2004)年に雇用した「知的障害(障害程度B)」のAさんと、もう1名は平成21(2009)年に雇用した「聴覚障害(6級)」のBさんで、両者とも比較的軽度の障害であるから日々の業務をこなすのに特に問題はなく、1名はジョブコーチ支援制度を活用したが、もう1名については通常の教育カリキュラムに則って仕事を覚えてもらい、3か月程度のトレーニングのあとは勤務シフト表にそって勤務してもらっている。
当法人では、障害があるかないかは全く関係なく、「みんな仲良くやろう」という理事長の掛け声で、全社員一致して、自らがやるべきことを一生懸命やるという気持ちでそれぞれの職務をこなしており、2名とも勿論その一員として日々頑張っている。
2. 取組の内容と現状
(1)知的障害のAさんについて
知的障害のAさんについては、高校卒業後初の就職ということもあり、ジョブコーチ支援を受けて仕事内容の把握から手順まで3か月間しっかり訓練したうえで雇用した。
Aさんは、広く施設内の清掃を受け持っているが、就業当初は複数の仕事を一度に指示するとパニックを起こす傾向があり、ひとつの仕事が終了したら次の仕事を指示するというかたちで訓練してきた。
既に勤続10年目に入っており、仕事の組み立ても既に自分の頭の中でしっかりできあがっており、「自らがやるべきことを一生懸命やる」を実践しているが、長きにわたり勤務が継続している大きな理由の一つとして、一日の自らやるべき仕事を消化すれば、休憩時間等の配分はAさん自身にある程度任せていることが、働きがいに結びついているのではと考えている。
平成23(2011)年には、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(現独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)から優秀勤労障害者理事長努力賞を受賞するに至り、ますますやる気が芽生え、平成25(2013)年にはヘルパー2級資格を取得した。文字どおり前向きに毎日の業務をこつこつとこなしてくれている。
![]() 入所の方のお部屋を掃除中のAさん |
(2)聴覚障害のBさんについて
聴覚障害のBさんについては、言語には全く障害はなく、常時補聴器を装着しているので、まわりのスタッフや入所者の皆さんともほぼ普通に意志疎通が図れる。
ヘルパー2級の資格を平成15(2003)年に取得し、既に介護施設等での勤務経験があったので介護職員として採用時から難なく現場に入ってもらった。
通常の教育カリキュラムで業務内容が順次身に付き、一定の期間が経過した段階で夜勤の訓練にも入ったが、聴覚に障害があるためナースコールに気付かなかったり、入所者の部屋からの呼びかけが聞こえなかったり等の問題があり、スタッフが少ない夜勤は困難という判断のもとに止む無く夜勤除外とし、早出、日勤、遅出と夜勤以外の勤務は全て他の職員と同様にこなしている。
向上心もあって、平成24(2012)年には介護福祉士に一発合格を果たした。
当事業所での勤務も5年近くなり、知識、技術とも既にベテランの域に達しようとしている。
![]() 入所者を介護するBさん |
3. 取組の効果、今後の展望と課題
(1)取組の効果
前述でご紹介のとおり、Aさんは勤続10年、Bさんは勤続5年であり、既に永年勤務者の仲間入りをしている。
これは、スタッフ全員が、障害者か否かに特段のこだわりを持たず、職場の仲間としてそれぞれの職務に専念しようとする雰囲気ができており、まさに、「みんな仲良くやろう」という理事長の掛け声でスタッフの心がつながっているものと考えている。
ただ、人それぞれ持った性格があるので障害者か否かに関係はないが、Aさんの場合は生来大人しく、ただ真面目に黙々と仕事をするというタイプであるから特に他のスタッフとの摩擦などはないが、協調性はというと若干難があるかもしれない。
Bさんについては、若干「思い込んだら的」な部分があって、多少頑固と思われる部分はあるが、スタッフや利用者と問題を起こすようなことはもちろんない。
両名とも雇用以来無断欠勤など全くなく、ごくごく真面目に勤務している。
雇用当初は、本人もスタッフもそれぞれに戸惑いや勘違いなどもあったのだろうと推測するが、特別変わった取組や特別な仕組みを考えることなく現在に至っている。
(2)今後の展望と課題
現在勤務中の2名については、比較的軽度の障害ということもあって特別な仕組みを構築することもなく、個々の状況に即した職務についている。
施設自体、お年寄りを介護するための施設であるから、もともとバリアフリーで、設備的な改良などは必要ないし、入所等されている皆さんが脳血管疾患等の後遺障害のある人なので、スタッフ全員が障害者を阻害するような意識はもっておらず障害者雇用についても特段問題意識を持つようなことはないと考えている。
しかし、重度の障害者をスタッフとして受け入れるということについては、入所者等のストレッチャーや車いすへの移乗ひとつをとってみても、介助自体が困難な場面が発生することが予想されるし、それが利用者様の命に係わるということも考えられるので、どのような障害者でも受け入れると言い切れない部分に歯痒さは感じている。
スタッフ一人ひとりが、障害者雇用を特別なことと考えず、今までどおり普通に職場の仲間を受け入れるという気持ちを持っていれば今後も特に問題はないと考えているが、将来的には、障害の程度や個々の能力、技能などを考慮したカリキュラム等を、先進事例に習って構築すべきではないかと考えている。
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