共通理解が生み出す働きやすい職場づくり
- 事業所名
- 社会福祉法人いわみ福祉会 総合福祉施設ミレ青山
- 所在地
- 島根県江津市
- 事業内容
- 介護保険事業ほか
- 従業員数
- 125名
- うち障害者数
- 4名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 4 介護・清掃・環境整備 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観
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- ホームページアドレス
- http://www.iwamifukushikai.or.jp/
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所概要
「いわみ福祉会」は、昭和48(1973)年、知的障害を持つ子供の親たちが中心となり、地域に開かれた知的障害者施設を建設することを目的として島根県浜田市に設立された社会福祉法人である。世界遺産に登録された石見銀山が近辺にあり、北は日本海、南は中国山地にはさまれた自然豊かな地域に属し、県をはじめ地元行政や地域住民の皆様のご理解とお力添えにより、現在では県西部の江津市・浜田市の2市にわたり、知的障害者福祉事業・高齢者福祉事業を展開している。
今回事例として紹介する「総合福祉施設ミレ青山」は、平成11(1999)年、江津市から養護老人ホームの経営移譲を受け、平成12(2000)年、介護保険事業を併設した「総合福祉施設ミレ青山」として現在地へ移転し高齢者福祉を中心に事業を展開している。
また、同施設内に平成26(2014)年1月、障害者相談支援事業所「ハートネットミレ青山」を立上げ、障害者支援にも力を入れていくこととなっている。
【社会福祉法人いわみ福祉会の理念】
『ごくごく当たり前の生活を奪うことなく人としての尊厳にふさわしいサービスを』
☆人として重んじられる施設づくり
☆福祉や人についての誤った考え方を変えていきたい
☆この人たちの持つ可能性を追い求め続けたい
☆地域の必要性に応えていきたい
☆地域とのつながりを大切にしたい
【総合福祉施設ミレ青山の基本理念および基本方針】
『すべての人が一人の人間として尊重され、個性豊かに輝いていけるような生活を利用者の方と共に考え、つくる』
☆「利用者主体の原則」を尊重し、利用者の方に敬愛の念を持ち、一人一人の状態に応じた質の高いサービスを提供する。
☆福祉施設の職員であるという自覚を持ち、積極的に研修等に参加するなど研鑽に努め、資格の取得や資質の向上を目指す。
(2)障害者雇用の経緯
当法人は障害者支援を中心とした事業を行っており、開設当時から障害者雇用の重要性や必要性を理解し積極的な受け入れを行ってきた。
当事業所としても当然のこととして受け入れをすることとなったものであるが、地域の高齢化が進み、多様化・複雑化したニーズや高齢者福祉制度への対応に尽力を注ぎたいが、慢性的な人材不足等、様々な問題も抱える。このようななか、人材として障害者の果たす役割は大きく、必要不可欠な存在となっている。
2. 取組内容
定期的な面談、業務のマニュアル化や明確化など、事業所でできる支援体制を整備するとともに、事業所には直接言えないことや悩みごと、生活面の支援などは、当法人が運営する「浜田障害者就業・生活支援センターレント」(以下「レント」)等の障害者支援機関と常に連携するなど、バックアップ体制の整備を図り、しっかりとした雇用関係を確立することで、障害者が安心して働ける環境づくりを心がけている。
【Aさん】
Aさんは平成19(2007)年6月にトライアル雇用を経て調理員として採用した。主な業務は、業務用食洗機を使用しての食器や調理器具の洗浄や収納など、毎日約200食の食事を提供する調理部門の重労働部門を担当している。
業務態度はとてもまじめで一生懸命業務に従事することができるが、精神的に不安定な面があり、いったん不安定な状態になると欠勤が続くことがあった。その都度「レント」と連携を図り何とか仕事を継続することができたが、平成22(2010)年、同じように採用された同年代の人が介護職員として働いている姿に刺激を受け、自らホームヘルパー2級資格を取得し、介護職員として仕事がしたいと「レント」に申し出た。
「レント」を通じて当事業所に相談があり、Aさんの思いを尊重する形で、平成23(2011)年7月頃から調理業務を行いながら少しずつ介護現場での業務を経験していき、9月から養護老人ホームの介護補助員として従事、ホームヘルパー2級の資格を生かし、利用者の移動補助や日常生活上の声掛け、居室などの清掃業務等を行っている。自らが望んだ仕事を行っていることへの満足感や仲間ができいろいろな相談ができるという安心感からか落ち着いて勤務できている。
今後の課題は、介護技術を習得していくことである。現在は補助的な役割が主で、本人は、もっと介護に携わりたいという志をもっている。その思いを大切にしていきたいと考えている。
![]() 入浴介護補助の様子
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【Bさん】
事業所の除草作業や窓ふき等の環境整備業務を介護業務等を行う直接処遇職員が行っており負担となっていたことから、環境整備業務の専属職員の配置を考えていた。「レント」にそういった人材がいないかと相談したところ、Bさんの推薦があった。Bさんは建設会社に勤めていたことがあり体力・経験など能力的に適任だということで平成25(2013)年8月に採用した。
主な業務内容は、除草・窓ふき・エアコンの掃除等の環境整備である。
出勤後、まず施設内のモップ掛けを行い、当日の天候等に合わせ業務の相談確認を行う。これまでの経験から、環境整備に関する知識や技術はかなりのもので、一生懸命に業務を行っている。Bさんの採用後、直接処遇職員が環境整備を行う頻度がかなり減り、利用者へのサービスの質の向上に大きく貢献している。
当事業所に就労する前は一人暮らしをしており、金銭トラブル等の生活面に不安を持っていた。現在も一人暮らしを継続しているが、当事業所への就労にあたって「レント」を中心とした関係機関との連携がスムーズに行え、安定した生活を送っている。今後は、地域に点在している当事業所が管理する他の高齢者福祉事業所の環境整備も行ってもらえればと考えている。
![]() 敷地内の除草作業中の様子
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【Cさん】
Cさんは、平成22(2010)年3月に福祉関係の専門学校を卒業し、同年4月に一般の介護職員として採用した人である。他の介護職員と新人職員研修等を受け、現場に入るがなかなか業務が覚えられない。そのうち飲酒による遅刻や無断欠勤、クレジットによる金銭トラブルなど生活面の問題が見え出した。
関係機関に相談したところ、何らかの障害が適用になるのではないだろうかとの見解であった。専門機関を通じて本人や家族と協議した結果、手帳申請に至った。
「レント」から生活面において適切・的確な支援が行われ、遅刻や無断欠勤がなくなり、また年金申請により経済状況も安定した。現在は、時間はかかるが業務を覚えることができ、ほとんどの勤務形態の業務をこなすことができるようになった。
今後は、さらなるスキルアップを目指してもらうために、国家資格である介護福祉士や自動車免許取得に向けた取組を促し、支援していきたいと考えている。
![]() 入浴介助中の様子
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【Dさん】
Dさんは、平成20(2008)年4月にトライアル雇用を経て、当事業所内のデイサービスセンターに介護補助員として採用した人である。
業務内容は、主に定期的なトイレ清掃や入浴後の浴室清掃、レクリエーション補助等、直接処遇ではない部分を行う業務である。
時には利用者にお茶を出したり話をしたりすることがあるが、客観的にはあまり得意な分野ではない様子である。デイサービスという事業は、継続的に行うサービスもあるが、基本的に日替わりで利用者が変わり、日中だけの利用ということから、いかに限られた時間の中で満足して帰ってもらうかというところに力を入れている。
利用者からみればDさんも職員のうちの一人であり、他の職員と同じように様々なことを要求される。その際、「かかわることに対してあまり得意な様子でない」Dさんの言動によくない印象を持たれる利用者もおられ、時にクレーム対応することがある。その都度、個別に指導し理解を促したり、接遇マナー的な研修に参加させるなどスキルアップにつながるような取り組みを行っている。
自宅から通っているためか、生活面での不安定さはなく落ち着いて従事しており、「仕事」以外の場面において事業所として心配な面はない。「レント」等の行事に積極的に参加するなど関係機関との関わりも積極的に行っている。
今後の課題は、業務の質の向上を目指していきたい。採用当時から比べると質量ともにレベルアップはしているが、気分によってムラがある。その都度指導できる体制づくりを強化しさらなるレベルアップを目指していきたい。
![]() レクリエーション補助中の様子
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3. 今後の課題・展望
現在障害者を4名雇用しているが、比較的落ち着いて業務に携わっておられる。その要因の一つに「職員の理解」が挙げられる。もともと障害者支援事業を中心とした事業を行っている法人が母体という背景があるが、当事業所職員全員に「あいサポーター研修」※を義務付けている。また職員の中には障害者支援施設従事経験者が多くいる。そういった知識や経験から、業務マニュアルの見直しや明確化を行い、障害者が働きやすい環境づくり、受け入れやすい体制づくりを推進している。事業所の懇親会や地域行事などにも参加し、プライベートな場面でも仲間として受け入れられている。その反面、利用者からは「かかわり」という点において、障害者だからという理解は得られにくく、様々なご意見をいただくことがある。そういった意見に対するリスク管理を事業所としていかに捉えていくかということが今後の課題である。
障害者雇用については、制度上や社会的な立場から重要な取組である。しかし、それ以上に事業所として、さらに質の向上を目指すとき、様々な場面において障害者はなくてはならない存在として大事な役割を担っており、今後さらに理解を深めるとともに積極的な受け入れを考えていきたい。
※あいサポーター研修:「あいサポート運動」により、「あいサポーター」になるための研修。「あいサポート運動」は、様々な障害の特性や障害のある人が困っていること、そしてそれぞれに必要な配慮を理解し、日常生活でちょっとした配慮を実践していく『あいサポーター』の活動を通じて、誰もが暮らしやすい地域社会(共生社会)をつくっていく運動。平成21(2009)年11月鳥取県で創設され、平成23(2011)年4月からは島根県も連携して取り組んでいる。
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