就労系障害者施設への業務委託から雇用へと繋がってきた事例
- 事業所名
- 株式会社旭金属
- 所在地
- 徳島県徳島市
- 事業内容
- 非鉄金属リサイクル業及び産業廃棄物処理業・ウエス加工業
- 従業員数
- 53名
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 2 金属、産業廃棄物の分別や解体 精神障害 発達障害 1 金属、産業廃棄物の分別や解体 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観
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1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
昭和27(1952)年に非鉄金属・ウエス加工業として徳島市南佐古に有限会社旭留芳商店を創業、その後、有限会社旭金属に社名を変更し徳島市南末広町へ移転、徳島市論田町にもアルミ溶解の工場を新設するなどして、規模を徐々に拡大していった。平成4(1992)年に株式会社旭金属へと移行後、論田工場と末広工場を統合し現在の徳島市東沖洲マリンピア工業団地へ移転した。
平成18(2006)年には徳島県の廃棄物等の発生抑制、循環資源の再使用・再生利用の3Rの推進に積極的に取り組み著しい成果を上げている県内の事業所を認定する制度において「3Rモデル事業所」として認定され、非鉄金属リサイクル業のみでなく、様々なリサイクルを行う環境配慮型企業へと躍進するため日々努力している。
現在は、マリンピア工業団地内にリサイクル家電を専門に取り扱う家電部と、金属加工を専門に取り扱う第一工場を新設している。
地球規模での「エコロジー」な対策が必要となってきている状況の中、当社は従来の「産業廃棄物処理」の枠を超え、さまざまなリサイクルを行う環境配慮型企業へ進化していくことを企業理念として活動しており、環境理念としても限りある資源を有効利用することにより社会環境に貢献する企業を目指している。
![]() 金属加工を行う第一工場
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![]() 第一工場内部
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(2)障害者雇用の経緯
株式会社旭金属では、平成23(2011)年より社会貢献の一環として、JICA(独立行政法人国際協力機構)が行う青年海外協力隊員の「徳島県協力隊を育てる会」に平成23年度から特別会員として加入している。これからは地球規模で世界各国が環境問題に取り組む必要があり、徳島県から世界各国に派遣される青年海外協力隊隊員に廃棄物処理の問題にも関心をもってもらい、普及されることを願い、その一助になればとの気持ちから微力ながら支援参加している。障害者支援については、4年前の平成19(2007)年5月より当社の業務の一つである「ウエス(綿100%)の卸売」部門において障害者支援の一助になればとの思いから、業務の委託作業を障害者就労支援事業所に依頼しているが、この支援が障害者雇用に最初に携わるきっかけとなった。
依頼した作業は、障害者就労支援事業所が当社からウエスを持ち帰り、裁断して折りたたんだうえ製品として梱包し、当社が指示した注文先へ障害者就労支援事業所から直接配達するという内容であった。
その一連の作業において、丁寧かつ正確なことから、お客様からの評判もよかったため、現在に至るまで障害者就労支援事業所の協力を得ている。障害者就労支援事業所としては、委託作業を通して障害者の知識・能力の向上を図るとともに、適性に合った職場への就労移行へのきっかけとなるなどの支援活動にもなった。
その後、平成23(2011)年に徳島市のマリンピア工業団地内にて加工専門の第一工場を立ち上げる際に、ウエス加工の作業を依頼していた障害者就労支援事業所にも協力を得て、最初の障害者雇用を開始した。
その際にはハローワークや障害者職業センターの協力のもと、ジョブコーチ支援制度を利用し、障害者就労支援事業所の職員の支援を得たりしながら、3名の障害者がトライアル雇用から就労へのステップを踏んで雇用に至った。うち1名は継続して現在も働いている。
現在は、特別支援学校の就業体験や実習で在学中から来ていた生徒が障害者就労支援事業所を経由してトライアル雇用へと移行した後、継続して就労している。
自社工場での障害者雇用はもとより、前述のウエス作業の委託の他、県内の障害者施設13ヶ所において送電線の解体と分別を外注するとともに、障害者施設の施設外就労を受け入れており、4名が工場内でプロパンガスの口金の解体と分別作業を中心に従事して、就労へのステップとして活用されている。
2. 障害者の従事業務、職場配置
現在の障害者雇用数は3名で、被覆アルミ鋼心線・アルミ鋼心線(高圧電流用)等の主にアルミ線の鉄とアルミへの分別解体作業をしている。
機械類を使った作業については今のところ安全面を考慮して行わずに、手作業でできる仕事を中心に作業をしている。
職場配置については、工場責任者とジョブコーチや就労支援者の意見を参考にして、彼らの特性を活かせる職場配置を考えている。
3名の内2名は、分別作業のほかに、毎日施設へ外注で委託作業を依頼している障害者支援施設への加工用のアルミ線の出荷準備と、加工後の受け取り回収・検収作業も担当している。
その2名の内、1名は数字に強い特性を生かし計量も担当してもらっている。
残りの1名はアルミ線以外にも、電気制御用リレー接点部分の希少金属を切り取る作業を行うなど、本人の特性や能力を考慮しながら作業ができるよう配慮している。
最初のトライアル雇用の段階では、勤務時間を考慮し短縮して、6時間勤務としていたが、トライアル雇用の3ヶ月終了後は、作業内容をこなせるようになった為、他の従業員と同じ8時間勤務へと移行した。
また勤務体系も第一工場内では、他の従業員と同じように、週5日勤務としている。
![]() 被覆線サイズの分別作業
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![]() 送電線の鉄とアルミの分別作業
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3. 取組の内容
(1)職場実習など制度の活用
就職面接においては仕事への家族の理解や通勤への協力が得られるかどうかなどを確認し、採用にあたっては面接での印象や障害の重い軽いでは判断せずに、障害者職業センターが行う職務試行法や障害者就労支援事業所による職場実習などを活用して多面的に判断をするようにしている。
これらの制度は、本人の適性に合った職務を見つける上においても重要視しているが、ただ単にその人の作業能力の適性を見極めるだけではなく、受け入れる側として的確な障害の理解ができていなかったり障害者についての思い込みがあるためか、その人の持っている能力を間違って判断していたり、その人に過度の期待をよせたりすることを避けるためにも職場実習などの制度活用が必要だと考えている。
これらのことは、障害者職業センターからアドバイスを受けたもので、その他、様々な障害者雇用におけるアドバイスを受け、雇用管理に役立てている。
また、障害者雇用の支援制度についてもハローワークの担当者と何度となく相談を重ね活用している。
(2)配慮事項
具体的な配慮事項としては、採用後も働きやすい職場環境を提供するように障害者と工場責任者とのコミュニケーションに心がけている。コミュニケーションは主に、毎日の業務日報を通じて行っており、仕事の役割と責任を障害者本人に与えることで仕事に対する意欲を高められるようにしている。
この外、知的障害がある社員には作業工程を細分化し単純化した作業をして貰う、仕事の引き継ぎのとき等は周りの従業員が作業の手本をやって見せるだけではなく、一度は作業をしている本人同士でやらせてみて、足りないところがあれば補足して本人の考えを尊重しながら仕事をしてもらうようにしている。しかしこのような作業指導をおこなってきても、課題を解決することが困難なことがある。
- Aさんの課題解決への取組
Aさんは当初、仕事をすることへの理解や取組姿勢に課題があり、ジョブコーチや出身の福祉施設の支援を受けながらのスタートとなった。
仕事を続けていく中で作業の習熟は進むが、出来高が増えるということが難しかったため、指導方法をジョブコーチに工夫してもらった。具体的には、言葉や数字での理解が困難であったため、一日の作業目標を目で見てわかるように、ツールを活用し図形化することにした。これによって、これまで300kgの電線の分解に6日程度要していたが、一週間後には5日に短縮することができた。
また、体調管理を目的に、Aさんに作業日報をつけてもらうようにした。このことにより、本人の体調面等を当社が把握できるようになり、当社と本人との相互のコミュニケーションの確立もできた。加えて、体調悪化時のマニュアルや緊急連絡簿や常備薬等の救急箱の整備も行った。
電線の分解・分別における作業効率の向上ツール(頑張り棒+矢印)の導入- Bさんの課題解決への取組
Bさんは発達障害で、仕事の能力は高かったが精神面で不安なところがあった。
メンタル面のサポートをジョブコーチやハローワークの心理カウンセラーに依頼するほか、当社も生活面の負担軽減のため、これまで昼食の準備を自分でしてきていた状態から、昼食の弁当代の一部負担を提案し弁当を取ることに変えるなど、本人が安心して働ける環境づくりに心掛けた。
職場においてはジョブコーチからのアドバイスを受けることはもちろんのこと、定期的にカウンセラーに訪問してもらい休み時間にカウンセリングを受けてもらうことや、電話での相談も随時行い、本人が安定して仕事が続けられるようになった。
また、直接本人から聞き取れない悩みや仕事に対する思いについては、ジョブコーチや支援施設の職員や家族の協力も得て、コミュニケーションを取りながら情報交換をして参考にしている。一方、共に働く従業員の障害者に対する理解を深めるために情報はできるだけ共有し、よりお互いの気持ちを考え、信頼関係を築けるように努力している。
プロパンガス口金の解体と分別業務委託分の検収と整理4. 取組の効果
当社での営業上の効果については、資源のリサイクル業務のうち、とりわけ手作業でないとできなかったスクラップが自社でできるようになり、取引先の要望をこなせる幅ができ、間口も広がり関係も密になってきている。
従来海外へ流出していたスクラップやプラスチックが、国内でリサイクルされる大切な資源として活用される意味も非常に大きく、障害者雇用や施設への業務委託の意義が重要となっている。
自治体や大手企業との取引においても、障害者雇用に積極的に取組んでいることで、目先の単価だけではない部分(社会的貢献への評価)でメリットを受けている所がある。
今後の展望と課題として、近い将来都市鉱山として注目されてきた小型家電リサイクルにおいても近年国内での道は険しかったが、障害のある人の特性や能力を活用することで道が開ける可能性も見えてきつつあり、自社だけでの活動ではなく、県内の障害者支援施設と連携し、福祉拠点での小型家電の回収や解体・分別で、海外へ流出していた資源を国内の資源として活用できる時が来ればと考えている。
平成23(2011)年に開始した障害者雇用では1年半余りで途中退職があった。その後も知的障害者の雇用の継続と新たな雇用により作業を担ってもらっていたが、いざ次の就労者に任すとなると、障害の程度や特性も全く違い、その人に合った方法へ変える必要があった。また、家族とのコミュニケーションが足りなかったことによって、思い違いや理解の不足が退職につながってしまった経験もあった。それらの経験を踏まえ、ジョブコーチや、障害者就業・生活支援センターの人々の力や知恵を十分にお借りしながら一人ひとりのスキルアップに繋げ、将来にわたって継続して就労してもらえる職場にできればと考えている。
執筆者:株式会社旭金属 役員 旭 千春 - Bさんの課題解決への取組
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