働いて良かったと思われる職場づくり
- 事業所名
- 社会福祉法人つかさ会 ノーブル
- 所在地
- 長崎県南島原市
- 事業内容
- 障害者福祉事業(ノーブル:就労継続支援A型事業)
- 従業員数
- 22名(ノーブル)
- うち障害者数
- 13名(ノーブル)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 12 縫製事業(10名)、給食事業(2名) 精神障害 1 製麺事業(1名) 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観
|
1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯
社会福祉法人つかさ会ノーブルは障害者総合支援法に基づく、就労継続支援A型事業所である。一般の事業所に雇用されることが困難な障害者に対し、自立した社会生活を営むことができるよう、就労の機会を提供し、社会的・経済的自立を支援している。
昭和60 (1985)年 | 設立者である前理事長が、障害があっても障害が重くても軽くても、働くことをとおして「社会参加」できる人を育てたいという願いから「有限会社つかさ被服」を設立した。 【助成金の活用】 障害者作業施設設置等助成金、重度障害者等通勤対策助成金(通勤用バスの購入)。 【作業内容】 当時、地域に縫製工場が40数社点在しており、縫製加工の下請け作業を行う。 |
平成10 (1998)年 | より対人関係や健康管理等に配慮ができる「知的障害者福祉工場ノーブル」を開所した。 県内各地より、雇用希望者があり、自宅より通勤が困難な従業員のために寮が必要となる(現在のグループホームの前身)。 【制度の活用】 職場や作業への適応を容易にするため「職場適応訓練」を活用。 【作業内容】 製麺工場の協力のもと、地場産業である「島原手延べそうめん」などの麺類加工販売を始める。 |
平成19 (2007)年 | 障害者自立支援法に基づく指定を受け、「就労継続支援A型事業所」へ移行。 【助成金の活用】 重度障害者等通勤対策助成金(住宅の賃借)。 【作業内容】 障害のない従業員のみで行っていた給食の調理業務に障害者も加わる。 |
2. 障害者の従事業務、職場配置
(1)縫製事業
縫製工場で縫製されたパジャマを預かり、ボタンどめ、アイロンがけ等の仕上げ加工を行う下請け作業である。作業工程を細分化し、それぞれの作業能力に合わせて従事する作業内容を考慮している。日々、作業の仕様が変わることはなく、紳士用と婦人用の二種類である。作業を覚えるまでには時間がかかるが、反復作業であるため知的障害のある従業員の作業に適している。
![]() アイロンをかける作業
|
![]() ハンガー・袋がけの作業
|
(2)製麺事業
製麺工場より、そうめん・うどん・ちゃんぽん等の麺商品を仕入れ、袋詰め・箱詰めなどの加工を行い、販売している。
比較的、納期に余裕があるため、精神障害のある従業員に適している。
![]() そうめんの箱詰め作業
|
(3)給食事業
昼食づくりに係る、検品・食材の切り込み・配膳等を行う作業である。
以前は障害のない従業員で行っていたが、食材の検品作業など障害のある従業員の方が正確に細かいところも気付くことができている。
食材の切り込みについては、調理するメニューにより切り方もその都度変わることから、当初はイチョウ切りや乱切りなど切り方の手順を見やすい場所に掲示していた。
今では、メニューをみて切り方の判断ができるようになっている。
また、食事の量については少量を希望している人がおり、食べる人によって食事の量がまちまちである。そのため少量の人、普通盛りの人を色分けしたネームプレートをおぼんに置き、食事の量を間違えないように解かりやすくしている。
![]() 食材の切り込み
|
![]() 盛り付け
|
3. 取組の内容と効果
(1)精神障害のある人の雇用
製麺事業部門で精神障害のある人を雇用した。雇用のきっかけはその人より、就職の希望があり採用したものである。
長期間入院していたため、短時間労働から始めて徐々に労働時間を増やしていく働き方を提案したが、「フルタイムで大丈夫です。頑張ります」と言ったので、フルタイムの働き方で始める。
作業も正確で生産性も問題は無かったが、几帳面な性格で頑張りすぎる傾向にあり、結果的に体調を崩し数週間休むことになった。
当然その間は本人も所得が減り、事業所としても期待していた労働力が不足することになる。本人の体調の変化に気付くことができなかったため、定期的に体調の確認や面談を行い、早期に発見し対応することとした。
- 柔軟な働き方
以上のような経過から、離職して長期間働いていなかったため体力的に不安がある人に対しては、短時間または週4日程度の柔軟な働き方により精神的、体力的な負担の軽減を図ることとした。
- 定期的に面談を実施
自分の思いをうまく伝えられない、コミュニケーションが苦手な人に対して、定期的に面談を実施することとした。
面談時の主な内容は次のとおりである。
人間関係の調整 感情の行き違いや、一方的な思い込みにより不満を抱え込みトラブルになり易い。
お互い協力して作業ができるよう、人間関係に配慮し調整することが必要。
困難な場合には、配置転換も検討している。健康管理 雇用開始時は特に、新しい環境への緊張や不安がみられる。
また、精神に疾患のある人は作業を無理して行い、疲れやすい傾向にあるので、その都度体調を確認し柔軟な働き方を提供している。生活全般に関すること 休日の出来事など、話しを聞いてくれる相手がいることで安心感が得られる。 以上のように、一人ひとりの状況把握に努めることで、問題の早期解決に対応している。
また、職場環境が整っていたとしても家族間や交友関係での問題や金銭的な問題などの生活面での問題により、働く場面において意欲の低下や人間関係に影響が出ることがある。従業員を取り巻く環境は、変化するものであり、継続的な生活面の支援も重要と考える。
(2)従業員のアンケート調査
従業員の満足度を把握するため、アンケート調査を行った。
結果は下表のとおりである。
質問項目 | 回答 | ||
職員の対応 | 職員は親切、丁寧に対応してくれますか | はい どちらとも言えない いいえ 解からない・無回答 | 76% 14% 0% 10% |
職員は何かにつけ気軽に声をかけてくれますか | はい どちらとも言えない いいえ 解からない・無回答 | 67% 10% 14% 9% | |
従業員の意向の尊重 | 職員はあなた(あなたの意思)を大切にしてくれますか。 | はい どちらとも言えない いいえ 解からない・無回答 | 81% 5% 0% 14% |
困ったことを相談できる職員がいますか | はい どちらとも言えない いいえ 解からない・無回答 | 57% 14% 24% 5% | |
不満や要望への対応 | 不満や要望を気軽に話すことができますか | はい どちらとも言えない いいえ 解からない・無回答 | 62% 19% 10% 9% |
不満や要望に対してきちんと対応してくれますか | はい どちらとも言えない いいえ 解からない・無回答 | 48% 19% 5% 28% | |
職員間の連携 | あなたが要望したことが他の職員にも伝わっていますか | はい どちらとも言えない いいえ 解からない・無回答 | 48% 5% 10% 37% |
職員はみな同じように接触してくれますか (職員によって言うことやすることに違いがありませんか) | はい どちらとも言えない いいえ 解からない・無回答 | 57% 14% 5% 24% |
アンケート調査は、調査を行った結果を基に、今後の満足度を高めていく指針になっている。特に、信頼関係の形成が必要であることが判る。
事業所側が従業員に対して、配慮しているつもりでも従業員に充分に伝わっていないこともある。「頼りになる」、「何でも話せる」ような信頼関係を築くことが必要になる。
4. 今後の展望と課題
(1)新たな作業の開拓
下請け作業が中心であるが、最低賃金は毎年改定されていく中で、縫製工場の減少に伴い受注量が伸び悩んでいる状態で、新たな作業を開拓していく必要がある。
厨房においては、午前中に昼食づくりを行い、午後からは使用していないため、既存の設備を活用し食品加工に係る作業を行う予定である。
(2)多様な障害に対応できる環境整備
取組の内容のとおり、面談などソフト面での配慮はある程度行ってきたが、知的障害のある従業員が大半を占めている中で、精神障害のある人からの働きたいという問い合わせが多くなってきている。身体、精神、知的とどのような障害があっても対応できるよう、次のように今後計画的に環境整備を行う予定である。
平成25年度:階段に手すりを設置
平成26年度:くつろげるスペース(休憩場所)の確保
平成27年度:玄関の段差を解消
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。