障害者と共に働く企業の取り組み
- 事業所名
- 株式会社あんしん
- 所在地
- 沖縄県浦添市
- 事業内容
- 運送業
- 従業員数
- 550名
- うち障害者数
- 9名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 1 商品仕分、納品検品 内部障害 知的障害 4 商品仕分、ラベル貼り 精神障害 3 商品仕分、納品検品、折コン水洗 発達障害 高次脳機能障害 1 商品仕分、ラベル貼り 難病等その他の障害 - 目次
![]() 本社入居ビル外観
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1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
昭和40(1965)年、創業者の安里信秀は、オート三輪で客船や貨物船の荷物を運ぶ“安信(やすのぶ)運送”をスタートさせた。どんな少ない荷物もすすんで引き受け、お客さまのお役に立ちたいという一心で事業を展開し、いつしか“安信運送”は、“安信”の文字から“あんしん”とお客様から親しみ呼ばれるようになった。そして、昭和56(1981)年9月1日に株式会社あんしんを設立した。物流の基本は「人」であるとし、人と人のコミュニケーションを基本に、ただ荷物を運ぶだけでなくお客様の気持ちを一緒に届けたいと考えている。
そうして時代の求める企業の社会的責任を果たし、お客様の流通を支援しつづけるため、そして沖縄に生まれ育った企業として、地域貢献の結実である沖縄型統合プラットフォームをビジョンに掲げている。
現在、県内外に12の拠点があり、550人が働いている。事業種目は次のものであり、ロジスティクス・プランニング、物流コンサルティング、物流包括受注(ソリューション事業)、商物流プロバイダーを事業内容としている。
■一般貨物自動車運送事業 ■軽貨物自動車運送事業 ■第一種貨物利用運送事業 ■古物商■第二種貨物利用運送事業 ■産業廃棄物収集運搬業 ■倉庫業 ■特定労働者派遣事業
常に心がけているのは、「生活者の視点を決して忘れないということ」で、生活者のニーズに即したサービスを提供することで必要とされ、成長できる企業となることを目標としている。
なお、当社は、シンバホールディングス株式会社傘下の会社9社で構成されるシンバネットワークの1社であり、そのホールディングカンパニーは経営理念・行動指針を下記のように掲げている。
≪経営理念≫
「私たちは人と世のために活きる存在でありたい」
私たちは社会貢献を自らの存在意義として、関係各社を通して世のためになる事業を行い、人の役に立つことを企業活動のモチベーションとしています。
≪行動指針≫
- (誠義)誠意、誠実に貫かれた正義をもって仕事する
- (独創)概念にとらわれることなく次代を独自に切り開いていく
- (王道)誇りと品格を持ち、胸を張って信頼に応えていく
(2)障害者雇用の経緯
当社は、平成22(2010)年10月にシンバネットワーク傘下の企業2社を吸収合併し、雇用労働者数が450名を超えることとなり、障害者雇用納付金の申告義務が発生することとなった。
合併先の事業所で雇用されていた障害者5名(身体障害者1名、知的障害者4名)を継続雇用できたが、運送業の除外率を適用しても1名足りない状況だったため、公共職業安定所や沖縄障害者職業センターからの助言指導を受けながら、平成22(2010)年12月に精神障害者1名を採用したのが実質的な障害者雇用の始めである。
業務の拡大による雇用労働者数の増加に伴い、採用した障害者は
平成23(2011)年10月:高次脳機能障害者1名雇用、
平成24(2012)年2月:精神障害者1名を雇用、
平成24(2012)年9月~10月:精神障害者2名、精神障害者の短時間労働者1名を雇用
平成25(2013)年度:知的障害者1名、精神障害者2名を雇用
一方、上記の雇用者のうち精神障害者4名、知的障害者1名が退職してしまっているため、現在は9名となっている。
障害者の雇用については、当初より公共職業安定所及び沖縄障害者職業センターと連携し、トライアル雇用やジョブコーチによる支援の活用と併せて社員の意識改革や定着等について、管理部門が指揮をとり各営業所単位での取組を行っている。
2. 取組の内容
(1)障害者の従事業務
身体障害者1名、知的障害者4名、精神障害者3名、高次脳機能障害1名の9名を雇用しており、全員が営業所に勤務し物流業務である商品運搬、仕分け、検品、ラベル貼り、折畳コンテナの水洗業務等を行なっている。
各営業所ではグループの上司や責任者が相談窓口となって対応し、障害者には超勤をさせないよう定時には帰す等の配慮をしている。
(2)障害者の定着のための取組
- 港町営業所の取組
港町営業所(港町物流センター)は昨年(平成25(2013)年)の12月に新設された営業所で、浦添市の西洲営業所が移転し、冷凍・冷蔵食品の物流を扱っている。
移転と共に障害者4名(身体障害者1名、知的障害者1名、精神障害者2名)も異動して勤務している。
営業所は24時間フル稼働しているが、障害者は10時から6時間もしくは8時間勤務となっている。
港町営業所では、毎日午前8時半と午後2時に全体集会を持ち連絡事項を伝達して情報の共有化を行っている。仕事をするうえでの指示や相談はグループの上司が行っている。また冷凍庫や冷蔵庫内での食品を扱う業務なので体調管理にも気を使っている。
港町営業所冷蔵庫内で仕分け作業港町営業所で働く精神障害のあるAさんは大学卒業後に専門学校でエンジニア科を卒業した。現在は週5日6時間勤務で仕分け作業やラベル貼りの業務を主としている。
知的障害のあるBさんは高校卒業後に医療関係の卸売業でビニール手袋の仕分け等を経験した後に当社に就職し、週5日8時間勤務で仕分け作業やラベル貼り等の業務で頑張っている。将来の夢は母親と一緒に料理を出すお店を持つことである。
- あんしん館の取組(社員の意識改革のための雇用管理サポート事業)
あんしん館は西原町にある営業所で、現在、沖縄障害者職業センターからの推薦で精神障害者を雇用し、併せて雇用管理サポート事業による支援やジョブコーチ支援も受けた。
雇用管理サポート事業による支援は、雇用した精神障害者の離職が続いたことから、沖縄障害者職業センターより同事業の紹介を受けたもので、「職場のメンタルヘルス」と題した精神科医と障害者職業センターの障害者職業カウンセラーによる講義とグループミーティングをあんしん館の社員10名を対象に、平成25(2013)年10月に行った。この講義は精神障害の障害特性やコミュニケーション方法及びメンタルヘルス不調が懸念される社員に対する対応方法の情報提供を通して、職場のナチュラルサポートの確立を目的として実施したものである。
雇用管理サポート事業による支援は、精神障害のあるCさんの採用に併せて受けた支援である。Cさんは平成25(2013)年9月から週3日1日3時間の勤務から開始した。その1ケ月後に雇用管理サポート事業による支援を受け、職場適応も安定してきて、本人の希望もふまえて、5ケ月目より週5日1日6時間勤務となり、段階的な時間延長を進めてきている。
あんしん館
3. 今後の展望と課題
管理本部長からのお話では、当社は沖縄県内の運送業として大きく発展している企業であるが、一般の求職者からの仕事の印象は、「きつい・汚い・危険」の3K業種と見られており、就職希望者が少ない現状があるとのことであった。
特に若年者の希望が少ない。ドライバーについては中型・大型車の運転免許が必要なため、普通免許を取得してから2年経過しなければならないということもあり、免許を取得するための資格支援制度も導入して、若年者の就職希望者の確保に努めている。
障害者雇用については、現在は県内の5営業所に9人の障害者を雇用し、それぞれの営業所で管理本部の方針に沿って障害者の定着・支援等を進めている。
今後、県内外の12拠点で障害者雇用を進め定着させるためには全職員への障害者雇用の知識と理解を深めてもらうことが重要であり、ステップアップを希望する障害者の職務も検討する必要もある。
障害者雇用については、今後も管理本部が主導し障害の種類にかかわらず、積極的に進めていく熱意を感じた。
そして、障害者の職場定着やキャリアアップを進めるためには、会社が取り組むことと外部の支援機関によるフォローアップや生活面の支援を連動させて、社員が満足して働ける職場づくりを今後も継続していきたいとインタビューの最後をしめくくられた。
センター長 与座 栄
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