一歩、一穂、北の大地から安心・安全な製品づくり
- 事業所名
- 横山製粉株式会社
- 所在地
- 北海道札幌市
- 事業内容
- 製粉業(小麦粉、そば粉、特殊粉、ミックス粉製造販売)
- 従業員数
- 常用従業員72名(全社)
- うち障害者数
- 2名(全社)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 2 ミックス粉生産作業、小麦粉生産作業 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 本 社
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![]() 小麦粉工場
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![]() ミックス工場
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![]() そば粉工場
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1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
横山製粉株式会社は、昭和21(1946)年2月、小樽市で創業したのち昭和31(1956)年に本社を札幌市に移転しそば粉の製造販売を開始した。創業者(現社長の祖父)が厳しい食糧難の時代にあえて製粉業という食料関係の商いを選んだのは、明治31(1898)年に先祖が福井県から北海道の地に入植した際、一鍬ごと手作業で荒れた土地を耕して畑と水田を作り上げて農業に勤しんだことが原点となっている。その後、昭和39(1964)年に本社社屋、小麦粉工場を現在地に新築して本格的な製粉業に取組んでいる。
横山製粉の一貫した企業理念は「食料報国」である。主な業務内容は、小麦粉、特殊粉、ミックス粉、そば粉の製造販売であるが、命に直結する食料を安定供給することはいつの時代でも重要な課題である。品質管理においては、平成16(2004)年に品質保証の国際規格ISO9001を取得するとともに、現在はAIB(米国製パン研究所)が確立した食品安全管理システムを導入して体制整備を強化している。さらに平成22(2010)年にはアレルギー対策を考慮した新しいミックス工場を稼働し、消費者のニーズに応える商品開発と品質管理に万全を期しているほか、小麦粉工場、そば粉工場および石臼製粉工場を有している。また、北海道内以外に東京営業所、名古屋営業所を設けて営業活動を展開している。また、姉妹会社としてパン粉製造販売会社「横山食品株式会社」との連携を強めている。
もう一方の経営理念は、率先して社会貢献をめざし、事業を離れたところでも奉仕活動に積極的に取り組むことにある。また、従業員との関係については、家庭的なあたたかさを大切にするファミリー企業の姿勢を浸透させるとともに、すでに65歳まで働き続けてもらえる従業員の再雇用制度を導入している。
なお、知的障害者を平成2(1990)年に1名、平成8(1996)年に1名採用し、長年にわたり雇用している。平成26(2014)年6月現在の常用従業員数は72名で、常用従業員に占める障害者の雇用率は2.8%である。
(2)障害者雇用の経緯
- 障害者雇用に至った動機・きっかけについて
平成元(1989)年に特別支援学校(旧:養護学校)より知的障害者1名の職場実習の依頼があり、2ヶ月間の期間限定で実習を受け入れた。その働きぶりから会社の工場で十分適応できると判断し、平成2(1990)年に社員として採用したのが初めての障害者雇用であった。
それから6年後の平成8(1996)年に、特別支援学校卒業後、能力開発センターに入所中に期間限定で、ある食品会社において職場実習をしていた知的障害訓練生1名の紹介があった。その後本人と面談したところ、障害のない者に劣らない高い理解力があり、柔道初段という体力に加えて、趣味(ピアノ演奏等)も多彩で人との協調性も高いと判断したことから採用に至った。
- 障害者雇用の事由
もともと当社の社訓の一つに「自己啓発につとめ、互いに協調して社業に励もう」というものがあり、障害の有無に拘わらず従業員がお互いに協調し合い、切磋琢磨するなか、家族のように一丸となって仕事に邁進していこうという誓いの下で業務に精励している。このように、会社全体が障害者を支える体制を構築していることが長年にわたって障害者の雇用を継続できている背景であるといえる。
2. 取組の内容
(1)採用時(入社時)の教育方法および内容
障害者に対する教育・指導は、採用時の人数が1名ということもあり集合教育ではなく一対一のOJTを基本に行った。
平成2(1990)年の1名については、2ヶ月間の実習を経て採用に至ったが、初めての障害者雇用であったこともあり、当時の本社の工場担当幹部が、実習先工場の責任者と配置先や教育方法について慎重に検討したうえで、配置先は障害の程度や本人の能力・適性を考慮して、少人数グループ運営体制のミックス工場に配置した。また、平成8(1996)年に採用した1名についても、既に受け入れ土壌があったミックス工場の別ラインに配置され、他の従業員と共に勤務した。
ミックス工場では、小麦粉工場で製粉した元粉・副資材を配合して調理に使用される粉を製造しているが、粉の使用目的ごとに配合比率や粉の種類が異なることから工程ごとにマニュアルを確認して誤りなく作業を進める必要がある。入社時教育についてはそれぞれの部門責任者が指導・管理にあたったが、子供を教育するときと同じように躾けるとともに、マンツーマンで指導にあたった。
また、配属先の職場で作業ミスや不測の事故があってはならないので、現在ではマニュアルに基づいて、ひとつひとつ段階的に作業手順を習得させている。又、同じ職場の従業員も仕事ぶりや安全を見守りながら指導している。こうした取組からチームワークが生まれ、障害のある2人も職場にとけこみ、社内行事に積極的に参加させるなど温かな交流を深めている。
(2)勤務開始後の障害者の成長
障害のある2人は、担当ラインは異なるが同一の工場(ミックス工場)で作業に従事してきた。2人とも性格や適性も違うことから個々の接し方に注意しながら本人の個性を考慮して指導を重ねてきている。ミックス工場の仕事は細かい配合作業もあり、ミスをすると会社に多大な損害を与えることを自覚して仕事をこなしている。作業の段取りもしっかりと覚え、自分の役割を考えながら障害のない者以上にミスなく仕事を進め、今では、その部門になくてはならない存在として成長している。
また、2人とも部署の忘新年会はじめ、全社のレクレーション(懇親会やボウリング大会等)にも積極的に参加し、他部署の従業員ともコミュニケーションを採っている。
(3)障害者の現在の業務内容および職場配置
![]() 小麦粉工場での仕上げ作業 | ![]() ミックス工場での資材投入作業 |
- Aさん(知的障害):平成2(1990)年入社、42歳
- ①業務内容
平成2(1990)年に2ヶ月間の職場実習を経て入社後、ミックス工場に配属したが、その後小麦粉工場に配置換えになり現在は小麦粉の製粉作業に従事している。入社当時は仕事の手順を覚えさせるのに苦労した時期もあったが、一定期間を重ねて作業手順を習得した後は24年間にわたりすばらしい仕事振りを発揮し、工場にはなくてはならない存在として活躍している。
また、平成25(2013)年度の独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が主催する「優秀勤労障害者に対する理事長努力賞」を受賞した。さらに、札幌市が平成10(1998)年度から取組んでいる「障害者の自立更生者にかかる市長表彰」にその功績が認められ、平成26(2014)年に表彰状と記念品を受賞した。
- ②本人の声
小麦粉工場に異動してから5年が経ちましたが、仕事にも慣れ不安はありません。夏場の暑い時期には疲れるときもありますが、職場の仲間と一緒に頑張っています。趣味は、車の展示会などのイベント訪問、映画鑑賞です。札幌市長から表彰され記念品として時計を貰いとてもうれしいです。
- ①業務内容
- Bさん(知的障害):平成8(1996)年入社、37歳
- ①業務内容
平成8(1996)年に能力開発センター卒業後入社。ミックス工場の製造要員として配属以後、ミックス粉の製造に18年間携わっている。配属当初から本人の障害のない者に劣らない高い理解力、体力および職場の仲間との協調性により、安定した仕事振りを発揮している。現在ではミックス工場でなくてはならない存在として活躍している。また、入社後、自ら進んで北海道立札幌東高等学校の定時制を卒業するなど、積極的な自己啓発に取り組んでいる。
- ②本人の声
上司や仲間の皆さんに支えられ、入社18年が経ちました。現在は新設されたミックス工場において、さまざまな材料を配合してミックス粉を製造しています。最初は体を使う仕事が務まるのか不安でしたが、慣れてくるうちに何とかできるようになりました。賃金や賞与などに不満はなく仲間と一緒の仕事に携わるのが楽しいです。以前から取組んでいたパソコンの利用方法を習得して仕事とは別に楽しんでいます。私の夢は大阪から鹿児島までの新幹線に乗って西日本を旅行することです。夢の実現に向けて仕事に一生懸命取り組もうと思います。
- ①業務内容
(4)業務上の配慮事項(各部署の取組み、作業設備・職場の工夫、休日・休暇・勤務体制の配慮など)
- 安全な作業手順の教育・指導
ミックス工場で配合した粉は、購入した顧客が食品加工(天ぷら、唐揚げ、お好み焼など)に使用して消費者の口に入る製品であることから、製品の安全確保など作業手順の適切な指導が重要である。
具体的には、各工場において出勤後、製造ラインに入る際には、私物(腕時計など)の持ち込みを禁止し、専用の防塵作業着、防塵マスク、ヘッドカバーを着用して、専用の靴に履きかえるとともに、粘着テープを使用して全身の粉塵等を除去している。また、入念な手洗とアルコール消毒をした後、エアーシャワー室を通過して製造ラインに入るなどの安全対策を講じているが、出勤時のほか休憩・昼食時の入退室の際も同じ手順を繰り返して常に安全・安心なものづくりに努めている。
このように詳細な作業手順を障害者に身に着けさせるには、食品安全の大切さを理解させたうえで、日々の作業手順については、職場管理者はもとより先輩従業員がマンツーマンで指導にあたり習得に努めてきたが、採用時の教育期間が終了した後は、他の従業員と同じように作業手順が習慣化している。
- 職場の工夫や休日、休暇、勤務体制など
障害者が従事している主な業務は、小麦粉工場とミックス工場において、小麦粉の袋を開封してミキシング機に投入したり、作業終了後に製造ラインの機械類を清掃する仕事であるが、いずれも障害のない従業員と2人セットで同じ作業を行うことから安全に作業が行われている。
勤務条件(休日、休暇や勤務時間など)については、他の従業員と全く同じ条件の下で、始終業時刻(8時~17時)、休憩時間(午前・午後各20分、昼食1時間)、週5日勤務となっている。また、有給休暇の取得や年末年始・夏季休暇についても就業規則の規定に基づいて同様である。
3. 障害者雇用の効果、障害者の処遇
(1)障害者雇用の効果
- 職場の同僚たちとの連携・調和
採用した当初から職場の仲間が障害のある2人を家族のように受け止め、何とか一人前の社員として育てなくてはならないという思いが強く、仕事や生活面をカバーしてきた。また、工場内で事故や怪我などが起こらないように、周囲の従業員が目を配り、2人を守り育てるという意識が強くなった。このような周囲の見守りを感じて、2人とも職場の仲間の期待に応えるよう努力を重ねて成長している姿がうかがえる。
- 職場の同僚たちの声
Aさんが働く職場(小麦粉工場)では14名、Bさんが働く工場(ミックス工場)では9名の従業員が共に働いている。配属当初は実作業に対するフォローや安全確保への配慮など気配りが必要だったが、一定期間を経て習熟度が増すことにより特別な負担は生じていない。現在、障害のない従業員とともに2人1組の体制で資材投入作業を行っているが、自分に与えられた仕事をわき目も振らずに一生懸命こなす姿は他の従業員たちが見習うべき一面もある。
(2)障害者の処遇
障害者の人事考課や賃金等処遇については他の従業員と区別することなく同じ制度の下で適用している。昇給および賞与もほぼ同一の賃金制度を適用しており、昇給査定およびボーナス査定なども、他の従業員と区別することなく、仕事の成果に合わせて支給する制度の下で公平に取り扱っている。
4. 今後の展望と課題—障害者雇用を検討している企業への助言—
障害者を雇用するに当たって経営者は勿論、従業員全体が障害者のことや障害を正しく理解し、適切に手助けしたり、見守る環境を整えなければ障害者を育成し成長させることは難しいと思われる。特に、障害者を雇用する場合には障害そのものに目が行ってしまいがちではあるが、一人ひとり障害の種類、程度および気質が異なるため、それぞれに適合した指導方法を見極めてキャリアアップのための育成に心がける必要がある。また、当然のことながら早急な結果を求めずに、長い目で地道に指導を継続して見守る姿勢が大切である。
これらの取組により、障害者が成長していくことが、職場の同僚の意識を育て、障害者とともに職場全体が成長していくことにつながるものと思われる。
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