社員のおもいやりの介助で暖かい企業風土つくりに挑戦
- 事業所名
- 株式会社阿部紙工
- 所在地
- 福島県福島市
- 事業内容
- 印刷業
- 従業員数
- 206名(平成26年3月現在)
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 1 経理 内部障害 知的障害 1(重度) 印刷の補助業務 精神障害 1 印刷の補助業務 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要
当社は、昭和21(1946)年4月1日に福島市柳町に個人経営で印刷業を創業し、昭和38(1963)年11月1日に株式会社化した。
その後、本社工場を福島西工業団地内に移転するなどの変遷を経て、現在は、本社工場、佐倉工場、第3工場の3工場、営業部門は本社、仙台営業所の2営業拠点のほか、東京にも東京事務所を設置し情報拠点としている。社員数も全体で200名を超えている。
よい印刷物を早く、安く作ればお客様に満足していただける時代は終わり、印刷物が小ロット化し、また印刷物以外のメディアも溢れている時代になった。「お客様の真の要求」をお聞きして、印刷を中心とした様々なメディアの提案をしている。
具体的には、長年培った印刷のノウハウとクロスメディア戦略を駆使して企業の様々なニーズに対し、売上・集客アップに結びつく最善の企画提案を行ない「最も信頼される総合情報企業」となることを目指している。
ISO9001の認証取得による「万全な品質管理」、新たな情報の提案と品質、納期、価格、すべての面でのお客様に信頼と満足を提供する「品質方針」、JISQ15001に準拠、プライバシーマークの付与認定による「個人情報の保護」、ISO14001の認証取得、エコロジー商品の提案など「積極的な環境配慮」の企業姿勢のもとに印刷(紙)のみならず、デジタルサイネージ、Web、モバイル、ノベルティなどのメディア展開を図っている。
2. 障害者雇用の取組の内容
現在、雇用する障害者は次のAさんからCさんまでの3名である。
Aさんは、雇用する障害者のうち一番勤務歴が長く、昭和53(1978)年から勤めている重度の知的障害のある50代の男性である。印刷現場での補助業務をしているが、身体面の障害も抱え、体調がすぐれないなどで休みがちでもあるため、体調にも考慮し粘り強く励ましながら支援していくことを心掛けている。
Bさんは、平成19(2007)年に採用した精神に障害のある人で、工場内で箱詰めなどの出荷準備の作業をしている。回りの社員の声かけなどにより、コミュニケーションを上手にとることに配慮している。担当職務はきっちりこなしているが、今後、さらに仕事の幅を広げてもらいたいと思っている。
Cさんは、平成19(2007)年から勤務している身体に障害のある64歳の男性である。コンピュータが専門なので経理部門に勤務し、日々発生するデーダの入力やコンピュータシステムの開発を担当しており、社内のコンピュータシステムの構築等に際してはアドバイスをしてもらっている。今や会社になくてはならない存在となっている。
移動には車いすを使用しており、2階にある社員食堂に上がるのが困難であるため、昼食は社員が2階の社員食堂から1階に運んでいる。また通勤は、自分一人で行っているが、社内の建物の構造がバリアフリーになっていないため、今後、建物などハード面の改善が必要と考えている。
以上のように現在、障害のある社員数は3名(うち1名は重度障害者)で、法定雇用率を満たしているが、今後定年退職の時期も考えていくと、新しい障害者を受け入れる時期がやってくる。今は社員の協力のもとうまくいっているが、新しく障害者を受け入れる準備は十分とは言えない。そのための社内態勢作りが課題であり、障害者受け入れの社内態勢作りが、障害者雇用の社内の現状の改善に結びつくと考えている。
3. 取組の効果、今後の展望と課題
(1)取組の効果
Cさんには、駐車場への移動や社内の移動の際の車いすの乗降にあたっては介助が必要なことがあり、その際には身近にいる社員が自然に介助するなど、思いやりをもって助け合う暖かい企業風土が形成された。しかし、会社としては、社員の好意に甘えるだけでなく、企業として建物などハード面の改善等できることはやっていきながら、作業の効率性が高まり、企業にとっても経済的な効果につながるようにしていきたいと考えるが、一方でこれらとは別に「やさしい企業」であると社会的に認知される効果もあるのではないかと考えている。
障害者雇用に、特別のメリットを期待して取り組んでいるわけではないが、障害者が力を発揮するまでには障害のない者より時間がかかる場合もある。しかしながら長い目で見れば確実に企業に貢献していると考えていることから、人事評価も極力障害のない者と同じ基準で評価している。
(2)今後の展望と課題
今後、新しく障害者を雇用していく上でハード、ソフト両面での見直しが急務になっている。ハード面では、段差の解消、手すりの設置、トイレの改造などバリアフリー化を進め、障害者の受け入れ態勢の整備をはかることが必要であると考えている。
障害者雇用を進めていくためには、受け入れ部署のみに任せることなく、経営者が受け入れ部署社員と共通の認識を持って、コミュニケーションをとりながらお互いの役割を果たしていく必要がある。したがって、ソフト面では、社内での職務の開発、受入れ可能な障害の内容・程度を明確にし、コミュニケーション、指導教育のあり方について社内で取り決めておく必要がある。次に障害者の担当する職務の取組を支援する社員のレベルアップを図っていくこと。こうした取組を進めるために障害者職業センターの積極的な利用を考えている。
障害者職業センターには過去に休職者に対する職場復帰支援(リワーク支援)で協力していただき、スムーズな職場復帰に大変役立った。特に、障害のある人がスムーズに職場に適応できるようにジョブコーチ(職場適応援助者)の支援を受けることは極めて有効であることが判った。今後は社内の体制作りについてもアドバイスいただきたいと考えている。
今までは社員の自発的な協力のもと、言わば手探りで障害者の雇用を進めてきたが、今、雇用している人については「仕事の内容や配置は適当だろうか?」「本当に職場に適応できているのだろうか?」と、新規での雇用をする場合には「職場になじめるだろうか?」「受け入れ態勢はこれで十分だろうか?」などの不安はいつも感じている。こうした職場での不安をいくらかでも解消できればという想いがある。
ジョブコーチ(職場適応援助者)には、直接、事業所に来ていただき、障害の特性を踏まえた専門的な助言を受けられるので、障害者の雇用に対して専任の社員をおく余裕のない当社にとっては大いに助けていただけると考えているが、年間を通してずっと支援を受けるわけにはいかない。
そのようなことから、社内での障害者担当の社員の育成に重点を置くこと、そして障害者の職場定着には、職場内での上司や同僚がしっかりとコミュニケーションをとって、適切に援助や配慮をしていくことが第一なので、より適切な支援方法を確立して、職場適応上の課題の発見、改善が速やかに行われるようにして障害者の雇用の拡大に取り組むことを考えている。そのためにハローワーク、障害者就業・生活支援センター、高齢・障害者雇用支援センター等との連携を密にし、障害者を雇用した場合の各種支援(助成金を含む)の活用を考えていきたい。
最後に、障害のある者が障害のない者と同じくらいに働ければよいが、現実にはそうもいかない場合もあることを前提に雇用し、その上で事業として成り立つような態勢を最終的に作っていくことを目標にし、障害者を1人でも多く雇用をしていくことで、CSR(企業の社会的責任)を果たして行きたいと考えている。これにより、社員・会社にとっても本事例の冒頭のテーマである「暖かい企業風土」の醸成となることを確信している。
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