事業所名

株式会社新鮮便

所在地

群馬県桐生市

事業内容

一般・冷蔵冷凍貨物の輸配送業務、倉庫業務サービス

従業員数

378名

うち障害者数

12名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚・言語障害
肢体不自由	4	入出庫保管・運転手・管理事務・貨物受入管理
内部障害
知的障害	3	プラスティックコンテナの洗浄作業
精神障害	5	運転手・構内清掃・プラスティックコンテナの洗浄作業
発達障害
高次脳機能障害
難病等その他の障害

目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯
2. 障害者の業務内容と事業所の取組
3. 事業所としての障害者雇用への想いと課題

事業所外観

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

株式会社新鮮便は、昭和8（1933）年9月、日本が激動の中、初代代表者佐藤三治郎により佐藤運送店として創業したことから始まる。

その後、企業合同・統合・分割を経て、昭和40（1965）年、佐藤運送有限会社を設立し、佐藤治男が代表取締役に就任した。

昭和50（1975）年2月、佐藤運送株式会社に称号変更を行い、「安全・迅速・奉仕」をモットーに、当時普及していなかった冷凍車をいち早く導入した。

平成2（1990）年11月、本社ビル・物流センター（冷蔵・冷凍倉庫）が完成し、貨物の取り扱い及び保管業務等の総合物流会社として高品質サービス体制を確立した。

また、品質保証モデルを構築すべく、平成12年（2000）9月ISO9001のライセンスを取得し、『サービス満点／とにかく安心／うれしい価格』を品質方針とし、全従業員一丸となり、お客様の満足度の向上を図ることを目的とし企業活動を行っている。

平成19（2007）年11月、代表取締役に佐藤稔也が就任し、関東甲信越／東北／関西方面に至るまでの輸配送を実現すると共に、倉庫事業者として3温度帯管理や保税倉庫を確立した。そして、平成25（2013）年10月、現社名『株式会社新鮮便』と名称を変更し今日に至っている。

（2）障害者雇用の経緯

当社と社会福祉法人三和会障がい者就業・生活支援センター「さんわ」（以下「支援センターさんわ」という。）との出会いは、支援センターさんわが当社に飛び込みで企業訪問を行ったことから始まる。しかし、支援センターさんわは当社の担当者になかなか会えず、その後当社の伊勢崎物流センター長の「何度も足を運ばせてしまい申し訳ない」との思いから、本格的な行き来が始まった。話をするうちに、支援センターさんわのような障害者のための就労支援機関があることを知り、本社担当課長も交えて職務内容や支援方法等、今後の障害者雇用について話し合いを行った結果、支援センターさんわに当社事業所が求める方がいれば雇用も前向きに考えるとの話をするに至った。後日、当社事業所の業務内容の説明や事業所での作業見学等をしてもらうこととなった。

その結果、支援センターさんわにおいて、当社事業所の求める方をある程度選定した上で随時職場見学・職場実習を実施することとなり、雇用のドアが開いた。また、職場実習等を行った時に、その業務が選定した障害者にとって難しい場合は業務の一部を変更し、障害者ができる仕事を作っていくことも話し合いの中に盛り込んだ。

こうした中、今ではトライアル雇用を含め、支援センターさんわから4名（知的障害者1名、精神障害者3名）の雇用に至っている。また、支援センターさんわの取組後、当社では、他の支援センターからも知的障害者を2名雇用している。

2. 障害者の業務内容と事業所の取組

（1）障害者の業務内容

就労時間により切り分けて、障害者の業務内容は次のようである。

1. コンテナの洗浄作業と整理の業務

   1日4時間勤務の業務である。業務内容は、商品を配送するためのコンテナの洗浄で、伊勢崎物流センター内で行っていたが、会社の都合で栃木県足利市にある「生鮮・加工センター」内に移動した。

   網目のコンテナと普通のコンテナの汚れの多い部分を、手や高圧洗浄機を使い洗浄し、その後、洗浄機に投入をする。洗浄機から出て来たコンテナの水分を拭き取ると同時に汚れの洗い残しを確認しながらパレットに積み上げ、それを指定の位置まで運んで行く仕事を行っている。常時4名体制で行っているが、エンドユーザーが土日祝日も営業するため、休日はローテーションでの勤務となる。

   指導者については、障害のない社員1名が指導を行うが、自らの仕事もあり常時その場に居られないため、午前と午後に進捗状況の確認を行い、それ以外は、写真入りの作業手順書を作業室の壁に貼り、障害者の誰もが確認できるようにした。

   事業所側の工夫や配慮により徐々に仕事も覚え、今では指導者から指示を受けずに作業を行っている。この業務を担当する障害者は、支援センターさんわから知的障害者1名、精神障害者1名及び他の支援センターより知的障害者2名が働いている。

2. 清掃作業

   4時間勤務の障害者で事業所構内の清掃業務を担当する者は、コンテナの整理とトラックの荷物の入出庫場所を中心に清掃の仕事を行い、本社と伊勢崎物流センターの両方を午前と午後に分けて行っている。

3. ドライバー

   1日6時間のドライバーとして勤務している障害者は、主に集配業務を行っている。

   配送の担当区域の広さで勤務時間が変わるが、お客様の荷物の状態により待機する時間が発生し、8時間前後の勤務となる。この業務を担当する障害者は、支援センターさんわから精神障害者1名が働いている。

洗浄作業風景

新鮮便新車両

（2）事業所の取組

事業所では、障害者だからといって特別な扱いはしていない。

ただし、障害の状況（例えば：聴覚・言語障害、知的障害、肢体不自由等）や程度に応じ、職種によっては業務の提供が困難となるケースが多いと思われる。

事業所は、幸い平成22（2010）年から荷主の要請により「コンテナの洗浄作業」の工程が発生し、当初は、事業所の再雇用の高齢者を担当者として業務を遂行していたが、障害者トライアル雇用の制度を支援センターさんわが紹介したことにより、障害者の雇用が確保できた。

また、事業所として精神障害者に対して心がけていることは、「無理のない安定した仕事を提供し、安心した生活が送れること」である。

事業所担当者からは、「支援センターさんわの担当者から「障害の特性」について詳細な説明を受け、配慮が必要な点などについて十分な知識を得たことは心強かった。また、特に障害のない者と異なっている点については、具体例の提示を受けることにより、障害に対する理解度も増し良い勉強になった。今後も障害を持つ人々が適材適所で能力を十分に発揮できる企業を目標に取り組んでいく」と言われている。

（3）事業所の取組み事例

6時間のドライバー勤務の障害のある社員は、結婚をしていて妻にも障害がある。妻は生活介護施設に通所し、土日祝日が休みで、夫が妻の休みに居ない時や未就労の時、金銭的に苦しくなると妻は「居ても立っても居られない」状況になり、酷い時は緊急搬送されることもしばしばあった。そのため支援センターさんわが、当社と相談を重ね、ある一定の期間、妻の休みに合わせた勤務体制（土日を休み）にできないかの配慮を依頼してこられた。それにより、先ず妻の生活のリズムを夫の勤務に基づく生活のリズムに合わせられるように支援しつつ、時間の経過に伴い、徐々にローテーション勤務にしていくことになり、本来の会社の条件に合わせることを目標として勤務している。

支援センターさんわは、ドライバーの障害のある社員には会えないため定期的に会社と本人に電話対応にて支援を続けている。

3. 事業所としての障害者雇用への想いと課題

（1）障害者雇用への想い

事業所は「人は誰しも得意不得意、向き不向きなことがあって当然である。障害があるから、障害がないからということではなく、仕事に対する熱意・やる気・責任感等の垣根は無い」と考えている。

特に精神障害者の職種を見直し、現在雇用している他の障害者のようにトラックやフォークリフト等の運転にチャレンジし、更なる障害者の雇用の拡大に繋げていこうと研究を進めている。

（2）障害者雇用の課題

また、その一方で事業所は、障害のある社員が年齢を重ねると共に保護者や家族が居なくなってしまった後、本当の意味での自立に向けて、何が必要なのかということも考えている。

金銭的なこと、社会との繋がりや生活環境、また加齢が進み体力的、精神的、病的に衰えや状態の変化が訪れ、仕事をする上においてどうなってしまうか、その障害者が今後どのような人生を送っていくのかと思うと、事業所としてどのようなことができるか、最終的には退社し福祉サービスを使っていくことになると思うが、その福祉に戻す時、時間をゆっくりとスローダウンさせながら移ることができるかが今後の課題である。