事業所名

特定非営利活動法人八王子ワークセンター  プラスチック中間処理事業所リボーン

所在地

東京都八王子市

事業内容

ペットボトル・プラスチックの中間処理業務

従業員数

50名（平成26（2014）年6月1日現在）

うち障害者数

29名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚・言語障害
肢体不自由	1
内部障害
知的障害	20（15）	選別作業、館内清掃作業
精神障害	7	選別作業
発達障害
高次脳機能障害	1	館内清掃作業
難病等その他の障害

＊（  ）内重度障害者数

その他

障害者職業生活相談員

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 取り組みの内容
4. 取り組みの効果と現状の課題、今後の展望

事業所外観

事業所入口

1. 事業所の概要

（1）法人の理念と事業方針

「障がいを持つ人たちが、その人らしい自立した生活が住み慣れた地域で送れるよう支える」という理念のもとに、障害者の作業所等の団体支援を行う授産活性化事業と個人への支援を中心に行う就労支援事業を展開している。平成16（2004）年10月からは、ペットボトル中間処理事業所リボーンを通して事業所として直接障害者雇用も行っている。

ペットボトル中間処理事業所リボーンは障害を持つ人たちが働く就労の場を継続的に確保し、「安全で、安心して気持ちよく働き続けられる職場」を創り、八王子市からの要請に品質・生産量ともに日々100％応えていくことを事業方針としている。

（2）事業の内容

当事業所は、八王子市より業務委託を受けてペットボトル、プラスチックの中間処理業務を行っており、市内の家庭から回収されたペットボトルやプラスチックが入ったゴミ袋を破袋機に通し、未破袋のものをコンベア上で破袋し異物を除去する選別を行った後、機械でプレス・梱包して出荷している。併せてプラスチック資源化センターの清掃業務も行っている。

2. 障害者雇用の経緯

3. 取り組みの内容

（1）障害者雇用

1. 職場実習

   応募者には工場見学や面談を行った後約2週間の職場実習を実施しており、支援専門職員を中心に、指導職員やスタッフリーダーの協力を得て受け入れ体制を整えている。ライン作業指導については職員が実習生一人ひとりに付き、簡単なものから選別できるように教育し、徐々に慣れるように指導している。

2. 採用

   採用に当たっては下記の事項を重視している。

   
   
   • 毎日、安定して出勤できる
   • あいさつが気持ちよくできる
   • 努力できる
   • 他人の助言や指導に耳を傾けられる
   • この職場で一緒に働きたいと思う気持ちがある
   
   

   また、障害者の成長や精神的安定をサポートするためには事業所・家庭・支援機関の連携が重要であるという考えから、応募者が登録している支援機関の支援体制や対応も重視している。

3. 労働条件
   • 雇用形態：原則1年ごとの有期契約（更新あり）
   • 試用期間：3ヶ月
   • 就業時間：8時15分～17時15分（15分単位で短時間から8時間勤務まで勤務時間は多様である）
   • 福利厚生：社会保険加入等
4. 障害者の従事業務
   • ①選別作業（4ラインで26名が従事）
     

     ＜ペットボトル＞

     コンベア上のペットボトルの中で、ビン、缶、ガラス、ペットボトル素材ではない容器、汚れのあるもの、中身が残っているボトルの除去

     
     

     ＜プラスチック＞

     コンベア上のプラスチックの中で、容器包装用のプラスチックでない物、紙、木、ビン、缶、医療系の注射器や針、刃物、電池、ライターなどの除去

   • ②館内清掃（3名が従事）

     掃除機による清掃、モップがけや窓拭き、トイレ清掃、昼食時の配膳や後片付け等

   ペットボトルの選別作業

   プラスチック重量の選別作業

   選別基準事例

   選別後の梱包状態

5. 業務上の課題と対応
   • ①業務量増加時における納期への対応

     回収されてきたペットボトルやプラスチックの量が多い場合は破袋機を通っても未破袋のものが多く処理に時間を要すため、搬入量が特に多い時期は、臨機応変に対応し交代で昼休みを取ることで納期の厳守に努めている。

   • ②同僚同士のトラブル対応

     4本ある各ラインへの配置は指導職員が個人の作業能力と適性を考慮し、ホワイトボードに明示して行っているが、時には配置後に問題が発生する場合もある。作業上の行き違いの場合は、指導職員を交えてお互いによく話し合い納得させている。それでもイライラしたり感情の起伏が顕著な場合は、更に面談をして落ち着いてから作業に戻している。

   • ③医療系廃棄物（注射針）の混入

     注射針の処理方法については市が市民へ周知し、医師会にも協力を要請するなどの対策をとっているが、注射針混入が多く対応に苦慮している。注射針を見つけるたびにコンベアを止め、安全のためチリトリで取り除き周辺を確認してから再稼働している。

     作業面でも針を通しにくい素材の手袋を試しているが完全に通さない手袋は細かいものがつかみにくく、選別ができないなどの問題も多く、重要な検討課題になっている。

6. 指導法

   基本的に障害特性や個人の作業ペースを配慮し、選別基準の習得を重視した指導を行っている。最初は簡単に見分けやすいビン・缶などの選別を行い慣れてきたら選別する対象を増やす。指導職員が前につき、除去するものと再生品として梱包するものを教え、併せて破袋作業も行う。また、安全に作業することを徹底指導しており、作業前準備確認（手袋、マスク、ヘルメット、手甲などの身支度）や朝礼等でのラジオ体操も行っている。

7. 定着支援

   短時間勤務からスタートし、本人の生活リズムや体力、体調等を勘案し、面談を重ねて勤務時間延長の希望があれば徐々に勤務時間を延長している。精神障害者には、生活リズムの乱れや不安感がみられないか、不眠が続いていないかなど常に気を配り、作業時間を本人の状態に合わせ短縮している。また、人間関係が原因で精神的に不安定になることが多いため、特に挨拶には力を入れて指導しており、相手の目を見て元気よく笑顔で挨拶を交わすようにしている。

   さらに従業員からリーダー、サブリーダーを選出し、安全、身だしなみ、作業準備、作業中の声かけを行い、障害者の体調や現状を把握した上で適切な指導、支援を行っている。このような活動を通じ、従業員同士が助け合う気持ちを持つようになり、日々の信頼関係を醸成している。

8. 雇用管理上の課題に対する対応
   • ①障害者同士の理解の深化

     知的障害者と精神障害者が同一のラインで業務を行うことにより問題が発生し、面談を重ねても繰り返し同じような苦情が相次いだため、『働く仲間としてお互いのことを理解しあうためにはどうしたらよいか』をテーマに平成23（2011）年10月から隔週の金曜日に約1時間、支援専門職員と障害者によるメンバーミーティングを開始した。

     ミーティングの内容は、業務に関することや行事のこと、意見や疑問点、時には自分の持病についてみんなに知っておいて欲しいこと、親切行為へのお礼など様々な話し合いをする場になっている。普段思っていることなどを気軽に話せるようになったことで、少しずつ苦情が減り、お互いの理解も深まり、相手を思いやることができるようになった。

   • ②ストレスの軽減

     同僚の作業方法が気になって、ストレスが大きくなっていくケースがありその傾向が顕著な障害者には、一定時間清掃業務を行うなどライン作業とは違う仕事に配置し、自分のペースで作業できる環境をつくっている。

   会議風景

（2）家族や関係機関との連携

1. 保護者会の開催

   毎年11月の祝日に開催し、毎回十数名の保護者が参加している。作業現場の見学をした後、事務所で懇談会を実施し、希望者にはその後個別面談を実施している。

2. 連絡帳の活用

   自分で連絡事項を伝えることができない従業員には、家族や支援機関、寮あてに連絡帳で情報交換を行っている。

3. 支援機関との連携

   殆どの障害者が支援機関に登録しており体調面や精神面の不調などの情報を交換している。時には支援機関の来所による三者面談を実施している。

4. 医療機関受診時の同行（精神障害者の場合）

   精神的に不安定になっている時や長期（1ヶ月以上）に亘って欠勤する場合などは、本人や家族、主治医の了承の下、支援専門職員が受診に付き添い、医師から職場での対応法や復帰に向けての勤務時間の調整等について指導を受けている。

5. 法人（八王子ワークセンター）内各事業所間との連携

   同じワークセンターに属する八王子市障害者就労・生活支援センターふらんに障害者支援事例について指導や意見を聞く機会が多い。3か月の試用期間中、センターふらんと当事業所の指導員で作成した作業手順書によるジョブサポートを集中的に受けて、ふらんに登録している障害者を本採用するなどリボーンへの就労につながった障害者が数名いる。

   また法人内各事業所の職員や障害者が見学の為来所し、半日体験実習を行うこともある。

（3）当事業所の各委員会活動

1. 運営委員会（年3～4回開催）

   障害のある従業員が「いつも気持ちよく働き続けられる職場を創る」ため職場の運営全般について話し合いを行っている。

2. 安全衛生委員会（毎月開催）

   50名以上の職場として毎月産業医出席のもと職場の安全衛生（ヒヤリハット報告・避難訓練、感染症対策等）に関する職場環境改善に取り組んでいる。

（4）余暇活動

季節行事（4月お花見、5月お茶会、7月七夕、8月ビアガーデン、10月日帰り旅行、12月忘年会、2月節分の豆まき、3月カラオケ等）を企画し親睦を図っている。

お花見＆バーベキュー

4. 取り組みの効果と現状の課題、今後の展望

（1）取り組みの効果

この5年間で本人都合で退職した障害者は2名のみ、知的障害者、精神障害者ともに定着率は高く、中には勤続年数9年余になる従業員も8名在籍しており、平成22（2010）年10月、新工場になってから採用した精神障害者の定着率は現在100％である。

（2）現状の課題

当事業所では安全上の問題から障害者にはフォークリフトの作業をさせないようにしたことから、全員がライン作業をすることになり、コンベアのスピードに作業ペースが追いつかない障害者にとっては、疲れがたまり、精神的に不安定になるケースもある。

（3）今後の展望

1. 精神障害者への支援強化のための社内体制整備

   当事業所では、29名中7名の精神障害者が在籍、今年に入って、新たに2名の職員を増員し、支援体制強化に向け、障害者職業生活相談員資格認定講習の受講を予定している。

2. 次年度以降の障害者雇用計画

   障害者雇用の推進のために、来年度以降の募集についてはスタッフの補充を控え、その分障害者枠を増やしていく予定である。