接客のプロを育てたい
- 事業所名
- 株式会社テレパーク
- 所在地
- 新潟県新発田市
- 事業内容
- KDDI代理店
携帯電話の販売、保守、事務機器の販売、保守
事務用OA機器販売・メンテナンス - 従業員数
- 62名
- うち障害者数
- 2名(うち重度1名)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 1 auショップ販売員 内部障害 1 auショップ販売員 知的障害 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 本社・店舗外観 |
1. 事業概要、障害者雇用の経緯
(1)事業概要
- 事業の内容
ITインフラの構築・運用・管理やネットワーク環境の構築・最適化、セキュリティを高めたい等あらゆるビジネスシーンの構築から、携帯・スマートホン・データ通信機器や周辺機器の販売、携帯電話を活用した保守・メンテナンス等を行っている。
- 経営理念
『有線から無線まで、人と人をつなぐ』
auの新潟地区のパートナー企業として、身近なネットワークをお届けする。
- 組織構成
- 本社:新潟県新発田市
- 店舗:auショップ新発田、auショップ新潟駅南、auショップ村上、auショップ小千谷、auショップ柏崎、auショップ高田、auショップ妙高
(2)障害者雇用の経緯
- 雇用のきっかけ
- ①事業所規模の拡大を見据えて
auショップ数の増加により従業員数も増えるため、将来的には障害者雇用に取り組んで行きたいと考えていた。そんな時に地元ハローワークの事業所訪問があった。障害者雇用の経験も知識もなかったため、採用までの流れやどんな求職者がいるのか等を相談しまた説明してもらった。
- ②出逢い
ハローワークから求職活動中だったHさんの紹介があった。車いすを使用しているが、人と話すことが好きであると聞き、店舗における業務はなんとかなると考え、職場見学を兼ねて、社長室長と営業部長の2人で面接を行った。職場見学では、車いすで使いづらい箇所はないか、トイレやバックヤード、店舗内を確認してもらったが、バリアフリーとなっていたため、本人からは問題ないとのことだった。面接では、自らの障害について説明もあり、強さと何よりも前向きで明るい姿勢に、採用を決めた。
- ①事業所規模の拡大を見据えて
- 雇用にあたり~社員の反応~
店舗は若いスタッフが多く、障害のあるなしに関係なく自然とHさんを迎えてくれた。入社当初の休憩時間内では、障害のことや車いすのこと等、聞きたいことを雑談の中で本人に聞き、Hさんもそれに答えるといったやりとりが、双方の間に壁を作ることなく、自宅に遊びに行ったり、飲みに行ったりできる仲のいい関係に繋がったと考えられる。また職場の中に気遣い気配りが多くみられるようになり、スタッフ一人一人が誰に対しても優しくなったそうだ。
2. 障害者の従事業務、取組の内容
(1)障害者の従事業務
- 従事業務の選定
auショップにおける業務は、接客がメインとなる。
採用検討当初から「接客業務」への配置を考えていたが、Hさんと面接をしてこの配置への思いは強くなった。Hさん自身、人と話すことが好きであり、接客にも興味を持っていたため選定作業はスムーズに進んだ。
Hさんには、お客様が来店された際の「1次受付業務」をお願いすることとした。
「1次受付業務」では、
- ①来店のお客様の来店目的を聞く。
- ②インカムを使って、カウンター担当等へ連絡。
- ③場合によっては、料金プランなどを見せながらの説明も行う。
以上3つを中心に担当する。
料金プランについてはスタッフ手作りの専用ボードを利用して、車いすのHさんが膝に乗せるなどして使いやすいように工夫した。
スタッフ手作りの専用ボード①スタッフ手作りの専用ボード② - 研修
研修は「社内研修」と「au新人研修」の2つがある。
「社内研修」については、Web研修ツール、その他に冊子等を用いて実施する。特にHさんは就職した後に褥瘡の発生で入院することとなったが、その期間もツールを利用しながら自己研修も行った。
「au新人研修」は、新潟市内で7~9回実施されたが、同期入社の3名と一緒に参加し、すべての研修日程を受講した。接遇の基本やau端末の使用方法、個人情報取り扱い等の研修ではあるが、車いすの社員の参加はauとしても初めてで戸惑いもあったようであるが、同期の3名のサポートもあり、無事受講できた。
(2)取組の内容
- 課題
○設備面
Hさんは、脊髄損傷により車いすを使用しており、雇入時に以下のような課題があった。
- ①ショップフロア及びショップの出入口はバリアフリー化されていたが、スタッフ休憩室の出入口や事務所入口は狭く、車いすでは出入りができない。
- ②脊髄損傷により体温調節ができないという障害特性に配慮が必要であるが、雨や雪の多い地域であり、改造済みの自家用車で通勤し、車から車いすに乗り換える際、雨や雪に濡れてしまい体温が下がっても、本人が気づくことができず風邪や体調不良につながることが多かった。
- ③同じ姿勢で車いすに座っている時間が長く、また休憩室が車いすから降りて休憩することができる構造になっていなかったことなどで、褥瘡ができ入院が必要なまでに悪化させてしまった。
○業務面~Hさんの悩み~
2つの研修受講後は、店舗における接客業務の実践となったが、初めの頃は立っているお客様と車いすのHさんとの目線(高さ)の違いが壁となり「自分の声が届かず、振り向いてもらえない」「気づいてもらえない」等の悩みがあった。
- 安心して働くために
○環境の整備
体調が良くなければ、安定して働くことはできないと考え、以下のような環境の整備を行った。
- ①屋根付きカーポートを社屋脇に設置し、天候の悪いときでも濡れることなく車から車いす、社屋へ移動できるようにした。またカーポート設置に合わせて自動ドアの専用入口を作った。
- ②休憩室の入口を拡張し、休憩室への出入りを容易にし、車いすの高さと同じ高さの座敷を作り、車いすから降りて、その座敷で体を伸ばすことができるようにした。
褥瘡が悪化し、長期の入院を余儀なくされたHさんであったが、入院中は定期的に一緒に働くスタッフや営業部長が見舞いに訪れ、職場復帰したときに必要な業務マニュアル等を渡すなどして、自己研修期間にあてた。また、環境整備に必要な上記工事もこの期間中に行うことができ、本人が安心して職場復帰できる環境が完成した。
また、営業部長を中心に、褥瘡についての知識や、体の向きの変え方等について、病院の看護師さんやHさんの家族等に聞きながら勉強し、会社としてのバックアップ体制を強化した。
カーポートと専用入口休憩室内○経験からのアドバイス~ソフト面における支援~
車いすからの目線と立っているお客様との目線の高さの違いに悩んでいたHさんに、年齢も近いY営業部長が、自身の過去の様々な経験を話し、①下向きではなく、顔を上に向けてお客様に声をかける、②人よりも大きな声で挨拶や声かけを行うの2点についてアドバイスを行った。
アドバイスを受け、Hさんの接客は以前にも増して前向きになり、お客様とコミュニケーションも取りやすくなった。それぞれの経験談にプラスしてHさんにできる接遇方法を考え、問題解決に導けるよう助言している。
3. 活用した制度・支援機関、Hさんから
(1)活用した制度・支援
- カーポート設置、スタッフルーム入口、休憩室入口拡張
次の障害者雇用納付金制度による助成金を活用した。
・第1種作業施設設置等助成金(附帯施設)福祉施設設置等助成金
- 生活面の支援~家族と一緒にがんばろう~
生活面の支援は、家庭との連携を大切にしている。ご両親はもちろん、Hさんの兄が医療関係者であり、体調管理等についてはHさんを通じた助言を参考にしている。医療と家庭と会社がうまく連携することで、Hさん自身の精神面や健康面の安定が図れると考えている。
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(2)Hさんから
Hさんから、当社で働くことについてお話をお伺いすることができた。
<Hさんのお話>
私が就職して約1年の月日が経過する。私は身体の障がいを負って車いす生活となってから『社会復帰』という目標を強く持っていた。
そして就職先を探している中で、職業安定所での親身な対応を受け、社会貢献できる職場を探していただいた。会社側にもしっかりとした対応と環境を整えていただき、就職することができた。今日まで就業できているのは、会社や就労支援機関・家族のサポートのおかげであると実感している。
しかし、障がいの種類や企業努力によっても十分な環境等が得られない場合もある。最初から十分に見合った企業はない。働く上での不安も当然ある。その際、いかに企業と課題を乗り越えられるかが重要であると認識している。
私は自らの体調不良により、約3ヶ月間休職した。その際、通勤しやすいようにと、職員駐車場に屋根付ガレージを設置し、尚且つ休憩室を以前より広く改築してくださる等、より良い職場環境を整えていただいた。これらの対応で本当に自分のことを考えてくれているのだと実感し、私と会社との間に深い信頼関係が生まれた。
入社当初は車いすということもあり、デスクワーク等の業務が主になるだろうと考えが偏っていた。しかし、現在は実際に店頭に出て、自分には不可能だと思っていた接客業務を行うことができている。自分の新たな可能性に気づかせて下さった会社には大変深謝している。今後も日々努力し、会社に貢献していきたいと考えている。
自分の培った経験から全ての理想が現実になるとは限らない。『話し合って一緒に挑戦する』、それは障がいの有無ではなく人としての資質である。障がいの種類に拘らず自らの積極的な姿勢が周りにも良い変化をもたらしてくれるはずだ。
互いに励まし合い挑戦することで障がいという枠を超えた良い関係が築けることだろう。そのためには自らを卑下することなく思い立ったら行動することだ。支援機関や会社は応援してくれる。恐れずに話し合うことから始めれば自ずと道は開けるはずだ。
今、求職活動をしている障がい者そして企業担当者の方の今後の少しでも参考になればと願い、今日も接客している。
![]() お客様を待つHさん |
4. 障害者雇用を通じて感じていること~営業部Yさんより~、まとめ
(1)障害者雇用を通じて感じていること~営業部長さんより~
自分の障害を受け入れ、現在に至るまでに色々なことを乗り越えてきたであろうHさんは、本当に強い人だと思う。入社時の面接で初めて逢った時からずっと感じていたことである。
Hさんと仕事をするようになって、どこに行っても何をするにしても「障害のある人は来られるのだろうか」「動きやすいだろうか」と考えることが増え、同時に「まだまだ障害のある人には優しくない社会だな」と感じるようになった。
Hさんが入社して、周りのスタッフは誰に対しても思いやりや気遣いのできる優しさを持てるようになった。これはとても大きな成長である。一方で今まで当たり前に使っていた機器(例えばインカムのスイッチのオンオフ)が、Hさんには使いづらかったり、改修した休憩室でHさんが足を伸ばすためにはもう一工夫必要・・・等、改善が必要な課題は日々出てきている。会社内も外もHさんに限らず障害のある人が使いやすい、過ごしやすいそして働きやすい環境整備を目指し、Hさんと共に成長して行きたいと思っている。
(2)まとめ
1ヶ月あまりの入院から自宅療養の3ヶ月を経て、職場復帰を果たしたHさん。復帰当初は家族の送迎により通勤していたが、現在では入院前と同じように、自ら運転しカーポートに車を停めて出勤している。雨が降っても濡れる心配はない。
会社とHさんの信頼関係は強い。プライベートでも自宅へ遊びに来たり、飲みに行く「相方」と呼べる同僚もできた。
沢山の可能性を秘めた当社とHさんのこれからが楽しみである。
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