障害者雇用のメリットを最大限に活用した職場環境づくり
- 事業所名
- 北陸トラック運送株式会社 生協事業部丸岡物流センター
- 所在地
- 本社:福井県福井市
生協事業部丸岡物流センター:福井県坂井市 - 事業内容
- 本社:一般区域貨物自動車運送事業
生協事業部丸岡物流センター:物流業務 - 従業員数
- 全社:約530名(アルバイト含)
生協事業部丸岡物流センター:約200名(アルバイト含) - うち障害者数
- 全社:14名
生協事業部丸岡物流センター:11名 - (生協事業部丸岡物流センター)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 3 食品ピッキング業務(2名)、食品入荷検収業務(1名) 内部障害 知的障害 6 食品仕分付帯作業 精神障害 2 食品仕分付帯作業 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 北陸トラック運送株式会社本社 | ![]() 生協事業部丸岡物流センター |
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
昭和47(1972)年4月1日に「北陸トラック運送株式会社」を設立、福井市大島町にて約10台の車両で運送業務を開始した。昭和52(1977)年8月に本社を福井市今市町に新築移転し、同年、福井市内と美浜町内に営業所を開設するとともに、昭和58(1983)年4月に石川営業所、5月に富山営業所を開設し北陸三県の輸送基盤を確立した。
現在は、福井市上細江町に本社を置き(平成3年(1991)年7月移転)、この間に名古屋営業所(平成元年(1989)年5月)、京都営業所(平成16年(2004)年3月)を開設し営業エリアの拡大を図るとともに、倉庫業の認可を受け「輸送・保管・仕分に関するトータル物流サービス」の構築に取り組んでいる。
更に、ISO9002、グリーン経営(地球環境保全)及び安全性優良事業所(Gマーク事業所)を順次取得し、安全輸送およびコンプライアンスの遵守にも積極的に取り組んでいる。
創業精神である、「できる できる 必ずできる」を「私達の信条」とし、徹底した社員教育のもと「お客様に“感動”と“満足”をいただく業務」を展開するなかで、北陸ナンバーワンの総合物流企業を目指している。
(2)生協事業部丸岡物流センターの概要
生協事業部丸岡物流センター(以下「当部門」という。)は平成11年(1999)年10月に、エルシーコープ株式会社(福井県民生活協同組合の物流子会社)から庫内業務を請負い、生協組合員の個人別また班別にデジタルピッキングシステムによる集品業務を行い、北陸三県(福井県、石川県、富山県)の各生協組合員に食料品をお届けしている。1日の集品実績は、下表のとおりである。
商品群 | 点数 | 箱数 | 業務時間帯 | 備 考 |
ドライ | 49,549 | 18,381 | Ⅰ.9:00~17:00 Ⅱ.9:00~14:00 |
北陸三県(2ライン) |
冷 蔵 | 41,107 | 9,838 | 9:00~16:30 | 福井のみ |
冷 凍 | 50,435 | 13,356 | 9:00~18:00 | 福井、富山 |
青 果 | 11,320 | 4,396 | 17:00~19:30 | 福井のみ |
パ ン | 3,889 | 2,730 | 20:00~21:30 | 北陸三県 |
農産加工 | 2,191 | 9:00~13:00 |
(3)障害者雇用の経緯
当部門の障害者雇用は、当社が物流センターの庫内業務を請負う以前から同センターにおいて多くの障害者が働いており、この庫内業務を請負う際に働いていた人を引き続き雇用することとしたことが始まりで、現在は、ハローワーク及び「坂井市障がい者雇用ネットワークセンター」からの紹介・推薦のもと、1週間程度の実習後、本人の勤労意欲等を鑑みながら雇用を実施している。
2. 障害者の職場配置、従事業務
(1)障害者の職場配置
当部門の食料品集品ラインにおける作業内容は表1、またその中で障害のある人の配置は表2のとおりである。
Ⅰ.箱出し | 仕分ラインに仕分箱(シッパー)を出す作業 |
Ⅱ.ピッキング | 商品棚から商品をピッキングし仕分箱に投入する作業 ピッキングする棚および投入する箱はデジタル化している |
Ⅲ.封印 | 仕分箱に掛けた袋を封印する作業 |
Ⅳ.詰め替え | 個人別を班別に詰め合わせる作業 |
Ⅴ.保冷剤投入 | 冷蔵商品の品温を維持させるため保冷剤を投入する作業 |
Ⅵ.積み付け | 各生活協同組合の支所に集品した商品を転送する専用台車に積み上げる作業 |
Ⅶ.移動 | 所定の場所に保管する作業 |
Ⅷ.入荷検収 | 入荷した商品の規格、数量、品温等の検品作業 |
Ⅸ.棚補充 | 入荷検品後の商品を所定のピッキング棚に補充する作業 |
Ⅹ.その他 | 集品ラインとは別に単体で行う作業 |
配置場所 | 所定人員 | ドライ商品 | 冷蔵商品 | 冷凍商品 |
箱出し | 2名 | 知的障害1名 | ||
ピッキング | 16名 | 身体障害2名 | ||
封印 | 1名 | |||
詰め替え | 1名 | |||
保冷剤投入 | 4~5名 | 知的障害1名 | 知的障害1名 | |
積み付け | 2名 | |||
移動 | 1名 | 知的障害1名 | 知的障害1名 | |
入荷検収 | 2~4名 | 身体障害1名 | ||
棚補充 | 3名 | 知的障害1名 | ||
その他 | 1名 | 精神障害1名 | 精神障害1名 |
※「所定人員」は商品種類別に配置される所定人員数を示している。
(2)障害者の従事業務
障害のある人は、次の業務に従事している。
- 身体障害者
股関節脱臼などの障害があるが、いずれも当社の業務を行う上で支障にならないため、障害のない人と同等な業務内容にて、業務を遂行している。
ピッキング作業入荷検収作業 - 知的障害者
前表の配置表では以下のとおりである。
- ①箱出し作業
- ②保冷剤投入作業
- ③移動作業
- ④棚補充作業
箱出し作業保冷剤投入作業移動作業 - 精神障害者
前表の配置表では、「(1)-Ⅹ.その他の作業」に配置し、集品ラインの流れ作業とは別に単体で行う以下の作業に従事している。
- ①集品容器の汚れまたは破損等を検品する作業。
- ②冷凍商品集品後の保管用保冷バックを組み立てる作業。
集品容器検品作業保冷バック組立て作業
3. 取組の内容、取組の効果と障害者雇用のメリット
(1)取組の内容
食料品集品業務においては、組合員にお届けする商品の容器に汚損・破損・異臭等が無いこと、また商品とは別な異物が混入していないことが絶対条件である。
当部門では労災事故・クレーム“0”をスローガンに、労働安全衛生自主点検と物流トラブル防止自主点検を毎週行っている。これらのことの躾として、次の「必ず守る5項目」を朝礼で唱和している。
- 組合員様が注文された商品を正しくお届けします。
- 入荷、棚補充、集品前作業で商品名を点検します。
- 現場に不要な物は持ち込まず異物混入を防ぎます。
- 汚れたオリコンやシッパーは使用しません。
- 作業後は整理・整頓・清掃を行い綺麗な職場にします。
また、各ラインには女性のラインリーダーを配置し、ラインごとに従業員の出退勤管理、従業員教育等を行っている。各ラインリーダーは、日頃から、障害のない人、障害のある人を同等に管理指導するように心掛けているが、障害のある人だからクレームを発生させても仕方がないということがないよう、障害のある人が行う作業の管理及び教育にはウェイトを若干高めている。
例えば、労働安全衛生自主点検では、構内および庫内における危険マップを作成しているが、避難訓練や消火訓練等の実施前には、各ラインリーダーから、障害のある人には具体的に危険箇所の周知と避難方法等について指導をしている。また、障害のある人の中には、障害の特性により、通常できていた作業が突然できなくなることがあるため、不定期に「必ず守る5項目」の目的や作業方法について、できる限り分かりやすい言葉を選び何度も何度も繰り返しの指導を実施し、精神的負担等がかからないようコミュニケーションを図っている。さらに、管理者および各ラインリーダーは、相手より先に笑顔で挨拶をすることで、会社方針である「大きな声で挨拶する」ことを定着させ、普段の様子に変わりがないかの確認を日頃から行っている。
(2)取組の効果と障害者雇用のメリット
- 取組の効果
企業においては、利益を追求し社会に貢献することを目的とするなかで、お客様に対する品質の向上も常に求められている。当部門も品質向上を追究すれば採算性が低下し、採算性向上を追究すれば品質が低下するといった繰り返しが、数年続いていた。そこで、「事故・クレーム“0”活動自主点検」と「業務改善計画」を両立し、実行したことで、過去に発生した同様のミスを激減させることに成功。同時に採算性の向上も実現した。
また、構内および庫内における危険マップを作成したことにより、各危険箇所や避難方法等について、具体的に周知することが可能となり、障害のない人、障害のある人すべての従業員が安心して働ける環境を整備することができた。
さらに、毎日の挨拶や指導を行う中での会話によるコミュニケーションを大切にすることで、障害の人を特別扱いすることなく、各人が安心して自分の能力を最大限に発揮できる職場環境を構築している。
- 障害者雇用のメリット
当部門の集品業務に於ける付帯作業は、障害のある人に適している作業とも思えることがある。例えば、保冷剤を投入する作業は、流れてきた箱に1枚の保冷剤を所定の位置に投入(セット)する作業である。(2.(2)項の保冷剤投入作業写真参照)
1日当りの作業量は、
- ①数量 約1万枚
- ②作業時間 約6.5時間
トラブル防止項目は、
- ①保冷剤が完全に凍結していること。
- ②保冷剤に汚損・破損、異物付着等がないこと。
である。障害のある人は、
- ①単純作業でも集中力を維持し、流れ作業に支障をきたすことが極めて少ない
- ②遅刻・早退・欠勤等が少ない
- ③採算性の観点も含めて、適性のある人員を配置できる
等の面において作業に適していると思われ、その存在は大きく貢献している。
4. 今後の展望と課題
今後の課題は人手不足の解消である。特にピッキング作業を行える人手が不足している。離職率は極めて低いが、高齢または家庭事情等で辞める方もいるため、慢性的な人手不足の状態が続いている。この打開策として、ピッキング作業を多くの障害のある人に作業してもらうことは可能か、検討している。
ピッキング作業は、
- 商品棚数 20商品
- 点数 約2,000点/日
の実績で、各棚に表示された数量をピッキングし、ランプが点滅しながら流れてくる箱に商品を投入する作業を繰り返し行う仕分け作業である。従来、この作業は障害のない人を中心として行っているが、今後はさらに障害のある人にも業務分担ができるよう、ジョブコーチの支援を頂きながら教育指導を行うことを検討している。いずれにせよ、労働力不足が今後更に懸念される中、障害者雇用は当部門としても大きな課題であり期待でもある。作業内容と能力等を見極めながら、今後も積極的に障害者の雇用を進めていきたいと考えている。
![]() ピッキング作業 | ![]() 商品投入作業 |
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