関係機関の連携強化と社内雇用納付金制度
- 事業所名
- 株式会社バロー
- 所在地
- 本社:岐阜県恵那市
本部:岐阜県多治見市 - 事業内容
- スーパーマーケット・ホームセンター
- 従業員数
- 11,400名
- うち障害者数
- 233名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 1 店舗での販売業務 肢体不自由 48 同上 内部障害 28 同上 知的障害 140 店舗での販売業務・生産工場でのコンテナ洗浄 精神障害 16 店舗での販売業務 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 本部建物外観 |
1. 会社の主な沿革・概要、障害者雇用の経緯
(1)会社の主な沿革・概要
昭和33(1958)年 | 「株式会社主婦の店」を設立。一号店「恵那店」の営業を開始 |
昭和45(1970)年 | 「株式会社主婦の店」の社名を「株式会社主婦の店バロー」に変更 |
昭和49(1974)年 | 「株式会社主婦の店バロー」の社名を「株式会社バロー」に変更 |
平成 5(1993)年 | 名古屋証券取引所市場第二部に株式を上場 |
平成 8(1996)年 | 岐阜県多治見市大針町661番地の1に本部および物流センターを移転 |
平成15(2003)年 | 東京証券取引所市場第二部に株式を上場 |
平成17(2005)年 | 東京証券取引所・名古屋証券取引所 市場第一部に指定替え |
平成26(2014)年 3月現在 |
グループ合計 600店舗 |
![]() 岐阜県多治見市 根本店
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(2)障害者雇用の経緯
企業原理の理解=社会の役に立つ企業が存続できる=社会と同じ人的構造を持つ企業に永続性が生まれる
一般社会は、老若男女さまざまな人々で成り立っている。人間は、一般社会と深いかかわりを持つことによって、社会の一員としての自覚と生きがいを持つことができる。
平成14(2002)年時点の株式会社バロー(以下「バロー」という。)の障害者雇用率は0.9%であり、法定雇用率を大幅に下回っていた。しかも大半が身体障害者の雇用であり、積極的雇用を進めるというよりは、採用した者が障害者手帳を所持していた場合がほとんどであった。ハローワーク恵那から障害者雇用に関する指導勧告が来るのも時間の問題であったため、知的障害者を受け入れる体制の確立が急がれていた。
そこでバローは上記の「障害者雇用の基本理念」を策定し、地域社会を構成する事業体として、障害者の社会参加、特に働く場所の提供という形の貢献をしていかなければならないと考え、障害者雇用の担当者を選任して、主に知的障害者を対象に採用活動を始めた。採用活動に当たっては、県内外のハローワークや障害者職業センターのアドバイスを受け、さらには合同就職面接会への参加や様々な制度の活用も積極的に行い、「一店舗につき一人ずつの採用」を目標に現在も活動を続けている。結果、平成16(2004)年には法定雇用率(当時)の1.8%を達成し、さらに平成20(2008)年9月には岐阜県より障害者雇用優良事業所の表彰を受けることができた。
平成23(2011)年2月からは岐阜県教育委員会が制定した「働きたい応援団!ぎふ」のサポーター企業登録を行い、岐阜県内の各特別支援学校と連携しながら企業内作業学習や就業体験に協力している。
現在、毎年30名程度の新規採用を行っている。採用活動はおもに各県の特別支援学校(養護学校)卒業生の受入れが中心で、2年生・3年生時の複数回の職場実習にて就業能力の判定を行っている。学卒以外では、就業・生活支援センターと連携し、ジョブコーチ制度やチャレンジトレーニング事業を活用した雇用前実習を経て、正式採用をしている。
2. 取組の内容
(1)採用方針
出店エリア全域のハローワークに障害者専用求人を出し、さらに各県特別支援学校(養護学校)、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター等に広く応募可能店舗情報を開示している。あわせて、ジョブコーチ制度、チャレンジトレーニング制度なども活用し、受け入れる店舗に対して障害者の就業に対する理解促進を進めている。一店舗につき一人ずつの採用方針だが、就業状況が安定している店舗については、店長判断により二人目・三人目の雇用も行っている。しかし、やみくもに雇用を進めるのではなく、雇用後いかに定着させていくかが重要であると考えている。
(2)障害者の勤務地・業務・職場配置
原則として、全員が店舗勤務となる。居住地から通勤できる範囲(最大でも一時間以内)であるが、自動車・自転車・公共交通機関等を使い、自力で通勤できることが雇用の条件となる。業務内容はスーパーマーケットでは、バックヤードでの商品加工と売場での商品陳列。ホームセンターでは特定部門での売場管理、商品発注・レジ業務などを行っている。スーパー・ホームセンターどちらの業態もお客様への接客はもちろん、従業員同士の会話が欠かせない。ある程度の対人コミュニケーション能力が要求される職種である。
昨年は大垣市内に立ち上げた大垣畜産プロセスセンター(精肉のパック商品を製造する工場)で2名の雇用を行った。現在バローでは企業戦略として、店舗で行っている加工作業を一か所のセンターに集約し、店舗は本来の業務である接客と販売に専念するという「プロセスセンター化」を進めており、今後こういったセンターでの雇用も進めていく方針である。
(3)勤務形態
原則パートタイムとしての勤務をしている。一日7時間(ロングタイマーと呼ぶ)、もしくは一日4時間(同ミドルタイマー)の週休2日を基本としている。
時間帯は店舗によって異なるが、もっとも多いパターンとしてロングタイマーは8:00~16:00、ミドルタイマーは8:00~12:00である。しかし本人の能力や希望を考慮した柔軟な対応をすることで、長く安定して就労できるよう図っている。
(4)雇用後の教育
雇用後の教育指導は店長が責任者となり、各部門のスタッフをつけ現地で指導をしている。しかし、一言に知的障害といっても、同じ指導方法では思うように意思が伝わらないこともあるため、障害者就業・生活支援センターの定着支援のサポートを受けながら、一人ひとりの障害に最もあった適切な指導教育ができるよう店舗でノウハウを積み上げている。
![]() 作業風景 |
(5)社内雇用納付金制度
バローは社内で雇用納付金制度を導入している。障害者を雇用している店舗には毎月50,000円の人件費補填が本社から行われるが、逆に雇用していない店舗からは50,000円の納付金が徴収される。会社全体で障害者の雇用を支えていく姿勢を示すと同時に、各店舗が積極的に障害者の雇用に関わっていけるよう努めている。
3. 今後の課題と展望
出店エリアが拡大するにつれて、東海3県以外の地域、特に滋賀、長野、新潟、静岡での雇用及び定着支援が困難になってきた。店舗で問題が発生しても、本部の担当者がなかなか現地へ赴くことができず、対応が後手に回ってしまいがちになっている。
店舗や本人からのSOSに素早く対応するために、地域の障害者職業センターや市の福祉課などとの連携がこれまで以上に重要となっている。
また、店舗従業員に対しての今後の教育の課題として、精神障害・発達障害に対する理解促進がある。この10年間、主に知的障害者を中心に採用を進めてきており、雇用が拡大するにつれて、店舗従業員の知的障害に対する理解も進んできた。
その一方で精神障害者の雇用は遅々として進んでいない。平成30(2018)年から精神障害者が雇用率の算定基礎に加算され、雇用義務の対象に追加されることが決まっているが、精神障害に対する理解は全く進んでいない。精神障害という言葉が独り歩きしてしまい、受け入れる従業員側が先入観を持ってしまっているのが現実である。うつや統合失調症に罹患後、投薬や治療等により就業が可能と判断された応募者であっても、接客を必要とする業務を長時間行うことは非常に困難であり、過去何人も雇用を試みてきたものの、実習で終了もしくは入社後にトラブルを起こしてしまい短期間での退職という結果になっている。特にトラブルにより退職してしまった場合、店舗従業員にもとても深い傷(障害者に対する拒絶反応)を残してしまう恐れがあるため、知的障害者と同様、もしくはそれ以上の配慮を持って環境を整えつつ、一人ずつ雇用を増やしていき、粘り強く雇用を進めていきたいと考えている。
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