事業所名

スギスマイル株式会社
スギホールディングス株式会社（スギ薬局グループ）の特例子会社

所在地

愛知県安城市

事業内容

スギ薬局グループ内の事務作業等の受託業務、名刺作成及び印刷業務、メール仕分け・集配業務、店舗清掃業務

従業員数

135名

うち障害者数

113名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	2	郵便物仕分け・集配業務、印刷業務
聴覚・言語障害	4	金券類仕分け・集計業務
肢体不自由	13	事務業務、名刺作成及び印刷業務
内部障害	13	〃
知的障害	79	メール仕分け、店舗清掃業務
精神障害	1	メール仕分け
発達障害	1	事務業務

その他

特例子会社、障害者職業生活相談員

目次

1. 設立の経緯と業務概要
2. 取組の内容と効果
3. 今後の展望と課題

スギスマイル桜井事務所（スギ薬局桜井店2階）と巡回清掃スマイルカー

1. 設立の経緯と業務概要

（1）スギ薬局グループ概要

株式会社スギ薬局は、昭和51（1976）年愛知県西尾市に1号店を創業、「目の前のたった一人のお客様、患者様を大切にしたい」との想いを胸に、地域の皆様から愛される「かかりつけ薬局」を目指してきた。スギ薬局グループの企業理念は「お客様、患者様の幸せを願い、地域社会に貢献できる会社づくり」、「社員の幸せを願い、社員とともに成長する会社づくり」である。スギ薬局グループの平成26（2014）年2月末時点の店舗数は、株式会社スギ薬局とスギメディカル株式会社、合わせて915店舗となり、関東エリアで217店舗、中部エリアで381店舗、関西エリアで317店舗を展開している。

（2）特例子会社「スギスマイル株式会社」設立の経緯

スギスマイル株式会社（以下「スギスマイル」という。）は、スギ薬局グループの企業理念である「地域社会への貢献」を果たすべく、障害のある方でも活き活きと笑顔で働ける職場を創りもっと地域社会に貢献をしたい、という強い信念のもと、平成21（2009）年6月1日に設立された。設立時は従業員11人（うち出向者5人、障害者5人）でスタートし、同年7月24日に特例子会社認定を取得した。

（3）スギスマイルの概要

スギスマイルの業務は、大きく分けると3つに分類される。一つ目はスギ薬局グループ本部の事務作業等の受託業務、二つ目はグループ内の物流センターにおける社内郵便物の店舗への仕分け業務と店舗からの集荷業務、三つ目はグループ内の店舗の清掃を行うクリーン業務である。

会社設立時より障害者の活躍の場を拡げ、スギ薬局グループの障害者雇用率はスギスマイル設立2年目で法定雇用率を達成した。以後、法定雇用率を維持しながら障害者の活躍の場を拡げる取組みを進めている。平成26（2014）年2月末時点で、事務所は本部（安城市）と春日井（SLC中部：スギ薬局中部ロジスティクスセンター（物流センター））の2ヶ所、クリーン業務の桜井事務所（安城市桜井町、スギ薬局桜井店2階）、大阪事務所、関東事務所の3ヶ所、計5ヶ所ある。

2. 取組の内容と効果

（1）取組の内容

1. 採用方法（人材確保）

   ＜中途採用＞

   特例子会社設立以前は、障害者の採用も進まず、設立しても本当に採用できるか大変不安な状況であったが、ハローワークと障害者就業・生活支援センターに協力頂き、何とか採用できた。現在も、障害者就業・生活支援センターと連携をして採用活動をしている。

   
   

   ＜新卒採用＞

   愛知県の方式として、スーパーマーケットの複数の店舗をもつ事業所に対しては、特別支援学校の代表となった窓口校が、各学校と連絡・調整して、紹介頂いた学生を実習につなげている。実習は入社式迄の期間に2～3回程度行っている。

2. 職域の開拓

   本部事務の受託業務および物流センターでの社内郵便物の店舗への仕分けなどの業務での採用受入れは、業務量が大きく増加することは見込めないため、新たな業務の開拓が必要になった。

   そこで、店舗のQSC（Quality  Service  Cleanliness）に貢献できるクリーン業務を新たな業務として取り組むこととした。

   クリーン業務には二つのグループがあり、店舗の外周りを中心に、店舗従業員がなかなかできない箇所の掃除をワゴン車で各店舗をまわって行う「巡回クリーンチーム」と、店舗に駐在して店舗内の掃除を行う「駐在クリーンスタッフ」である。巡回クリーンチームは、1チーム指導員1人とスタッフ6人の計7人、現在中部4チーム、関西2チーム、関東1チームの計7チームが稼働している。

   
   

   店頭の風除室のタイルを掃除している巡回クリーンスタッフ

   床の汚れ、ヒールマーク取りをして店舗の床をきれいにしている駐在クリーンスタッフ

3. 定着に向けた取組

   ＜障害者職業生活相談員の配置＞

   指導員は、全員に障害者職業生活相談員資格認定講習を受講させ、障害特性など相談・指導に必要な事項を理解させている。また身体障害者の中でもリーダーになる人には受講させている。

   
   

   ＜第2号職場適応援助者の配置＞

   平成23（2011）年4月にクリーン事業を開始するにあたり、知的障害者をどのように指導したら良いか、愛知障害者職業センターに相談していた際に、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構主催のジョブコーチ（職場適応援助者）養成研修があることを知り、クリーン業務でチームの指導員になる人は全員受講させることを方針とした。

   
   

   スタッフに窓ガラスの掃除手順を指導する第2号職場適応援助者の指導員

4. 障害者の業務（仕事ぶり紹介）

   物流センター（スギ薬局中部ロジスティクスセンター）内、春日井事務所の社内メール便の仕分け集荷業務・店舗宛書類の印刷業務を紹介する。

   社内メール便の仕分け集荷業務は、元々障害のないパートタイマーで業務を行っていたが、スギスマイル設立以後は、順次障害者の担当業務へと切り替えを行った。

   Aさん（平成21（2009）年7月入社、知的B判定）は、春日井事務所開設時から在籍し、社内メール便の仕分け集荷業務を担当しているスタッフで、後輩の指導や特別支援学校実習生の受け入れなど他のスタッフの模範となり、優秀勤労障害者として独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞を受賞した。

   Mさん（平成22（2010）年4月入社、視覚障害4級）は、印刷業務を春日井事務所で行うようになった時に担当となり、店舗宛書類の印刷業務の他に、商品価格ラベルの印刷業務など、今では障害のないスタッフと全く変わらないレベルで、ひとりで仕事ができるまでになって活躍している。

   
   

   後輩にメールの宛先確認の仕方を教えているAさん

（2）効果

1. 雇用障害者の増加数

   平成21（2009）年6月1日時点  5人

   →  平成26（2014）年6月1日時点  113人

   
   

   スギ薬局グループ雇用率

   平成21（2009）年6月時点  1.31％

   →  平成26（2014）年6月時点  2.60％

2. 職域の開拓

   平成26（2014）年6月1日時点の業務別の障害者数は下記のとおりで、クリーン業務の取り込みにより、知的障害者の雇用数が大幅に拡大した。

   本部（事務業務請負）	22人
   春日井事務所（メール便仕分け業務）	30人（うち、知的障害者18人）
   クリーン業務（店舗清掃）	61人（うち、知的障害者61人）

3. 定着に向けた取り組み
   ・障害者職業生活相談員の配置数

   障害者職業生活相談員資格認定講習修了者

   20人（平成26（2014）年6月時点）

   ・第2号職場適応援助者の配置数

   第2号職場適応援助者有資格者

   7人（平成26（2014）年6月時点）

3. 今後の展望と課題

（1）今後の展望

障害者が活躍できる職場はまだまだ創り出すことができるし、その可能性は無限にある。スギスマイルでは既に商品補充業務など新たな業務の取組を進めている。

店舗巡回清掃業務は、知的障害のあるスタッフが、ワゴン車でスギ薬局グループの各店舗を回り、駐車場や店の窓ガラスなど店舗内外の清掃を行っているが、店舗のスタッフからは「普段清掃が難しい箇所を丁寧にきれいにしてくれる」と頼りにされている。

スギ薬局グループは、平成27（2015）年に1,500店舗を目指している。今後ますます店舗が増えることからも、店舗を支援する業務の拡充は進むと考えられ、障害者雇用も進むものと期待する。

（2）課題

平成30（2018）年4月から精神障害者雇用が義務化し、法定雇用率も引き上げられる可能性があり、今後ますます障害者の雇用を促進すると共にその定着ならびに戦力化を図ることが企業に求められる。

障害者が退職する主な理由は、「賃金・労働条件」および「職場の雰囲気・人間関係」の不満であるが、「賃金・労働条件」については、経営面等で早急な改善が困難な部分もあるが、「職場の雰囲気・人間関係」については、障害者の雇用の定着化を目指す上で、着実に取り組んでいかなければならないし、取り組める分野である。

職場定着の為には、家庭ならびに支援機関との関わりも重要であり、相互間の情報の共有化ならびに会社と支援機関との役割分担を明確にして対応していく必要もある。

関係者間のコミュニケーションを図るため、コミュニケーションノートを活用しているが、他社で取り組んでいる「社員家族との交流会」の実施なども検討する必要もある。

そして、障害のあるスタッフならびに指導員がそれぞれの役割を発揮しながら「笑顔の絶えない」職場作りに努めていきたい。