一人ひとりの働きやすい環境を整え、障害者雇用に積極的に取り組む事業所
![]() 事業所外観(正面玄関) | ![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要
鳥羽シーサイドホテルは、望館・汀館・岬亭の3棟からなり、211の客室。1,141人収容の規模で、所在地の鳥羽市では最大のホテルである。
昭和46(1971)年、三重交通グループ(現:三重交通グループホールディングス)の三交興業によって開業された。昭和48(1973)年9月には増築を行い、109室・520人収容と、当時の鳥羽地方最大規模の宿泊施設となった。
その後、数回にわたる新館建設が行われ、平成11(1999)年に三交興業から分社し、ホテルと同名の株式会社となった。
2. 障害者雇用の状況
(1)障害者雇用に対する基本理念と取組
当社では、企業として社会的貢献を果たすことが大切であるという理念の下、また、ホテルの業務として重要な客室清掃の担当者も充足させるという観点からも、障害のない従業員とのバランスをはかりながら、現在まで障害者雇用に努めてきている。
障害のある人の採用については「可能な限りいつでも雇用する」の方針のもとに、ハローワークに対して求人活動を実施している。
また、障害のある従業員の採用後の配置については、障害の種類、程度に応じて行い、個々の障害の様子や体調等を考慮して勤務内容や勤務シフトを組み立てるなど、働きやすい環境づくりに努めている。
このような当社の取組が評価され、平成25(2013)年度独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞を受賞した。
また、当社の障害者雇用に積極的な姿勢は地域においても評価され、地域における障害者雇用の先進的な事業所として認識されている。
(2)障害者雇用の経緯
平成15(2003)年、障害のある人を一人雇用したのが、当社における障害者雇用の第一歩となった。
この平成15(2003)年に雇用した障害のある人は、作業能力が比較的高いこともあって、この人に合った作業内容や配属について、試行錯誤を繰り返しながら工夫することで、職場定着を図ることができた。この結果、障害のある従業員であっても、周囲の従業員の理解と協力関係をつくりあげ、障害のある従業員の特性を考慮した職務を組み立てれば十分に成果をあげることができるのではないかという雰囲気が醸成されていった。
その後、ホテルの利用客に応じた客室清掃業務上必要となる従業員の求人活動を行う際に、障害のない従業員の応募状況を見ながら、障害のある人を雇用するなど、さらなる取組を行った。
さらに清掃業務全体がよりスムーズに流れるように、障害のある従業員と同じ清掃業務を担当する従業員の理解と協力を得られるように努めること、障害のある従業員の作業内容を考慮し、配置を工夫することや指導方法について検討を重ね、障害のある従業員と二人一組のペアを組んで清掃業務にあたることのできる従業員の育成等に力を入れてきた。
このような取り組みを通じて、障害のある従業員の遂行可能な作業と不得手な作業を把握し、その上で、職場環境を配慮しつつ、適性に応じた職務内容を考慮し、その人に最適な担当業務内容を割り当てることによって、客室清掃業を十分に遂行できるとの考えが一層確立し、障害のある人を雇用することは、障害のある人の積極的な社会参加、あるいは社会的自立といったことを支援していくことにつながるといったことも一層明確になった。
このようにして、当社における障害者雇用についての企業理念も確立し、障害のある人に積極的に仕事を提供することで彼らの社会参加と社会的自立を支え、企業としての社会的貢献を果たしていこうとする姿勢をより強固なものとした。
最近では、ハローワークに求人を出さなくても、当社の取り組みの評判を聞いて、卒業予定生徒の就職を打診する例も出てきた。平成26(2014)年4月には、3月末で高校を卒業予定である生徒の高校の担当者が同社を訪ね、雇用につながった例もあるなど、同社の障害者雇用に対する地域の評価は高まってきた。
平成25(2013)年度は障害のある人を新規に3人雇用し、昨年度までの5人に加えて障害のある従業員の人数は8人となった。客室清掃業務担当者全体で80人であるので、客室清掃業務担当者の一割が障害のある従業員となった。
障害のある従業員と二人一組のペアを組み、指導もしながら客室清掃業務もこなすことのできるような力をもつ客室清掃担当者の数には限界があり、そのこともあって、現状として障害のある従業員のこれ以上の雇用はなかなか難しい状況になってきた。
しかし、今後も状況に応じて、障害のある従業員と他の従業員とのバランスや予算にも配慮しながら、積極的に障害のある人の雇用に取り組んでいくとの方針には変更はない。
3. 取組の内容
(1)職務内容
当社では、障害のある人の雇用については、客室清掃業務をその職務内容としている。客室清掃業務とは、客室の清掃と合わせ、シーツ類の交換、客室備品・アメニティの補充等をすることである。また、客室清掃業務は、宿泊客へのサービス提供に直接関わる仕事である。
前日客のチェックアウト(10:00)からチェックイン(14:00)までの時間内に担当フロアの全客室の清掃等を仕上げなければならない。その限られた時間の中で、担当フロア全体の客室の清掃等の仕上がり状況を点検するとともに、他の担当者が作業した別のフロアについても同様の最終確認をするといった二重にチェック体制をとり品質の向上に努めている。
同社ではこれらの仕事は、二人の従業員が、二人で一組となって、ワンフロア全体を担当することを基本としている。また、担当のフロアの全室の清掃作業が終了したあと、再度、担当フロア全室の清掃状況や備品の整備状況の点検を行うとともに、他のもう一箇所のフロアの全室の清掃状況や備品の整備状況等を確認する業務内容も含まれる。
![]() Aさん客室清掃作業 | ![]() Bさん客室清掃作業(リネン作業) |
![]() Cさん客室清掃作業(リネン作業) |
(2)職務上の課題
二人の従業員が、一組となって、ワンフロア全体の客室清掃業務を担当する。障害のある従業員は障害のない従業員とペアとする。
障害のある従業員には、その人の特性により十分に遂行可能な作業や、逆に不得手な作業内容が出てくる。また、チェックアウトからチェックインまでの限られた時間内に確実に作業がこなせるのかといった課題も生じる。このような時間的制約の中、さらに一定の基準以上の清掃状況の仕上がりまで要求される業務については、障害のある従業員と二人一組になって、指導も兼ねながら業務を担当できる人材が欠かせない。そこでこのような人材を育成していくことが、障害のある人の雇用を維持していくための基盤となる。
当社では、客室清掃業務全体の責任者が、客室清掃全体の従業員の人的配置を行う中で障害のある従業員と二人一組のペアを組む担当者について、障害のある従業員の特性に応じた指導力、指導経験等をもとに人選を行う。また、障害のある従業員の業務遂行上のさまざまな課題について、二人一組のペアを組む担当者の相談に応じたり、障害のある従業員の業務遂行状況を確認し、場合によっては業務内容の検討や変更等を行っている。
現在は、この責任者が障害のある人の雇用について、積み重ねてきた知識と経験をもとに、このような多岐にわたる業務をこなしている。この責任者に引き続く人材を育成し、また清掃担当者をはじめとする従業員教育に企業全体で、組織的に対応していくことが、当社が障害のある人を雇用するうえで大切と考えていることである。
4. 今後の展望
当社では、障害のある人の採用にあたっては必ず家族との面談を実施している。また、雇用後も常に家族の方との連絡を欠かさないようにしている。このことは他の従業員でも同様であるが、特に障害のある人の雇用では大切と考えている。
常に家族の方と連絡を取り、情報交換を行うことで勤務上の課題を早期に解決できることが多く、その結果として長期的な雇用の継続にもつながり、障害のある従業員にとっても事業所にとっても良い結果となると考えている。
今後も障害のある従業員の家族との情報交換を欠かさず、家族の支援を受けながら家族と協力し、連携して障害のある人の雇用に取り組んでいきたいと考えている。そしてそのことが、企業として社会的貢献を果たすことが大切であるという当社の理念の実現につながっていると考えている。
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