支援機関との連携・協力、社内業務の見直しによる継続雇用の事例
- 事業所名
- 株式会社KYOSO
- 所在地
- 京都府京都市
- 事業内容
- 情報処理サービス業
- 従業員数
- 520名
- うち障害者数
- 11名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 2 システムエンジニア 内部障害 2 システムエンジニア 知的障害 1 事務所内清掃業務 精神障害 2 開発系エンジニア、清掃業務 発達障害 4 事務所内エンジニア、事務作業 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() ![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
昭和48(1973)年 3月 | 株式会社京装コンピューターを設立(京都市右京区) |
平成15(2003)年12月 | 子会社 株式会社京装テクノロジ設立 |
平成25(2013)年11月 | 本社を京都市中京区へ移転 |
平成25(2013)年12月 | 株式会社KYOSOへ商号変更 子会社 京装テクノロジをKYOSOテクノロジへ商号変更 |
- 従業員数:590名(グループ合計)
- 事 業 所:本社、東京本部、名古屋事業所
- 事業内容:システムオペレーション、運用管理、ネットワーク・システム構築、アプリケーション開発、ヘルプデスク
本社事業所内には、スタッフ部門として23名が勤務している
(2)障害者雇用の経緯
企業理念の実現とCSRの展開の中で、障害者も一緒に働ける職場を目指し、社内の各部門で採用が可能かどうか、またどのようにすれば一緒に働くことができるのかを、社外のセミナーに参加し検討した。
平成24(2012)年以降、ハローワーク、京都ジョブパーク(障害者就労ステップアップセンター含む)、京都障害者就業・生活支援センター、京都障害者職業センターのご協力をいただき、身体障害だけでなく精神障害の方の採用も検討し、6名を採用した。
また、既に障害者雇用で成功されている企業を訪問し、成功事例を拝聴するなど参考にさせていただいた。
2. 取組の内容と効果
平成24(2012)年以降、上記にあげた機関と連携して行った障害者雇用の取組の内容と効果を紹介する。
(1)取組の内容
- 募集・採用
次に紹介するAさんからFさんは、Fさんを除きいずれも実習期間を1~2週間程度設け、“この職場で働きたい”という意思確認をすると同時に、会社として現場に適合(適応)できるかどうか、就業の可能性を確認・検討し採用に至る。
- ①清掃業務:パート社員(契約社員)
●Aさん(精神障害)
平成24(2012)年5月に2週間の実習期間を経て6月より採用、当初4時間/日の短時間作業として採用する(現在は体調不良により作業時間をより短縮している)。
●Bさん(知的障害)
Aさんの体調不良により採用時に設定した作業時間の就業が困難になったこともあり、Aさんの補充として、平成25(2013)年2月に1週間の実習期間を設け、その後3月より採用する。Aさん同様4時間/日の作業である。
- ②事務作業:契約社員
●Cさん(発達障害)
平成22(2010)年11月に2週間の実習期間後、12月採用、実習期間中はジョブコーチの支援を受けた。
●Dさん(発達障害)
平成24(2012)年11月に1週間の実習期間後、12月採用、ジョブコーチ支援なしで、実習後に採用した。
●Eさん(発達障害)
平成24(2012)年11月に1週間の実習期間後、12月採用、Dさん同様、ジョブコーチ支援なしで、実習後に採用した。
- ③社内システム担当:契約社員
●Fさん(発達障害):平成25(2013)年5月採用
- ①清掃業務:パート社員(契約社員)
- 障害者の業務・職場配置
- ①清掃業務:2名(精神障害・知的障害)
Aさん、Bさんは事務所内の清掃作業を担当している。当初Aさんが一人で作業していたが、体調不良により継続勤務が困難となり、Bさんを補充採用した。ただし、Aさんの勤務時間については本人及びジョブコーチと相談し、作業が可能になるよう勤務時間を減らすなどの配慮を行い、現在は2時間/日×週3日の勤務としている。
両名は毎朝、作業場所・作業項目のある指示書により清掃作業を行い、作業終了後は、チェックシートにより作業報告を受けている。
両名が行う清掃作業は、元々外部業者に委託していたものを、業者との契約終了に伴い、社内業務として取り込み(4時間/日×週5日)、配置にあたっては京都ジョブパークのご協力をいただき、定着支援のため定期的なフォローを受けている。
清掃作業の様子- ②事務作業他:3名(発達障害)
Cさん、Dさん、Eさんは、人事・総務・経理系での事務作業を担当している。上長からの指示に従い、定例業務を担ってもらっている。
- ③情報システム担当:1名(発達障害)
Fさんは、前職でシステムエンジニアとして勤務されていた経験から、社内システムの補助担当をしている。
- ①清掃業務:2名(精神障害・知的障害)
(2)取組の効果
障害者雇用にあたっては、社員の障害者に対する理解を深めることが不可欠であると考え、障害者雇用についての社内研修を実施し、障害特性をはじめ、当人たちへの接し方、業務の指示の仕方などについて理解を深めた。そうした理解により障害を持つ社員への声かけなどを通じてコミュニケーションが深まった。継続雇用が難しいといわれていたAさんは、これまで体調不良による休み等があったが勤続年数が2年を超えることができ、現在に至っている。
- 社内研修の実施
京都障害者職業センターに講師派遣を要請して、次の2回実施した。
- 平成25(2013)年1月22日 障害者雇用の概要
- 平成25(2013)年3月8日 障害の特性(特に精神障害・発達障害)
いずれも役員を含め本社勤務社員全員が参加した。研修終了後のアンケートでは、「障害者雇用について知ることができてよかった」という声が多くあり、理解が深まった。
- 実習生の受け入れ
上記の採用された6名以外で、平成25(2013)年2月に聴覚障害者の実習生を受け入れ、事務作業を経験してもらったが、採用には至らなかった。ただし、聴覚に障害があっても、PCを利用するなどでコミュニケーションを図ることが可能という気づきがあり、会社として貴重な経験となった。また、実習生への対応ではⅠ.の社内研修により得た障害の特性の理解が役に立ち、社内研修の実施について一定の成果が認められた。
- 社内業務の見直し
社員それぞれが持っている定例作業を見直すことで、担ってもらう業務(文書受付対応、ファイリング、請求書発行など)を創出し、現在に至るが、結果的に事務作業の効率化が図られた。
- 対応社員の絞り込み
Aさん、Bさんについては理解力が他のメンバーと異なるため、Aさん、Bさんに対応する社員を絞ることにより、信頼関係を築くこととしたが、結果、Aさん、Bさんの業務遂行に役立った。
3. 今後の課題について
(1)各人の現状と対応について
- 精神障害
●本人の障害特性により体調に波があり、季節によっても体調の変化が現れるので気をつけている。また、健康面では、相当なヘビースモーカーだったところを禁煙の生活指導を行い、減煙することができている。
●本人が頑張り過ぎてペース配分が上手くできないことがあるため、途中で休憩を入れ、声かけの実施をしている(朝の出勤も定時の30分~1時間前に出社していることがある)。
●罹病してから福祉作業所以外での仕事をすることができなかったこともあり、現在は仕事をすることに大きな喜びを感じている(出勤できていることが誇らしい、仕事をすることが楽しい、と話している)。
- 知的障害
●自身の理解力に不安を覚えているので以下に気をつけている。
- 作業については指示書やチェックシートで示すこと
- わかりやすい言葉で伝えること
- 場所などを示す際には、「ここ」というのがわかるよう、現認すること
●わからないところは、自分で判断せずに必ず相談・確認ができている。
●あいさつが気持ちよく大きな声でできている。
●作業指示に基づく作業だけでなく、自身の気づきによる作業の実施ができるようになり、作業内容についても、こうしたらどうだろう?というように提案(ホワイトボードのマーカーの書き具合等)をしてくれるようになった。
●作業にあたり、今の作業を丁寧にしてもらうことが今後の課題といえる。
- 発達障害
●自身に関心がないことは聴き流されてしまう傾向があるため、業務については「~こんな感じ」、というあいまいな指示ではなく、「~してください」という明確な指示をすることに気をつけている。
●強いこだわりがあり、自身が納得できないと先へ進めないことが多く見られるため、要点を絞っての説明が必要
●彼らの長所を生かし作業を絞って指示をすることが今後の課題といえる。例えば、Eさんは作業が早く、定例業務に長けている。Fさんは作業の正確性が高く、システムのサブ担当として信頼がおける等である。
(2)今後の課題
精神障害のある社員が職場内で働ける環境(業務内容、社員による側面支援)も少しずつではあるが整備されてきた。しかし、彼らが各人の相違はあるものの現状の業務にとどまらず、更にチャレンジする機会を創り出すことが、今後の課題である。また、障害者職業生活相談員の複数設置を予定しているが、共に働く社員の精神障害者への対応・意識・知識、そして行動を向上していく施策が必要である。名実とも“共生”できる職場を目指したい。
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