ハローワーク・障害者職業センターと三位一体で取り組んだ障害者雇用
- 事業所名
- 株式会社アドバンス マクドナルド165桜井店
- 所在地
- 奈良県桜井市
- 事業内容
- ハンバーガーの製造・販売及びその他付帯業務
- 従業員数
- 55名(165桜井店)
- うち障害者数
- 3名(165桜井店)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 1 キッチンでのハンバーガー類の製造作業及び清掃作業 内部障害 知的障害 1 キッチンでのハンバーガー類の製造作業及び清掃作業 精神障害 1 キッチンでのハンバーガー類の製造作業及び清掃作業 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() マクドナルド165桜井店 |
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
マクドナルドといえば、ファーストフード業界最大のハンバーガーチェーンであり、日本全国で3,000を超える店舗数を誇っている。奈良県には、現在マクドナルドは51店舗展開されている。県下51店舗のうち、本店の田原本店(奈良県磯城郡田原本町)を皮切りに24店舗をフランチャイズ展開しているのが、株式会社アドバンスである。
アドバンス社は、「地域密着・地域貢献」を企業理念として掲げており、障害者雇用に関してもアドバンス社24店舗全体で取り組んでいる。
165桜井店は、店舗改装を積極的に行い、マクドナルド最新のデザイン・設備を有し、県下でも高い売り上げを誇る店舗である。
(2)障害者雇用の経緯・道のり
平成22(2010)年7月、短時間労働者も雇用率に算定する法改正がなされた。「地域密着・地域貢献」を企業理念として掲げるアドバンス社も法改正の流れ、「地域貢献」の考えから障害者雇用の拡大を目指し、店長を中心に啓蒙活動を実施した。しかし、障害者雇用の経験を持っていない店長が大半を占め、また多くの問題点があるのではないかとの誤解から、なかなか雇用につながらなかった。
そこで、まず165桜井店を障害者雇用のモデル店舗にすることにし、ハローワーク桜井・奈良障害者職業センターの協力を受けながら、165桜井店で障害者雇用を進めることとした。
そして、165桜井店での成功事例を下に、現在は、アドバンス社24店舗全体で養護学校・高等技術専門校などとも連携を行い、雇用拡大に努めている。
2. 取組の内容
(1)具体的な雇用の取組
ひとえに障害者と言っても様々な特性があり、マクドナルドの勤務に合うものをハローワーク担当者と綿密に時間を掛け、打ち合わせを行った。その結果、マクドナルドでは、大きく分けて接客とキッチンで調理作業の仕事があるが、接客は障害特性を加味すると難しいとの結論となり、キッチンでの調理作業をメインに行っていくこととした。
また、関係機関との連携が障害者雇用の重要なカギであることから、障害者職業センターのカウンセラーやジョブコーチとの話し合いを重ねた。
この三者の連携により、人選されたのがIさん(精神障害)である。Iさんは職場実習そしてトライアル雇用を経て、正式採用となった。
マクドナルドは、土日祝日が繁忙日となり、多くのアルバイトが勤務するため、精神的な負担などを加味し、平日のみの勤務とするなど、勤務日・勤務時間において一定の配慮を行った。また、ジョブコーチから障害者の特性の理解をより深めるべく、障害者職業生活相談員資格認定講習の受講を勧められた。この講習でより一層障害者の特性について学び、理解を深める良い機会が与えられたと考えている。
(2)スタッフミーティングの設定
障害者雇用は人事担当者(当方では、店長)だけが、理解を示しているだけでは成功しない。店舗に勤務する全てのスタッフが障害者雇用を理解し、積極的に取組みがなされない限り、成功はありえないとの考えから、障害者と一緒に働く機会のあるスタッフに対し、個別の面談を行い、ジョブコーチよりアドバイスを受けた注意点を細かく伝えることとした。また、人事担当者不在時(今後、起こりうる人事異動)にも心のケアを行えるように、アルバイトの中で相談役を決め、勤務内容以外の多岐にわたる悩み相談の窓口を作った。
(3)支援機関との協議
マクドナルドの仕事は、工場での仕事と大きく異なり、毎日・毎時間お客様の来店者数などに応じ指示が異なり、障害のあるスタッフにとって混乱を生じやすい仕事であることから、ジョブコーチの存在は、障害者と店長(店舗スタッフ)の架け橋として大きな役割を占めることとなった。
ジョブコーチには、毎日の中で起こる様々な疑問や不安を第三者としてサポートをしてもらい、ジョブコーチからのアドバイスの内容はオンタイムで店舗スタッフに伝え、すぐに改善される環境作りを行った。
また、定期的にハローワーク担当者・障害者職業センターのカウンセラーと話し合いを持つことにより、全体的に雇用が順調であるかどうかを考え、その都度方向性の補正を行った。
このような取り組みが、ハローワーク担当者・障害者職業センターのカウンセラーやジョブコーチにおいて、マクドナルドの仕事の理解が進むことにつながり、以後はスムーズな人選が行える環境が整い、当店のみならず、他のマクドナルドでの障害者雇用の拡大につながったものと考えている。
3. 取組の効果、まとめ
(1)店舗での雇用拡大
Iさんは、マクドナルドで働き出してもうすぐ3年を迎える。いまや、店舗には欠かすことのできない存在となっており、周りからの信頼も厚い。最初は、ハンバーガーのお肉を焼く作業からスタートし、現在では、マクドナルドのキッチンの作業は全てこなせるようになった。最初は、指示なしでは何もできなかったIさんが今では、自分で考え作業を提案し、実践できるようになった。
また、人と話をすることが苦手で作業中もほとんど声を出せなかったIさんが今では笑顔で周りのスタッフと話ができるようになり、任せられる仕事の幅もどんどん拡大している。
Iさん自身、通常の仕事内容については自信を持って取り組むことができるようになり、勤務時間の延長に向け日々努力を続けている。
そして、Iさんの成功により、店舗スタッフ全体が障害者雇用に積極的に取り組めるようになり、当店舗には現在、3名の障害のあるスタッフが在籍している。
Iさんの成功は、アドバンス社における障害者雇用拡大の大きな布石となったことは事実である。
![]() 入店1ヵ月後のIさんの手記
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(2)雇用による効果
Iさんの雇用により、スタッフ全体のチームワークが向上した。これは期待していなかった効果といえる。以前は、小さな揉めごとが存在していたが、スタッフ全体がIさんに対するサポートを意識し、丁寧な説明を繰り返すことにより、以前と比較し仲間を思いやる気持ち・行動が全体に波及する結果となった。
また、Iさんの雇用成功により、今まで後ろ向きであった障害者雇用への理解を深めることができ、新たな障害者雇用へと結びつき、当店で複数の障害者雇用が実現された。
ジョブコーチ・カウンセラー・ハローワーク担当者の支援を積極的に活用することをアドバンス社全体で共有することにより、他の店舗においても雇用が進む結果となり、成果を収めている。
Iさんに少し話を伺ったところ、次のような嬉しいエピソードを聞かせてくれた。
「最初に入店した時は、自分にできるのかが不安で仕方がありませんでした。しかし、周りのスタッフの方から丁寧に分かるまで教えてもらうことができたことで不安が少なくなり、乗り越えることができました。体調不良で休みを頂いた次の日に、怒られるのではなく、体調大丈夫?と声を掛けてもらった時は、嬉しかったです。その時に、安心して働ける場所だと思いました。」
![]() Iさんの勤務風景
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(3)まとめ
このように、スムーズな雇用が実現したのは、ハローワークや障害者職業センターの多大なる支援があったことは言うまでもないが、障害者が接する機会が一番多いのは、共に勤務するスタッフであり、同時にこの勤務するスタッフの疑問・不安を取り除くことも人事担当者の大切な役割である。共に勤務するスタッフの理解なしで成功はあり得ないことを十分理解する必要がある。
最初は、Iさんに対し、どのように接していけばいいか解らなかったスタッフもIさんのひたむきに頑張る姿勢に感銘を受け、どのように教えれば解り易いかを個々それぞれが考え、伝えていく姿勢が徐々に見られるようになった。
当然ながら、このような姿勢は、Iさんにも伝わり、今では、仕事以外のことも話の出来る間柄にまで信頼関係が築けている。
最初に、しっかりと障害者・共に勤務するスタッフに説明を行えば、軌道に乗った際、障害のないスタッフとなんら変わらない状況となり、特別なことは存在しない。
平成22(2010)年7月の短時間労働者も雇用率に算定する法改正、平成25(2013)年の障害者雇用率の引き上げが障害者雇用のきっかけとなったことは確かであるが、実際に雇用を行ってみると我々が学んだことも多く、色々なことを経験させて頂いた。また安定すれば、障害のないスタッフとなんら変わらないことも学ぶことができた。
今後は、雇用率の達成を目的とするのではなく、店舗の人員確保のひとつと考え、今後も積極的に取組を行っていく予定である。
株式会社アドバンス【165桜井店】店長 徳満 義之
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