障害者が安心して働ける職場づくりを目指して
- 事業所名
- 株式会社シーエックスカーゴ 尾道流通センター
- 所在地
- 広島県尾道市
- 事業内容
- 生協宅配商品の組合員別仕分け
- 従業員数
- 680名(尾道流通センター)
- うち障害者数
- 27名(尾道流通センター)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 1 商品の搬送 肢体不自由 4 通箱の組み立て作業 内部障害 知的障害 6 出庫台車の整頓作業 精神障害 14 通箱の点検作業、出庫台車の整頓作業 発達障害 1 出庫台車の整頓作業 高次脳機能障害 難病等その他の障害 1 商品の搬送 - この事例の対象となる障害
- 知的障害
精神障害 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要、障害者雇用の背景・経緯
(1)事業所の概要
株式会社シーエックスカーゴは、日本生活協同組合連合会(以下、「日本生協連」という)の物流子会社として平成3年(1991年)に設立された、埼玉県桶川市に本社を置く会社である。
本事例で紹介する「尾道流通センター」(以下「当センター」という。)は、平成21(2009)年10月に開設、日本生協連の物流事業の一端を担うとともに、平成22(2010)年には生活協同組合連合会コープ中国四国事業連合(以下「コープCSネット」という。)のコープ宅配事業における仕分け業務を立ち上げ、さらに平成24(2012)年にはコープCSネットの冷凍商品の仕分け業務まで拡張し、現在約680名が勤務する総合物流機能を担うセンターである。
(2)障害者雇用の背景
当センターに勤務する従業員の多くは、通勤アクセスの良い尾道市、三原市、福山市からの通勤者である。従業員の募集においても必然的にこのエリアからの募集となるが、尾道市では造船業や工業・流通団地への新設事業所、三原市や福山市では従来からの主だった産業があることから、従業員の確保も簡単にはいかない実情があった。
また、当社では以前から障害者雇用に対して積極的に取り組んでいたこともあり、当センターでも障害者雇用を通じた社会貢献として「尾道市における他の企業のよい事例となれれば」との強い思いから、さらに、当センターの業務においては同じ手順を繰り返すなどのシンプルな作業工程も数多くあり、様々な障害特性に合った作業内容の洗い出しができるのではないかと考え、障害者雇用についてより積極的に進めることとした。
(3)障害者雇用の経緯
障害者を雇用すると決めたものの、当センターでは障害者雇用に対する知識がほとんどなかったことから、障害者雇用の支援機関等に協力を求めることとした。その結果、障害者との接し方や職場環境作り、作業内容の洗い出しや障害のない従業員への理解などについて助言を得られることができた。
また、当センターにおいても事業所全体での取組とし、障害者を配置する各作業工程においても丁寧な指導を進めていった。その結果、障害者の業務に対する一生懸命さが障害のない従業員にも伝わり、お互いの信頼関係が更に深まるなどの相乗作用となって、障害者雇用の促進と安定化がよりスムーズに進むことになったと考える。
2. 取組の具体的内容
(1)入社前の職場実習
障害者を雇用するにあたっては、基本的に、入社前に実習期間を数日間設定して、自分自身ができる作業かどうか、また、会社側としても雇用するにあたり作業上の問題がないかを見極めるようにしている。
そうしたことの成功例として、特別支援学校の新卒者を採用するにあたって、入社の前に一週間単位の実習を2度実施し、職場の雰囲気にも慣れた上での入社としたことから、入社後の不安も少なく、即戦力として働くことができている。また、このことが本人においても自信につながっているように見受けられる。
(2)障害者が従事する業務と指導方法
当センターでは、障害者の働く場所を一つに集中させるのではなく、様々な作業工程に従事させることとしている。商品の搬送や開梱作業、ピッキングライン内での作業、オレコン(宅配時に使用するボックス)の洗浄作業、オレコン内部点検作業、出庫できる状態となった台車の整頓作業などがある。どれも重要な作業ではあるが、特に、最後の台車の整頓作業に関しては、ミスをしてしまうと、お客様の元に商品が届かなくなる可能性が生じるなど、責任ある作業となっている。
それぞれの作業工程においては、当然のことながら作業手順やルールなどがある。そうした作業手順・ルールが徹底できていない段階で一人にしてしまうと、自己流の作業となってしまい、品質を落とすだけでなく危険な作業にもつながる。
そうしたことを防ぐため、当センターでは指導の基本を「マンツーマン指導」としている。指導は作業方法だけではなく、職場のルール、他の従業員との接し方などについても行っており、入社後しばらくの間は、より一層のコミュニケーションを図ることが必要と考え、休憩や食事の時間にも共に過ごすこととしている。
(3)実際に働いている障害者の声
- Aさんの場合
就労場所 出庫できる状態となった台車の整頓作業 勤務時間 9:00~17:00(休憩60分) 障害種別 知的障害 入社時期 平成26(2014)年4月
今春4月に特別支援学校を卒業し、2度の職場実習を経験して入社したAさん。最近の状況について、話してくれたことは次のとおり。
- 2度の実習を経て入社したこともあり、職場にも人にも少し慣れているので、安心している。
- 周りの人たちもやさしく教えてくれるので、問題はない。
- 自転車で坂を上ってくるのは大変だが、頑張って出勤しようと思う。
- これまで実習で経験した作業だけではなく、他の作業も新しく教えてもらい、機械が少し怖いけど頑張って覚えたい。
<Aさんに対する管理者の声>
社会人としてまだ3週間しか経っていないが、周りの人ともよく話しをし、不安そうな表情を浮かべることはほとんどない。2度の職場実習の効果が大きく、リラックスして入社できたと感じている。
作業面においては、飽きずに作業ができること、本人の可能性が広がることになると思い、新しい仕事もどんどん覚えてもらおうと考えている。
同時に、ルールや手順などについては厳しく指導しており、ルールを守らないと大きなけがにもつながっていくため、この部分は障害者だからという甘えは許されないと考えている。
また、障害のある人を指導者としてつけることで、お互いの気持ちを分かり合えるようしている。
Aさんの作業の様子 - Bさんの場合
就労場所 オレコンの内部点検作業 勤務時間 9:00~13:15(休憩15分) 障害種別 精神障害 入社時期 平成26(2014)年3月
オレコンを仕分けで使用する前に、その中に余計なものが入っていないかを点検する作業に就いている。この作業は職場実習でも体験し、これまで長期間に渡る勤務経験はなかったが、作業の内容も自分に合っていそうなことから、ここで働くことを決めたBさん。
最近の状況について、話してくれたことは次のとおり。
- 少しでもわからないことがあると不安になってしまうが、ここでは周りにすぐに尋ねられる人がいるので安心して働ける。
- みなさん優しく接してくれて、このまま働いていきたい。
- 長い時間点検し続けるのは辛い面もあるが、責任もって仕事はできている。
<Bさんに対する管理者の声>
入社して慣れてきたこともあり、当初の緊張した表情もなくなってきた。一生懸命すぎる所もあるが、よく頑張っており、色々と尋ねてきてくれるので、こちらとしてもやりやすい。また、話しかけた時にも明るく元気な表情で返事が返ってきており、こちらとしても安心して指導できるようになってきた。
「何事も不安になりやすくて・・・」ということであったが、そういった様子もあまり見られず、点検作業において大きな戦力となっている。
Bさんの作業の様子
(4)注意していること
障害者の多くは、人と話すことを苦手としているため、管理者からの声かけは最も大切にしている。まだまだ、本人の方から声をかけてくるということは少ないが、入社当初よりは話しかけてくる頻度が多くなった人も増えているように実感している。
特に、コミュニケーション不足で怖いのが、体調不良を報告せずに頑張り過ぎてしまうことで、これについては毎朝、休憩明け、また作業途中にも様子をうかがい声かけするといったことを、どの管理者も強く意識し取り組んでいる。こうした効果もあってか、作業に関する疑問や体調不良などを、打ち明けてくる人も増えてきている。
3. 社内の現状と今後の課題
これまでの取組で、障害者雇用の促進と安定においては雇用数の増加や年間の退職者数が2名に抑えられるなど順調に推移し、働きやすい職場環境の整備が図られてきている。しかし、さらなる障害者雇用を進める上では、障害者で作業ができるシンプルな作業工程だけでは無理があるため、新たな仕事の創出が必要となってきた。これについては、「管理者がついていないといけない」、「仕事の中で判断が必要」などはあるが、障害者が担当する仕事はまだまだ潜在の可能性があると考えられるので、数多くの作業工程の中から障害の特性に合わせた仕事の創出に努め、雇用機会の創造を積極的に進めていきたい。また少子高齢化による労働人口の減少もあるため、障害者雇用を社会貢献の位置づけだけで見るのではなく、障害のない従業員と同じように一般の労働力として評価し、更なる雇用の拡大を続けていきたいと考える。
業務2課 主任 山本 泰久
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