障害の有無に関わらず、特性に応じた仕事で100%能力発揮
- 事業所名
- 株式会社ダイキアクシス
- 所在地
- 愛媛県松山市
- 事業内容
- 各種排水処理装置の設計・施工・維持管理、合成樹脂等による製品の製造販売及び設計・施工、各種建設材料・住宅整備機器の販売・施工、植物系廃食用油を原料とするバイオディーゼル燃料の精製・販売及び精製プラントの販売、飲料水の製造・販売
- 従業員数
- 510名
- うち障害者数
- 7名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 5 事務 内部障害 2 事務 知的障害 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 本社全景 |
1. 事業所の概要
株式会社ダイキアクシス(以下「ダイキアクシス」)は、当社の前身である昭和33(1958)年の大亀商事の開店、昭和39(1964)年の“浄化槽”の開発を手掛けるダイキ株式会社(以下「ダイキ」)の創業以来、豊富な経験や技術力をもとに、質の高い製品開発、品質管理、施工およびサポート体制の強化など、長い間水環境事業に関わってきた。これらを踏まえるとともに、以下の3つの大きな柱をもとに、必要に合わせて他企業とも連携しながら、より優しく、より快適な環境を創造する企業として自然にやさしい快適な住環境づくりに積極的に貢献している。
(1)環境機器事業
豊かで美しい水に囲まれた松山市で水処理事業を始め、軽量で丈夫なFRP製浄化槽を開発して以来、開発型企業としての姿勢にこだわり続けながら、業界トップクラスの技術力と実績で水環境の保全を世界に発信している。具体的には、家庭用の小規模浄化槽をはじめ、産業排水処理施設、地域集落排水処理施設、排水再利用システムなどの販売・施工を全国で展開している。また、さらなる事業として、住環境改善製品の開発も行っている。
(2)住宅機器事業
ダイキアクシスの前身であるダイキで、タイルや衛生機器などの住宅機器の取り扱いをスタートさせてからの長い実績と経験、技術を活用し、プロフェッショナルならではのアイデアを織り込みながら、暮らしのあらゆるシーンをサポートしている。具体的には、家庭のキッチンやトイレ、浴槽などの水回りを中心とした設備資材の販売・施工から、学校や病院、公園やプールなどの内外装工事など幅広く手掛けている。さらに、新たな分野への挑戦として、「ステンレス製貯水タンク」、「大規模ガラス温室」の設計・施工に力を注いでいる。
(3)バイオディーゼル関連
化石燃料に替わる環境にやさしい新たなエネルギーの開発として、最新の科学技術を駆使して廃食油から生み出されるバイオディーゼル燃料『D・OiL』というクリーンエネルギーを活用し、未来を拓くリサイクル環境事業になろうとしている。
2. 障害者雇用の経緯、雇用管理等
(1)障害者雇用の経緯
ダイキアクシスは、平成17(2005)年の創業以来法定雇用率を下回ったことがない。
障害者を雇用するようになった経緯は、会社役員の知人である下肢疾患の専門医から、患者で就職活動をしている方がいるから雇ってくれないかと紹介してもらい、雇用したことがきっかけである。その医師の紹介を受け、雇用するようになった方以外では、以前から働いていた社員が障害者になった場合などがある。また、内臓の病気で休職期間を経てやむなく退職、その後内臓移植が成功し、再入社したという特異な例もある。
(2)雇用管理等
障害者の業務内容は障害のない社員と同じで、多くは事務作業でパソコンを使っての作業が多い。本人の適性にその仕事が合っていなければ別の部門に配属したり、もっと仕事ができると判断した場合は仕事量を増やしたりするなど、障害のない社員と同じ扱いである。
障害者の中にはキャリアアップに意欲的な者がおり、事務系から営業系の仕事を希望する者もある。その業務に適性があると思われる人については配転を検討していく。
周りからのサポートもほとんどといって良いほど行っていない。ほかの社員と同じように関わっている。逆に障害のある社員からエレベーターの行先階ボタンを押してもらう、席を譲ってもらうなどの配慮をしていただき、恐縮することもある。
勤務時間や給料も正社員と同じである。検査入院や月に何回かの通院が必要な人もいるが、有給休暇の範囲内で賄うことができているので、特別な配慮はしていない。しかしながら検査入院等の際に、同じ部署の社員がその人の仕事のフォローをしていることはいうまでもない。
当社は障害者に関する助成金等は受けていない。障害者雇用納付金制度の中で、法定雇用率を達成していると受け取ることができる障害者雇用調整金のみである。
これらのことから、ダイキアクシスでは、障害者本人の自己管理ができていること、周りの社員や会社全体が障害を持つ社員を自然に受け入れ共生していることが感じられた。
総務部長の「在籍する障害者は自分のことは自分ででき、我々に障害のある人と意識させない人ばかりで、一緒に仕事をし、ご飯を食べ、一緒に酒を飲める。これは双方にとってとても幸せなことです」という言葉が印象的であった。
![]() 人事を担当する加山総務部長と二神係長 |
3. 障害者の声
(1)Aさん
Aさんは、下肢に障害があるため、杖をついて社内の移動をしている。日常生活全般も同様である。Aさんがダイキアクシスに就職した年は、足の病気で入院手術した年であった。入社1年目2年目は通院もあり、仕事も覚えなくてはならず、なかなか大変であったが、職場の上司や同僚の理解もあり、何とか乗り越えられた。通院は有給休暇の範囲内でまかなうことができた。今では7年経過し、同疾病の再発もほとんど心配がなくなったとのことだ。
入社して半年後、経理部門の担当となった。勤務時間の多くは、パソコンに向かい座っての事務作業である。「自分は性格上も営業向きではないから、デスクワークの仕事が合っている」とAさんは話してくれた。上記の作業内容であるため、障害が仕事に影響することはない故に、やりがいを持って仕事を行っているという。また、Aさんは以前、パソコン上でコンピューターシステムやソフトウエアを設計したりするようなシステム関係の仕事をする部門にいたので、その経験を活かして、システム系の仕事もよく上司に頼まれるという。入社当初はパソコンについてあまり詳しくなかったが、自分で勉強したり上司に教えてもらったりして覚え、自分の得意分野を生かして向上心を持って仕事ができているとのことだ。インタビューを通してAさんの仕事に対して真摯に取り組む真面目さが窺えた。
上司の方も、「他の人と違った接し方をすることはまずない。ごく普通に接しています。他の社員よりも厳しいかも(笑)」とおっしゃっており、Aさんの仕事のでき栄えや性格を認めたうえで関わっているということが窺えた。
(2)Bさん
Bさんは内部障害者で、臓器移植をされている。もともと新卒でダイキアクシスに入社し、10年ほど営業部門で仕事をしていた。その後病気になり移植手術を経験し、3年間入院生活を経て復帰した。今は受発注業務をしており、長年経営部門で働いていた経験や人脈を生かして意欲的に仕事に取り組んでいる。年1回の検査入院(県外に4日間)と、月1回の通院があるが、有給休暇の範囲内で賄っている。
インタビューを通して、Bさんの徹底した自己管理と強い精神力がとても感じられた。仕事をするうえで人に迷惑をかけることがないように、免疫抑制剤服用によって出現する免疫力の低下による感染症(かぜなど)や骨粗しょう症の予防などの健康管理を常に行っているという。また、食事の管理や運動なども行い「人からもらった命を大切にしている」と話していただいた。
さらに、移植手術をするまでの期間や移植手術が終わった後の期間のモチベーションについて「自分はオモテ(著者注:良い側面)しか見ないようにしている。退院したらここへ行くとか、ここに行って○○をする!などを考えたり、常にポジティブに考えるようにしていた」と話してくれた。仕事に復帰するにしても、お荷物の状態では帰りたくなかったので、自分が自信を持って仕事ができるようになってから復帰しようと思い、精一杯リハビリを行い、手術から1年間後に復帰したという。
上司の方は、「退院して復帰したばかりのころは、以前より痩せていたこともあって心配したし、体調にも気を使っていたが、6年もたった今ではあまり気にかけることはないし、障害のことを知らない人もいます」と話してくれた。この話から、Bさんが自分でしっかり健康管理を行っていることや、大手術をしたということを感じさせない働きぶりなどのBさんが努力していることが窺える。また、回復して再就職することを拒まない会社の心の広さも感じた。
![]() 障害者も障害を持たない社員も忙しく働く事務管理部門 |
4. 今後の課題と展望
創業当初から、障害者雇用に関して優良事業所であるダイキアクシスは、今後も前述した下肢疾患の専門医から紹介された肢体不自由者を雇用するだけでなく、支援機関等多方面にも積極的に働きかけ障害者雇用を行ない、雇用率を達成し、また上回ってゆくものと考えられる。
しかし、これから先には精神障害者が雇用率の算定基礎に加わることにともない法定雇用率が見直されることや、企業CSRの観点からも肢体不自由だけでなく、知的障害や精神障害の雇用にも目を向けて行く必要が出てくる。このことに対して、当社がどのように対応していくのかが今後の課題である。総務部長からは、その必要性は感じつつも、今、在職中の障害を持つ社員と違う障害を持つ人を採用した場合どのように関わったらいいのか不安で、またどんな仕事をしてもらえばいいのか現時点ではわからない。そういう観点から、まずインフラ整備をして行かなければならない、というお話をいただいた。
一般的に障害者への関わり方については、接し方が解らないことや様々な不安から、障害者に関わりたくないと避けてしまったりした結果、障害者本人が周りから孤立してしまうという危険性がある。このことへの対応として、障害者本人だけでなく、障害を待たない社員に対しても、障害を持つ人への接し方の教育をしていく必要がある。特に、現在勤務している障害を持つ方々は、肢体不自由と内部障害がある人であり、座って行う事務作業については他の社員と変わらない100%の仕事量・難易度の仕事ができる。
知的障害者や精神障害者の場合、作業内容、勤務形態等、新たに検討しなければならないことが様々に想定される。しかし、本人のことを理解し、得意なことを生かしたり、環境を整えたりするなどの工夫をすることによって、どの障害種でも働くことができると考える。
ダイキアクシスは、現状達成している雇用率に甘んじることなく、知的障害者や精神障害者の雇用についても積極的に考えている。
今後の障害者雇用拡大もおおいに期待できる企業であると確信した。
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