高齢者福祉事業所における障害者雇用について
~自立した生活を目指して~
- 事業所名
- 社会福祉法人さゆり会
- 所在地
- 長崎県五島市
- 事業内容
- 児童福祉事業・高齢者福祉事業・障害者福祉事業
- 従業員数
- 250名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 保育所 保育士 聴覚障害 肢体不自由 1 障害者就労支援事業所 送迎業務 内部障害 1 高齢者デイサービスセンター 介護福祉士 知的障害 精神障害 2 高齢者デイサービスセンター 清掃及び介護補助
障害者地域活動支援センター 管理者発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観 | ![]() 事業所内観 |
1. 事業所の概要、基本理念
(1)事業所の概要
昭和44(1969)年4月にへき地保育所「崎山保育園」を開設、翌年6月に社会福祉法人さゆり会が認可され、社会福祉法人として児童福祉事業を開始した。この間、他の地域に先駆けて進行していく少子化の中で、保育園の施設経営だけでは事業の将来に強い危機感を抱いた法人は、それまでの1法人1施設経営からの脱却を模索しはじめ、平成3(1991)年には小さいながら単独型の老人デイサービスセンターを開設して高齢者福祉事業を開始、ようやく複数施設を有する法人経営の一歩を踏み出すこととなった。
以来、高齢者福祉への多様なニーズに対応しながら、障害者福祉事業にも取り組み、現在では児童・高齢者・障害者の3分野にわたる福祉事業を展開している。
昭和44(1969)年4月 | へき地保育所「崎山保育園」60名を開所 |
昭和44(1969)年12月 | 長崎県より定員60名の認可保育所となる |
昭和45(1970)年3月 | 法人の設立認可を受ける |
昭和45(1970)年6月 | 社会福祉法人「さゆり会」設立 |
平成3(1991)年3月 | 老人デイサービスセンター(B型)「みはらし荘」を開所 |
平成9(1997)年4月 | 精神障害者生活訓練施設「やまゆり荘」定員20名を開所 |
平成9(1997)年4月 | 精神障害者通所授産施設「みつたけ荘」定員20名を開所 |
平成10(1998)年10月 | 障害児通園事業「ひまわりルーム」を開設 |
平成12(2000)年10月 | 痴呆対応型老人共同生活援助事業「ゆたっとはうす」定員9名を開所 |
平成16(2004)年7月 | 精神障害者地域生活支援センター「サポートセンターゆうなぎ」開所 |
平成18(2006)年4月 | 特別養護老人ホーム「只狩荘」定員50名を五島市より移譲にて経営開始 |
平成20(2008)年2月 | 「只狩荘」定員50名(個室ユニット型)を改築移転 |
平成22(2010)年4月 | 養護老人ホーム「松寿園」定員50名。指定管理者制度による運営開始 |
平成22(2010)年4月 | 「こもれびの舎(いえ)保育園」定員60名新築開所 |
平成24(2012)年4月 | 就労継続支援B型事業所「けいぷはうす」定員20名開所 |
(2)基本理念
当法人では、経営理念として「先駆・共生」を掲げて、地域の人たちの福祉ニーズに対応した先駆性と独自性のある事業に積極的に取り組むとともに、多様な地域の関係機関等との連携と協働を図りつつ、地域福祉のネットワーク構築に主体的に関わっていきたいと考えている。
また、施設・事業所の基本的な運営方針として、一つには、利用者の視点に立ったサービス提供を何より大切にしながら、利用者が尊厳を持って、その人らしく、自立した生活ができるような支援を常に心がけている。
二つには、当然のことながら事業の持続的な発展のため職員の人材育成に大きな力点を置いている。職員の専門職としての知識・技術の向上はサービスの質的担保として絶対に欠かせないものである。同時に適切な人事・労務管理を行って、安全で清潔な職場環境の整備に努めている。
今後も愚直に経営理念を実践していくことで、誰もが安心して暮らせる街づくりの拠点となり、地域福祉の充実発展の一翼を担える法人を目指して精一杯努めていきたいと考えている。
【経営理念】
「先駆」
- 地域の福祉ニーズに即応した先駆的で開拓性のある事業に積極的に挑戦する。
- 地域の福祉ネットワーク構築のための先駆けとなり、他の事業者と協働しながら主体的に活動する。
- 様々な偏見や人権蹂躙解消のための先兵となり、防波堤となって権利擁護を推進する。
「共生」
- 利用者と共に生きる
→我々は指導者でなく、利用者と共に歩む支援者でありたい。
- 地域社会と共に生きる
→地域福祉を推進し、実現していく開かれた法人でありたい。
- 職員と共に生きる
→法人最大の資産は職員一人一人であることを強く自覚して人材育成に邁進する組織でありたい。
2. 障害者雇用の状況
(1)障害者の雇用状況(障害の種類、勤続年数、就労時間、業務内容)
・Aさん: | 精神障害、勤続年数2年1ヶ月、就労時間20時間/週 (高齢者デイサービスセンター 清掃及び介護補助) |
・Bさん: | 身体障害(肢体不自由)、勤続年数5年0ヶ月、就労時間30時間未満/週 (障害者就労支援事業所 送迎業務) |
・Cさん: | 身体障害(内部障害)、勤続年数9年4ヶ月、就労時間40時間/週 (高齢者デイサービスセンター 介護福祉士) |
・Dさん: | 精神障害、勤続年数17年0ヶ月、就労時間30時間/週 (障害者地域活動支援センター 管理者) |
・Eさん: | 身体障害(視覚障害)、勤続年数30年0ヶ月、就労時間20時間/週 (保育所 保育士) |
(2)Aさんの雇用の経緯
Aさんは、平成20(2008)年7月に地元病院の精神科を退院後、当法人が運営する障害者グループホームに入居すると同時に精神障害者通所授産施設(現 就労継続支援B型事業所)への通所を開始する。当初より作業能力が高く体調も安定しており、本人自身も将来的には一般就労を強く希望していた。
平成22(2010)年11月に本人から精神障害者社会適応訓練を希望する申し出を受けて、保健所の担当者とともに面談を行い同訓練の利用登録が決定した。就労継続支援B型事業所側のAさんに対する個人評価は高く、体調も安定していることが決定につながった。訓練の実施事業所については、本人が福祉関係事業所の清掃作業を希望したことから、同訓練の登録事業所であった当法人内の老人デイサービスセンター「みはらし荘」にて訓練を開始することとなった。精神障害者社会適応訓練終了後は同事業所にて引き続きトライアル雇用を行った。
平成22(2010)年12月1日~平成23(2011)年11月30日 | 精神障害者社会適応訓練 |
平成23(2011)年12月1日~平成24(2012)年2月29日 | トライアル雇用 |
平成24(2012)年3月1日~ | パート職員として雇用 |
3. 取組の内容と効果
(1)Aさんの精神障害者社会適応訓練からパート雇用までの経過
精神障害者社会適応訓練は、平成22(2010)年12月より、1日5時間程度の仕事で訓練を開始した。
業務内容としては、デイサービス利用者の入浴後の整髪・整容・室内の清掃に従事した。訓練開始当初は、職員が付いて指導を受けながら業務を行い、業務内容を覚えることと、本人の不安の軽減を図った。また、ジョブコーチ、事業所職員、本人との話し合いを毎月実施した。
この時点で問題となったのは、利用者や職員とのコミュニケーションがうまく取れないということであった。解決策としては、指導担当職員を選任し、早期に信頼関係を作り、コミュニケーションが取りやすい環境を作ることとした。その結果、本人がわからないことや不安に思うことを指導職員に話すことができるようになり、他の職員や利用者とも良い人間関係を保つことができた。
もう一つの問題点は、服薬の関係上、体力的に5時間の継続勤務が難しいということであった。これについては、午前中3時間の業務の後に休憩時間3時間を設け、午後からの勤務を2時間にするという方法を取った。
訓練終了後、トライアル雇用を経て、パート職員となるころには、自ら進んで利用者や職員に話しかけられるようになった。その結果、当初業務になかったリハビリチェック表の記入・手指の消毒の介助・入浴の準備等を行うことができるようになった。現在では、施設行事や仕事以外でも交流の場を作ることにより、利用者及び職員との信頼関係が構築され、当事業所にとってもなくてはならない存在となっている。
(2)Aさんの日課と業務内容
午前9時 | 出勤 ・入浴準備 ・利用者の手指消毒の手伝い ・利用者へのお茶出し、湯飲み茶碗洗い ・利用者の整髪・ひげそり・水分補給の手伝い ・リハビリチェック表への記入 ・昼食前の手指消毒の手伝い ・配膳 |
午後0時 | 一旦帰宅 |
午後3時 | 出勤 ・おやつ・お茶出し ・入浴物品の後片付け、翌日の入浴準備 ・フロア掃除(掃除機・モップ掛け) |
午後5時 | 帰宅 |
(3)Aさんをはじめとする障害者の雇用について
Aさんを雇用するということに対して不安がないわけではなかった。『どこまで仕事ができるのだろうか』、『どのように指導すればよいのだろうか』と雇用に対して消極的であったし、実際のところ、雇用当初は戸惑うことも多かった。しかしながら、精神障害者社会適応訓練開始から今日まで、『働きやすい環境つくり』を事業所の方針の一つとして推し進めてきたことが、Aさんの就労継続につながっている。また、Aさん自身も自信の回復と周囲からの信頼によりさらなる仕事に対する意欲の向上につながったのではないだろうか。今後、自立した生活を送ることを目標に仕事に励んでもらいたい。
『障害』という言葉にとらわれず、これからもその人の持っている力を十分に発揮することができるような『働きやすい環境』を作っていきたいと思う。
![]() 作業風景
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