生きがいを感じることのできる職場を目指して
- 事業所名
- 株式会社エルアクト
- 所在地
- 鹿児島県鹿児島市
- 事業内容
- 障害福祉サービス事業、惣菜レストラン・カフェ・病院内厨房での調理、病院内・ホテル内での清掃、農作業・養鶏
- 従業員数
- 106名
- うち障害者数
- 76名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 洗い物 聴覚・言語障害 3 調理補助、清掃、農作業 肢体不自由 4 調理補助、農作業(袋詰め) 内部障害 1 農作業 知的障害 11 調理補助、農作業、清掃 精神障害 56 調理補助、農作業、清掃 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() ![]() 事業所外観 |
1. 事業所の設立経緯と概要
株式会社エルアクトは平成23(2011)年9月に設立した。精神科病院が母体であり、その病院を退院した後の住まいと仕事の社会資源を創るために、グループホームと就労継続支援A型事業所を立ち上げた。
設立当初、鹿児島には、就労継続支援B型事業所は多かったが就労継続支援A型事業所はまだ少なかった。障害年金に加えて、就労継続支援A型の給料を合わせると生活することはできる。つまり、自立して生活していくことにつながる。退院後、自分の力で生活できることの喜びを感じていただきたい、その思いで就労継続支援A型事業所「お惣菜しのび」(しのび食堂)を立ち上げた。
母体が精神科病院ということもあり、最初は精神障害者を対象とした事業所であったが、住まいや働き口に困っている多くの障害者に対応するべく、現在は大きく分けて3つの障害(身体・知的・精神)の受け入れを始め、事業所も下記のように大きく6事業所に分かれて働いている。
2. 就労継続支援A型(雇用型)事業所での作業内容
(1)お惣菜しのび(しのび食堂)
お惣菜しのびの食堂(しのび食堂)の厨房内で、洗い物・調理補助の作業を行っている。実際に来てくれるお客様の顔を直接見ることができ、代金と引き換えに提供する食事を作る喜びを、直に感じることができる職場である。また、弁当やオードブルなどの注文を受け付けており、地域住民、福祉事業所、各企業より注文をいただいている。
作業内容としては、入社したては洗い物から始まる。洗い物に慣れてくると、野菜を切る作業を覚えていくことになる。さらに、覚えることが得意な人に関してはお弁当を詰める作業やサラダ作りの作業、冷静に仕事をこなせる人には揚げ物の作業を行わせる。また、精神障害の人で、幻聴により包丁を握ることが怖いという人もおり、そのような人には洗い物を中心に作業をしていただいている。
このように、本人との面談を重ね、希望を聞きながら、障害を持ちながらでも能力を発揮できるような配置をどのようにすればいいかを考えながら行っている。
視覚障害 | 聴覚・言語障害 | 肢体不自由 | 内部障害 | 知的障害 | 精神障害 | |
お惣菜しのび | 0人 | 0人 | 1人 | 0人 | 3人 | 25人 |


(2)キッチン紫乃尾
精神科病院内厨房での、洗い物・調理補助の作業を行っている。入院患者さんの朝・昼・晩の食事を作る。
業務としてA洗い物・B清掃・C野菜の切り込み等、その日に行う作業を、ある程度分業化しており、今日の勤務はA、明日の勤務はBというように、作業の予測が立てやすいようになっている。そのなかで本人の障害に応じ、例えば視野狭窄のため、洗い物しかすることができない人にはAの作業のみをしてもらっている。
振り分けられた業務を時間内にこなし、自分の作業が終わったら別の担当を手伝う。技術と共に、要領よく作業をするための段取りを学ぶことができる職場である。
視覚障害 | 聴覚・言語障害 | 肢体不自由 | 内部障害 | 知的障害 | 精神障害 | |
キッチン紫乃尾 | 1人 | 1人 | 1人 | 0人 | 2人 | 6人 |


(3)青空農園
ビニールハウスや畑があり、野菜の種まきから収穫まで携わる。また、鶏の飼育もしており、卵を収穫する。ここで採れた野菜や卵は、しのび食堂で販売、また食材としても使われている。のびのびとした自然溢れる環境のなかで、野菜や鶏の生育に一から携わることにより、育てる喜びを感じることができる。
精神障害の人は、特に体力が無い人が多く夏場の作業はきついため、休憩や水分補給をこまめにとりながら作業を行っている。
視覚障害 | 聴覚・言語障害 | 肢体不自由 | 内部障害 | 知的障害 | 精神障害 | |
青空農園 | 0人 | 1人 | 1人 | 1人 | 2人 | 11人 |
![]() 事業所外観
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![]() 作業風景
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(4)清掃部
精神科病院内での清掃の仕事である。居室や廊下、トイレの清掃、病院敷地内の落ち葉拾い等を行う。声をかけてくれる患者さんも多くおり、感謝の気持ちを言っていただくことで、やりがいを感じることができる職場である。
患者さんや看護師さん達とあいさつを交わしながら3人一組で居室のモップをかけていく。お互いの声かけや、連携も大事になってくる。
また、障害に応じた作業を割り振っており、例えば、右上下肢麻痺の人はモップを使った作業ができないため、トイレ掃除専属の作業である。
視覚障害 | 聴覚・言語障害 | 肢体不自由 | 内部障害 | 知的障害 | 精神障害 | |
清掃部 | 0人 | 1人 | 1人 | 0人 | 1人 | 4人 |


(5)施設外就労部
- ホテル清掃部
鹿児島市に隣接した日置市にあるリゾートホテルから業務委託を受けて、ベッドメイキング、清掃、居室内の備品を揃える等の業務をしている。
お客様がチェックアウトされた後の部屋を片付け、次のチェックインの人数に合わせた部屋を時間内に作り上げていく。周りと協力して部屋を作り上げていくなかで、お互いの苦手な部分をカバーし合いながら、どのようにしたら綺麗に早く仕上がるかをミーティング等で話し合いながら考えていく。やりがいと共に、協調性が養われる職場である。
視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 精神障害 ホテル清掃部 0人 0人 0人 0人 2人 7人
事業所外観作業風景 - カフェ部
日置市にあるカフェで業務委託を受けて調理補助業務をしている。鹿児島市紫原からワゴン車に乗り皆で向かう。地元の食材を使った健康志向の日替わりランチは人気で、鹿児島市内からも多くのお客様が訪れる。
洗い物や野菜を切る、盛り付け、コーヒーを淹れるなどの作業を行っている。段取りよく調理、盛り付けをする技術を学びながら、お客様との触れ合いも感じることができる事業所となっている。
視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 精神障害 カフェ部 0人 0人 0人 0人 1人 3人
事業所外観作業風景
3. 障害者雇用の問題点
障害者と一緒に働いたことがなければ、一緒にやっていけるのか、理解してくれるのか、すごく不安に感じるかもしれない。確かに一緒に働いていくうえでは様々な問題が生じる。
例えば、ある精神障害の人が、知的障害の人の独り言を幻聴と聞き間違え、状態が悪くなり欠勤することがあった。また、精神障害の人が知的障害の人を怒鳴り付け、知的障害の人の怒りが爆発しそうになったこともある。身体障害の人では、できる業務の範囲がかぎられてくることもある。また、精神障害の人が、体がきついので休んでいることをさぼっているという風にとらえられ、周りに理解してもらえないということも多々ある。
まずは、入社の際のアセスメントが鍵となる。本人の障害特性や協調性はもちろんのこと、自力で通勤できるか、理解力・作業能力はどこまであるか等、事業所側が必要な情報を理解しておく必要がある。そのうえで適職を与えることができれば、障害のない者とさほど変わらないパフォーマンスを見せてくれる。
4. 障害者の就労・雇用に関する制度等の活用、今後の展望
(1)障害者の就労・雇用に関する制度等の活用
障害者の雇用を進める上では、ハローワーク、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、相談支援事業所、就労継続支援A型、B型の事業所など、横とのつながりがとても大事になってくる。職を探している障害者の紹介はもちろんのこと、知識やアドバイスをもらうことができ、事業所としての質を高めていくことにつながる。
また、特別支援学校からの実習も定期的に受け入れており、1週間から2週間一緒に働くことで、障害特性や作業内容の向き不向きなども見ることができる。そのなかから卒業後、就職につながった事例も多くある。さらに、特別支援学校で行われる障害福祉サービス事業所説明会等に参加することにより、当社の事業所をより多くの人に知ってもらう機会を持つことも行っている。
社会福祉団体、保健所、鹿児島市精神保健福祉交流センター等が主催している障害者就労支援の事業所が集まるフェスティバルには積極的に参加し、しのび食堂で作っているお弁当や青空農園で作っている野菜などの販売を行っており、当社のことを障害のない人達に知ってもらう機会を作っている。
ハローワーク等からの紹介は、面接の後に必ず職場体験に入ってもらい、本人が実際に働いてみてやっていけそうかどうか、事業所としても、作業の向き不向きを見ることができる。
また、障害者を雇用する問題点とは逆に、障害者を雇う上でのメリットとしては、特定就職困難者雇用開発助成金や障害者雇用調整金・報奨金などを場合によっては受けることができることがあげられる。
(2)今後の展望
就労継続支援A型事業所のサービスとは、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者のうち適切な支援により雇用契約等に基づき就労する者につき行われる、生産活動その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他必要な支援となっている。
また、対象者は利用開始時18歳以上65歳未満の者で企業等の雇用に結び付かなかった者である。
単に、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者といえども、障害の状態や年齢によってもニーズが違う。一般就労を目指している者もいれば就労継続支援A型事業所での就労をゴールだと思っている人もいる。そのようななかで、支援者がどのような関わりをしていくか、個々人によって変わってくる。就労継続支援A型事業所で働こうと思うに至った背景にはそれぞれの物語がある。それを受け入れたうえで、支援者側が一丸となり関わりの方向性を同じベクトルを向いて接していかなければならない。
働いてくれているみんなが働く喜びを感じ、生きがいを感じてくれることが、就労継続支援A型事業所の在り方であると思う。
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